法人税(ほうじんぜい、英語:Corporate Tax)とは、法人の所得金額などを課税標準として課される税金、国税で、直接税、広義の所得税の一種。法人税の課税根拠については、私法上の議論を踏まえて、次の2つの考え方に分かれる。経済学の法人税転換の理論では、法人税は利益の減少を通じて一部を株主、賃金の低下を通じて一部を労働者、モノ・サービスの価格の上昇を通じて一部を消費者がそれぞれ負担する。法人税を負担するのは、株主・労働者・消費者などの自然人であり、組織は費用・税金を負担できないため自然人が負担するしかない。ドイツは2008年から実効税率ベースで39%弱から30%弱、イギリスは2008年から30%(法人税率)から28%、中国は2008年33%から25%に引き下げている。2013年1月現在における法人所得課税の実効税率はアメリカ・カリフォルニア州が40.75%、フランスが33.33%、ドイツが29.55%、イギリスが24.00%などとなっている。日本の法人税は主に法人税法(昭和40年法律第34号)に規定されているが、租税特別措置法や震災特例法などの特別法によって、修正を受ける。なお、法人の所得にかかる税には、地方税分である法人事業税、法人道府県民税や、地方法人特別税などがあり、これらの税の影響を受け、法人には税率が課される。(法定実効税率)これらの詳細は、各ページを参照。日本の法人税は、当初は法人に対する所得税の一種として導入され、明治32年 (1899年) の所得税法改正により新設された第一種所得(法人所得税)に由来する。昭和15年 (1940年) に法人に対する所得税が分離する形(法人税法の制定)によって成立した。高度経済成長時代における基幹税の役割を果たしていたが、バブル景気のころに所得税収に抜かれ、次第にその地位を下げつつある。しかし、1980年代からの大幅な所得税減税(約30%)や、定率減税、バブル崩壊後の景気低迷や、1990年代後半の金融危機以後の景気低迷による雇用者報酬の伸び悩みなどにより所得税収が大幅に減少1991年 :26.7兆円→2006年:14.1兆円)、2003年 からの量的金融緩和政策や、輸出面での好調から2006年には1988年以来の税収項目1位となった。2007年 の国税の税収に占める割合は、所得税に次ぎ第2位である。2008年は世界的な景気後退の影響を受け、補正予算では2位で、2009年度の予算では、消費税とほぼ同額とされている。また、2002年度からは子会社などへの利益移転や損失隠し目的の簿外債務を阻止するため、連結納税制度が導入され、グループ企業が連結での業績で法人税を納税できる制度ができた。企業グループによっては節税できるようになった。また、IT投資促進税制(IT投資減税、2005年度まで)、研究開発促進税制(研究開発減税)が整備され、企業のIT投資、研究開発へのインセンティブとなっている。法人実効税率は、2015年現在32.11%であるが、日本政府として企業の国際競争力を高めるために2016年度に20%台に引き下げ、代わりの財源として設備投資減税の規模を減らす(2016年度から費用計上できる範囲を狭める仕組みに見直す)。2016年度には、29.97%に引き下げた。法人税が課税される対象は、次の3つに区分される。法人税は法人の所得に対して課税される。商法を基礎とする企業会計では確定決算において収益と費用を決算の主要な項目とするのに対して、税法に基づいて法人税を算出する税務会計では所得と損金、益金が主な項目となる。益金は収益から益金不算入を引いて益金算入を加えたものであり、損金は費用から損金不算入を引いて損金算入を加えたものである。所得は損金より益金が大きい場合の差であり、損金より益金が小さい場合は赤字となる。ただし、益金算出においては収益に対して、また損金算出において費用に対して、それぞれ申告調整が行われ、損金算入においても所得控除が除かれ、税額も税額控除がある。担税力の問題や社会に対する影響力等を考慮して、法人規模に応じた調整を法人税、およびその周辺法によって調整している。例えば、中小企業に対しては、税率の軽課や損金算入枠の拡大、課税の繰り延べや税額控除等といった優遇的調整が租税特別措置法に於いてされている。また、法人地方税(法人道府県民税・法人事業税の外形標準課税)は法人実在説的な立場から法人規模に応じた課税を行っているので、大企業に対しては重課となっていると言える。赤字(欠損金)を出した企業の場合、その赤字を9年にわたって繰り越すことができ、利益と相殺できる。(平成20年4月1日以後に終了した事業年度)欠損金の繰越制度は多くの国で採用されており、ドイツやイギリスはこの繰越期間を無制限としている。