トランスワールド航空800便墜落事故(トランスワールドこうくう800びんついらくじこ)は、1996年にアメリカのトランスワールド航空(TWA)のボーイング747が空中爆発による空中分解によって墜落した航空事故である。事故当時はアトランタオリンピックを一週間後に控えていたため、それを妨害するために引き起こされた航空テロではないかとする説が真実味をもって報道されたが、その後の事故調査によって電気配線でショートした火花が燃料タンクに残留した気化ガスに引火して爆発したことが判明し、テロ説は否定された。1996年7月17日午後8時19分(アメリカ東部時間)、アメリカのニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港からフランスのパリ、シャルル・ド・ゴール国際空港を経由して、イタリアのローマ、フィウミチーノ空港行きのトランスワールド航空800便(ボーイング747-100型機:製造番号20083、機体記号N93119、1971年製造)が、離陸して12分後にニューヨーク州ロングアイランドのイースト・ハンプトン沖を上昇中に空中爆発し大西洋に墜落した。近くを飛行中のイーストウインド航空()507便の目前で起こったため、すぐに管制に連絡が入った。爆発の直後、機体底部に巨大な穴が空き、そこから亀裂が機体を一周して、2階を含む機体前方(セクション41とセクション42)が切り離されて乗客を乗せたまま落下、機体後部は操縦席を失い10数秒急上昇し続け、エンジンが停止してから降下し始めた。その後落下中に左翼が分離、海に墜落した。この事故で乗員18名、乗客212名、計230名全員が犠牲になった。当初は1週間後に開催される予定のアトランタオリンピックを狙ったテロが疑われた。事実、事件発生直後サウジアラビアの新聞社にイスラム原理主義勢力と名乗る者から「TWA機を爆破した」との犯行声明が送りつけられ、墜落したTWA機の残骸からTNT火薬の爆発による硝煙反応が検出されたとの発表もあったため、連邦捜査局(FBI)も捜査に乗り出した。また、地対空ミサイルの航跡とおぼしきものが事故機に向かって伸びていたという複数の証言があったり、それらしき写真が2枚撮影されたりした。事故機はニューヨークに到着する前、数々の航空テロの舞台となり、セキュリティーが甘いとされたギリシアのアテネにいた(実際にTWAがテロの標的になり、ハイジャックや爆発物によって墜落する事件が複数回発生した)。この日、事故機はアテネからの881便として午後4時31分に着陸していた。そのため、事故当初は海上からの攻撃、もしくは機体にしかけられた爆弾によって墜落したといわれていた。また、事故時にニューヨーク周辺で訓練を行っていたアメリカ海軍の軍艦や軍用機による誤射も疑われた。この説についてはFBIが大規模な調査を実施した。FBIは、事故時に周辺にいたすべての軍用機、軍艦、潜水艦を細かく調査した。結果は、事故時には確かに訓練を行っていたものの、最も近くで訓練していた軍艦でも800便から数十キロ離れており、撃墜が不可能な場所にいたというものであった。よってこの説は「あり得ないこと」と結論付けられた。機体の残骸は北東方向に全長7.5キロ、全幅6.5キロの範囲の海中に落下していたが、国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board, NTSB)による徹底的な残骸の回収が10ヶ月以上行われ最終的には95パーセントの機体残骸が回収された。それらの残骸は様々な分野の専門家による調査が行われ、格納庫の中に主要構造物のうち翼中央部と中央胴体部分が三次元モックアップで組み立てられるなど、アメリカの航空事故史上類を見ないほどの時間と労力と費用が投入された。結果、2000年8月23日に事故原因は飛行中に燃料タンクそばにある電気配線がショートし、その高電圧が燃料タンク監視システムに接続している電気回線を通じてタンク内に流れ、気化していた中央燃料タンク内の燃料に引火し爆発したと断定された。