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親指シフト

親指シフト(おやゆびシフト)とは、日本語の「かな」を入力するため、1979年(昭和54年)に、富士通が考案したキー配列規格の一種である。ほぼ同時期に確立したQWERTYローマ字入力や、それ以前から存在したJISかな入力などと同様に、親指シフト規格は「かな漢字変換」のためのかな入力手段(日本語入力)として使用される。NICOLA(ニコラ)は、日本語入力コンソーシアムが親指シフト規格のうち一部仕様を変更した規格である。親指シフトキーボード(おやゆびシフトキーボード)は、親指シフト規格またはNICOLA規格に準拠するキーボードのことである。親指シフト規格は、日本語の文章を入力する上で『効率』と『使いやすさ』のバランスを再設計するために、いくつかの検討と実験を行ったうえで「一つのアクションが、一つのかなに対応する」方法にたどり着いた。1980年を目前に控えた当時はまさに、入力法についてじっくり検討する時間などない『ワープロ専用機の、熾烈な開発競争』にさらされていたため、親指シフト規格については入力方式の設計・評価段階に大半を費やし、実際の文字配列に対して設計評価する時間はあまりなかった。それにもかかわらず、基本設計について検討・実験を重ねてきた親指シフト規格は、ワープロ専用機の普及初期において、商業的に確かな成功を収めた。また、こうしたハードウェア&配列に関する検討の成果は、後の日本語入力用キーボードに対して強烈な影響を与えつづけている。キーボード上で文字配列を本格的に設計評価する試みとしては、後に「多人数の運指時間を徹底測定する」ことによって入力速度の徹底追求を目指した、新JISかな (JIS X6004) が登場した。また、指の動作範囲を徹底的に研究して、その研究結果を元にエルゴノミクスキーボードを本格採用した、TRON配列も登場している。21世紀以降では、JISキーボードのシェアが日本語入力用のハードウェアとして圧倒的であり、それに大きく差をつけられている。ただし、入力法の選択肢が「お抱え入力法」に限られていたワープロ専用機の時代は、既に過去のものである。ハードウェア面で言えば、パソコンを利用する親指シフトユーザーには「親指シフト規格に向くJISキーボードで」親指シフト規格の配列を使うという選択肢があり、専門店の一部はそれを「親指シフト規格に向くJISキーボード」と紹介する例がある。またソフトウェア面では、JISキーボードでも親指シフト規格の配列を実現する「ソフトウェア」(特にフリーウェア)が多様な環境で動作するようになり、コンピュータからの見かけ上はJISキーボードとなっている「USB接続の、本物の親指シフトキーボード」の活躍の場が広がった経緯もある。「ハードウェアシェアの低さ」とは対照的に「親指シフト規格が実現可能な環境のシェアは非常に高い」という状態が、パソコンの普及以来続いている。そのため、親指シフトキーボードというハードウェアのシェアから、親指シフト規格のシェアやユーザー数を推定することは、事実上不可能である。パソコン用の親指シフトキーボードは富士通または富士通コンポーネントによって供給され続けている。また、サードパーティ製のキーボードとしては、ライフラボ株式会社の「親指シフト表記付きUSBライトタッチキーボード」が販売されている。富士通のワープロ専用機「OASYS」はJIS配列を採用するモデルはあったものの、一貫して親指シフトを中心に採用されたほか、パソコンのFMRシリーズ、FM TOWNSシリーズ、ビジネス用ワークステーションFACOM9450シリーズ(PFUブランドでは「Cシリーズ」)向けのキーボードも発売されてきた。また富士通専門店「アクセス」では外付けキーボードの他、自社のノートPCのキーボードを親指シフト仕様に変更したカスタム品も取り扱っている。ライフラボ株式会社の「親指シフト表記付きUSBライトタッチキーボード」が安価で入手できる。また、エスリルの「エスリル ニューキーボード」はカスタムオーダーメイド製品のため、親指シフト配列が選択できる。KinesisのContouredは、親指で押せる位置にページアップなどのキーが複数あり、Truly Ergonomic社の「TECK209」やオープンソースハードウェアのErgodoxは、親指で押せる位置にあるキーのスキャンコードを変更できる。専用品や特殊なキーボードでなくても、標準JISキーボード規格のOADG 109型であれば、左右親指の位置に変換・無変換キーがあり、スキャンコードを変更するソフトを利用して代用品とすることが出来る。近年ではソフトウェアエミュレーションによる実装が複数のOSで行われており、環境構築や設定の微調整が可能となっている。またスマートフォンやタブレット向けのアプリも存在する。