機内食(きないしょく)とは、航空機内で航空会社が提供する食事のこと。狭義には航空会社のサービスとして無料で(航空運賃の一部として)機内で乗客に提供される食事を指すが、パイロットや客室乗務員が機内で仕事中(デッドヘッドを含む)に摂る食事も機内食である。一方、「空弁」など、当該機体を運航する会社とは無関係に乗客が持ち込んだ食事は機内食とは呼ばれない。航空自衛隊や海上自衛隊(対潜哨戒機)においても長期間の飛行の際は機内食が準備され、冷凍化されたものを電子レンジで温める方式がとられている。地上とは異なる気圧の低い機内での食事は、味覚が鈍くなるので、通常の食事よりも濃い味付けとなる。通常は空港近辺の工場で製造されて機内に積み込まれ、離陸後に機内にあるギャレー(厨房)で加熱後、各席に配膳される。国際線では一定時間以上の飛行では要望に応じて機内食を提供しなければいけないことが国際航空運送協会 (IATA) の取り決めで決まっている。全体的には距離が長くなるほど、また座席が上級になるほど充実する傾向にある。1919年10月にハンドリー・ページ・トランスポート(現・ブリティッシュ・エアウェイズ)がロンドン - ブリュッセル線での機内食を提供したのが世界初である。日本以外の国における国内線では、機内食を有料で販売するケースがある。また、格安航空会社の多くは国内、国際線問わず有料販売である(日本に就航している国際線ではジェットスター航空のエコノミークラスが有償で販売)。日本国内では、第二次世界大戦前に国内線に就航していた大日本航空が、国内線の乗客に軽食を提供していたのが始まりとされる。第二次世界大戦後は、日本航空 (JAL) が、アメリカのノースウエスト航空から乗員とともにリースしたマーチン2-0-2型機「もく星号」で、1951年10月25日に羽田空港 - 伊丹空港 - 福岡板付空港間の定期旅客運航を開始(機体はこの半年後、52年4月9日にもく星号墜落事故で失われる)。この第一便の往路には東京ステーションホテルが、そして復路にはロイヤル株式会社(現在のロイヤルホールディングス株式会社)が、卵とハムのサンドイッチや魔法瓶に入れた紅茶を機内で提供したのが、戦後の機内食の始まりである。その後、同社に追従して他社も朝の便や夕方から夜間の長距離路線では箱詰めにされたパン類やスープなどの軽食が提供され、その他の時間は菓子(茶菓)が提供されるようになる。国際線とは異なり、飛行時間の短さや提供人数の多さによる積載量とコストの観点から、少量でギャレーでの加熱を要さない冷製の食材(おにぎり、サンドイッチ)が用いられた。また、日本航空、日本エアシステム (JAS) 、全日本空輸 (ANA) の大手3社がスーパーシートを導入した後は、3社ともに昼食および夕食時には加熱された機内食が提供されるようになった。1998年の新規航空会社の参入に伴い、事前購入型運賃の充実による航空運賃を引き下げる価格競争に入ったことから、大手3社では1999年3月をもって普通席での軽食サービスは全廃され、全ての時間帯で菓子のみの提供となる。そして2000年頃からは菓子の提供も取りやめ、飲料のみの提供となった。普通席での提供廃止後も、大手3社のスーパーシートでは早朝・夕方出発便で提供されてきた。日本航空では、日本エアシステムの事業が統合された2004年にスーパーシートを廃止し「クラスJ」への転換を図り茶菓のみの提供となったが、2007年12月にファーストクラスの提供を開始し本格的な機内食の提供が再開された。その後全日本空輸も「スーパーシートプレミアム」を提供するなど上級クラスのサービス向上が図られたが、新規航空会社のスカイマーク (SKY) ではスーパーシートに相当する「シグナスクラス」の値下げに伴い、それまで実施していた軽食や飲み物のサービスを2006年2月限りで取りやめ、2008年8月末をもってシグナスクラスそのものも廃止している。さらに全日本空輸とスカイマークは普通席のサービスの省略を進め、スカイマークでは2006年2月より、全日本空輸では2010年4月より格安航空会社(LCC)同様に普通席におけるお茶と水以外のソフトドリンクとコーヒー、スープの無償提供を取りやめて有償で提供していたが、後述の格安航空会社の本格進出により全日本空輸はサービスで差をつける目的から2012年6月からスープ以外を、2013年4月よりスープも無償提供を再開した。なお、日本航空はソフトドリンクとコーヒー、スープの無償提供を継続している。スカイマークを除く新規航空会社のうち、フジドリームエアラインズは早朝便に限りクロワッサンの提供をしているほか、全路線で茶菓の提供を行っている。一方AIRDO、ソラシドエア、スターフライヤーの3社は原則飲み物のみとなっている(スターフライヤーで一部例外あり)。アイベックスエアラインズは早朝便で2006年11月までアルコールを含む食事を提供されていたが現在は飲み物のみである。