放送持株会社(ほうそうもちかぶがいしゃ)は、持株会社の一形態で、放送免許を持つ放送局を傘下に持つ純粋持株会社である。これまで放送局においては同一企業による複数の放送局の支配を防ぐため総務省が「マスメディア集中排除原則」を定めている。しかし、地上デジタル放送の開始に伴い多額な設備投資が迫られており、特に地方局では資金調達に苦しんでいる状態である。こうした経営基盤強化のために集中排除原則を緩和し放送事業者にも資金調達能力の高い持株会社制度を認めるというものである。具体的にはの2通りがある。また、放送局という公共的にも影響を持つメディア企業であることから、特定の株主からの影響をできる限り排除し言論の多様性を確保するために株主の株式保有比率を20%未満に制限することが検討されている。これにより単独の企業や投資家による経営支配や言論の制限を排除できるのみならず放送局の外部からの買収をも阻止できることになる。総務省では、2006年10月に行政法学者の塩野宏(東京大学名誉教授)を中心に取りまとめられたデジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会の最終報告を受け、2007年度に放送持株会社を解禁する方針で2007年4月6日に放送法改正案が閣議決定された。当初は2007年の通常国会での改正案成立を目指すことにしていたが会期の関係上、通常国会での成立は見送られ、継続審議の結果2007年12月21日に臨時国会で成立、2008年4月1日に施行された。この改正放送法では放送持株会社について「認定放送持株会社」としての設立を認め、また持株会社に対する一株主の出資比率を10%以上3分の1未満規定(ただし実際の出資比率は総務省令によって定められる)する条項が盛り込まれている。また、総務省令の中で持株会社の傘下に入る地上波放送局の数は放送の多様性や地域性を尊重するため最大12局に限定する。ただし、極端な一極集中を防ぐため、原則エリア1都道府県につき1局としてカウントする。このため広域局については、在京キー局は7局相当、在阪準キー局は6局相当、在名局は3局相当となる。放送エリアが重複する放送局を複数持つことはできない。また、地上波とは別に、BS放送局を1局まで、CS放送局をトランスポンダ2個分(SDで12ch相当)まで持つことができる。放送法が改正・施行され放送持株会社が解禁された後、まず在京の民放キー局が持株会社制導入に向けて動いた。以下、実施された順に述べる。在京局の中で最初に具体化したのがフジテレビジョン(フジテレビ)である。既にフジサンケイグループの事業持株会社になっており、放送持株会社の解禁を視野に入れ、グループ企業の再編や子会社資本のフジテレビ本体への集約などを行っていた。2007年6月8日には、同年中に持株会社制への移行を検討し、移行後は持株会社の傘下に事業会社として新たに分社設立する新生フジテレビをはじめ、産業経済新聞社(産経新聞社)やニッポン放送などフジサンケイグループの企業を置く体制を作るため、グループ各社と調整を行っていることが報じられた。2008年3月13日には、同年10月1日付で当時の株式会社フジテレビジョンを「株式会社フジ・メディア・ホールディングス」に商号変更、地上波テレビジョン放送事業をはじめとする現業一切を新設会社たる完全子会社「株式会社フジテレビジョン」に放送免許共々承継し、持株会社傘下に納める形で放送持株会社制への移行を行うことが発表された。6月27日に行われた株主総会で移行が承認され、9月3日に総務大臣から放送持株会社の認定を受け、10月1日に認定放送持株会社に移行した。実施ではフジに先を越されたものの、最初に具体化の検討をしていたのは東京放送(TBS)であった。2006年8月の時点で持株会社制への2007年秋での移行を検討していると報じられていた。これは、以下の考えがあるからとみられている。また、認定放送持株会社になれば、放送法の規定により株式保有比率の制限も適用されるため、東京放送の発行済株式19%超を保有する楽天に対しても、追加の株保有を阻止する事が可能となり、強力な牽制が可能となることも要因と見られていた。2007年12月31日にはその方針案を固めており、2008年11月5日に取締役会で移行を決議、同年12月16日に開催された臨時株主総会で賛成多数にて承認、2009年3月12日に総務大臣の認定を受け、同年4月1日に地上波テレビ放送免許をTBSテレビに承継、東京放送は商号を「株式会社東京放送ホールディングス」に変更し放送持株会社制に移行した。なお移行に反対した筆頭株主である楽天は、2009年3月31日、会社法第785条に基づいて「反対株主の株式買取請求権」を行使、東京放送に対して同社が保有する全ての東京放送株の買取を請求した。その後、東京放送ホールディングスは2015年4月に連結子会社であったBS-TBSを株式交換により完全子会社化している。テレビ東京は、現時点でネット局が6局しかないこと、主要局で株持ち合いを実施していること、系列局のうち筆頭株主に地元紙である山陽新聞の資本が入っているテレビせとうちを除く4局全てが日経グループ本体の持分法適用会社であることなどから、長い間この制度について特に言及してこなかった。