『BLACK BLOOD BROTHERS』(ブラック・ブラッド・ブラザーズ)は、あざの耕平による日本のライトノベル作品。および、それを原作とするメディアミックス作品群。本項では主題としてライトノベル作品を扱う。富士見ファンタジア文庫(富士見書房)より、2004年7月16日から2009年5月20日にかけて全11巻が刊行された。また、それと並行する形で『月刊ドラゴンマガジン』(現『ドラゴンマガジン』)にて、2004年5月号から2008年9月号にかけて不定期で短編が連載され、それらをまとめた短編集が同レーベルより全6巻出版された。これらの挿絵、口絵、カバーイラストなどのイラストはイラストレーターの草河遊也が担当した。吸血鬼を題材とした作品。題名の「ブラック・ブラッド」とは、物語中における吸血鬼を指す語句で、吸血鬼の兄弟が主人公である。「吸血鬼と人間が密かに共存する、日本の架空の都市『特区』」を主な舞台に、特区に住む吸血鬼と人間に敵対する吸血鬼の一族との戦いを軸にしたストーリーが展開され、その中で吸血鬼と人間と言う「異なる価値観を持つ種族」の係わり合いやそれぞれのあり方、絆をテーマにしたドラマを描いている。また、人間離れした身体能力を持つ吸血鬼たちが剣術や魔術を駆使して戦い合う異能力バトルの要素を持ち合わせる。2006年にテレビアニメ化され、2007年には公式のアンソロジーコミックが出版されるなどのメディアミックス展開がされている。本作に登場する吸血鬼は「血統によって異なる特性や宿命を持ち、それ故に血や血統を何よりも重んじる」と言う本作独特の概念を持ち、個人個人の個性や精神を尊重する人間とは対照的な種族として描かれている。日光を浴びると灰になる、などの一般的な吸血鬼のイメージは、本作の物語の中では「吸血鬼の実在が発覚する以前に形成された誤ったイメージ」として扱われている。例として、人間が吸血鬼になるのは「吸血鬼に血を吸われた時」ではなく「吸血鬼の血を飲んだ時」となっており(吸血鬼の力の源である血を体の中に取り込むことでその力を得る、と言う理屈である)、こうした独自の設定から、血統の特性として「血を吸った相手を吸血鬼に変える=生きている限り際限なく吸血鬼を増やす」「ほかの血統の吸血鬼も自分と同じ血統に染める」と言う能力を持つ「九龍の血統」(クーロン・チャイルド)と呼ばれる吸血鬼の血統が、異端の存在としてストーリー上の敵役となっている。本作のストーリーは「九龍(クーロン)ショック」と言う、西暦1997年に香港で起きたとされる架空の事件を前提として描かれている。その内容は「香港で誕生した九龍の血統が、その力によって短期間で爆発的に増殖して人間を襲うようになり、それまで人間にとって架空の存在とされてきた吸血鬼の実在が明らかになった」と言うもので、後に香港聖戦と呼ばれる人間と(九龍の血統の)吸血鬼の戦争に発展した。この戦争は人間側の勝利に終わったが、香港は修復不可能な廃墟と化し、香港を拠点としていた当時の国際経済は大打撃を被った。こうした戦争の経緯と結末、一般的に浸透しているモンスターとしての吸血鬼のイメージから、本編のストーリーが開始される2007年の時代には世界中で吸血鬼を排斥する気風が高まっている。一方、香港聖戦は非公式ながら「人間と吸血鬼が史上初めて、組織的に協力して戦った戦争」でもあり、人間と共に九龍の血統の吸血鬼と戦った吸血鬼も少なからず存在した。そうした人間と吸血鬼が、横浜沖の人工島に住む人間達と協力して成長させてきたのが、物語の主な舞台となる架空の都市・経済特別解放区、通称「特区」である。こうした経緯から、特区は表向きには香港に変わる国際的な経済都市として、その裏では密かに吸血鬼と人間が共存する吸血鬼の大都市として存在している。