ハラール()は、イスラム法で許された項目をいう。端的にはイスラム法上で食べることが許されている食材や料理を指す。日本語に訳すと、「やってもやらなくてもかまわないもの(許可)」という意味となる。なお、日本では「ハラル」と書くことも多い。反対に、口にすることを禁止されている物をハラーム()と言い、この語は「やってはならないもの(禁止)」という意味でハーレムと同じ語源である。イスラム法の下では豚肉を食べることは禁じられているが、その他の食品でも加工や調理に関して一定の作法が要求される。この作法が遵守された食品がハラールとされる。なお、ハラールとハラムの中間に疑わしいものシュブハという概念がある。シュブハな食品はできるだけ食べることを避けることとされている。豚と同様に不浄(重度ナジス)とされている犬。獲物を捕獲するための牙や爪がある虎・猫などの動物。啄木鳥、ロバ、ラバを食べることが禁止されているが、それ以外の肉であっても屠殺が正規の手順に従ったものでなければ食べられない。このため、ムスリムは単純に材料表示だけを見て判断することが出来ないためハラールの表示が必要となる。ただし、世界的に統一された基準はなく、各国の認証機関によって制度が異なっているため、ある国では禁止されている食品や規定が、他の国では問題とならないこともある。信仰とは神と個人との契約であり、ハラルの基準を問題視する事は、他人の信仰に口を挟むことと同義となるため、ムスリムが自分の考えとは異なる基準のハラルを問題視することは難しい。このため、ムスリムによっては、自分が信頼するハラルマーク以外のマークには近づかないとする人もいる。ムスリムが大多数を占めるエジプトなどの中東では、出回っている食材がハラールであることが当然のため、生活する上であまり人々に意識されない。一方で、豚肉を良く使う華人も多い東南アジアでは、かなり意識される傾向があるとされる。クルアーンの第二章173を根拠に、緊急時にはハラールではない食品を食べることも容認されている。スマトラ島沖地震でインドネシアのイスラム教徒に対して外国からの援助物資に豚肉などが入っていたとしても食べて良いとするファトワーが出され公式に食べて良いとされたことがある。しかし一方で逆の事例として、中国・四川省で発生した四川大地震により被災した中国在住のイスラム教徒は、非常事態であったにもかかわらず、ハラムの救援物資の利用を拒否する者が多かった。非イスラム教徒が多数派を占める地域においては、ハラールを守ることは殊の外重要視される場合もある。ムスリムの人口が乏しい国家や地域では、イスラム諸国からの旅行者や留学生などのために、シールなどによって食品がハラールであることが示されていることが多い。これとは対照的に、ムスリムとその他の宗教の信徒の人口が拮抗している国家や地域では、原則として無表示の食品をハラールとしつつ、ムスリム以外を顧客として想定したハラームの食品に限って表示がなされていることがある。サウジアラビアなどイスラム原理主義の強い国では法律でハラールでない食品の販売や輸入流通が禁止されている国もある。そのような国でハラールでない食品を販売した場合には犯罪とされ、ハラールでない食品をハラールであると偽装することも犯罪とされている。イスラム諸国会議において、ハラールの世界標準規格が議論されているが、宗派の違いや加盟国間の文化、経済情勢、政治的利害関係などが原因で標準化には時間がかかると言われている。ハラールの規則もムスリムによっては厳格に守っているわけではなくビッスミッラー(アッラーの御名において)と唱えればどんな肉でも食べてよいとする世俗派もいる。トルコなど世俗化が進んだ地域では、飲酒や豚肉食も平気でおこなうムスリムもいる。広義の意味では食べ物に限定されず、イスラム法において合法であることを示す記号としても用いられている。たとえば、衣服、玩具、家電製品などにもハラールは適用される。衣服の場合は、女性の体の露出を禁止している規定に違反していないデザインであることを証明するマークとして付けられたりする。ブルキニという水着はハラールとされている。ゲームなどにおいても、イスラム教で禁止されている賭博に該当しないことを証明する印として用いられることがある。このような審査や判断はウラマーが行うことが一般的であり、特定の製品をハラールであると認めるファトワーが出されることもある。牛肉など食肉に関しては以下の規則を守らなければならない。野菜や穀物であっても肥料に豚の糞などが使用された物は禁忌と解釈されることがある(特にシャリーアに規定があるわけではない)。健康を害するような飲料や食物などは禁忌とされることがある。例えば毒キノコや中毒性のある植物、鉱物も含まれる。豚を禁忌とするのは肉だけでなく、豚に由来する酵素や蛋白質にまで及ぶこともある。