Appleの標準JISキーボード(AppleはNICOLA参加企業)は、ホームポジションを崩さずに左右の親指で押せる「英数キー」と「かなキー」があるため、ソフト利用で親指シフト入力ができる。PFUのHappy Hacking Keyboardには、かな刻印無しのBluetooth接続版がある。またLogicool等、短いスペースバーと左右の親指打鍵可能な配列の製品は多数存在する。パソコン以外では、キングジムのデジタルメモ機「ポメラ」の一部モデルに親指シフトが採用されている。NICOLAの名称は「NIHONGO-NYURYOKU CONSORTIUM LAYOUT(日本語入力コンソーシアム配列)」の頭文字に由来する。NICOLA規格と親指シフト規格のどちらのキーボードでも、大抵は「親指シフトキーボード」と称されており、「NICOLAキーボード」とはあまり呼ばれない。また、ワープロ専用機のブランド名からOASYSキーボード(オアシスキーボード)と呼ばれることもある。NICOLA規格と親指シフト規格は、規格の面で半濁音の入力法に相違がある。しかし実装としては、NICOLA規格と親指シフト規格の両方に対応するよう上位互換動作をする例が多く、親指シフト規格とNICOLA規格の差を意識する必要はほとんどない。現在発売されている親指シフトキーボードはすべてNICOLA規格と親指シフト規格の両方に準拠している。親指シフトキーボードの見た目における最大の特徴は、キーボード最下段中央に位置する親指左/親指右の、各々親指シフトキーである。操作面の特徴には、次の点が挙げられる。ホームポジションに手を置くと、親指左/親指右キーは、左右の親指の真下に位置するため、これらのキーはホームポジションを崩さずに打鍵できる。英字モードでの配列と入力方式は、一般のQWERTY配列のキーボードと変わらず、親指左/親指右キーはスペースキーとして機能する。一方、かなモードでは、これらのキーを下表のように操作して、キートップに印刷してある複数の文字を打ち分けながら、漢字かな交じり文の文章を入力する。一見すると複雑に見える入力方式であるが、「かな一文字を一回の操作で入力すること」という要求を満たそうとする場合、きわめてシンプルな解決方法であるといえる。解剖学的な手の構造を見れば明らかな通り、親指は人差し指・中指・薬指・小指とは異なり中節骨がなく、他の指と比べて明らかに短い。また他の指との近づき具合を自由に変えることができる。親指シフト規格は手が持つこの特性を利用している。片手による文字キーと親指シフトキーとの同時打鍵(濁音になり得ないかなの打鍵)については「文字キーと親指シフトキーを同時に押せるように指を構え、そのまま掌全体を軽く下ろして同時打鍵する」スタイルを取っている。この操作は他の入力方法では用いないものであり、もちろん練習をすることによってしか習得できない。初期練習時には「2つのキーを同時に打鍵する」ことよりも、「2つのキーを同時に押せるように手を形作る」ことを意識して練習する方が、より実際の打鍵に近い打鍵感覚で練習できる可能性がある。親指シフト規格では、一つのシフトキーに一つの機能を割り当てるのではなく、「手の形・文字キーと親指シフトキーとの位置関係」に応じてシフトの意味合いを変えることにより、「片手で打てば濁音になり得ない清音かな」「両手で打てば濁音かな」というルールを、ほぼ規則的に実現している。他のシフト方式と比べての親指シフト方式の特徴については、シフトキーの項目を参照。親指シフト規格のキー配列は、かつて時代と共に変遷してきたが、基本的な仕様は変わっていない。ここでは親指シフト規格を採用した最初の製品であるOASYS100の配列と、現在用いられているPC向けのNICOLA規格配列を紹介する。なお、OASYS100とその後のOASYSとでは記号類の配置に若干の違いがあるものの、英字入力時の配列は一般的なQWERTY配列キーボードとほぼ同一であるため、日本語入力時の配列についてのみ紹介する。刻印された文字の打ち分けの仕方は#操作方式の項目を参照。親指シフト規格準拠となるOASYS100のキー配列の特徴として、以下の点を挙げることができる。このように、初期の親指シフトキーボードは、OASYSの設計思想と密接に結びついていたものであったと言える。NICOLA規格には、オリジナルのNICOLA配列規格書に示された配列のほかにJIS化案の形で、OASYS100以降の親指シフトキーボードの仕様を継承したF型と、ANSI仕様の英文キーボードとの互換性に配慮したA型と、JISキーボードとの互換性に配慮したJ型のバリエーションがある。ここではJIS化案のJ型配列を元に、NICOLA配列規格書について紹介する。上図の白色部分は、NICOLA規格では未定義とされ、実装者に任されている箇所である。エスケープ、バックスペース、エンター、半角/全角、英数、タブ、スペース、Ctrl、Altなどのキーをこの領域に配置する。OASYS100配列と比較して、以下のような特徴がある。