財務省の統計を参照。法人税から消費税へのシフトにより、過去最高を記録した1988年に比べ2010年は法人税が10兆円の減収、消費税が10兆円の増収となっている。経済学者のポール・クルーグマンは「アメリカなど他の先進国の例を見ると、法人税引き下げとGDP成長率にはあまり関係がないように思える」と指摘している。経済学者の伊藤元重は「経済は複雑な体系であり、法人税率によって企業行動がどう変化し、そのことによって雇用・経済活力にどのように及ぶのか、マクロ経済全体としての思考が必要である」と指摘している。伊藤元重は「法人税に限らず他の税でも、税の全体の体系がどれだけの税収をもたらすのか、そして経済全体にどのような影響を及ぼすのかという広い視点で見る必要がある」と指摘している。伊藤は「法人税率の引き下げによって企業活動が活性化すれば、その恩恵は国民全体に広がる。法人税率の引き下げの恩恵は利益をあげている一部の大企業だけという見方は正しくない。法人税減税は企業の手元資金をより潤沢にするので、それが企業の投資資金に回るという面もある」と指摘している。伊藤は「アジアの多くの国は積極的に法人税率を引き下げている。海外からより多くの投資を引きつけたいという狙いもあるだろうが、それだけが法人税率の引き下げの理由ではない。法人税率をできるだけ低くすることが、経済活動を活性化する上では有効であり、それが経済成長に大きくプラスに働く、という見方が根底にある」と指摘している。大田弘子は「アメリカのロナルド・レーガン大統領は、1981年の第1期税制改革で、設備投資減税・減価償却のやり方を変える政策税制を導入した。1986年の第2期税制改革では、法人税率を12%引き下げた。この改革が1990年代のIT関連の新しいビジネスが興る素地となった」と指摘している。森信茂樹は「レーガン2期の税制改革によって生じたアメリカ経済の産業構造の変化が、後の経済繁栄につながったという事実がある」と指摘している。経済学者の岩田規久男は「1990年以降のグローバル経済の発展により、企業はグローバルな視点で立地を決めるようになっており、法人税は企業立地選択の大きな費用の一つになっている」「グローバル経済の下では、長期的には法人企業は法人税率が高い国から低い国に生産拠点を移動させようとする。結果、法人税率が高い国では、国内雇用の減少による賃金低下を通じて、労働者の法人税負担割合が増大する」と指摘している。伊藤元重は「法人税率を1%ポイント引き下がると、国・調査期間・分析手法によって結果にばらつきはあるが、おおむね2-4%程度の投資の拡大が見込まれるとされており、ある程度の投資誘発効果が見込まれる」と指摘している。経済学者の國枝繁樹は「法人税率を下げれば国外から資本が流入する。欧州ではアイルランド、アジアでは香港・シンガポールのような経済規模の小さな国では、そのメリットが大きい」と指摘している。一方で國枝は「日本・アメリカのように経済規模の大きな国では、GDPの規模で考えれば、税率を下げることで資本が流入し、税収が増えるということには、なかなかつながらない」と指摘している。投資活動の抑制について、経済学者の野口悠紀雄は「投資によって利益が増加すれば法人税は増加する一方で、借り入れの利子が損金算入されるため法人税は減る。結局、借り入れで投資する場合、2つの効果が相殺して法人税負担は変わらなくなる」と指摘している。国際的な企業誘致競争の1つとして、欧州域などでは法人税率の引き下げ(同時に消費税の引き上げ)競争が進んでいるが、WTOでは「有害な税の競争」だと問題を指摘しており、国際社会における枠組みについて議論されている。「法人税パラドックス」とは、実効税率を引き下げるによって、逆に法人税収は増加するという現象を指す。伊藤元重は「欧州諸国は法人税の法定税率を下げてきたが、税収は減少どころか増加傾向さえ見せている」と指摘している。伊藤元重は、欧州の法人税収の増加の要因として、 の3つを挙げている。伊藤元重は「法人税率を下げていっても、課税ベースを拡大すれば、法人税収が減ることはない。場合によっては、増える可能性もある。そのためには、法人税率を下げると同時に、課税ベースを広げることを検討すべきである」と指摘している。伊藤は「ドイツのように法人税率を下げると同時に他の減税措置を縮小(課税ベースの拡大)した国もあるが、そういった措置のないまま、税率引き下げたにもかかわらず経済成長が法人税収の伸びにつながっている国もある」と指摘している。