ル・マルトー・サン・メートル(Le marteau sans maître, 主なき槌)はフランスの作曲家ピエール・ブーレーズの作品。1947年から開かれたダルムシュタット夏季現代音楽講習会において、ブーレーズは「ピアノソナタ第2番」(1948年)、「ストリクチュール第1巻」(1951年)、「ポリフォニーX」(1951年)などの作品によりミュージック・セリエルの旗手として台頭していた。その中でこの作品は1953年から1955年にかけて作曲され、1955年6月18日にハンス・ロスバウト指揮によってバーデン=バーデンで初演された。ストラヴィンスキー、リゲティやシュトックハウゼン、アドルノなど多くの音楽家の賞賛を浴び、ブーレーズの名声を一気に国際的なものにした。アルト(女声)ソロ、アルト・フルート、ヴィオラ、ギター、ヴィブラフォン、シロリンバ、打楽器。中音域の楽器が多いことが特徴である。作曲者によると、シロリンバはアフリカのバラフォンを、ヴィブラフォンはバリのガムランを、ギターは日本の琴を模しているという。フランス語ではヴィオラのことをアルトaltoと呼ぶため、フランス語での楽器編成には女声のAltoと楽器のaltoの表記に注意する必要がある。2016年現在はシロリンバのパートは4オクターブ・シロフォンで演奏されることが多く、シロリンバで演奏されることはほとんどなくなっている。シロリンバは樹脂の劣化が速く、思ったほど鳴らなくなってしまうことが分かったからである。ブーレーズ自身はこの作品がシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」(1912年)の影響を受けたことを表明しており、アルトと6つの楽器という特殊なアンサンブル、1曲ごとに変化する楽器編成、曲全体が3つのサイクルに分かれている点はそれを示している。またそれまでの「ストリクチュール第1巻」や「第2ソナタ」などの作品で顕著であった厳格なセリー・アンテグラルに対し、この作品ではより柔軟な使い道を示準しておりセリーの自由度が飛躍的に高まった。ブーレーズ本人は「音列の改変はもう分析不可能なレヴェルにまで達している」とダルムシュタット夏期講習で発言したものの、その後エルサレム大学のLev Koblyakov(レフ・コブリャコフ)によって、全曲の音高解析が行われた。ブーレーズがどこまで改変を行ったかは"Koblyakov, Lev. 1990. Pierre Boulez: A World of Harmony. Ph.D. diss., Hebrew University of Jerusalem. Chur: Harwood Academic Publishers. ISBN 3-7186-0422-1"にそのすべてが記録されている。この作品は全9楽章である。テクストはフランスのシュルレアリスムの詩人ルネ・シャールの詩集「ル・マルトー・サン・メートル」(1930年)から3つの詩が用いられている。またブーレーズは既に2つのカンタータ作品『水の太陽』『婚礼の顔』で彼の詩を用いていた。
出典:wikipedia
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