なお、日本語入力コンソーシアムが提案しているJIS化提案では、親指キーの配置については「位置」ではなく「領域」で指定されている。富士通が販売しているデスクトップ用親指シフトキーボードや本格的な親指シフト規格ノートPCでは、親指左キーと親指右キーを隣接配置し、その右側に空白キーを置くのが通例である。一方、JIS X 4064:2002の附属書2付図2では、JIS化提案要件を満たしたうえで「キーボード中央に空白キーを配置」したNICOLAキーボードが提示されている(同附属書は規定の一部ではない)。製品としては「快速親指シフト」キーボードを搭載するノートPCが一時期生産されたものの、大手の専門販売店がこれを推奨せず、この仕様は商業的価値を失った。のちに 勝間和代は「自宅では専用キーボードを接続するものの、外出先では Panasonic の Let's note が持つJISキーボードをそのまま使って親指シフト規格での入力を行う」という趣旨の利用方法を紹介したように、非商業的な親指シフト規格の利用法としては、一定の支持を得て使われ続けている。快適さについては個人の感覚や好みに負うところが大きいので客観的な記述は難しいが、親指シフト規格の支持者たちは、親指シフト規格の快適さを以下のように説明している。また、親指シフト規格やJISかな入力の支持者たちから、ローマ字入力での、かなをローマ字に変換するストレスを嫌う意見が出ることがあるが、これに対してローマ字入力の支持者たちから、慣れれば読みとローマ字の入力パターンは頭の中で一対一で対応するようになり、ストレスはなくなるという意見が出ることもある。もっとも、誰しも「今慣れ親しんでいるものをそのまま使うのが一番快適」という点は紛れもなく事実であり、これらの意見はしばしば論議を生む原因となる。また、ここに挙げた意見が「全ての」各配列ユーザが抱く総意かどうかという点については統計が無く、詳細は不明である。親指シフトユーザの動向がこの「快適さ」を裏付ける例もある。ローマ字入力でも不自由しないため「他人と共有するパソコンではローマ字入力」を使う一方で、親指シフト規格の快適さをできるだけ享受するために「自分のパソコンでは親指シフト規格の入力法」を使う、という両刀使いの利用者も多い。こういったローマ字入力との併用は「JISかな入力ユーザー」などにも見られる現象ではあるが、ほとんどのパソコンで使える「JISかな入力」とは異なり、親指シフト規格の入力法は共有パソコンで使える可能性がほとんどないため、ほぼ必然的に両刀使いとなる。かつて親指シフト規格の入力法を経験したユーザの中には、時代の流れと共にローマ字入力やJISかな入力へと移行した者もいる。そういったユーザですら「親指シフト規格の入力法が嫌になって使用を取りやめた」という発言をすることは比較的少なく、親指シフト規格に対し好意的であり続けている例や、エミュレータの存在を知って親指シフト規格の入力法へと「出戻る」例さえも見受けられる。多数の親指シフトエミュレータや親指シフトコミュニティも親指シフトユーザの想いの表れである。キーを見ないで入力する「タッチタイピング」の習得には、一般的に以下の要件を必要とする。親指シフト規格では、以下のようになるため、タッチタイピング習得のための原則を自然と守る結果になる。そのため、親指シフト規格ではタッチタイピングを自然に覚えられる、あるいはタッチタイピングを強制的に覚えさせられるという側面がある。これらの操作ルールは、裏を返せばいわゆる「一本指打法」がしにくいということでもある。手指に障害をもつ場合に限らず、一時的でも両手でキーボードを扱えない場合、指を負傷した場合ですら、親指シフト規格は他の入力法以上に扱いにくいと考えられるが、一方でNICOLA 配列規格書では「一本指打法」に対応する必要性について言及し、実際に「一本指打法」を可能とする親指シフトエミュレータも、まだ少数ではあるが既に存在している。ひらがなの入力速度は配列よりも個人の適性に大きく左右され、高速入力の得意な人と不得意な人の差に比べれば、配列による差は比較的小さい。むしろ練習量や気合に大きく左右されやすい。そのため、入力速度の定量的な比較には難しいものがある。ただ、以下に掲げるデータや他の配列と併用する者の実感から、親指シフト規格は高速入力に比較的向いた配列と考えられる。あくまでも「比較的」なので、高速入力の得意な人がローマ字入力した場合と高速入力の不得意な人が親指シフト規格で入力した場合を比べれば前者のほうが速い。打鍵数は多いより少ないほうが高速入力に有利だと考えられる。日本語の文章(天声人語4日分:3735文字)を入力したときの打鍵数を他の入力方式と比較した資料によると、以下の通りである。同じかな入力方式でありながら親指シフト規格とJISかな入力法とで打鍵数に開きがあるのは、親指シフト規格ではすべての読みを1打鍵(シフトキーとの同時打鍵を含む)で入力するのに対し、JISかな入力では文字と濁点・半濁点を別々に入力するため、濁音と半濁音の入力では2打鍵(ほぼ交互打鍵)になるためである。