経済学者の大竹文雄は「景気回復が偶然生じたという効果を除いて、法人税減税によって法人税収が増えたという効果が、どの程度あるのかについてははっきりしていない。法人税パラドックスが観察されない国も存在しており、その一つが日本である。1990年代に日本の法人税は低下と同時に法人税収も減少した」と指摘している。伝統的な経済学は、法人所得に課税するよりも、個人に対する所得・消費に課税する方が望ましいとされている。高橋洋一は「法人は架空の存在であり(法人擬制説)、そんな架空の存在から徴税するのは、個人レベルですべての所得が補足できないためである。経済活動をすべて個人レベルに分解し、そこから徴税するほうが合理的である」と指摘している。高橋は「法人税はゼロでいいというと、すぐに大企業優遇・新自由主義などと非難されるがまったく的外れである。どこの段階で徴税するかというだけの話である」と指摘している。経済学者の貝塚啓明は、「課税の公平性という観点から、税負担の配分は経済力に応じたものである必要がある。経済力を持つ主体は個人・自然人でありこれ以外のものはないと考えられる。税負担は個人レベルで考え、個人の経済力に応じて適切な負担配分に基づいて租税体系は組み立てるべきである」と指摘している。「巨大法人には税率を高くするなど、法人規模にあわせて累進的に課税するべきである」という考えについて、経済学者の林宜嗣は「法人税が個人所得税の源泉徴収だとする場合、巨大法人の納税者が必ずしも高所得株主であるとは限らないため、公平な税制ではない」と指摘している。エコノミストの植草一秀は「法人課税が無ければ、法人に居住している個人の生活にかかる部分が非課税となり、一般個人との整合性がとれない」と指摘している。経済学者の土居丈朗は「法人税の税率・労働分配率の議論を行う際には、法人税を負担しているのは誰なのかということを、きちんと認識するが重要である」と指摘している。大田弘子は「法人税は、最終的に誰が負担するのかわかりにくい税である。株主だけに限らず、負担の一部は商品価格・従業員の賃金に転換されていると考えられる。最終的な負担者がわからない税負担は、重くすべきではない。(法人税の)課税ベースの拡大は必要であるが、税率の引き上げは避けるべきである」と指摘している。経済学者の入谷純は「法人税の導入は、生産物市場・要素市場とは直接的な関連はないため、価格の変化を生じさせない。そのため、企業が税引き後の利潤を大きくするには、生産水準・雇用水準を維持する必要がある。つまり生産に変化が起きないため、法人税は転換されず全額法人の負担となる」と指摘している。法人税転換には、価格のつり上げによって消費者に税負担を負わせる前転、賃下げによって従業員に税負担を負わせる後転、技術革新などの生産性向上によって税負担を吸収する消転がある。転換の結果、最終的な税負担者が決まることを帰着という。上村敏之は「市場において企業の力が強い場合は、法人税の負担を転換できる」と指摘している。経済学者の神野直彦は「法人税は、法人が価格に転換しているという考え方があり、実際に転換しているということも実証されている」と指摘している。経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは、公共経済学に関する著書で「企業は法人税を負担していないという点で、経済学者間ではコンセンサスを得ているが、このことは経済学者以外の人々にはよく理解されていない」と指摘している。経済学者の竹中平蔵は「法人に対するあらゆる課税は、必ず消費者が負担することになる」と指摘している。と指摘している。大田は「法人税の負担は、税率だけではなく『税率』と『課税ベース』で決まる」と指摘している。財務省の資料によると、フランス・ドイツ・イギリスなどの欧州諸国の実効税率は30%前後、韓国・中国では20%台後半であり、日本の実効税率はアメリカと並んで高い(2010年時点)。国際的に見て高い法人税は日本で活動する企業にとってコスト高を意味し、国際競争力の観点から望ましくないとする議論がある。経済学者の浜田宏一は、日本の法人税について「法人税をこのままにしておくことは、日本経済にとって基本的にマイナスになる。高い法人税率は日本への投資を阻害しており、20%台に引き下げれば、日本の資本市場も変わる。法人税を引き下げることで所得も増える」と指摘している。伊藤元重は「法人税収をGDPで割った法人税負担率が、日本は諸外国に比べてこの指標が高い数値を示しており、法人税負担が重い」と指摘している。伊藤は「(日本で)法人税率を引き下げても、内部資金が潤沢で流動性制約のない現在(2013年)の日本企業が投資を促進することに期待できない。