また、特区には香港聖戦で死亡した九龍の血統の始祖、通称「九龍王」の遺灰が秘匿されており、九龍王の復活を目論む九龍の血統の生き残りに狙われている。主人公は望月ジロー、望月コタロウの、「賢者イヴ」と呼ばれる血統に属する吸血鬼の兄弟と、特区で吸血鬼と人間の間のトラブルを調停する調停員(コンプロマイザー)の少女・葛城ミミコの3人。コタロウは賢者イヴの血統の始祖アリス・イヴが転生した姿で、アリスは九龍ショックの折、ジローに自らの血と記憶を預けて死亡した。ジローはやがてアリスから預かった血と記憶をコタロウに返して消滅する宿命を背負っており、自身が消えた後にコタロウを支えてくれる人間の友人を作るために特区を訪れる。その道中で2人はミミコと出会い、彼女の護衛として特区に住む事になる。敵役となるのは九龍の血統の女吸血鬼カサンドラ・ジル・ウォーロック(通称カーサ)を筆頭とする、9人の九龍の血統の姉弟。カーサは血を重んじる吸血鬼社会の中では忌むべき存在である混血児という出自の持ち主で、九龍ショックの折には最も早く九龍の血統に染まった裏切り者とされている。その一方で、九龍の血統に染まる以前はジローやアリスと共に世界中を旅した仲であり、敵対関係になった後もジローとは互いに単なる敵意とは異なる複雑な感情を抱いている。この他、特区に住む吸血鬼達の同盟組織「協定血族」の盟主であるケイン・ウォーロックと大吸血鬼セイ、特区ではセイに次ぐ強力な力を持つアウトロー的な吸血鬼ゼルマン・クロック、ゼルマンに心酔する人間の女性・白峰サユカ、調停員を纏め上げ事実上特区を牛耳る秘密結社「オーダー・コフィン・カンパニー」(通称カンパニー)の会長・尾根崎ミタカ、ジローの旧友でありミミコの上司である調停員・陣内ショウゴらを中心にストーリーは展開していく。本編のストーリーは、吸血鬼と人間の共存の象徴である都市「特区」を巡る戦いを軸に進行する。九龍王復活を狙う九龍の血統の魔手が特区に迫る中で、ジローとコタロウの兄弟の絆、やがて消滅する宿命を受け入れながら互いに惹かれ合うジローとミミコの絆、カンパニーと協定血族の絆や確執、世界中から忌み嫌われ敵視される九龍の血統の家族としての絆などを通じて、吸血鬼と人間、あるいは吸血鬼同士の絆や吸血鬼の存在意義などについて描いている。一方、短編では調停員として働くミミコの日常を中心に特区の日常を描いており、概ねシリアスな雰囲気で進行する本編とは対照的なコメディタッチのエピソードもある。短編集で書き下ろされた番外編「BLACK BLOOD CHRONICLE」シリーズでは、九龍の血統に染まる以前のカーサがジローやアリスと共に世界中を旅していた頃のエピソードが描かれており、これらは特区だけでなくシンガポールやフランスなどの外国も舞台となる本編後半の伏線にもなっている。本編はストーリーの区切りごとに大きく3部構成に分けられており、1巻から3巻までが第1部、過去のエピソードである4巻を飛ばし、5巻から7巻までが第2部、8巻から11巻までが第3部となっている。ストーリー上では第1部と第2部の間には1年、5巻と6間の間には半年の時間的空白があり、短編のエピソードではこの間に起きた出来事が描かれている。本作において吸血鬼は、人間と同じほどに古い歴史を持つ「実在の生物」である。彼らは自らの存在を人間達から隠匿し、人間社会の裏で吸血鬼社会と呼んで差し支えの無いコミュニティーを築き上げ生きている。また、たびたび人間社会の支配階層に干渉し、人間社会と吸血鬼社会の均衡を保つべく働きかけている。九龍ショック以降も、多少の変動はあったものの、自らの存在を人間から隠すと言う基本的なスタンスは変わっていない。