さらに、親指シフト規格はホームポジション付近に頻出文字を集中配置しているため、運指距離と運指時間はローマ字入力やJIS配列かな入力よりも少なく済む。ただし、親指シフト規格では親指シフトキーの操作があるので、打鍵数にそのまま反比例する速度は出ない。つまり、ローマ字入力の1.7倍までの速度は出ない。JISかなとは打鍵数の違いが少ないものの、親指シフト規格による入力のほうが運指距離を短くすることができる。一方で、「同じ程度の適性を持った者がある文字入力速度を出すために必要な労力」は入力手法の出来(打鍵数・運指距離・運指時間・交互打鍵率など)に依存する。そのため、同時打鍵に対するストレスを感じない人にとってのみ、ローマ字入力やJIS配列かな入力よりも少ない労力で文字入力をすることが出来るものと思われる。学習の容易さは、配列そのものの覚えやすさの他に学習者の適性や意欲にも大きく左右されるので、定量的な比較が難しい。同じ配列を練習してもすぐに覚えられる人となかなか覚えられない人がおり、さらには覚えられずに諦めてしまう人もいる。また、覚えやすい配列でも嫌々練習していてはなかなか覚えられないし、覚えにくい配列でも(よほど極端に覚えにくいものでないかぎり)一生懸命練習すれば覚えられるだろう。親指シフト規格の覚えやすさについては諸説ある。他の配列より覚えやすいとする意見もあれば、覚えにくいとする意見もある。ただ、親指シフト規格を打てる者が一定数いるため、少なくとも他の配列に比べて極端に覚えにくくはないものと思われる。諸説を列記すれば以下の通りである:現状では親指シフト規格の利用者は少数派である以上、ローマ字入力と併用する人が多い。ローマ字入力のみを覚える負荷と、親指シフト規格とローマ字入力の両方を覚える負荷を比べれば、当然ながら後者のほうが大きい。仮に親指シフト規格の利用者が多数派になっても、英字の入力のために英字配列は覚える必要がある。親指シフトユーザの中には「親指シフト規格は英字タイプと似た操作性・似た打鍵範囲を持っているのだから、まず英字タイプをマスターしてから親指シフト規格を習得する方が有利だ」という主張もある。そもそも親指シフト規格の基本的な操作性は英文タイプのそれと似通っている。ゆえに、シフト操作がシンプルな「英文タイプ」を先にマスターすればキーの位置は確実に覚えることができるので、あとは同じ打鍵範囲+親指シフトキーの操作でかな文字を打てる「親指シフト規格」を覚えることとすれば、学習に要する障壁を分割し難易度を下げることができるためである。かつてコンピュータは英字のみか、せいぜいカタカナが扱える程度であった。コンピュータで漢字かな交じり文を表示・印刷するには活字の役目を果たすフォントを必要とするが、補助記憶装置にフォントを搭載しても低速すぎて実用にならず、主記憶装置またはそれに類する専用の記憶装置、主に漢字ROMを必要とする。当時フォントを記憶させるために必要な主記憶装置は非常に高価であり、それに漢字のフォントを載せるという事は、資源の無駄遣いと見なされる節があった。しかし1970年代後半になると、コンピュータの普及に伴って日本語の漢字かな交じり文の情報を処理したいという需要が高まっていた。富士通の神田泰典が率いる開発チームでは、メインフレーム/汎用機で日本語の情報処理を可能にする拡張システムJEFを開発した。JEFは当初、富士通社内からも否定的な意見が続出するほどの期待薄な状況でリリースされた。しかし、世間の見方は全く異なっていた。富士通がメインだと考えていたFACOM-Mシリーズそのものよりも、富士通がただの拡張システムと考えていた「漢字かな交じり文処理の機能追加」のほうが、より大々的に新聞紙上で取り上げられた。これは後に、当時は漢字処理に対して積極的ではなかったIBMとのシェア差を逆転させるほどの、無視できない効果をもたらした。一方、コンピュータはJEFによって日本語を処理できるようになったが、人間がコンピュータに日本語の情報を入力するための手段はまだ確立されていなかった。当時のコンピュータには、英文タイプライタを模した英文キーボードが接続されていた。コンピュータに日本語を入力するためには、日本語電子タイプライタとでも呼ぶべき装置の開発が必要であると思われた。各コンピュータメーカーは、タブレット上に並んだ漢字をペンで選択する漢字タブレット方式や、キーボードからコードを入力して漢字を選択する漢字直接入力方式などを研究していた。しかし神田らのチームでは、このような方式は熟練した専門のオペレータでないと扱うことができず、タイプライタのように一般のユーザーが考えながら文章を入力するには向いていないと結論づけた。代わって採用したのが、キーボードから読みを入力しながら漢字かな交じり文に変換するかな漢字変換方式である。