沖縄方言(おきなわほうげん)または沖縄語(おきなわご)、沖縄中南部方言(おきなわちゅうなんぶほうげん)は、琉球語(琉球方言)のうち、沖縄諸島中南部で話される方言(言語)の総称である。話される範囲には沖縄本島中南部と慶良間諸島・久米島・渡名喜島・粟国島・奥武島・浜比嘉島・平安座島・宮城島・伊計島が含まれる。国頭方言との境界は太平洋側ではうるま市石川と金武町屋嘉の間に、東シナ海側では恩納村恩納と谷茶の間にある。現地ではウチナーグチと呼ばれる。琉球語には沖縄方言以外に、奄美方言、八重山方言などがあり、しばしば互いに意思疎通が困難なほど言語学的に隔たりがあるため、それぞれ沖縄語、奄美語、八重山語などと一個の独立した言語とみなす立場もある。この立場の場合、これら言語を総括して琉球諸語、あるいは琉球語派と呼ぶことがある。ここでは、言語説と方言説の両意見を考慮して琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)と併記する。琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)は、さらに中部方言(首里方言・那覇方言を含む)と南部方言の2つのグループに大きく分けられている。沖縄本島北部から沖永良部島(鹿児島県)の言葉は、これとは別の方言である(国頭方言を参照のこと)。また津堅島、久高島は、地理的には沖縄諸島南部だが、ハ行p音を持つなど国頭方言的要素がある。琉球王国の時代、王府首里城のある首里に集まる按司同士で通じる共通語としてつくられたのが首里方言で、尚真の中央集権支配の間(1476年-1526年)に完成された。1534年より首里王府によって編纂された沖縄最古の歌謡集おもろさうしに琉球古語が使われており、首里方言の源流であるとされる。首里方言は王族と上流階級によって使われる公用語であったが、庶民の間ではそれぞれの土地の言葉が使われた。琉球王府の公文書や、琉歌、詩(漢文を除く)、組踊などの口承文芸、文学は、首里方言で書かれている。首里方言では、各地で失われた古い発音の区別を残しており、士族男子は訓練によって規範的な発音を身につけていた。商売人などの間の共通語としては首里方言よりも那覇方言が広く使用され、明治以降は次第に首里方言に代わって那覇方言が地域共通語の地位を占めるようになった。首里方言は士族階級の解体とともに消えていき、20世紀後半にはどの地域、どの階級においても体系的には用いられなくなった。原則的には、琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)には以下の音素が認められる。このうち/e/および/o/は短母音として現れることは少なく、多くは長母音として現れる。/N/(撥音)、/Q/(促音)は語中・語尾だけでなく、語頭にも出現する点が日本語と異なる。また母音・半母音・撥音の前で声門破裂音ʔの有無が区別される。ただし久米島方言ではʔは無くなっている。那覇市垣花、小禄、南城市奥武、津堅島等、一部の方言では無声破裂音・無声破擦音で有気音と無気喉頭化音の区別がある。他の沖縄中南部方言では区別はない。また那覇方言など一部では/d/が/r/に変化しており、/d/音素を欠いている所がある。以下に、那覇方言の拍の一覧を示す。那覇方言ではダ行がないが、他の多くの方言では/di/[di]、/de/[de]、/da/[da]、/do/[do]、/du/[du]を持つ。首里方言では、シ(ʃi)とスィ(si)、シェ(ʃe)とセ(se)、チ(tʃi)とツィ(tsi)、さらにdʒの行とdzの行の区別があった。琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)では、日本語のオ段母音がuに、エ段母音がiに対応している。そのため殆どの行で日本語のオ段とウ段、エ段とイ段は統合している。ただカ行イ段のキは一部地域を除きci(チ)に変化を起こしている。またタ行・サ行ではウ段がイ段に統合している。すなわち、日本語のスはsiとなってシ・セと統合し、日本語のツはciとなってチと統合している(テはtiとなるためチと区別がある)。これらの行ではオ段のソ、トはsu、tuとなっても、ス、ツとの区別は残っている。沖縄方言はアクセントの型(パターン)を2種類持つ二型式アクセントである。沖縄県内では宮古方言と八重山方言の一部も二型式アクセントである。九州では、長崎県南部から佐賀県中南部、熊本県の南西部、宮崎県えびの市、鹿児島県の陸地部(一型式アクセントを使用する曽於市・志布志市を除く)や甑島列島、屋久島、奄美群島の一部が二型式アクセントである。琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)では多くの古典文法の特徴が保たれている。例えば、終止形と連体形の区別や、所有格「が」(首里方言では死語)、主格「ぬ」(共通語の「の」)、さらにそのほか、主格としての「が」「ぬ」の敬体と常体での使い分けが挙げられる。琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)の動詞の語形変化は、動詞が何種類かの異なった語幹を持ち、それぞれの語幹に各種接辞が付くことで各活用形を生み出している。沖縄方言の動詞の語形変化を見るのに、まずは日本語の「書く」にあたる動詞カチュン/kacuN/、「取る」にあたる動詞トゥイン/tuiN/について、いくつかの用法を示す。