『いのち』は、1986年1月5日から12月14日にNHKで放送された大河ドラマ第24作である。原作は橋田壽賀子、主演は三田佳子。近代路線に転換してから視聴率的に苦戦していた大河ドラマの桿入れのため、『おんな太閤記』『おしん』で人気の実力派・橋田壽賀子を起用した。当初、NHKは司馬遼太郎原作の明治物の脚色を依頼していたが、オリジナルに拘る橋田が難色を示し、自らの戦後史に擬えての現代史となった。時代設定は、終戦直後の昭和20年(1945年)から、放送当時の「現代」である1986年頃までであり、2016年現在、大河ドラマでは最も新しい時代を取り上げた作品である。大河としてはかなりの異色作で、歴史上の人物が登場しない唯一の大河であり、ナレーションでも歴史人物の名前が出るのは池田勇人(内閣総理大臣)ただ一人、それも一回だけとなっているが、農地改革とこれに伴う地主の没落、高度経済成長下の農村、集団就職、オイルショックなど戦後の主要事件はほぼ描かれており、歴史と全く無関係のドラマではない。配役的には映画『Wの悲劇』などで、当時注目されていたベテラン・三田佳子を橋田の希望で主演に迎え、その他の配役も、庶民派大河を意識した地味なキャスティングとなった。制作費の面では出演者も例年にくらべて少なく、過去の局資産も流用できるため、思い切って本建築の高原家セットを組むなど、バランスのとれた予算配分をした。オープニング映像は水晶玉に光をあて光がうねるような描写と燃え盛る炎が交互に現れるという、物語を象徴するような激しくも幻想的な作りとなっている。そのバックに時折、ドラマ中の重要なシンボルである岩木山の眺望がかげろうのように浮かび上がる。音楽は坂田晃一が『おんな太閤記』以来の再タッグ。のちに同じ橋田作品の『春日局』も担当。橋田脚本の大河作品すべてを担当したことになる。なお全大河ドラマ中でタイトルが完全に平仮名で表記されているのは本作のみである。1984年度の『山河燃ゆ』から続いた近現代三部作では一番平均視聴率が高かった。平均視聴率は29.3%、最高視聴率は36.7%。しかし一作目『山河燃ゆ』は評判が悪く、続く『春の波濤』では著作権侵害事件が起きたため、今作はヒットしたものの、近現代をテーマにした作品は本作で最後となった。2006年12月から1年間、CS放送「ホームドラマチャンネル」で再放送した。1945年8月18日、玉音放送から4日後の、弘前へ向かう汽車に、東京の自宅を焼け出され、故郷へ向かう高原未希・佐智姉妹がいた。佐智は空襲で足が不自由になっており、この旅で、弘前へ男を訪ねる妊娠中の村中ハル、高校生(旧制)の中川邦之と知り合う。故郷へ帰り、母の千恵、使用人の工藤清吉・イネ夫妻と再会したのも束の間であった。男に裏切られ、海に身を投げようとして、海軍予備学生から復員した浜村直彦に助けられたハルが連れて来られ、千恵、イネらの奮闘に関わらず流産する。一時は自殺すら考えたハルだったが、清吉らの説得により「男に頼らず一人で生きる」と実業家への道を志す。間もなく千恵が吐血して倒れ、医師・坂口一成の診察により癌を宣告される。シベリアへ抑留された父正道と結婚式を挙げた神社へ未希とハルの助けで参拝して間もなく亡くなり、このことがきっかけで未希は医者を志し女子医専に進学。しかし、高原家は農地改革の嵐に見舞われ、小作人で幼馴染の岩田剛造の努力も虚しく、父のシベリア抑留を理由に不在地主に認定された高原家は、全ての土地を失ってしまう。東京で共に農村医療を志す直彦と未希は惹かれあい、医専を卒業した未希は故郷へ帰り、念願の医者となる。佐智も姉の医療を補助していたが、無資格での行為が問題となって、看護婦を目指し、看護婦の資格を取った。シベリアから父・正道が帰って来るが、長い抑留生活のため、余命いくばくもない事がわかり、弘前医大を出て医師となった中川邦之は正道が元気な内に佐智と結婚したいと申し出る。その結婚式の夜、妻・千恵の墓前で、正道は息を引き取った。