『ミュンヘン』("Munich")は、2005年12月公開のアメリカ映画。スティーヴン・スピルバーグ製作、監督のサスペンス・スパイ映画。映画は1972年のミュンヘンオリンピック事件と、その後のイスラエル諜報特務庁(モサッド)による黒い九月に対する報復作戦を描く。ジョージ・ジョナスによるノンフィクション小説『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』を原作とし、トニー・クシュナーとエリック・ロスが脚本を担当した。『シンドラーのリスト』、『プライベート・ライアン』に続くリアルなグロテスク描写のある作品であり、日本における公開ではPG-12指定を受けた。この映画に登場するアヴナー率いる暗殺チームは実在した集団であるとされ、一部創作しているが、この映画の大体の様に「黒い九月」の幹部達を次々と殺害したと言う(なお、アヴナーら当事者は全て仮名である)。現在アヴナーは名前を変えてアメリカで暮らしている。しかし、モサッドの元高官らはアヴナーの証言を否定している。1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックの開催中、パレスチナの過激派組織「黒い九月」のメンバー8名が、オリンピック村のイスラエル選手団宿舎に侵入、抵抗した選手ら2人を殺害し、残る9人を人質に取る。彼らはイスラエルに収監されているパレスチナ人の解放を要求。解決は西ドイツ警察に任されることになったが、テロリストとの銃撃戦の結果、イスラエル選手団9名が殺害され、人質11人全員死亡という悲劇的な結果に終ってしまう。この事件に対し、イスラエル政府は報復を決意。テロの首謀者とされる11名のパレスチナ人の暗殺を計画する。イスラエルの首相ゴルダ・メイア臨席のもと、アヴナーは実行部隊のリーダーとして、モサッド上官エフライヒムから「神の怒り作戦」の説明を受ける。実行部隊のメンバーは、南アフリカ出身の自動車のスペシャリスト・スティーブ、爆弾製造を担当するロバート、現場の「掃除」係である年長者のカール、文書偽造の専門家のハンスである。暗殺のターゲットの多くは、ヨーロッパで活動するPLOの幹部や協力者であり、イスラエル政府とは関係ないがごとき行動が強く要求された。彼らはフランス人のルイという男に接触、情報を得て作戦を進めてゆく。第一の作戦の標的は、アラファト議長のいとこで、ローマで翻訳家として活動しているワエル・ズワイテルだった。待ち伏せし小口径の拳銃で射殺する。第二の作戦の標的は、PLOパリ代表部幹部のハムシャリで、電話に仕掛けた爆弾での殺害を計画、ハムシャリの娘を誤爆しそうになるものの、殺害に成功する。第三の作戦の舞台は、キプロスのホテルで実行され、滞在しているPLO幹部の部屋のベッドに爆弾を仕掛けるが、爆薬の量が多過ぎ、無関係の宿泊客も巻き込んでしまう。第四の作戦は、レバノンのベイルートで行われ、PLOと黒い九月のメンバーが宿泊していたアパートをイスラエル軍の部隊とともに襲撃。PLOのスポークスマンであったカマル・ナセルも含め標的3人は殺害される。第五の作戦は、ギリシアのアテネで行われた。あらかじめ手配されていた宿の一室で、アブナーのチームはPLOメンバーと名乗る男と出くわし、パレスチナ人としての立場、すなわちイスラエル勢力に母国を奪われてきた境遇を直に聞くこととなる。アテネでの作戦では、標的抹殺には成功するものの、現場にいたソ連のKGBエージェントも銃撃してしまう。次の標的は、ミュンヘン・オリンピック事件の最大の黒幕とされる「サラメ」であった。彼をロンドンで発見するものの、作戦着手寸前で酔っ払いに妨害される。ルイの情報では、アメリカのCIAの関係者が、サラメと裏取引をしており、作戦を妨害している可能性があった。そんな中、アブナー達のチームも一人、また一人と暗殺されてゆき、彼らは次第に追いつめられていく。この映画公開にあたり、テロ犠牲者の遺族は「悲劇を伝える良作」と歓迎する一方、当時のイスラエル諜報特務庁(モサッド)関係者からは「事実と違う」などの批判が続出した。当時のモサッド長官ツビ・ザミルは地元紙ハアレツのインタビューで「ゲリラ暗殺は報復ではなく、次のテロ発生を防ぐ目的だった」と発言した。ラストシーンに2001年の米同時テロで崩壊した世界貿易センタービルがCGで再現され挿入されていることも議論を呼び、「同時テロとイスラエルを混同するな」と批判され、モサッドの元要員らからの投書も相次ぐなど物議を醸した。1972年9月のミュンヘンオリンピック事件直後に、イスラエル空軍はレバノン領内のパレスチナ難民キャンプや国道を爆撃し、一般市民も含め、多数の死者を出しており、パレスチナ側からすれば、一方的に作られた映画ともいえる。しかし標的とされているパレスチナ人物は、紳士的な普通のアラブ系外国人として描かれ、逆にイスラエルの姿勢を劇中で批判する等、必ずしもイスラエル寄りの目線では描かれていない。『シンドラーのリスト』でイスラエル寄りとされてきたスピルバーグだが、今作では逆にパレスチナ・テロリストとイスラエルを共に批判する様な描き方をしているため、双方から批判を受けた。特にイスラエルから「反イスラエル的」の非難を浴びた。スピルバーグ作品でもっとも物議をかもした問題作となっている。スピルバーグ自身は、自分はイスラエルに味方するわけでも敵対するわけでもなく、暗殺に手を染めていくことで精神的に病んでいく主人公達の苦悩を描きたかったと語っている。第78回アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚色賞・編集賞・作曲賞にノミネートされたが、いずれも受賞は逃している。
出典:wikipedia
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