ヤン=ミルズ理論(-りろん、)は、1954年に楊振寧とロバート・ミルズによって提唱された非可換ゲージ場の理論のことである。なお、その少し前にヴォルフガング・パウリと内山龍雄も同理論を完成していたと言われているが、様々な事情により発表が遅れ、先取権はヤン=ミルズにあるとされる。この理論は元々、ワイルらによって研究が進められていた可換対称性に基づくゲージ理論を、非可換対称性にまで発展させた理論である。非可換ゲージ理論の代表的なものであり、他の非可換ゲージ理論としてはチャーン=サイモンズ理論などがある。この理論は最初、陽子と中性子のアイソスピンSU(2)対称性に着目して構築された模型である。これ自体は実験と合わなかったが、現在でも自発的に破れた弱アイソスピンとハイパーチャージのSU(2)×U(1)対称性に受け継がれているといえる(ワインバーグ=サラム理論)。このように対称性が破れる模型もヤン=ミルズ理論に含む場合もある。現在の典型的なヤン=ミルズ理論はカラーSU(3)対称性に基づく量子色力学である。また、検証されていない理論として、SU(5)やSO(10)対称性に基づく大統一理論などがある。超対称性を持つように拡張される場合もあり、超対称ヤン=ミルズ理論(、SYM)と呼ばれる。各種超対称性理論の基礎として、また超弦理論との関係などから、現在盛んに研究されている。理論模型としては、ゲージ場だけで物質場を含まない模型は純粋なヤン=ミルズ理論()と呼ばれる。また、現実に(仮に近似的だとしても)ヤン=ミルズ理論が存在する以上、現実を説明する素粒子仮説は、適当な状況設定の下でヤン=ミルズ理論を再現するように作られる事が多い。ヤン=ミルズ理論を内包している理論に、カルツァ=クライン理論や超弦理論がある。ヤン=ミルズ理論は、非可換リー群をゲージ対称性に持つゲージ理論である。パラメータ formula_1 で特徴付けられるリー群を考える。ここで、T はリー群の生成子である。群の非可換性を反映して生成子のリー代数はとなる。f は群の構造定数である。局所化されたパラメータ formula_2 で特徴付けられるゲージ変換の下で、リー群の表現の添え字 i をもつ場 formula_3 はと変換される。パラメータの一次を考えるととなる。ここで生成子 formula_4 は、ゲージ変換の下での場 formula_3 の属する表現での行列表現である。ゲージ変換の下での場の変換性を決める生成子の表現はチャージと呼ばれる。gは理論の結合定数で、ゲージ結合定数と呼ばれる。この理論の大きな特徴として、共変微分やヤン=ミルズ項に含まれる全ての結合定数が等しい事が挙げられる(結合定数の普遍性)。この普遍性は標準模型においても検証されており、素粒子物理がゲージ理論で記述される事の強い傍証となっている。ヤン=ミルズ理論において、ラグランジアンに含まれる場の微分 formula_6 は共変微分へと置き換えられる。ここで formula_7 はゲージ場である。ゲージ場はゲージ変換の下でパラメータの一次でと変換される。従って共変微分はと変換し、場と同じ変換性をもつ。これにより、様々な場からゲージ対称性を満足する項を作る事が出来る。種々の場はゲージ場と共変微分を通してのみ相互作用をする。相互作用の形はゲージ変換の下での変換性で決まり、このような相互作用の形は最小結合()の理論と呼ばれる。ヤン=ミルズ理論では、ラグランジアンにヤン=ミルズ項(各添え字について和を取る)を持つ。 F はゲージ場の強度()である。非自明な交換関係に伴って、構造定数に関係する項が現れるのが特徴である。繰り込み群の考え方から、着目するエネルギースケールによって結合定数が変化するという描像を得る事が出来る。formula_8 個のフレーバーを持つゲージ群の表現 formula_9 に属するフェルミオンを含むヤン=ミルズ理論の1ループベータ関数は、となる。ただし、formula_10 は formula_11 によって定義される随伴表現における2次のカシミア演算子、formula_12 は表現 formula_9 における生成子の行列表現の規格化定数 formula_14 である。量子色力学においては、formula_15 で、formula_16である。これは、フェルミオンのフレーバーが少ない場合のヤン=ミルズ理論が、高エネルギーでは相互作用が弱くなる(漸近的自由性)、と読むことが出来る。
出典:wikipedia
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