その後も開業医としては順調な日々を送る未希だったが、妊娠中の剛造の妻初子の体調不良の訴えを妊娠中毒症と誤診、腎臓病で初子を胎児ともども亡くす結果となり、医者としての自信を失った未希はアメリカ・シアトルへ留学し、そこで直彦と再会する。留学も終わりに近付いた頃、一旦は直彦のプロポーズを受けた未希だったが、帰国後地域医療を捨て大学に戻る途を選んだ直彦と決裂。帰国後、周囲の反対を押し切って剛造と結婚した未希は、姑のテルと激しい確執を演じるが、剛造と初子の娘・典子の病気を治療した事をきっかけに和解する。故郷が町村合併したことを契機に公立の診療所ができて、次第に経営が苦しくなった未希は、東京でダンスホールの経営者として成功していたハルの勧めで、東京郊外の新興住宅地に1年間だけの予定で開業、故郷の医院は義弟の邦之に留守を託した。東京で開業した医院は急速に開発が進んだ結果医師不足となっていたため多忙となり、未希は自らが必要とされている地域があることを知った。約束の1年後、未希は、テルや清吉、佐智らに故郷への復帰を懇願され、邦之も交代を提案しながらも、未希の医師としての生きがいを見た剛造が東京での医院継続に賛成し、剛造の後ろ楯で本格的に移転を決める。しかしその過程で典子との確執を生むのだった。未希が東京での医院継続を決めた頃、故郷から集団就職で征子が上京。しかし、征子は、上京時に約束された定時制高校への通学もままならず、惨状を見かねたハルは征子を引き取り、都内の難関全日制高校へ進学させ、大学まで出し医者にさせるほど征子に愛情を注いだ。同じ頃、剛造と初子の息子・竜男も継母の未希を頼って上京、竜男は都内の高校から大学の経済学部へ進学し、卒業後は未希の医院の事務を担当した。後に征子は竜男と結婚。その新婚旅行の最中、オイルショックが起こり、これに対応して乗り切った竜男は、やがて病院の実務を切り回していくことになる。一方、青森で父と暮らした典子との確執は収まらず、結婚式の日、典子は未希が用意した婚礼衣装に袖を通さず、初子の形見の着物を身につけて式に臨むが、テルが痴呆症にかかり、未希は彼女を東京に引き取り介護する事で和解する。やがてテルは未希に看取られて死去。それから間もなく親友のハルの末期癌が発覚。ハルは弘前での最期を望み、親しい人たちに囲まれて高原家で息を引き取る。やがて、竜男による医療保険不正請求事件が発覚。竜男を問い詰め叱責する未希に対し、竜男は謝罪するが、病院の経営状況が火の車であり、やむなくしていた事を聞かされた未希は愕然とするのだった。剛造が長年のリンゴの品種改良の努力が実って、農業賞を受賞。喜びも束の間、剛造もまた病に冒される。意識不明になった剛造の自発呼吸がついに停止し、気管切開をしようとする医師とそれを望んだ家族に対し「もういい。お父さん頑張ったんだから」と未希は延命治療を拒み、安らかに旅立たせるのだった。それにより、典子は、剛造を殺したのはあんただ、それでも医者かと罵倒、激しい憎しみを燃やし、竜男や征子が説得しても剛造が建ててくれた家に未希が入る事を許さなかった。しかし、失意の未希に清吉は剛造が生前農業雑誌に寄稿していた記事(品種改良の結果できた新種のリンゴの名を未希にちなんでつけたことと未希への感謝の念が書かれていた)を見せてくれ、それを読んだ未希は喜びに涙する。その記事は典子も読む事となり、剛造の未希への愛情を知り、典子が未希に土下座して謝罪、和解する。その後、典子達の農作業を手伝おうとする未希だったが、慣れない農作業では却って足手まといとなり、自責の念にかられた未希は、全てを投げ出そうと家を出、青森県内のとある山奥の温泉宿に逗留する。そこで働いていた女性の難産を助け、自分にも役目があることを思い出した。東京の医院は征子に任せ、未希は離島の診療所へ赴く。そして「いのち」を守るため、今日も診療を続けるのであった。高原家の小作農家だった。
出典:wikipedia
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