同様の方式は東芝の森健一らの開発チームでも採用し、1979年に発売された最初の日本語ワープロJW-10として結実することとなる。かな漢字変換方式による日本語入力システムを構築する上で問題となったのが、キーボード上のキー配列である。JIS規格の日本語入力用キーボードは1972年に標準化されていたが、これは神田が望む条件とは異なる以下の仕様であった。既存のキー配列によるかな漢字変換方式に満足できなかった神田は、当時新入社員であった池上良己に、日本語入力用キーボードの改良を命じた。池上が最初に研究した方式は、ローマ字入力を応用することでキーの数を削減した方式であった。この方式ではキーが一段のみに配列されており、指の移動がなく高速入力が可能と思われた。しかし、複数のキーを同時打鍵する必要があり、うまく入力できなかった。この方式を研究しているうちに、すべてのパターンで同時打鍵しづらいというわけではなく「親指と他の指との同時打鍵に限れば、ストレスなく入力できる」ことを発見した。同時打鍵を親指に限るとすると、組み合わせが減るので必要なキーの数は増えるものの、英文タイプライタと同じように3段にキーを配置すれば、十分にタッチタイピングができるようになると思われた。次の課題はキー配列の定義であった。これはDvorak配列の設計手法を手本とした。キー配列の決定には出現頻度のデータが必要であったが、これは池上の母校である早稲田大学で音声認識の研究のために収集していたものを借用した。空いている最上段には数字と、日本語の文章でよく使う記号を入れることで、モード切り換えすることなく数字と記号を入力できるようにした。こうして親指シフトキーボードが完成した。完成した親指シフトキーボードは、見慣れた英文タイプライタのキーボードと大きく異なる形にならずに済んだので、市場にも受け入れられるものと思われた。当初、日本語ワープロは非常に高価な製品であった。初の日本語ワープロである東芝JW-10の価格は630万円であった。その後を追って1980年に発売されたOASYS100の価格は270万円であった。いずれにせよこの価格では企業の専門のオペレータが使う製品という位置付けにならざるを得なかった。そのような専門のオペレータだけがワープロを使っていた時代には、親指シフト規格による高い生産性が市場の支持を受けてOASYSはシェアを拡大し、後発にもかかわらずビジネスワープロのトップブランドの地位を確立した。しかしOASYSの開発者たちは、そのような立場に満足してはいなかった。専門のオペレータが使用するのならば、漢字タブレット入力方式や漢字直接入力方式の方が優れている。かな漢字変換というわかりやすい方式を採用し、業界標準に逆らってまでそのためのキーボードをわざわざ開発したのは、日本語の文章を書く人すべてにとって必要となる、日本語のためのタイプライタを目指していたからである。「電卓戦争の再現」とも言われたほどの苛烈な技術革新と価格破壊を彼らが積極的に続けたのは、他社との競争に勝つためというよりも、むしろパーソナルユースに売り込むことを目指していたためであった。「いずれ1000万台売れる商品になる」というのが神田の口癖であった。そのため、パーソナルユースを睨んだ機種として、1982年には100万円を切ったMy OASYS(75万円)を、1984年にはOASYS Lite(22万円)を投入し、家庭用ワープロの先鞭を切った。業務用の100シリーズでは公的規格であるJISキーボードを無視できず1号機から一貫してJISキーボード仕様を用意していたが、家庭用OASYSでは、親指シフト規格の普及を狙って、JISキーボード仕様を用意せず親指シフト規格仕様のみにするという戦略に出た。1980年代半ばには、10万円を切る価格帯のパーソナルワープロも登場し、OASYSの開発者たちが夢見ていた家電製品として普及する時代となった。すると市場は、彼らにとって皮肉な反応を見せ始めた。当時、家電製品としてワープロを購入するユーザーの使用目的は「年に一度の年賀状の作成」か「一度作って保存した文章の使いまわし」にあり、効率よく快適な文章の創作を日常的に行いたいという需要などなかったのである。そのため、以下のような理由から、市場は親指シフト規格に冷淡な反応を示し始めた。1986年頃からは家庭用OASYSでもJISキーボード仕様が用意されるようになった。それでもカタログの写真には親指シフト規格仕様を使うなど、富士通は「親指シフト規格仕様が基本。JISキーボード仕様も一応用意しています」という姿勢を崩さなかったが、後期には実際の出荷はJISキーボード仕様が主体になっていった。1990年代に入ると、パソコンの価格低下と性能向上が目立つようになり、ワープロ専用機は徐々に市場を失い始めた。新たな主役はNECのPC-9801であり、無論そこには親指シフトキーボードの姿はなかった。OASYSで親指シフト規格に慣れたユーザーは、ソフトウェアエミュレータの「親指ぴゅん」や、アスキーから発売されていたPC-9801用親指シフトキーボード「ASKeyboard」でしのぐこととなった。