痛車(いたしゃ)とは、車体に漫画・アニメ・ゲームなどに関連するキャラクターやメーカーのロゴをかたどったステッカーを貼り付けたり、塗装を行うなどして装飾した自動車である。いわゆるおたく文化から発祥し、アニメやゲームに対する個人のファン活動の一環として行われているもので、描かれるキャラクターは萌え絵の美少女キャラクターなど、平面上に描かれた「2次元」などと俗称されるイラストをモチーフとしたものが代表的である。萌車(もえしゃ)とも呼ばれる。痛車とは「見ていて痛々しい車」という意味からきた俗語であり、恥ずべき行いを「痛い」と表現する俗語に由来するものである。イタリア車を意味する「イタ車」の語感に掛けた洒落であるとも言われる。こうした車両が「痛車」と呼ばれ始めた経緯については、揶揄の意味で用いられ始めたとも、オーナーのジョークのうえでの自虐として用いられたとも言われるが、諸説があり定かではない。2000年代前半以前は愛好家同士のみで通じる隠語のようなものだったが、雑誌やインターネット上のWebサイトやテレビ番組などでの映像公開により広く認知されるようになった。模型などの商品化や専門誌の出版、痛車をテーマにしたイベントも行われている。実際の痛車は、アニメの舞台のモデルとなった場所(ロケ地巡り、「聖地」などと俗称される)や、コミックマーケット開催日3日目の東京・有明(国際展示場駅・有明駅前)や駐車場、週末の東京・秋葉原などに停まっているのを実際に見ることができる。こうした車両はアニメやゲームの宣伝車のように装飾されている場合もあるが、多くは個人による趣味の一環として行われているものである。中には公式な広告活動のための車両に痛車風のデザインを取り入れたり、自ら痛車を銘打った宣伝活動が行われたりする例もあるが、単なる宣伝カー、デコトラ、ラッピングバスは痛車とは異なる定義である。同様の改造を施した原付やバイクは痛単車(いたんしゃ)と呼ばれ、自転車の場合は痛チャリ(いたチャリ)と呼ばれる(ただし自転車の場合はフレームでは目立たず、ディスクホイール化した車輪程度しか描く場所はない)。また、似たような装飾を施したラッピング電車を俗に痛電車(いたでんしゃ)などと呼ぶこともあるが、その大半は広告活動や地域振興目的のものであり、(前述の)趣味の装飾という意味合いも含む「痛車」本来の定義には該当しないケースがほとんどである。痛車はおたく文化の一種として受け取られており、その層における興味の対象としては認知されていないような一般企業のマスコットキャラクターやドラえもんやポケットモンスターなどの一般子ども向けの作品、萌えキャラクターが登場しないロボットアニメなど、マニアックな要素のない作品は痛車の題材になることは稀である。これらのおたく要素とは、一般的には萌え絵・美少女系などの男性向けおたく作品の要素を指しているが、中には女性向け作品である『うたの☆プリンスさまっ♪』のキャラを貼った車のような例外もある。またアイドルや人気声優など実在の人物の画像を用いた痛車もあるが、これらは肖像権の侵害にあたるため。痛車に対する認知度が上がると、痛車を扱うビジネスも出現するなど盛り上がりも見せている。一方で痛車に対する世間からの評価は、などがあり一様ではない。ときおり、ボディに無数の傷を付けられる、ステッカーを剥がされるなどといった「痛車狩り」も起こっているという報告がある。なお、屋外広告物条例等に基づいて公務員や当局から委託を受けた者がステッカーの除却作業を行う場合を除き、実際にこのようなことを行うと器物損壊罪となる(「おたく狩り」も参照)。痛車は大きく以下の2つに分かれる。
ただ、近年では「グラフィックデザイン上は前者だが既存カスタムカーとしてのレベルも高い」ということからどちらに分類するか曖昧な車両もある。描かれる題材はゲーム(特にアダルトゲーム・ギャルゲー)・漫画・アニメのキャラクターや関連するロゴ、それらの製作会社・ブランド名のロゴなどがある。ボンネット・ドア・リアガラス・リアウイングなどにカッティングステッカーやカラーステッカーを貼り付けたりエアブラシなどでの塗装を行っているものがほとんどである。すぐに取り外せるようマグネット貼付で行う場合もある。マグネット以外でも、カッティング、フルカラーをイベント前日に貼り、イベント終了後は剥がす例もある。