以上より、「書く」の活用からはkak、kacという異なった語幹が抽出できる。また「取る」では語幹tur、tu、tuj、tuQtが抽出できる。那覇方言の動詞の活用形を整理すると、基本語幹(kak・tur)、連用語幹(kac・tu(j))、派生語幹(kac・tu)、音便語幹(kac・tuQt)の4種の語幹に、各種の語尾が付いて活用形が構成されていることが分かる。基本語幹からは未然形・命令形・条件形などが、連用語幹からは連用形・丁寧形が、派生語幹からは終止形・連体形などが、音便語幹からは接続形・過去形などが形作られる。連用語幹は基本語幹に連用形語尾(i)が付いて末尾子音が変化したものであり、派生語幹は連用形にウン(をり)が付いて変化したもの、音便語幹は連用形に「て」が付いて変化したものである。沖縄方言の動詞活用は、日本語と同じ元来の活用形だけでなく、連用形+「をり」から変化した各活用形が加わっているため、日本語よりも複雑化している。語幹は、頭語幹と語幹末尾に分けることができる。以下に、那覇方言の各種動詞の4種の語幹の一覧を示す。那覇方言の活用の種類は第1種動詞から第3種動詞までの3種に分かれ、おおまかには日本語の五段活用動詞が第1種動詞、ラ行五段動詞と上一段・下一段動詞が第2種に当たる。沖縄方言では上一段・下一段動詞はほぼラ行五段活用化している。(以下の表で○印は無を表す。語形は全て音素表記。)※第2種動詞の連用形では連用語幹の左側(○)、丁寧形では連用語幹の右側(j)を使う。※第3種動詞の連用形では連用語幹の左側(○)、丁寧形では連用語幹の右側(j、i)を使う。以上の3種のほか、ʔicuN(行く)、sinuN(死ぬ)、cuuN(来る)などの、不規則活用をする動詞がある。各語幹に様々な接辞が付いて活用形が構成される。以下に那覇方言の各活用形の語形と用法を述べる。過去進行形、過去形、完了形、継続形は、それ自体がさらに活用をして、連体形、係結形、条件形、準体形などを持つ。例えば過去(終止)形kacaN(書いた)は過去連体形kacaru(書いた…)、過去条件形kacaraa(書いたなら)のように変化する。琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)の形容詞は、語幹+「さ」に動詞アン(ある)を付けた形から成り立っている。例えば連体形の「高い」にあたるものにはtakasaruやtakasaːruなどがあるが、これは「高さある」が変化したものである。また、終止形の「高い」にあたるものにはtakasanやtakasaːnなどがあり、「高さありむ」が変化したものとみられる。このような歴史的経緯から琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)の形容詞は、ほとんど動詞と同じように活用する。連用形1だけは、語幹+クという形で成り立っていて「さ」を含まない。また規範的には、形容詞には終止形語尾がサンで終わるものとシャンで終わるものの2種類がある(それぞれ文語のク活用、シク活用に対応する)が、慣用発音ではシャンもサンに変化する。次に久米島儀間方言での例文を示す。2009年2月19日にユネスコが発表した調査結果によると、世界で約2500の言語が消滅の危機にあるとし、日本の南西諸島における諸語もその対象となった。この中で琉球語沖縄方言(琉球語派沖縄語)は、琉球語奄美方言→「奄美語」・琉球語国頭方言→「国頭語」・琉球語宮古方言→「宮古語」・琉球語八重山方言→「八重山語」・琉球語与那国方言→「与那国語」とともに、それぞれ独立した1個の言語「沖縄語」とみなされた。ユネスコの担当者は、「これらの言語が日本で方言として扱われているのは認識しているが、国際的な基準だと独立の言語と扱うのが妥当と考えた」という。これを受けて参議院議員である糸数慶子は、「ユネスコが独立した言語とした8言語は、言語なのか、方言なのか」など、7項目を「沖縄の言語に関する質問主意書」として政府に提出した。この質問に対し政府は、我が国で最も普通に使われている言語が「日本語」であり、地方で共通的に用いられる言葉が「方言」とされるとの見解を示した上で、「『言語』及び『方言』の用語は、様々な意味を有するものと承知しており、お尋ねに一概にお答えすることは困難である」とした。キリスト教信仰に基づく少数言語のための組織である国際SILが出版しているエスノローグによると、日本で使われている言語として日本語、アイヌ語、朝鮮語とともに、「中央沖縄語(Okinawan, Central)」が挙げられているが、エスノローグでは言語学者や一般の人の理解と異なる分類を載せることがあり、日本国内では、中央沖縄語の呼称は使われない。この他にも、南西諸島における言語として、喜界語・北奄美語・南奄美語・徳之島語・沖永良部語・与論語・国頭語・宮古語・八重山語・与那国語といった言語を多く挙げているがこれらの言語は、琉球語の諸方言とみなされている。また、国際SIL自体も方言であるとの意見を排除しないと表明している。2007年に沖縄周辺地域の語として沖縄島中央「ryu」、与那国島「yoi」、徳之島「tkn」など計11種がISO 639-3として言語コードに追加された。
出典:wikipedia
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