中長期的には、(日本の)企業が流動性制約に入る可能性があり、そのときには平均税率の引き下げが必要となる」と指摘している。原田泰、大和総研は「名目GDP1%の分の法人税減税は、2年目で実質GDPを0.78%引き上げる。ただし、法人税減税の効果は中期的な供給面の効果であり、マクロ経済モデルのような短期の需要面に比重を置いた方法では分析できないという批判はあるだろう」と指摘している。GDPと法人税の比較で日本の法人は税負担が大きいという見解について、法学者の三木義一は、法人税の税収総額を他国と比較する場合は国ごとに異なる法人の実態も考慮する必要があり、米国の約225万社に対して日本が約260万社と経済規模に比べて日本の方が法人数が多く(独・伊は62-63万社、フランス94万社)、日本では米国に比べて中小零細企業までが法人化しているとしている。経済学者のロバート・フェルドマンは法人税率の引き下げだけでなく、社会保険負担や規制なども同時に国際標準並みに合わせる必要がある」と指摘している。神野直彦は「産業構造の転換にもとづく経済成長を目指すというのであれば、法人税の実効税率の引き下げは有効な手段とはならない。日本では、減税よりも新産業投資への条件整備をする支出政策が求められている」と指摘している。経済学者の伊藤修は「法人課税と社会保険料事業主負担の合計で見れば、日本は欧州諸国より軽い」と指摘している(2005年時点)。財務省の資料では日本の法人数が257万社であるの対し、米国172万社、英国183万社、独国88万社となっている。岩田規久男は「日本の法人税率が諸外国に比べて高いことは、日本企業の海外流出を促し、国内産業の空洞化の一因となる。また、海外企業の流入を妨げる一因にもなる」と指摘している。経済学者の原田泰は「巨額の財政赤字の中で減税は難しいが、法人税減税は進めるべきである。法人はどこにでも動けるため、成功したときの取り分の多い国に行って立地する。そのような立地競争に負けないように減税する必要がある」と指摘している。大田弘子は、法人実効税率の引き下げによる企業負担の軽減が「賃金・投資・配当に回る。高い法人税は結果的に家計にも影響を与え、日本が立地として選ばれなければ雇用減少・賃金抑制につながる」と指摘している。伊藤元重は「日本に対する海外からの直接投資は、諸外国と比べて著しく低調である。高い法人税率だけが原因ではないが、高い税率が投資の大きな障害になっていることは明らかである」「企業が海外投資をする場合、市場の大きさ、人材、政治的な安定性、技術水準など様々な要因から判断される。法人税率だけで、立地・投資額を決めるわけではない」と指摘している。竹中平蔵は「企業が中国などの海外での工場の立地を進める中、税制の措置だけで国内投資が増えるかというと、そう単純な話ではない。財政を考慮し、ある程度の投資減税を行うことは政策として有効である」と指摘している。神野直彦は「日本国外の企業への調査では、対日投資の阻害要因として、高賃金、品質への厳しさ、語学能力などが指摘されており、租税負担の高さについては順位は低い。実効税率を引き下げても、工場を立地するなどの投資は進まず、乗っ取りなどの投資が生じるだけにである」と指摘している。植草一秀は「事業活動の本拠地が海外に移転すれば、税源となる企業の生産活動の利益も海外に移転する」と指摘している。企業の海外流出について野口悠紀雄は、と指摘している。スミサーズ・アンド・カンパニー(イギリス)のアンドリュー・スミサーズ(Andrew Smithers)は、日本の企業の利益率が低いのは過剰投資が原因であり、過剰な投資を減らして投資効率を高める必要があるとしている。また、日本の法人税制は減価償却費が過大に認められているため、それが内部留保を高める原因になっているとし、法人減税を行っても国家財政を悪化させるだけだと主張している。むしろ企業の貯蓄を押さえる税制を実施すれば賃金や配当が増え、結果的に税収も増えるとしている。経営学者の加護野忠男は「最近(2012年)になって、日本企業は余剰資金を積み増している。企業のリスク投資を促すことが必要である。日本企業の投資を促すには、単純な法人税減税ではなく、投資減税を行うべきである」と指摘している。経済学者の円居総一は「企業の内部留保や多額の対外投資は、政府が勝手に使えるものではない。なぜならそれらのほとんどが、民間のものだからである。企業の内部留保を投資に回せと言っても、政府にできるのはそれを誘導することだけである。企業の内部留保はデフレの産物であり、国内需要を喚起すれば投資に回る」と指摘している。國枝繁樹は「EUと日本では背景が異なっている。