しかし、2010年3月26日にテレビ東京、BSジャパン、テレビ東京ブロードバンドと経営統合し持株会社制へと移行すると発表、同年10月1日に共同持株会社「株式会社テレビ東京ホールディングス」を設立した。既存法人の商号を変更し、放送事業を分割して持株会社とした他局と異なり、株式移転により持株会社の法人を新設する形は初の事例であり、かつ2014年6月時点では唯一の事例でもある。さらに持株会社制移行後に日経新聞系CS放送局の日経CNBCもテレビ東京ホールディングス傘下に加える事を検討、2011年1月12日付で、日本経済新聞社から株式の一部を取得するとともにテレビ東京より株式の現物配当を受けることにより、持分法適用関連会社とした。日本初の民放テレビ局である日本テレビ放送網(日本テレビ)は在京キー局の中で最も消極的で、2008年3月に行われた定例会見で久保伸太郎社長(当時)が「現時点で必要ない」と消極的な姿勢を表明していた。しかし、2012年3月29日、4月に100%子会社の分割準備会社を設立、同年10月1日付で分割準備会社に子会社を含む放送事業を引き継ぎ(同日付で分割準備会社は「日本テレビ放送網」に商号変更)し、日本テレビ放送網は「日本テレビホールディングス株式会社」に商号変更、認定放送持株会社に移行した。日本最古の民放である中部日本放送(CBC)は、2013年4月1日に免許を含めたラジオ事業を子会社のCBCラジオ(旧テクノビジョン)に移したが、同年5月10日に在京民放以外で初となる認定放送持株会社に2014年4月1日から移行することを発表した。2014年3月17日に総務大臣から認定を受けたことにより、同年4月1日に地方局では初の放送持株会社が誕生した。なお、持株会社への移行に際してはテレビ事業を分割準備会社へ吸収分割(同時に「CBCテレビ」に商号変更)する形を取ったが、持株会社の商号については、「ホールディングス」などの呼称を付けず「中部日本放送」の名称のままとなっている。テレビ朝日に限らずANN系列局は朝日新聞社の傘下にあり、他の系列に比べ新聞資本による結束が特に強い。これに加え、放送法令における出資制限の規定のため、33.85%のテレ朝株を持つ朝日新聞社の影響力が削がれてしまう関係上、踏み切れない状況であった。2008年6月6日、テレ朝が朝日新聞社の株式11.8%を取得、朝日新聞社も持ち合いによる議決権の相殺を防ぐため保有株式を25%未満に下げることが発表された。当初は情報通信メディアとの提携も視野においているものの、放送持株会社については発表されていなかった。しかし、2013年7月31日にテレビ朝日とBS朝日の両社が、2014年4月1日を以って、テレビ朝日の吸収分割とテレビ朝日とBS朝日との間での株式交換を同時に行い、テレビ朝日を認定放送持株会社に移行することについて基本的合意に達し、テレビ朝日とBS朝日の両社の取締役会で決議の上、両社との間で「基本合意書」を締結したことを発表した。2014年4月1日、分割準備会社に放送事業を引き継ぎ(同日付で分割準備会社は「株式会社テレビ朝日」に商号変更)、テレビ朝日は、商号が「株式会社テレビ朝日ホールディングス」に変更され、認定放送持株会社に移行した。テレビ朝日の持株会社体制への移行により在京民放キー局5社が全て持株会社体制へ移行することとなった。九州最古の民放局であるRKB毎日放送(RKB)は、2015年9月29日に2016年4月1日を以って商号を「株式会社RKB毎日ホールディングス」に変更、会社分割により全国で7番目、キー局以外では2番目、西日本では初となる認定放送持株会社体制に移行すると発表した。放送事業は分割準備会社が改称する(新)RKB毎日放送が継承、RKB映画社などの子会社と共に持株会社の傘下になったが、TBSやCBCと異なり、テレビ放送事業とラジオ放送事業の分離は行わない(ラテ兼営のまま)。中部日本放送同様最古の民放局である毎日放送(MBS)は、2016年7月28日に2017年4月1日(予定)に商号を「MBSメディアホールディングス」に変更、全国で8番目、在阪準キー局かつ未上場の放送局では初となる認定放送持株会社体制に移行すると発表した。放送事業は分割準備会社である毎日放送分割準備が改称する(新)毎日放送が継承するが、RKB毎日放送同様にテレビ放送事業とラジオ放送事業の分離は行わない。今の所、認定放送持株会社制度に取り組んでいるのは東京のテレビキー5局並びに中部日本放送・RKB毎日放送の大都市圏の株式上場放送局のみである。しかしそれ故、傘下に収めることができる民放テレビ局は最大でも5局分しかない。そのため再編にあたっては各地域の基幹局を地域における核とし、核となる放送局がネットワークの軸となる方式が有力視されている。ところが、再編を進める上では各テレビ局における新聞社(とりわけ毎日・朝日・読売の大手3紙、ブロック紙および地方紙)との資本関係が障害となる。これらの意向を無視することは出来ないため、当面は経営体力が弱く、在京(東京)・在名(名古屋)・在阪(大阪)・在福(福岡)局との繋がりが深く、大手新聞社の資本影響が強い、いわゆる「平成新局」のような、傘下に収めやすい局が優先されるのではないかとみられている。
出典:wikipedia
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