これは医薬品や化粧品などにも適用範囲が及ぶこともあり、実際にサウジアラビア、イラン、インドネシアなどでは法律で禁止されている。現代の製薬業界において細菌の培養に必要な培地の生産に、豚由来の分解酵素が使用されていることは珍しくない。このため、非常に広範囲の医薬品がハラームである可能性があり、豚由来の分解酵素が使用されているかどうかは非常にわかりにくいためムスリムの間では難しい問題になっている。2009年にはインドネシアで聖地メッカを巡礼するために必要なワクチンの接種においてワクチンの製造に豚の酵素を使用していたことが問題となった。2000年にインドネシアの味の素で発酵菌の栄養源を作る過程で触媒として豚の酵素を使用していたために日本人技術者1人を含む東ジャワ州モジョクルトの味の素工場幹部4人が、消費者を保護する法に違反した容疑で逮捕される事件が起きている。ハラールの基本的な考え方では、豚と一緒に保管されたり触れたりした食品も禁忌とされるため、製品に全く残留していなかったとしてもイスラム思想的には禁忌とせざるを得ない事情がある。このため、インドネシア当局から触媒であっても認めないとする厳しい判断が下された。味の素は触媒を変更することで再度、販売の許可を得た。根拠となるクルアーンの記述には以下の物がある日本では、国内に在住するムスリム向けの食材店が中心だったが、近年ではハラールフードを売り物にするレストランも登場している。イスラム教圏(主にインドネシアやマレーシアといった東南アジア)からの観光客が日本を旅行するにあたり、日本ではハラールに則った料理を出すことができる宿泊施設が非常に少ないことが懸念されている。そのため、豚肉の調理をしていない調理場を新たに設ける、アルコール消毒の必要がない紙皿でハラールフードを提供するなど工夫するホテルが登場している。また、近年増えているイスラム教圏からの留学生への対応として、東北大学、九州大学、山梨大学、国際大学などでは学生食堂のメニューにハラールフードを追加する大学も現れている。全国大学生活協同組合連合会によると、2014年時点で、少なくとも日本の19の大学生協で、ハラール食が提供されているという。逆に小中学生での学校給食の場合、食物アレルギーと違い、特別食を提供する自治体や、「個人的理由」とみなして提供しない自治体と、自治体によって対応が異なる。後者の場合は、親が弁当を持たせる事で対応している。航空会社の機内食では、通常メニューとは別にハラールフード(豚肉アレルギー対応食を兼ねている)等の特別機内食を予約制で提供しているが、全日本空輸(ANA)では、2014年にグループの機内食ケータリング会社でハラール認証を取得し、2015年9月2日からクアラルンプール発成田行きの便でハラール食を通常メニューとして提供するなど拡充に動いている。また日本航空(JAL)においても2016年6月1日より日本発着の国際線においてハラール認証を受けた機内食の提供を開始している。その他、日本国内ではハラール食品が単に安い食品としてマレーシアなどから輸入され、特に売り場でのハラール表示も行われずに販売されている場合がある。日本の調査捕鯨船「日新丸」が、船内で行うクジラ肉の加工処理について、ハラールの認証を取得した。日新丸を所有する共同船舶によると、同船が広島県尾道市に係留中(2013年11月13日)、認証機関が船内で加工処理の過程を確認。その際、手の消毒で使っていた薬品を、イスラム法上認められないアルコールから次亜塩素酸ナトリウムに変更し、2013年11月24日に認証された。クジラ肉の国内消費のすそ野を、イスラム教徒にも広げる狙いがあるという。ハラル認証をただ取得するだけでなく、日本の実情に合わせたハラル認証制度を作るという動きも出てきている。また国内のみでなく、イスラム諸国への輸出のためにハラル認証を所得するケースも増えている。ただし、このローカルハラル認証の中には、ブームに当て込んだいい加減なものもあり、ハラルをうたいながらハラムを提供する可能性もある。このため、日本独自のローカルハラルは、イスラム教という宗教そのものの侮辱にも繋がりかねず、日本とイスラム圏の国際的なトラブルの要因になる危険性も指摘されている。日本政府は、ハラル認証の実態調査に乗り出す方針を示している。日本では、日本ムスリム協会や日本ハラール協会などといった団体が、マレーシアやシンガポールの政府のハラル認証機関からの承認を受けている。中国では元来ムスリムの間で食べられていた清真料理が、安全性やヘルシーさなどから非イスラム教徒にも注目されている。
出典:wikipedia
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