


ラヴクラフト神話(ラヴクラフトしんわ、Lovecraft Mythos)はラヴクラフト研究者であるS・T・ヨシ ()が、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説世界を表すために使用した言葉。 同様の内容を指す言葉として原神話や、ロバート・M・プライスによって用いられた"クトゥルフ神話プロパー"(Cthulhu Mythos proper)などがある。ラヴクラフトの後輩作家であるオーガスト・ダーレスらが後に体系化した"クトゥルフ神話"と区別するための用語であり、ラヴクラフト自身が「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」のコンセプトに則って記した作品(後述)、および彼の生前に彼の監修・許可の元に書かれた作品群のみを主体とする点が相違点である。ダーレスらの体系にはラヴクラフトの全作品、およびラヴクラフト自身までもが含まれるが、この定義に従えばラヴクラフトの「非コズミック・ホラー」作品や彼の死後に作られた作品・設定は全て除外される。このような定義が生まれた背景には、クトゥルフ神話の「フィクションの上に積み上げられたフィクション」としての性格があり、線引きと拡大解釈との問題が常につきまとう点が挙げられる。山本弘は以下のような例を挙げている。ヘンリー・カットナーは、自身の短編『ハイドラ』において妻のC・L・ムーアの創造による暗黒神「ファロール」をクトゥルフ神話の「アザトース」と共に言及している。ファロールはムーアの「ノースウェスト・スミス」シリーズにも登場するが、ムーアの意図とは関係なく同シリーズもクトゥルフ神話に含めるべきであろうか? また、ダーレスによって後世に付加されたクトゥルフ神話の設定の例としては、「旧神」が邪悪な「旧支配者」を封印したとする設定、およびそこから来る善悪二元論的な側面、また、旧支配者と四大元素の関連がよく挙げられる所である。前述のラヴクラフト研究者S・T・ヨシによれば、ラヴクラフト神話には以下の4つの重要な要素が存在する。なお、これらの要素は多くのラヴクラフト作品に登場するが、ラヴクラフト自身が体系立てて考えていたものではなく、著作を進めていく中で築き上げていったものである。上記のように、ラヴクラフト作品における「神話」もまた時間を掛けて統合されていったものである為、ここでも「神話」に含まれる作品を一律に判定する事は難しい。特に問題となる事が多いのは『未知なるカダスを夢に求めて』など、ラヴクラフトの「夢の国」ものの一連の作品 ()である。一例を挙げると東雅夫は自身のガイドブックで「固有の神格や魔道書がストーリーに密接に関わるもの」を「神話」と定義し、「夢の国」ものの初期作品は除外したリストを挙げているが、この定義の違いによってリストは全く違ったものとなる事を認めている。今日各社から出版されているクトゥルフ神話のガイドブックの類でもこれは一様でなく、注意が必要である。
出典:wikipedia
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