2012年より順次開設した格安航空会社(Peach Aviation、ジェットスタージャパン、バニラ・エア、春秋航空日本)は機内食の提供を行っているが、飲み物を含めすべて機内販売という形で有料提供されている。茶菓一例ごく短距離の路線(福岡 - 釜山など)を除き、1 - 2回の機内食が提供される。配膳時間は出発地や到着地の時間(時刻)に関係ない場合が多い。近距離便では、概ね離陸から1時間以内、遠距離便では1回目は離陸から概ね2時間以内、2回目は到着予定時刻の約2時間前である場合が多い。この辺りの事情を全く考慮せず、出発直前に食事を多く摂ると、機内食が十分食べられなくなったり、機内食を十分食べたことで到着地での食事のリズムを壊し体調に影響が出る場合もある。なお、殆どの国際線では、宗教や思想や信条や医療上の理由から特別食の用意があり、事前に申し込めば特別食が提供される。この他に、機内食として出される食事以外にも、随時ビスケットなど軽食のサービスや、夜行便等では、夜食としてパンやサンドイッチ、日本への発着便ではおにぎりやカップ麺(JALの「うどんですかい」やANAの「とびっきりおうどん」ほか)などの軽食を用意している会社もある。基本的には、相手国の業者と契約して復路便の分を手配してもらうが、日本発の韓国や中華民国・中華人民共和国・フィリピン・グアム線のような近距離路線では、復路の分もまとめて載せることもある。機内食を調理する業者は概ね航空会社が出資する関連会社が多いが、一方で外食企業が機内食事業を手がける場合もあり、近年は料理のグレードアップの際に、有名レストランやホテル、料亭などがメニューを監修することもある。一般に航空会社の本国の料理が出されることが多い(前述の復路など現地で調達する場合、現地料理の色合いが出る場合がある)。また座席等級によって食事の内容が異なる。1人前をトレーに載せて配膳する。酒は上級席種では無料であるが、エコノミークラスでは酒の種類によっては有料となることもある。エールフランスはエコノミークラスでもシャンパンが無料で提供されている。主菜は、例えば肉と魚、鶏と牛など2種類の料理の中から選択できるが、先着順のため一方しか残っていないこともある。(寧ろ、後部座席の場合には希望した食事が提供されることは少ない。)これら複数メニューの搭載数については事前に予想しているが、その精度は低く、後部座席ではなくともプレミアムエコノミークラス(エコノミークラスと同じメニューだが先に供される)の段階で、片方を切らしてしまうことが常態化している。近年では顧客獲得のため、機内食のメニューを選択出来ることも多い。たとえば、日本航空を始めとする日本の航空会社では、和食をメニューの一部に入れる他、大韓航空ではビビンバ、タイ国際航空ではタイカレーなど、故郷料理を選択出来る様、提供している。またエールフランスの長距離路線では、シャンパンやパンの無制限での提供が行われる。ただし、その量や質は高いとは決して言えず、「コンビニエンスストアの弁当を配布した方がマシ」との声も聞かれる。近年では、機内食を摂らずにカップ麺を持ち込み、お湯のサービスを受けて、調理・食事する乗客も少なくない。コースメニューとなっており、いずれも3 - 4種類から選択できる。エコノミークラスと異なり、事前にメニュー(主菜)の予約を受け付ける航空会社も多い。また、その国の郷土料理を提供する航空会社もある(特別食。要事前予約)。配膳は料理ごとに行われ、各席で食器に盛りつける。近距離路線ではボックスミール(弁当)になることもある。長距離路線ではサンドイッチ、ピザ、アイスクリーム、ラーメン等の間食が用意されていることが多い。ランチやディナーと異なり、あっさりした軽めのものが多い。国際線では主に到着前の2回目の食事で提供される。また、「朝」に当たらない時間帯の軽食を「リフレッシュメント」と呼ぶこともある。ほとんどの航空会社では、医学的・宗教的理由(いわゆる食のタブー)によって通常の機内食を食べられない乗客のために、特別食(スペシャルミール:)を用意している。特別食の具体例としては以下のようなものがある。特別食はどの機体にも常備しているわけではなく、大抵は事前に(多くは出発24時間前までに、祈祷など手数のかかるコーシャ・ミールは48 - 72時間前に)予約を要する。ただし、航空会社や目的地によっては乗客の需要が異なるため、2種類ある通常食の一方がベジタリアン・ミールだったり、ムスリム・ミールのみ(例:エミレーツ航空)となることもある。特別食は、信条や信仰宗教とは無関係に申し込みできる。例えば、豚肉アレルギーを持つ人間がイスラム食を申し込むことは可能である。提供される個々の特別食の詳細(例えばベジタリアン・ミールといっても宗教ごとに材料の違いから複数ある)については、各航空会社の公式ウェブサイトなどの案内を参照のこと。万が一食中毒が起こった時に乗務員が全員発症して機内に混乱を招くという事態が起きることのないよう、客室乗務員の一部は乗客と異なる食事を摂る。