ライトアップなどの一般的なドレスアップがあわせて行われることもある。キャラ系の作例としては、次のようなものがある。カッティングステッカー、フルカラーステッカー、エアブラシなどによる装飾の欠点としては、次のような要素がある。以上の作例は一番典型的であるが「観衆受け」を重視しているため、基本的に車のデザインとしては破綻している痛車が多い。それ以外にも各種のロゴ、デザイン化したキャラクター名などで装飾した場合、一見しただけではそれと分からない場合がある。これは広義の痛車とみなされる場合が多いが、否定する者もいる。結局のところ様式を定義する機関やメディアがないため、自己の判断や周りの意見で痛車か否かを判断しているのが現状である。またアダルトゲームまたは家庭用ゲーム専門のメーカーをスポンサーにしてレース活動をしているチームも存在するが、そのゲームのキャラクターがデザインされた車両も痛車と呼ばれることがあり定義が曖昧である。内装もオーナーの嗜好によりさまざまだが、特に痛車で見られるケースとしてぬいぐるみだけでなくキャラクターやコスプレを模倣した等身大のフィギュア(ラブドール)を乗せる、シートカバーにキャラクターがプリントされた等身大シーツや抱き枕を流用する点が挙げられる。この他にも、キャラクターが着ているコスプレそのものを載せたり、クッションなどを載せることもある。さらに、電気系統では、単純に光を放つためのLEDやネオン管、さらには、カーオーディオ・AVシステムに力を入れる者も多く、側面や後部の窓に液晶ディスプレイを設置して映像(アニメ)を流し、そのためにパソコンを車載する例も見られる。ナンバープレートも希望ナンバー制度を利用して作品やキャラクター、企業・団体などに関連した語呂合わせの番号で登録することがある。1980年代にはすでにそれに類するものが存在していたが、多くの人に目撃されるようになったのは1990年代後半からである。アニメの音楽CDやぬいぐるみを車内に置いたり、タイトルロゴや作中で登場する組織・団体のエンブレムのステッカーを貼る車が増え出していた。一部に伝説や幻とまで言われた車が出現したりもしたが、この頃はあくまで個人レベルでひっそりと実行する者が大半だった。従来、熟練した職人しか行えなかった車体の装飾が、伸縮性粘着シートと大型カラープリンターの普及と、インターネットでの画像素材の流通により、手軽にできるようになっていった。2000年代に入ると車体に大きくキャラクターを描いた車両が登場した。近年では走り重視のチューニングを行い、東京オートサロンといった萌えとは関係のない自動車イベントにも見られるようになったほかBee☆Rといったチューニングショップのデモカーにあしらわれることもある。2005年、萌えろDownhill Night 2のウェブサイトの愛車投稿コーナーで、痛車の投稿が半数近くを占めていた。このことから、当時すでに愛好家の間では相当広まっていたと推測される。2007年夏のコミックマーケット会期中には、東京ビッグサイト付近で展示イベント「あうとさろーね有明2007夏」が開催された。以降、2009年夏のコミックマーケット76を除き、コミックマーケット期間に並行して開催されている。また2006年から毎年7月に岐阜県可児市ふれあいパーク緑の丘にて「萌車ミーティング」が開催され、2008年は全国から約600台の萌車が集結した。2009年から場所を郡上市のめいほうスキー場へ変更し、約1000台程の萌車が集結する。2008年11月9日には、芸文社のムック「痛車グラフィックス」主催の「痛Gふぇすたinお台場」がフジテレビ本社裏の駐車場にて開催され、約500台の痛車が集まった。中でも注目の車両は、平城遷都1300年祭応援キャラクター「せんとくん」のお兄さんの「鹿坊」(ろくぼう)くんが考案したという触れ込みの、Ferrari F430 spiderだった。これは「ウッーウッーウマウマ(゜∀゜)」とイタ車(イタリア車)の頂点に位置する「フェラーリ」の最強の組み合わせということで、フェラーリを痛車のベースにしたとのことである。2008年時点では、一説によれば痛車の愛好者は、潜在的な層も含めると5万人以上であるという説もある。