ポール・ヘンリー・オニール（Paul Henry O'Neill、1935年12月4日 - ）は、アメリカ合衆国の実業家、政治家、経済評論家。2001年から2003年までジョージ・ウォーカー・ブッシュ政権で財務長官を務めた。1935年、オニールはミズーリ州セントルイスで生まれた。1954年にアラスカ州アンカレッジの西アンカレッジ高校を卒業後、同校で知り合ったナンシー・ジョー・ウォルフ (Nancy Jo Wolfe) と結婚。後に3人の娘と1人の息子をもうけた。翌1955年にモリソン・クヌーセン社の現場技師として就職するが、1957年に退社しカリフォルニア州立大学フレズノ校へと進学した。その後1960年に同大学で経済学の学士号を取得し、1961年に退役軍人局でシステムアナリストとして公職に就き、1966年まで同局で勤めた。また1966年にはインディアナ大学で行政学の修士号も取得した。1967年、オニールは活動の場を行政管理予算局へと移し、主計官、課長補佐、次官を経て、1974年から1977年まで同局の副長官を務めた。オニールは1977年にニューヨーク市の製紙会社インターナショナル・ペーパー社の幹部として招聘され、1985年まで同社の副社長を、1985年から1987年までは同社の社長を務めた。1988年、オニールは当時の大統領ジョージ・H・W・ブッシュから国防長官への就任を要請された。だがオニールはこの要請を断り、代わりに連邦下院議員ディック・チェイニーを国防長官として推薦した。その後ブッシュ大統領はラマー・アレクサンダー、ビル・ブロック、リチャード・ライリーらによって構成された教育諮問団の議長就任をオニールに熱烈に要請し、オニールは議長に着任した。オニールの指揮の下、教育諮問団は全国統一試験の規格を制定し、各自治体に対し統一試験の導入を勧奨した。1987年、オニールはペンシルベニア州ピッツバーグのアルミニウムメーカー大手アルコア社に会長兼最高経営責任者として就任し、2000年に辞任した。この間、アルコア社の収入は15億ドルから230億ドルまで増加し、世界最大のアルミニウム企業へと成長させた。またオニールの個人資産も6000万ドルに達した。1995年には保守系シンクタンクのランド研究所においても理事長に就任した。2001年1月、オニールはジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領から財務長官への就任指名を受けた。オニールは税制政策の担当者としてマーク・ワインバーガーを租税政策担当財務次官補に付け、相続税や贈与税を中心とする税制の改革を打ち出した。オニールが財務長官を務めていた2002年の財務省の年次報告書によると、当時、合衆国は5000億ドルを超える赤字予算に直面していた。さらに同報告書によれば、将来の世代への負担を回避するためには、急激な増税や大規模な歳出削減は不可避であると試算された。この試算結果は、2003年に公表された2004年度の年間予算報告書からは省かれていた。オニールは政権内部でも遠慮なく物事を述べ、しばしば政府の方針とは異なる意見を報道陣に漏らすこともあった。オニールの軽率な発言については与党共和党内部からも批判を浴びることとなり、2002年12月にオニールは財務長官を辞任した。合衆国の多くのメディアからは、減税や更なる景気刺激策に対して消極的だったことを受けての、事実上の更迭と見られた。後任の財務長官はすぐには指名されず、ジョン・スノーが翌2003年2月に就任するまでは、ケネス・ダム財務副長官が長官代行を務めた。退任後、政権の内幕を描いた「忠誠の代償」（ロン・サスカインド著、日本経済新聞）を出版した。政権発足当初からイラクは攻撃目標として議論されていた、共和党穏健派である自分やパウエルは、政権のイメージ向上に利用され、やがて意見の相違から次第に政権内で孤立していく過程を克明に描いている。

出典:wikipedia