日本では法人税率を引き下げたことで、税収が減っている。税率を下げても税収が安定している状態である『法人税パラドックス』が成立していない。これは、課税ベース拡大や、法人税率が下がったからといって個人事業主が『法人成り』をしなかったためである」と指摘している。神野直彦は「日本の場合、実効税率の引き下げと同時に、課税ベースの拡大ではなく縮小が起きてしまった。実効税率を引き下げる場合、租税特別措置、繰越欠損、受取配当などの見直しによって課税ベースを拡大する必要がある」と指摘している。ロバート・フェルドマンは「法人税率の引き下げで税収は減らないだろう。一時的に減ったとしても、それは投資だと考えればよい。法人税率の引き下げによって、起業・技術開発しようというインセンティブが働けば、経済成長率は上がる。結果、消費税・所得税の税収、社会保険料収入も増える」と指摘している。国際通貨基金(IMF)は、日本の法人税の引き下げについて「財政リスクの高まりを防ぐための財源確保が必要である」との見方を示し「法人税の税率引き下げを段階的に実施することにより、財政リスクの上昇は抑えられる」としている。高橋洋一は「株主の個人資産に課税しながら法人の内部留保に課税することは、理屈の上から明らかに二重課税である。これは経済活動を阻害する可能性がある」と指摘している。岩田規久男は「法人所得に課せられる法人税は、株主の所得に対する課税である。また配当所得税は、法人所得税後の所得から株主の配当所得に対する課税であるため二重課税となっている」と指摘している。経済学者の上村敏之は「株主は、法人税が課税された後に配当を受け取り配当所得税が課税されるなら二重課税となる。そのため、配当については法人税・所得税で二重課税の調整が必要となる」と指摘している。ただし、上村は「株式市場が正常に機能していれば、内部留保が株価上昇・株主の利益につながらず、法人税は株主負担にはならない」と指摘している。大田弘子は「社債・借入で資金調達すれば、金利が損金算入されて非課税となるため株主に比べて債権者が有利となる。二重課税を完全に調整するには、インピュテーション方式という複雑な措置が必要となる」と指摘している。高橋洋一は「法人税は、所得税・資産税の補足が完璧であれば、二重課税に該当するため原理的には必要ない。日本の法人税率が高いのは、個人の資産・所得の把握が不十分(クロヨン)な結果といえる。納税者番号制度が導入できれば、所得税など増収になる可能性がある。その増収分を法人税引き下げに回すことは、税理論からいえば合理的である」と指摘している。高橋は「各国で法人税を引き下げているのは、IT・法の整備によって個人の資産・所得の精度の高い補足が可能になってきたからである。そうした事情を考慮せず日本も引き下げろというのは間違いである」と指摘している。大田弘子は「日本の場合、地方の法人課税の割合が高い。日本は連邦制でもないのに、地方法人税が重い」と指摘している。高橋洋一は「法人税を減税して外形課税の対象を拡大することは、租税回避テクニックを持っていない中小企業に不利である。大企業優遇という批判を浴びるだろう」と指摘している。法人税の性質として以下の二つの見方がある。1つ目は、法人税を法人の担税力に着目して課された独自の税制とみる説である。この説は民法の法人実体説と結びつき、法人に独自の担税力があるので、理論上は所得税との二重課税の問題は起こらない。2つ目は、法人税を個人所得税の補完とみる説である。民法の法人擬制説と結びつきやすい。法人税が所得税から分離したという歴史的経緯にも沿っている。法人税課税後の法人から配当を受けた株主がいる場合、その株主に所得税を課すことは法人税と所得税の二重課税となる。ただし、現実の法人には、所有と経営の分離を前提とした大法人から実態が個人企業と変わらない小法人(法人成り)まで様々な形態があり、一概に割り切れない面もある。また、法人税の負担は法人自体に及ぶのではなく、消費者・労働者・株主などに転嫁される。このように法人税は自己完結する税制ではないため、所得税との整合性を取る必要がある(法人税と所得税の統合)。法人税と所得税の整合性を取るために、いくつかの方法が考案されている。租税法上、法人所得を全て株主に帰属しているものとして取り扱う方法。法人税の撤廃を前提としている。会社所得のうち、配当部分だけ所得税との調整を行う方法。2014年現在、所得税と法人税の完全な統合を行っている国はない。しかし、二重課税の問題を軽減するために何らかの特別措置を取っている国もある。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。