一方、人間にとって長らく架空の存在とされてきたことで、世界各地には架空の存在としての吸血鬼の伝承が数多く存在する。伝承の中の吸血鬼像には吸血鬼の実態と異なる点が多々あるが、九龍ショック以後も吸血鬼の実態に関する情報開示がほとんど行われておらず、一般人にとっての吸血鬼像は伝承の中のそれである。全ての吸血鬼はもとは人間であり、血を吸うための牙を持つ以外、外見は人間とほとんど変わらない。しかし、身体能力は人間を遥かに凌駕し、数々の魔術的な特殊能力や、不可思議な性質、弱点を持つ。また、どれほどの年月を経ても肉体は発育も老衰もしない。肉体が成長しないことで精神も成熟せず、どれほど長生きした吸血鬼も外見に相応の精神年齢を持つ。人間同様に高度な知能と理性を有するが、その一方で野生の獣のような獣性も併せ持ち、自らの食料、または下等生物として種族としての人間を見下す傾向がある。一方、長い歳月を生きる、精神が成長しないなどの特性から変化を嫌う保守的な性格の者が多く、その不死性ゆえに生きることへの執着がなくなり破滅願望を抱く者も少なくない。不老ではあるが不死ではなく、死んだ吸血鬼は肉体が灰になる。後述のシンガポール協定により、吸血鬼は「ブラック・ブラッド」と呼称を統一され、それに対する場合の人間を「レッド・ブラッド」と呼ぶように定められている。この呼称は、元来は吸血鬼の血を指す言葉であるが、吸血鬼の血が黒色をしているわけでは無い(人間と同じく赤い)。吸血鬼の血には魔力が宿っており、吸血鬼が持つ様々な能力や特性は全て血に宿る魔力に起因するものである。また、吸血鬼はその「血統」によって血の性質が異なるため、吸血鬼全般に共通する特性もあれば、血統によって微妙に、あるいは全く異なる特性を持っている場合もある。吸血鬼にとって自らの血は、自身の吸血鬼としての特性を司る神聖なもので、社会的立場や精神性よりも血や血統を重視する傾向がある。また、血統を同じくする吸血鬼は自身の家族であり分身であると考える。こうした考え、傾向は歳を重ねた吸血鬼ほど強くなる。また、吸血鬼の力は、吸血鬼に「転化」してからの年月に比例して強大になる性質があり、血や血統と同じく生きた歳月の長さにも重きを置く。特に転化後100年以上経過した吸血鬼は「古血(オールド・ブラッド)」と呼ばれ、他の吸血鬼とは一線を画す強力な存在として認識される。一方、転化してからの年月が浅い者、特に転化1年以内の者は「転びたて(アンダー・イヤー)」と呼ばれ若輩者扱いされる。この時期の吸血鬼は手に入れたばかりの人間離れした力に酔って思慮が浅くなる者が多く、特区内でのトラブルはアンダー・イヤーのものが多い。人間が吸血鬼になる現象を「転化」と呼ぶ。一般的に知られる「吸血鬼に血を吸われた者が吸血鬼になる」というのは(一部の例外を除き)誤りで、吸血鬼の血が体内に入る、すなわち「吸血鬼の血を吸う」ことで人間は吸血鬼に転化する。吸血鬼の血が体内に入り込むと、その人間の血が吸血鬼の血に染まり、体内に入った血の持ち主と同じ血統の吸血鬼となる。吸血鬼に転化するとその時点で肉体の成長が止まり、以後は転化して時点での年齢で生き続けることになる。従って、吸血鬼には老人もいれば幼児もいる。吸血鬼にとって人間の血を吸うことは生命維持の必須条件であり、そのために人間の血を求める。多少の間吸血を行わずとも命に係わるようなことは無いが、血を吸わないでいると吸血鬼としてのあらゆる力が徐々に衰えていく。血を吸うと力が活性化して血を吸う前よりも明らかに強力な力を発揮でき、疲労や負傷も回復する。人間の血は吸血鬼にとって美味なもので、特に処女の血は極上の味らしい。