また、特に操縦クルーについては、同様の理由で操縦不能という最悪の事態を防ぐため、機長(もしくはPIC)と副操縦士(もしくはSIC)は、機内食はもとより、地上での食事でも、それぞれ食材・調味料などが全く異なるものを食べる。操縦クルーの場合、選択肢は機長の意思が優先される場合が多い為、副操縦士は好きなメニューを選べない事がある。多くの航空会社では、クルー向け機内食はビジネスクラスと同程度の食材・献立をエコノミークラスの食器などに簡易的に詰めたものである。また、ルフトハンザドイツ航空のように、客室乗務員用の食事が用意されていない航空会社もある。その場合、客室乗務員の食事は、ビジネスクラスやファーストクラスの乗客向けに調達された機内食から、余った物が食事として割り当てられることもある。また、大規模な空港の多くでは、事前に乗務員用の機内食を購入することが可能となっている。貨物機にも小規模ながら機内食の設備があり、遠距離便を中心にエコノミークラス相当の食事が用意されるが、客室乗務員がいないため手の空いている乗務員(主に航空機関士か副操縦士)が用意する。貨物の関係で乗務員以外の者が貨物機に添乗する場合はその人間の分も手配されるが、乗務員の飲酒を防ぐため飲み物に酒類は含まれない。政府専用機の機内食は、本国もしくは訪問先であらかじめ発注し、積み込まれるのが基本である。日本国政府専用機の場合はJALの関連会社であったティエフケーが機内食を担当し、同社では他国の専用機の機内食も受注・納品する。機内のサービスは女性自衛官が行う。例外として、アメリカのエアフォースワン(VC-25)は、機内にキッチンが2箇所備わっており、同機が拠点とするメリーランド州アンドルーズ空軍基地で全日程の食材を一括で仕入れ(毒物混入防止の為、現地調達は禁止。また、食材は近隣の食品店で隊員が身分を隠して購入)、基地内の厨房で下ごしらえしたものを真空パックで保管して積み込み、機内で仕上げをして提供される。この為、米空軍の給仕係もシェフとして搭乗する。主菜は半加工品。冷蔵状態で搭載され、配膳の直前に加熱調理される。これは客室乗務員が最終的な調理を担当する事から、加熱し過ぎを防ぐ為に採られた措置である。例えば牛ステーキ肉の場合、工場出荷段階では半生状態にして、機内で再加熱する。加熱方法はオーブンで数個ずつ加熱する方法(主にボーイング747-400より前に路線就航した旧型機)と、各トレイに加熱板を備えて主菜だけを一斉に加熱する方法(主にボーイング747-400以降の機種)とがある。但し前者の場合、使用するオーブンは、マイクロ波で加熱する電子レンジでは、航空機の運行に支障をきたす為、水蒸気を使うスチームオーブンのみとなる。また、機内では与圧による気圧変化に伴い、湿度が10~20%と乾燥する為、上空では味覚・嗅覚が鈍る事から、味付けも濃い目にする必要がある。客室乗務員がカートに載せて通路から各席の可動式テーブルに配膳する。機体の前後や、ワイドボディ機では主翼付近(ギャレーのある位置)から順番に回る。なお、種類の選択が可能な場合、マイレージ上級会員から先にオーダーを取り選択肢を残すようにしていることが多い。エコノミークラスではプラスチック製、またはアルミ製の容器が多い。ビジネスクラス以上は陶磁器製の食器が使われる。ナイフ、フォークなどは、コスト削減を主眼に、使い捨てが可能なプラスチック製を使用している。基本的にビジネスクラス以上では、金属製のカトラリーが用いられ、航空会社によってはエコノミーでも、環境保護の観点から金属製を用いる航空会社もある。近年は航空燃料節約の観点から、軽量化食器の開発が盛んである。またプラスチック製食器使用の理由として、ハイジャック防止が挙げられるが、実際のところプラスチック製ナイフでも、人体に致命傷を与えることは十分に可能であるため、理由としては不十分である。機内食工場は、多くが2階建てになっていて、1階は空のカートを回収して食器を洗浄、2階は調理・配膳とトラックへの積み込み口になっている。空港近隣の機内食工場から、航空機へ機内食を盛りつけたしたカートを輸送するトラックを「フードローダー()」と呼び、工場での積載時と航空機への積み降ろしのときに、荷台が機体の高さまで持ち上がる。なお航空機へ機内食を積み込むときは、ローダーの前から行う。機内食は、飛行機に搭乗したときにしか食べられないが、ケータリング会社が経営している空港内部のレストランで、“機内食”をレストランの品目に掲げているケースがあるが、味付けは飛行機で提供される食事と異なり、地上で食べる味付けとなっている。そのメニュー・食材が、どこの航空会社に提供されているものと同一であるかなど、詳らかにされないのが一般的であるが、特定の航空会社とタイアップしたフェアなどの折には、稀に機内で出される物と、ほぼ同一の仕様のものが提供されることがある。
出典:wikipedia
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