1996年になるとリュウドがOASYS300シリーズのキー金型を使用するなどして製造した高品質のNICOLA配列キーボード「RBoard PRO for PC」や「RBoard PRO for Mac」「RBoard PRO for 9801」も発売された。ワープロ専用機としてのOASYSシリーズの開発は1995年に終了し、その"遺伝子"はWindows用ワープロソフトのOASYS 2002と、Windows用IMEのJapanistに引き継がれている。富士通は当初から親指シフトだけでなく、JISキーボードや50音配列を採用したモデルを併売していた。その理由について神田は「特定企業が権利を保持し、かつJIS規格ではない親指シフトは、その性能とはまったく関係の無い理由により官公庁関連からの受けが悪い」という事情があったと説明している。また、「親指シフトは独占的に使用すると決めたわけではないが、逆に他社に対して積極的に採用を働きかける行動もとっていなかった。今後は他社に対しても積極的に親指シフトの採用を提案していきたい」との意見も表明している。実際、NECなどライバルメーカーはM式などの自社が推す規格を販売しても親指シフトを採用することはなかった。一方で、ソニーが発売していたNEWSの一部モデルに採用されるなど、OASYSと競合関係にないメーカーが親指シフトを採用した例がある。神田を含めて富士通自身が認識しているとおり「JIS規格として採用されていないという事実が法人・官公庁への営業にとっての足かせとなっている」こと「他社が採用しないので個人ユーザーへの普及に限界がある」という事実は否めず、また当時から既存のかな入力でもローマ字入力でもない「より効率的に日本語入力が出来る規格」を要求する声自体は存在していたことなども重なり、業界を巻き込んだ「新JISキーボード」の制定作業へとつながっていくことになった。「新JISキーボード」の制定作業において、富士通は新規配列の作成ではなく「すでに販売実績があり、かつ使用者から好評を得ている」として親指シフトを提案したが、通商産業省とメーカー各社による審議の結果、1986年に制定された新JIS配列は、既存のJISキーボードのかな配列を改良した規格が採用された。神田によれば、新JIS配列の決定過程はという。新JIS配列はハードウェア的にはJISキーボードと同一、もしくは最下段に小変更を加えただけであるが、かなの配列に関しては新たに調査された日本語文の統計データなどが使われているため、既存のJISキーボードとも親指シフトとも異なる配列であった。当初は新たなJIS規格であることや物理的な配列が同一なため金型が流用できるという利点もあり、規格制定直後から富士通を含む各メーカーよりワープロ専用機のオプションとして採用された。しかし、既に普及していたJISキーボードの規格は廃止されなかったこと、シフトキーの位置はキーボード最下段の中央に設置し親指で操作するセンターシフトも規格書で認めていたが、コスト面から既存のJISキーボードを流用するメーカーが多くほとんど採用例はなかった。各メーカーも積極的に広める姿勢を見せなかったことから、顧客にとっては親指シフトや50音配列と同じく選択肢の一つとして認知されており、当然ながら慣れない配列をあえて選択するユーザーも少なかった。このため出荷台数が伸び悩む悪循環に陥り各社はほどなく採用を中止、1999年には利用実態がないという理由で規格上から廃止され、結局JISキーボードが残ることとなった。これ以降、新たなJISキーボードの策定は行われておらず、2002年にJIS X4064において、物理キーボードの実装例として「NICOLA規格」が僅かに提示されたにとどまっている。新JIS化に挫折した後、富士通は親指シフト規格の権利を1989年に発足した業界団体「日本語入力コンソーシアム」に譲渡した。日本語入力コンソーシアムには、富士通のほか、過去に親指シフトキーボードを発売したことがあるアスキー、ソニー、リュウドなどの企業が名を連ねている。日本語入力コンソーシアムでは、親指シフト規格の一部仕様を変更した、NICOLA規格のキーボードを普及させてデファクトスタンダードとすることと、新々JISキーボード化による公式標準化を目指している。しかし、JISキーボードによるローマ字入力の使用者がコンピュータで日本語を入力する者の大多数を占めるに至った現在では、これから親指シフト規格に移行するユーザーが急激に増えるとは考えにくく、以前からの支持者が使用を続けるに止まるものと思われる。このことは、日本語入力コンソーシアムの発足からすでに相当経過しているにもかかわらず、これといった成果が得られていないことからも明らかであろう。WindowsXP以降のWindows系OSでは、64bitバージョンがリリースされているが、これらに対する富士通側の対応は遅れた。