吸血鬼同士で血を吸い合っても力は活性化するが、普通、吸血鬼は本能として人間の血を求め、吸血鬼が吸血鬼の血を吸うことは滅多に無い。一方、人間は吸血鬼に血を吸われることで性交を上回る強い性的快楽を感じるが、それを除けば特に悪影響は無い。血を吸われ過ぎれば貧血を起こしたり失血死したりすることもあるが、余程血に飢えていなければ人間が死ぬまで血を吸うような吸血鬼はほとんどいない。このため、対象の人間に危害を加えない限り、特区内では吸血行動が黙認されている。太陽、十字架、ニンニクなど、吸血鬼の弱点とされているものを総称して「抗吸血鬼材(アンチ・ブラック・ブラッド・マテリアル、ABBM)」と呼ぶ。実際には吸血鬼の弱点は血統により異なるため、それら全てがあらゆる吸血鬼の弱点となりうるわけでは無く、どの抗吸血鬼材にどの程度弱いかも血統により異なるが、いずれの血統もほぼ必ず何らかの抗吸血鬼材を弱点とし、吸血鬼としての弱点を全く持たない血統はほとんど存在しない。その抗吸血鬼材にどの程度弱いかにもよるが、自身が弱点とする抗吸血鬼材に触れた吸血鬼は体が焼けて白煙を上げる、体が痺れて昏倒するなどの反応を見せる。吸血鬼の力の源である血の魔力を滅却する銀と、魔力が宿る血を物理的に灰に変える火は、全ての吸血鬼に対して致命的な弱点となりうる。特に銀は服の上から触れただけでも焼け爛れたような傷を負い、激痛を伴う。また、太陽光や流水は程度の差はあれど多くの血統が苦手とし、ほとんどの吸血鬼は日中の外出を嫌い、水上や水中では魔術の効力が落ちる。一方、十字架や聖書と言った信仰心に訴えかけるような抗吸血鬼材を苦手とする血統はほとんど存在しない。吸血鬼は様々な魔術的な力を使うが、前述通り、血の魔力に依存する力であるため、血統によって使える術と使えない術、得手不得手などがある。吸血鬼の血統の中にはその特性として魔術に長じた血統が存在し、そういった血統に属する吸血鬼は得てして多彩な魔術や応用技術を扱うことができる。数ある魔術の中で最もポピュラーなのは、視線を介して相手の精神や記憶に干渉する「視経侵攻(アイ・レイド)」と、いわゆる念力である「力場思念(ハイド・ハンド)」の2つ。この2つはあらゆる魔術の根幹とされる技術で、ある程度年月を重ねた吸血鬼であれば大抵の者が使用でき、血統や個々人の技能によって様々な応用技術が存在する。このほか、「思念交感(トーク・パス)」(念話とも)と呼ばれるいわゆるテレパシーも多くの吸血鬼が使用できるポピュラーな術。一方、吸血鬼が持つ特殊能力として広く知られる変身能力は、実際には高等魔術に分類され一部の血統の吸血鬼しか使えない。獣に変身する術を「獣化(ファング・アップ)」、他人に変身する術を「化身(メタモーフィシス)」、霧に変身する術を「霧化(フォグ・ラン)」と呼び、特に霧化は「吸血鬼の特殊能力として広く知られる力」のなかでは最も高等な魔術とされる。一部の血統にしか使えない術としては、変身能力の他に「視経発火(アイ・イグナイト)」と呼ばれるパイロキネシスが有名。視線の先に炎を生み出す術で、吸血鬼の弱点である火を操る術であるため使える血統が特に限られる。これ以外にも、各々の血統が独自に編み出した魔術は多数存在する。また、単純に血の魔力を用いた魔術に限らず、月光や大地の魔力を利用した術や、それらの魔力を元に生み出された「魔具」を用いて行われる魔術なども存在し、魔術のバリエーションは非常に多岐に渡る。主要な術はシンガポール協定により名称が制定されているが、全ての魔術は網羅し切れていない。吸血鬼の血統とは、人間や他の生物の様な親子間の血の繋がりではなく、転化の繋がりを指す。吸血鬼は自身を転化させた吸血鬼と同じ血統に属し、自身を転化させた吸血鬼は「闇の父(マスター)」、または「闇の母(ナイト・マム)」と呼ばれる親に等しい存在である。