人身保護法(じんしんほごほう)は、不当に奪われた人身の自由を回復することを目的に制定された、日本の法律である。英米法のヘイビアス・コーパス(人身保護令状)に由来する。歴史的には、ヘイビアス・コーパス(人身保護令状)は英国の市民革命(清教徒革命)時代に制定された。人身保護令状の特徴として、拘束者に対する罰則がないことが挙げられる。「制定当時の清教徒革命(ピューリタン革命)時代は、彼らの聖典である新約聖書に、より忠実であるように社会を改革する運動でもあったから、彼らは『汝、人を裁くな。』という新約聖書の教えに、できるだけ忠実であろうとした。新約聖書での『裁き』とは処罰を含む、と彼らは解釈し、あるいは解釈していたので、ヘイビアス・コーパス(人身保護令状)では、もっぱら被拘束者の自由回復だけを目的にし、拘束者に対する罰則規定は排除したのだろう。」という見解が、ピューリタニズム・プロテスタント主流のキリスト教社会では通説である。 その影響かどうかはともかく、現実問題として、一般的に英米法国家では人身保護法には拘束者に対する罰則規定がある例は少なく、それは日本の人身保護法でも同様である。但し、訴訟係属後の救済に対する妨害行為に対しては罰則規定はある(法第26条)。衆参司法委員会(当時の呼称)、衆参本会議ともに下記の各条件のもとに全会一致(総員賛成)で可決されている。基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、かつ、容易に回復せしめることが人身保護手続の目的である。法益である目的が人身の自由に対する拘束一般からの自由の回復であるから、拘束者については公的機関(や公務員)だけに限定した想定をしていない。冤罪や正当な法的手続がないままに刑事事件で官憲に拘留など拘束されている場合でも適用されることはあるし、官憲(公務員)がまったく関係していない一般人による拘束の場合でも、正当な法的手続がなされずに被拘束者の自由意思でないなどの条件での拘束の場合には適用されうる。(以下「内容」参照)よってこの法律による裁判では民事訴訟法の手続が原則だから、刑事訴訟法上だけの解釈だけではないから、刑事事件に関する拘束状態からの自由回復でも、この法律の民事としての範疇として扱われる。そういった意味において、この法律による救済、自由回復の権限は当然に、刑事訴訟法によって付与されている権限に優先する。全26条。法文上、対象は人身の自由が奪われた場合、拘束一般である。この人身保護法に関する細則は、人身保護規則(昭和23年最高裁判所規則第22号)に定められる。法及び規則によって人身保護事件の審理は刑事訴訟法にもとづいて、おこなわれるとは限らない。むしろ、拘束者に対する処罰を目的とせず、もっぱら被拘束者の自由の回復を目的にする歴史的経緯、本法の立法趣旨から、原則として民事訴訟法の手続が主体となっておこなわれる(規則33条、46条)ことになっている。人身保護法二条(人身保護規則三条)での「拘束」についての国会での定義 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者(被拘束者)が請求ができるほか、誰でも被拘束者のために人身保護の請求をすることができる(法2条)。請求は弁護士を代理人としてするのが原則であるが、特別の事情がある場合にはその事情を疎明した上で請求者がみずから行うこともできる(法3条、規則6条)。人身保護請求の管轄は、被拘束者、拘束者又は請求者の所在地を管轄する高等裁判所又は地方裁判所である。請求には、被拘束者の氏名、請願の趣旨、拘束の事実、知れている拘束者、知れている拘束の場所を明らかにした上で、疎明資料を提供しなければならない(法5条)。この要件を満たさない請求は却下される(法7条)。また、人身保護は、拘束、又は拘束に関する裁判若しくは処分がその権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合に限り請求することができる。さらに、他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によつて相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、これをすることができない(規則4条)。「特別な事情」(以下、番号は投稿者の付加)「…というような場合」(昭和23年3月30日人身保護法案・参議院司法委員会、国会議事録第九号)「…という場合」(昭和23年5月27日人身保護法案・衆議院司法委員会、国会議事録第二一号)裁判所は、審問期日における取調の準備のため、拘束者、被拘束者、請求者及びその代理人その他事件関係者のうち拘束の事由その他の事項の調査について必要であると認める者を審尋して、準備調査を行うことができる(法9条、規則17条)。準備調査の結果(準備調査を経るまでもない場合には準備調査を省略して)、請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもって請求を棄却する(法11条)。請求が却下又は棄却された場合を除いて、裁判所は、審問のために請求者又はその代理人、被拘束者及び拘束者を召喚する。拘束者に対しては、被拘束者を審問期日に出頭させることを命ずる(人身保護命令)とともに答弁書の提出を命ずる(法12条)。審問期日では、被拘束者、拘束者、請求者及びその代理人の出席する公開の法廷において、請求者の陳述及び拘束者の答弁を聴いた上、疎明資料の取調を行う。また、拘束者は拘束の事由を疎明しなければならない(法14条、15条)。審問の結果、人身保護請求に理由がないときには、請求棄却の判決が下され、被拘束者は拘束者に引き渡される。他方、人身保護請求に理由があるときには、被拘束者は判決をもって釈放される(法16条)。夫婦関係が破綻した後の子の親権や監護の争いを発端として、子を一方的に奪われたと主張する親が、子を被拘束者、現に子を手元に置いて監護している者を拘束者として、人身保護を請求する事例がある。判例は、両親ともに共同親権者である場合(離婚前)は、拘束者による幼児の監護・拘束が権限なしにされていることが顕著であるといえるためには、その監護が請求者の監護に比べて子の幸福に反することが明白であることを要する(最判平成5年10月19日民集47巻8号5099頁)とする一方、子の監護権を有する者が監護権を有しない者に対し、人身保護法に基づき幼児の引渡しを請求する場合には、幼児を請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り、拘束の違法性が顕著であるというべきである(最判平成6年11月8日民集48巻7号1337頁)とする。
出典:wikipedia
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