また、「撃墜の裏付け」とされた2枚の写真のうち、1枚は800便とは違う方向に飛行する別機、もう1枚はレンズについた汚れである事が判明した。事故調査報告書によれば、事故当時中央燃料タンクには13,000ガロンの容量のうち50ガロンしか入っておらず、燃料が気化しやすい状況にあった。そのうえ事故機はパリへの出発は定刻午後7時00分であったが大幅に出発が遅れていた。その間、真夏であったためエアコンをフル稼働していたが、この空調装置が中央燃料タンクの真下にあったために、タンク内は燃料が暖められ気化し、空気と混合し燃焼可能な状態になっていた。このままでは発火源がないので着火しないが、電気回線のショートが引き金を引いたと推定された。燃料測定器のプローブに外部のショートで生じた過大な電圧が流れ、タンク内の気化した燃料を発火させたとされた。事故機は製造後25年を経た経年機であり、電気配線の腐食がショートの直接の原因とされた。そのため、メーカーに対し事故再発防止策として、タンクの改修やメンテナンスの強化が答申された。サウジアラビアの新聞社に送りつけられた犯行声明はいたずらの可能性が高いとされている。TWA機残骸から検出されたTNT火薬の硝煙反応については、当該の事故機で発生の3日前に行われた、爆発物捜索訓練に使用され、実際に機内にTNT火薬を仕掛けた際付着した残留物とされている。この事故の原因については、直前にレーダー上で同機に向かう飛行物体が確認されたこともあり、アメリカに敵対しているイスラム過激派によるテロのほか、アメリカ海軍の原子力潜水艦によるミサイル誤射説や、アラスカの軍事施設ハープの実験説など諸説が唱えられていたが、いずれも陰謀論の類であるといえる。爆発物が機内で炸裂した時に残されるであろう金属片といった証拠が、残骸から全く発見されなかったためである。なおハープとは大出力の高周波を電離層に照射する実験であったが、高周波によっていかにして数千キロ離れた場所を飛んでいる航空機が墜落するかの合理的な説明は存在しない。地対空ミサイルで撃墜された説の反論として、「現在の地対空ミサイルは熱感知誘導システムを持っているため、旅客機を狙った場合には主翼のエンジン、もしくは機体尾部の補助動力排気口にミサイルが命中しているはずだ」とされている。また対空ミサイルには、熱感知型のものの他にレーダーにより目標に誘導されるものもあるが、アメリカ軍により誤射されたとするなら、アメリカ軍の装備しているレーダー誘導式の対空ミサイルは艦船発射型、地上発射型それに航空機発射型ともにどれも大-中型のミサイルであるために機体の破壊状況と合致しないこと、また、対空ミサイルは基本的に「近接信管」という、目標を直撃せずに至近距離で炸裂してその破片により目標を破壊する方式の弾頭を装備しているため、なおのこと当該機のような破壊-墜落の状況になるとは考えられない。さらに、アメリカ海軍の装備する潜水艦は艦対空ミサイルを装備していない(アメリカ海軍以外でも対空ミサイルを装備している潜水艦はごく限られた艦しかない)ため、800便を撃墜できるはずがなく、「アメリカ海軍の原子力潜水艦によるミサイル誤射説」は「陰謀論」以外のなにものでもないと言える。またNTSBが結論した原因とは別の要因(たとえば隕石の衝突)で墜落したと主張するサイトがアメリカにはあるという。これはアメリカ北東部で多くの流星が観測されていたためであるが、報告書によれば航空機に隕石が衝突する確率を「59000年から77000年に1回」としており、可能性は極めて小さいとしている。2013年に本件を担当したNTSBの元調査官が、「調査報告書にまとめられた事故原因は嘘であり、政府によるもみ消しが図られた」と証言した事故後、トランスワールド航空は被害を最小限に抑えようと、トランスワールド航空の副社長は責任はないはずだと述べた。その後、事故前から経営不振に陥っていたトランスワールド航空は事故の影響でますます経営が悪化し、2001年春にアメリカン航空に吸収合併され消滅した。
出典:wikipedia
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