転化の際に親となった吸血鬼の特性や弱点が遺伝するため、同じ血統に属する吸血鬼は基本的に同じ特性、弱点を有する。全ての血統にはその血統の大元となった「始祖」が存在し、各々の血統は普通、その血統の始祖の名で呼ばれる。吸血鬼の血統は始祖の数だけ存在するが、大陸系血統、欧州系血統、それ以外の血統の3種類に大別して識別されることが多く、それぞれ「蛇」「犬」「闇」と通称される。同じ血統に属する吸血鬼の集まりを「血族」と呼び、吸血鬼の多くは血族単位で生活する。多くの吸血鬼たちは自らの血族の掟に従って生活し、他の血族と干渉しあうことを嫌う閉鎖的な生活習慣が根付いている。吸血鬼は血を与えるだけでいくらでも血族を増やせるが、吸血鬼はみな血を神聖視し、自身の血統に絶大な誇りを持っているため、みだりに血族を増やすような真似はしない。多くの場合は転化した時にその血統の血族に加わるが、血族に属さない者もいる。また、行きずりで転化してしまい、自身がどの血統か分からない者も存在し、そうした吸血鬼は「断絶血統(ブラッド・オーファン)」と呼ばれ血を重んずる血族社会では侮蔑の対象となる。ひとつの血統の大元となった吸血鬼を「始祖(ソース・ブラッド)」と呼ぶ。他の吸血鬼を凌ぐ強力な力を有し、転化の世代が始祖に近い吸血鬼はそうでない吸血鬼よりも強い力を持つ。特に始祖から直接血を与えられた者は「直系」、直系から血を与えられた者は「三世」と呼ばれ、血統の中でも特に強力な力を持つ。また、始祖は吸血鬼にとって(たとえ異なる血統の始祖でも)神に等しい存在であり、生きた年月や力の強弱とは違った意味で次元の違う存在。始祖の中には死んだ後、自身の遺灰から転生する者がいるが、これは始祖のみの特性であり、転化によって遺伝はしない。始祖は誰かに転化させられるのではなく、ある日突然、人間から始祖へと転化する。本編中、始祖とは、ある人間が抱える「問い」や「願い」が世界の「脈動」と合致した瞬間、本人の意思に関わらず吸血鬼として変化したものであると語られる。始祖が持つ能力や特性、宿命などは始祖の「問い」や「願い」が具現化したものであり、これらの「問い」や「願い」が各々で異なるため、生まれた始祖は1人として同じ性質を持つ者にはならない。ゆえに、始祖から派生した全ての吸血鬼は、血統により異なる特性を持つ。吸血鬼の血統といえば転化の繋がりを指し、吸血鬼は転化により同族を増やすが、通常の生殖も不可能ではなく、稀に人間との間に子供を作ることがある。吸血鬼と人間の混血は「ダンピール」と呼ばれ、吸血鬼にはおよばないものの高い身体能力と魔力を持つが、人間と同じように歳を取り、片目だけが吸血鬼の様な縦長の瞳孔をしている。人間からは吸血鬼同様に恐れられ、血を重んじる吸血鬼からは混血として忌み嫌われる境遇にある。個体として不老である吸血鬼は生殖の必要がなく、ゆえに生殖に向かない。特に母体が吸血鬼である場合、母子共に健康な状態で出産を終えることは稀である。このため、吸血鬼と人間のカップルは然程珍しく無いが、ダンピールの数は極めて少ない。また、吸血鬼と人間のカップルの場合、子供ができる前に吸血鬼が人間を転化させてしまうことが多いのもダンピールが少ない要因の1つではある。なお、吸血鬼同士の間で、通常の生殖によって子供が作られることは全くといっていいほどない。作中に登場する吸血鬼の血統。吸血鬼に関しては#本作における吸血鬼を参照。1997年に九龍半島で起きた、始祖「アダム・王」とその血族「九龍の血統」が暴走したとされる事件。実際は絶対的なマイノリティである九龍の血統が自らの生存権を賭けた戦いであった。