


ショウリョウバッタ(精霊蝗虫) "Acrida cinerea" は、バッタ目・バッタ科に分類される昆虫の一種。日本に分布するバッタの中では最大種で、斜め上に尖った頭部が特徴である。別名ショウジョウバッタ。本種が属するショウリョウバッタ属 "Acrida" はバッタ科 Acrididae のタイプ属。オスの成虫は体長5cm前後で細身だが、メスの成虫は体長8-9cm、全長(触角の先端から伸ばした後脚の先端まで)は14-18cmほどにも達し、オスよりも体つきががっしりしている。メスは日本に分布するバッタでは最大で、オスとメスの大きさが極端に違うのも特徴である。頭部が円錐形で斜め上に尖り、その尖った先端に細い紡錘形の触角が2本つく。他のバッタに比べると前後に細長いスマートな体型をしている。体色は周囲の環境に擬態した緑色が多いが、茶褐色の個体も見られる。また、オス成虫には目立った模様がないが、メス成虫は体側を貫くように黒白の縦帯模様が入ることが多い。幼虫は成虫とよく似るが、幼虫には翅がない。ユーラシア大陸の熱帯から温帯に分布し、日本でも全国で見られる。ただし北海道に分布するようになったのは20世紀後半頃からと考えられている。成虫が発生するのは梅雨明け頃から晩秋にかけてで、おもに背の低いイネ科植物が生えた明るい草原に生息する。都市部の公園や芝生、河川敷などにも適応し、日本のバッタ類の中でも比較的よく見られる種類である。食性は植物食で、主にイネ科植物の葉を食べる。生息地に踏み入ると、オス成虫が「キチキチキチッ」と鳴きながら飛行する。これは飛行する際に前後の翅を打ち合わせて発音することによる。メスは殆ど飛ばないが、昼間の高温時に希に飛翔することもある。幼虫は飛行せず、後脚でピョンピョンと跳躍して逃げる。羽化後間もない若い成虫は灯火に来ることもある。成虫は秋に産卵すると死んでしまい、卵で越冬する。卵は翌年5-6月頃に孵化し、幼虫はイネ科植物の葉や双子葉植物の花を食べて急速に成長、6月中旬から7月の梅雨明けにかけて羽化し、11月頃まで生息する。俗説で、8月の旧盆(精霊祭)の時季になると姿を見せ、精霊流しの精霊船に似ることから、この名がついたと言われる(同様の命名にショウリョウトンボがいる)。また、オスメスの性差が非常に大きく、別の名前が付くくらい違って見えるので「天と地ほども違う」という意味の「霄壤」から、ショウジョウバッタ(霄壤バッタ)と呼ばれる。オスは飛ぶときに「チキチキチ……」と音を出すことから「チキチキバッタ」とも呼ばれる。特にメスは捕らえやすく、後脚を揃えて持った際に身体を縦に振る動作をすることから「コメツキバッタ」(米搗バッタ)もしくは「ハタオリバッタ」(機織バッタ)という別名もある。「精霊飛蝗」とも表記されるが、本来「飛蝗」とは相変異し群生相となったサバクトビバッタ、トノサマバッタを指し、このバッタに似つかわしくない名前である。日本でいうところのバッタは「蝗」一文字である(中国語では)。日本では一般に「蝗」はイナゴ(稲蝗)を意味するがイナゴとバッタを区別しない地域もあり統一的ではない。精霊飛蝗も単に「盆になると出現するよく飛ぶバッタ」として作られた当て字の可能性もあり不適切とは云い難い。漢名「長頭蝗」はショウリョウバッタ属 "Acrida" を指す。ショウリョウバッタと同様に頭が前方に尖るバッタにはオンブバッタとショウリョウバッタモドキがいるが、生息環境や体の大きさが異なる。食べることができ、エビに似た味がする。食用に適さない羽や後足を取り除いた上で焼くなどして調理する。
出典:wikipedia
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