『天使のたまご』(てんしのたまご)は、1985年に制作された日本のOVAである。原案・監督・脚本は、押井守。71分。発売元は徳間書店。DVD版も2001年にパイオニアLDCから販売されている。2007年1月に徳間書店よりDVD版再発。2013年8月にはBlu-ray版が発売された。発売元は徳間書店、販売元はポニーキャニオン。ノアの方舟が陸地を見つけられなかったもう1つの世界。巨大な眼球を模し、中に複数の人型の彫像が鎮座する宗教の象徴のような機械仕掛けの太陽が海に沈み、世界は夜を迎える。方舟の中の動物がすべて化石になった頃、忘れ去られた街で一人の少年と一人の少女が出会う。生死や世界の変化は描かれるものの起伏のあるストーリーはほとんど存在しない前衛的内容である。押井が言うに、見所はストーリーではなく、たまごの中に何が入っているのかという点であるという。旧約聖書創世記に登場するノアの方舟のエピソードを独自に解釈した物語をベースにしている。キーワード「方舟」は押井の複数の後作に形を変えて登場しており、押井の作品世界を語る上で重要な一作である。なお「はこぶね」の一般的な漢字表記としては「箱船」「箱舟」等複数の表記があるが、押井はこの作品以降「方舟」に統一した。この作品は海外へのロケハンの予算が得られなかったため、フランスの地方都市の写真集を基にして構想されている。 その無人の路地、石畳の舗道、建築の奇怪な意匠や、空を映す窓-等の写真から、半ば自動的に設定が生まれ、街の様式や意匠を描写することで物語以前の何かを、表現のみで成立するアニメを実現しようと試みたという。当初押井はこの作品を、「わけのわからない連中がたむろするコンビニに、卵を抱えた少女が突如やってくる」という、コミカルで軽い雰囲気に仕上げようと考えていたそうだが、天野の絵を見た途端に「これはまっとうなファンタジーでやらないと駄目だ」と考えを改めた。押井はスポンサーの徳間書店に対し、この作品のことを「単純な、男と女の物語」であると説得したという。結果徳間書店の後押しを受け、この『天使のたまご』が世に出ることになった。押井と当時徳間書店の編集者であった鈴木敏夫が組んだ初めての作品である。一方で押井はこの作品を作ったことにより、「わけのわからない物を作る監督」というレッテルを貼られ、『機動警察パトレイバー』の企画が来るまでその後の仕事の依頼がさっぱりなくなってしまったという。ちなみに監督本人も通して見ると疲れるらしく、TVプロデューサーの堀越徹は一回目に寝てしまい、讀賣テレビ放送の諏訪道彦も訳の解らないままテレビで放送したという。宮崎駿は本作に対し、「努力は評価するが、他人には通じない」と述べており、更に直接本人に「帰りのことなんて何も考えてない」「あんなものよく作れた」「頭がおかしい」と言ったという。この作品自身もビデオソフトが後に廃盤になり、DVDなどで再発されるまでの間、作品の入手手段が完全になくなる不遇の時代を経験している。製作中、監督料はいらないから印税が欲しいと頼んだが、印税はほとんど入らなかったので貧乏生活を送った。登場する意味深げなモチーフは聖書におけるシンボルの暗喩で、例えば「魚」は「言葉」、「鳥」は「命」を意味するなどが挙げられる。原画担当だった当時若手の貞本義行曰く、この時の押井は聖書のシンボル事典を横に置いて作業していたという。全体のモチーフは、押井が影響を受けたアンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』に酷似している。押井は、この作品でレイアウト監修である小林七郎の傍らで基本的なレイアウトの見方を学び、後に独自のレイアウトシステムを確立する契機となった。いずれも絶版であったが、2004年『イノセンス』公開時に再版された。『絵コンテ集』は2013年復刊ドットコムより再々販。 篠田節子の小説『聖域』には、登場人物が本作のビデオを鑑賞する場面がある。描写されている内容から見て、作者が本作を実際に鑑賞した上で執筆していることが窺える。ベルギー出身の映画監督カール・コルパートの作品『』(日本未公開)では新撮の実写シークエンスと『天使のたまご』のアニメーションをミックスし、最終戦争後の荒廃した世界が描かれている。 (※後述の著作権の問題にあるように、無断で制作された。)この作品は徳間書店の尾形英夫が著作権に関して疎かったことから、押井に知らされること無く米国の映画監督・プロデューサーのロジャー・コーマンへ権利を売却され、更に転売を重ねられたことから、権利の所在が不明となっておりその為、海外での公開・ビデオソフトの発売はできない状態にある。国内でも、無断上映や無断でTV局の放映に売られたこともあり、その何れにも著作権料が支払われていなかった。
出典:wikipedia
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