短期間で爆発的に増殖した九龍の血統は人間社会に対し牙をむき、後に「香港聖戦」と呼ばれる戦争へと発展した。これにより、それまで(表向きは)伝説上の存在とされてきた「吸血鬼」の存在が公のものとなり、世界レベルの混乱が巻き起こった。また、戦場と化した香港は封鎖され、終戦の後も復興が難しく、世界流通は大打撃を被った。九龍ショック以後、世界各地で吸血鬼狩りが横行し、これによって弱体化してしまった血族も少なくない。終戦から数年の後に「吸血鬼はほぼ根絶された」との声明が世界各国でなされたが、その裏では人間・吸血鬼間の協定、そして「特区」設立などが秘密裏に行われた。正式名称「経済特別解放区」。横浜市沖の海上に浮かぶ人工島に建設された都市。九龍ショック後、人間と、香港聖戦で人間と共に戦った吸血鬼らが力を合わせて築き上げた、世界で唯一の人間と吸血鬼が共存している場所であるが、人々は(特区に暮らすものも含め)ほとんどがその事実を知らない。吸血鬼たちの間では有名で、九龍ショック以降、世界中で盛んに行われた吸血鬼狩りによって故郷を追われ、特区の保護を目指して密航する吸血鬼も後を絶たない。共存に際して起きるトラブルを解決するために設けられたのが「オーダー・コフィン・カンパニー」である。元々は第二次世界大戦終結直後に開発された埋立地であり、経済戦略的国際都市を目指すことが考えられていた。しかしバブル崩壊後計画は頓挫し、そのまま放置されていたところに犯罪者や難民などが住み着き、一種の独立領的な存在となっていた。九龍ショック直後、第二の香港を探す企業群がそこに目をつけ、紆余曲折を経て地元の暴力団を前身とするオーダー・コフィン・カンパニーを中心に「特区」へと変貌を遂げた。特区内は、それぞれ趣の異なる第一地区から第十地区に区分けされている。第一地区から第五地区は九龍ショック以前からあった区域で、「旧市街区(オールド・ヤード)」と呼ばれるいわゆる下町。九龍ショック以降に新設された第六地区から第十地区は「新市街区(ニュー・ヤード)」と呼ばれる近代的な町並みである。特区は第一地区から伸びる、横浜ベイブリッジとほぼ同じ構造の吊り橋「黄昏橋(トワイライト・ブリッジ)」により、横浜市と繋がっている。これが日本本土と特区を繋ぐ唯一の陸路であり、これ以外の交通手段はほぼ海路のみ。第十地区には空港があるが、発着するのは特区内の企業の自社便が多く、一般客は少ない。第一地区の黄昏橋付近は旧市街区の中でも高層ホテルなどが立ち並ぶ比較的近代的な街並みである一方、第二地区は旧市街区の中でも特に再開発が遅れており、貧しい者達が寄り集まるスラム街になっている。カンパニーの目も行き届いていないが、逆に言えば調停員の仲介が無くとも人間と吸血鬼の関係はそれなりに上手く回っている。通称カンパニー。「人間と吸血鬼の共存」という理念の下、特区の秩序を保つために設立された組織。会長の尾根崎ミタカ、元吸血鬼ハンターの張雷考、香港聖戦で活躍した陣内ショウゴや神父をはじめとした吸血鬼のスペシャリストで構成される。特区の中枢であり、事実上特区を支配しているといえる組織。主な部署は、吸血鬼とのトラブルを交渉で解決する調停部や、吸血鬼の暴走やテロに対抗する鎮圧チーム、特区内外での情報の操作や規制、隠蔽などを行う情報部など。一般的に人間の間では(特区内を含めて)「吸血鬼はほぼ絶滅した」とされているため、表向きは「霊園管理会社」を名乗っている(実際に墓地の管理もしている)。調停部がある第五地区の事務所が窓口となっているが、本部は新市街のオフィスビル街に存在している。CEO連合(マネー・キャビネット)と呼ばれる主にイギリスの企業で構成された組合と、「マリーン・バンク」などの協定血族が運営する企業がスポンサーとして出資しており、調停や鎮圧によって収入を得ている訳では無い。