また、キーボードドライバが付属しているなどの都合、親指シフトキーボードとは事実上表裏一体の関係であるJapanistも2003年2月に発売された「Japanist2003」が長らく最終バージョンとなっており、Windows7発売により64ビット環境が大幅に普及した後も64ビット環境への対応が未公表の状態が続いた。このため、親指シフトキーボードでは64ビットOSの環境では本来の使用感とは大幅に異なる状況を余儀なくされ、富士通製品を利用してきた親指シフトキーボードのユーザーにとっては、64ビット環境への移行に際して、キーボードドライバが無いことが大きなネックとなり続けた。2010年には富士通が新型の「携帯型親指シフトキーボード」であるFKB7628シリーズを開発・発売したものの、これにしても当初はドライバが対応するOSは従来のキーボードと同じく32ビットバージョンのみであり、「Japanist2003」のエミュレーション機能を使用することを前提としたものであったため、64ビットOSには対応できない状況であった。そのため、64ビットOSで親指シフト規格を使うためには、有志により作成された「親指シフトエミュレータ」を使う以外に、有効な選択肢が無いという状態が長らく続いた。2011年7月、富士通が「Japanist 2003 体験版 (64bit)」を公開。これにより「Windows® 7 の64ビット版、日本語版」で親指シフトの利用が可能になり、状況は大幅に改善された。しかし、正式なドライバとソフトウェアのアップデートはさらに翌2012年3月まで待つこととなった。親指シフトの特徴である「親指と他の指の同時打鍵により一つのキーを3通りに活用する」という考え方は、日本語以外にも応用の可能性がある。世界で使用されている言語の表記方法はさまざまで、例えば文字の数も英語と同じ程度から漢字のように数千〜数万に及ぶようなものまで多様である。このため、もともと英語の入力のために作られているQWERTYキーボードを英語以外の言語の入力に使おうとすると何らかの工夫が必要となる。例えば、(1) 日本語におけるローマ字入力のように発音のアルファベット表記に沿った形で入力する方法や、(2) 日本語におけるかな入力のように文字あるいは文字の構成要素を適宜キーの上に配置する方法等がある。いずれの場合もある意味で「間に合わせ」のやり方にならざるを得ないところがあり、特に (1) については、アルファベットの出現の頻度や続き具合がさまざまで、QWERTY配列が適切なものになることは保証されない。また、(2) については、文字の数がアルファベットに比べて多いためにタッチタイプがし易いホームポジションとその上下を含む計30のキーに納まりきらない場合が多いこと等の問題が起きることがある。親指シフトはこうした問題の解決に役立つ可能性がある。すなわち、(1) タッチタイプがし易い30キーに小指シフトによる活用を加えても60文字なのが90文字にまで拡大する、(2) 親指によるシフトに例えば声調など、言語固有の特徴を付与することにより習得が容易になる、等の利点が考えられる。親指シフトは当初、日本語のワープロ専用機という他への移植がしにくいプラットフォームに採用されたこともあり、日本語以外への実装は行われていない。理論的なモデルについては、いくつかの例がある。富士通の菅野じん等による特許が、中国語、ハングル、ベトナム語、ビルマ語、チベット語、イ語についてある。また、横浜国立大学の村田忠禧は中国語について別の提案をしている。これらのモデルには、すでに述べた利点が織り込まれていることが分かる。例えば、ベトナム語やイ語においては、親指によるシフトが母音の声調を区別するのに使用されている。また、村田案の中国語においてはクロスシフト(文字キーと反対側の親指によるシフト)に特別な漢字を割り当てている。これらに加え、親指シフトに限ったことではないが、ソフトウェア的制御の活用により、こうした言語における入力方法を容易にすることが可能になる。例えばハングルの入力においてはホームポジションのキーに子音と母音を共通して割り当てているが、これは入力の順番でどちらを入力しているかをコンピューターが判断するというやり方を採用している。また、チベット語では、入力に対する結果をユーザーが選択するやり方を採用している。親指シフト専用のキーボードを使用できない、あるいは使用したくない場合は、キーボードの論理配列を変更する配列エミュレータが必要となる。OSレベルで論理配列を変更すれば配列エミュレータを常駐させる必要が無くソフトウェアの相性問題も発生しないが、親指シフトは2種類のシフトを使い分ける必要があるため、キーボード上のキーが発行するスキャンコードと論理配列の対応を変更するだけでは実現できず、配列エミュレータやインプットメソッドとの併用が必須となる。キー配列を変更するためのソフトウェアがエミュレータと呼ばれているのはなど、歴史的な経緯のためである。