また日本国外の愛好者の存在も認知されるようになった。モータースポーツの現場にも痛車風のデザインの車両や、「痛車」であることを銘打った車両が登場しつつある。2005年のもてぎEnjoy耐久レースにcolor's R&D CR-Xが参戦し、これが公認モータースポーツへの痛車の初参戦となった。国内最高峰カテゴリー初のレーシング痛車としては、2007年ADVANらき☆すたランサーが全日本ダートトライアル選手権に参戦。さらに2008年4月、メロンブックスBRIGキャッツDLシティが全日本ラリー選手権第1戦ツール・ド・九州に参戦しクラス優勝したのを皮切りに、8月にはSUPER GT第6戦鈴鹿1000kmにクリプトン・フューチャー・メディアの初音ミクをフィーチャーしたカラーリングのBMW・Z4が出場。さらにSUPER GT第9戦にはMOLAレオパレスZが鏡音リン・レンをフィーチャーしたカラーリングで参戦しGT300のシリーズチャンピオンとなっている。2012年にはフォーミュラ・ニッポンにおいてもProject μ/cerumo・INGINGがオリジナルキャラクター山口美羽を車体に配し、レース参加車としては史上初の「痛フォーミュラ」が誕生した。なお、メロンブックスBRIGキャッツDLシティは、2008全日本ラリー選手権の舗装イベントにJN-1クラスで出場。第1戦・唐津(佐賀県)、第2戦・久万高原(愛媛県)、第3戦・南丹(京都府)の3つのイベントで3戦連続でクラス優勝を収め、モータースポーツ史上初となる国内最高峰イベントでの痛車によるクラスチャンピオン獲得を成し遂げた。ツール・ド・九州2008 in唐津パンフレット内・エントラントリストでは、ドライバー、コ・ドライバー共に自らの車両のことを「痛車」と称している。下記の「レーシング痛車」は、日本自動車連盟(JAF)および国際自動車連盟(FIA)の公認レースでフル参戦や途中参戦したマシンのみを記述する。上記に当てはまらない著名な大会での参戦車両には以下のようなものがある。ゲーム内の車両にユーザー独自のペイントを施すことが可能なレーシングゲームを用いて、痛車風のデザインを施すユーザーがいるが、オンラインゲーム上でこれを用いる場合、著作権の問題を理由に、場合によっては運営・メーカー側も何らかの対策(ペナルティ)を用意している場合もある。中には一定の条件を満たすことにより、あらかじめ収録されていた痛車が使用可能になるレースゲームもあるが、これらは自社のビデオゲームのキャラクターを使用しているものがほとんどである。2008年には青島文化教材社より痛車を題材にしたプラモデルが発売された。2008年1月の新商品として青島文化教材社から涼宮ハルヒの憂鬱のキャラクターを描いた痛車(ベース車両はRX-7(FD3S))、続いて同年4月には第2弾としてスプリンタートレノ(AE86)をベースに『ToHeart2』のキャラクターを描いた痛車、そして第3弾で マツダ・ロードスターをベースにした『らき☆すた』痛車と、発売1年強で正規7種+α(トラック)をリリースしている。さらに同社は「痛車」を商標登録に出願し、2008年6月27日に登録されたほか、ミニカー、デカールのみのシリーズも発売された。後発となったフジミ模型はコトブキヤと手を組み、痛車プラモデルのシリーズを発売したほか、グッドスマイルレーシングからもデカールが多種類発売された。タミヤ模型からは、痛車ミニ四駆としてピアプロとのコラボ企画で初音ミクおよび鏡音リン・レンをあしらった車両が発表された。ベース車はトルクルーザーと推測される。また当該車両以外のモデルやラジコンでペイントや自作デカールにより手を加えた痛車を作る者も増えてきている。ただし、ラジコンに関しては元々ポリカーボネート製のクリアボディを裏から塗装するという技法を用いることから、アニメのセル画の要領でボディにキャラクターの輪郭線をトレースし裏から着色してアニメのキャラクターをボディにあしらうという愛好家が1980年代頃から既に存在し、痛車という言葉が存在する前はキャラボディと呼ばれ、ラジコン専門誌であるRCマガジンの読者投稿のコーナーでもしばしば取り上げられていた。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。