通常、吸血鬼が特区で暮らすには、正式な手続きを踏まえてカンパニーと協定を交わし「協定血族」に加盟するか、すでにカンパニーと協定を結んでいる血族の保護下に入る必要がある。協定血族は多数存在するが、中でも真祖混沌とウォーロック家は二大血族と呼ばれ、その代表者であるセイとケインは全協定血族の盟主でもある。セイの住居が旧市街区に、ケインの住居が新市街区にあるため、旧市街区には大陸系の協定血族が、新市街区には欧州系の血族が多く住んでいる。一方、特区内にはカンパニー設立以前から特区に住む者や、特区に密航した者など、特区に住みながら協定血族に所属しない吸血鬼たちも多数住んでおり、そうした吸血鬼たちの一部が「夜会(カヴン)」と呼ばれる集まりに参加している。多くは人間を見下しカンパニーの理念に否定的な者が多いが、セイやケインと言った協定血族に所属する強力な吸血鬼の存在ゆえに、小規模な諍いを起こすことは多いが大胆な行動は取れないでいる。一方、夜会にもゼルマンという強力な吸血鬼が所属しているため、カンパニーも非公認の集団である夜会に対し大きな行動が取れない。九龍の血統から特区を守るため、特区は常にセイが力の大半を費やして発生させている結界に囲まれている。この結界により九龍の血統は特区に住む人間に招かれなければ特区に入ることはできない。また、仮に入ったとしても特区の外に出ることは出来ない。この結界は九龍ショックの際に九龍の血統に対する防衛、包囲の手段として確立された術法だが、正確には「招かれなければ入れない」性質を持った吸血鬼に反応する結界であり、この性質を持つ吸血鬼は九龍の血統でなくとも特区に入ることはできない。賢者イヴの血統もこの性質を持つためジローとコタロウもミミコに招かれるまで特区に入れなかった。特区には「第十一地区(イレヴン・ヤード)」と言う都市伝説があり、十の地区に区分けにされた特区の中には「十一番目の地区」が存在し、そこには「香港聖戦の遺産」が眠っていると言われている。その実態は、「カンパニー調停部事務所に隣接する墓地の地下にある納骨堂に、アダム・王の遺灰が真銀刀によって封印されている」というもの。セイやケインは遺灰の封印場所として吸血鬼にとって不都合な海上都市である特区を選び、香港に替わる都市として発展させてきた。九龍の血統が外に出られないという結界の性質も、万が一アダム・王が復活を遂げた際、特区から出さないためのものである。この事実は香港聖戦で戦った一部の吸血鬼と人間しか知らず、尾根崎をはじめとするカンパニーの上層部の人間もその実態を知らず、単なる都市伝説して認識している。九龍の血統の始祖「導主アダム」と、「直接血の繋がりを持つ」姉弟。その多くは九龍の血統の直系で、カーサやダールのように数百年以上生きてきた古血から転化した者も存在する。「姉弟の順番を分かりやすくする」という理由から、長姉カーサから末っ子ワインまで、名前の頭文字は五十音順のア段で統一されている。文庫本第1巻『兄弟上陸』に登場する、吸血鬼の難民たち。文庫本第4巻『倫敦舞曲』に登場する、ジローがまだ人間だった頃に係わりを持った人物。2006年にテレビアニメが放送された(小説の3巻までを描く全12話)。インターネットラジオ番組『こちらオーダー・コフィン・カンパニー』が番組公式サイトで2006年5月より配信中。パーソナリティは、スワン・鐘役の植田佳奈と楠ヒバリ役の高橋美佳子。サウンドトラックドラマCD『書名』、初版発行年月日、ISBNの順に記す。
出典:wikipedia
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