専用の親指シフトキーボードによる親指シフト規格の文字入力と、エミュレータによる親指シフト規格の文字入力には、以下のような違いがある。PS/2接続の親指シフト専用キーボードには、親指シフトキーのためのキーコードを出力する専用の親指シフトキーが備わっている。これに対し、USB接続の親指シフトキーボードや一般のJISキーボードには、左右の親指シフトキーに対応するキーコードを割り振ることが可能な独立したキーは備わっていない。そのため、親指シフトキーの機能を実現するためには、既存のキーのいずれかに、そのキーの本来の機能に重複して、親指シフトキーの機能を割り当てる場合がある。その割り当てが行なわれると、親指シフトキーの機能を割り当てられたキー(代替キー)は、文字キーと同時打鍵された場合に親指シフトキーの機能を発揮し、単独で打鍵された場合のみ本来の動作を行なう、という代替キーの動作切り替えが行なわれる。ちなみに、この動作切り替えに対しては、親指シフト専用キーボードから移行したユーザーにとっても習熟が必要となることがある。つまり、親指シフト規格に習熟していても動作切り替えに未習熟であると、代替キーを親指シフトキーとして打ったつもりであるのに、代替キーの本来の機能として働いてしまったり、その逆といった使用者の意図と動作結果との間に齟齬を生じさせる。もっとも、動作切り替えに習熟すれば、実際の使用感は専用キーボードと変わらなくなってくると感じるユーザーも多い。もともと片手打ちなど正規の指使いでない使用者にとっても、専用キーボードの方が融通がきくことが多い。なお例外的に、無変換キーをEnterキーで・変換キーをSpaceキーで代替する方法に慣れていれば、動作切り替えへの未習熟が実質的な影響を及ぼさないこともある。「無変換キーを左親指シフト専用キー」とし、「変換キーを右親指シフト専用キー」として使うことにすれば、動作切り替えが行なわれないためである。JISキーボードを使用する場合は、変換/無変換キーまたはスペースキーを親指シフトキーとして使用することが多い。実際の製品としては1991年のオアシスポケットから採用され始めた。2008年以降の機種では、デスクトップ・モバイル・ノートの種別を問わず、PS/2接続のキーボードを除いて全てこの仕様でリリースされている。(#NICOLA規格参照)ちなみに、専用の親指シフトキーボードでも、変換/無変換キーに親指シフトキーの機能を重複割り当てすることを、NICOLA規格では認めている。親指シフトキーボードを使う場合を除くと、既存のキーを親指シフトキーとして使わなければならないため、親指シフトキーとして使用するキーが親指の直下になるとは限らず、操作にストレスを感じる結果となることがある。そのため、ソフトウェアエミュレーションで快適に親指シフト規格での入力を行うには、同じJISキーボードでも親指シフトキーとして使用するキーが親指の直下に位置する、USB接続の親指シフトキーボードに似た形態のものを用いることが好ましいとされ、こういったキーボードが親指シフト規格の愛好家から「親指シフト規格向けのJISキーボード」として語られることがある。環境によっては他のキーに親指シフトキーの機能を重複割り当てする場合、誤判定が発生することがある。OASYSの親指シフトキーボードでは、親指キーを先に押した場合はどんなにタイミングがずれても許容された(前置シフト)。文字キーのほうが一瞬早かった場合は数百ミリ秒のズレを許容する。エミュレータ(後述)では親指キー・文字キーのどちらが一瞬早かった場合でも数百ミリ秒のズレを許容する。多くのエミュレータはこのタイミングを細かく調整したり、前置シフトの有無を設定できる。実機ではキートップに親指シフト規格の仮名が刻印されているが、エミュレータではキートップに親指シフト規格の仮名が刻印もしくは表示されていないキーボード(いわゆるJISキーボードなど)を親指シフト規格化して使用することが多い。この場合、ステッカーなどを貼り付けてNICOLA規格刻印を再現しないかぎりキーボードの刻印を見ながら文字入力を行うことが不可能であり、タッチタイプでの入力が前提となる。この事はサイトメソッド(いわゆる一本指打法)が使えないという欠点にうるが、一方では盤面を見る悪習がつかないという利点とも言える。かつては「OASYSの挙動を真似る(エミュレートする)」ために、NICOLA規格と親指シフト規格のみをサポートするエミュレータが多かった。その一方で、NICOLA規格とは異なる入力法を再現するために設計されてきた「自作定義対応」のエミュレータも開発されてきた。現在では後者ほど活発にアップデートされている。個人が作成し、フリーウェアまたはシェアウェアとして配布しているものが多い。

出典:wikipedia

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