食料自給率(しょくりょうじきゅうりつ)とは、1国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産でまかなわれているかを表す指標。食料を省略して自給率と言われる場合もある。食料自給率には、以下の種類がある。小麦や米など、個別の品目別の自給率のこと。算出にあたっては、品目の重量を使用する。個別の品目ごとではなく、一国の総合的な自給率。以下の2種類があるFAOのwebサイトにある(食品バランスシートハンドブック)(4章 食糧バランスシートデータへの応用と用途)には以下の4種類をあげている。標準化した食品のバランスシート輸入依存率 (IDR)自給率 (SSR)食品供給のパターン分析日本の農林水産省が推計した、1965年から2007年までの主要国の食料自給率は以下の通りである。これは経済統計のように各国がそれぞれ計算して発表したものではない。日本は世界最大の食糧輸入国であり、平成20年(2008年)財務省貿易統計によると、食糧輸入額は約5兆6000億円で世界全体の10%を占めている。日本の食糧自給率は、カロリーベース総合食料自給率で39%(平成26年(2014年)度)、生産額ベース総合食料自給率では64%となっている。農林水産省の試算では日本の平成26年(2014年)度の品目別自給率は平成26年(2014年)度の米、麦、とうもろこし等の穀類の日本国内の総需要(仕向量)は、3310万トンで国内生産は968万トン(総需要の29%)であった。総需要3310万トンの内訳は飼料用1489万トン(45%)、加工用503万トン(15%)、純食料1159万トン(35%)となっている。平成22年(2010年)度の大豆など豆類では総需要404万トンに対し国内生産32万トン(8%)で、需要の内訳は飼料用12万トン(3%)、加工用270万トン(67%)、純食料108万トン(27%)となっていた。魚介類の総合自給率は54%と報告されているが、2010年度の国産漁獲は531万トンでその内訳は沿岸漁業129万トン、沖合漁業236万トン、遠洋漁業48万トン、海面養殖111万トン、内水面漁業8万トンとなっており、自給率の1割弱は遠洋漁業によるものである。食用魚介類のみでは自給率は若干高く2010年度は62%であった。2011年度の国産漁獲量は東日本大震災の影響もあり2010年度比で約1割減となった。畜産物(肉類・卵類・牛乳・乳製品等)の自給率が高くなっているが、必要とする飼料用の穀類は4分の3は輸入に頼っており、輸入飼料による飼育分を輸入畜産物と見なすと、畜産物の自給率は16%(2010年度)である。各都道府県の食料自給率(カロリーベース)では、100%を超える都道府県は北海道と青森県、岩手県、秋田県、山形県のみである。北海道は192%と全国一の値を誇る。一方、一番低い東京都は、約1%となる。また、穀物自給率は28%となっている。これは、173カ国・地域中124番目(2002年時点)となっている。日本国民の意識としては、7割の人が食料自給率を低いと感じている。4大穀物(米・小麦・トウモロコシ・大豆)のうち、小麦・トウモロコシ・大豆のほぼ全量を輸入に頼っていることが大きい。その背景には水稲が単位面積あたり収量が高いのに比して小麦・トウモロコシ・大豆はさほどでもなく、広大な農耕地の確保が収量単価引き下げに影響しやすいこと、日本の国土(山間部が多く大規模平野が少ない)・風土与件(温暖多雨)として単位収量の高い水稲栽培が適していた事など栽培収量の効率性に関する与件がある。また小麦・大豆・トウモロコシには連作障害の問題があり、水稲から転作した場合毎年おなじ作付けを行うことが出来ず、休耕か輪作(たとえば大豆ならイネ→大豆→根菜→イネが代表的)が必要となり、これが土地利用の制約条件となり海外穀物との比較劣位の要素となっており、また設備投資や農地改良の点で水耕稲作を選択させやすい要因にあげられる。食事の洋食化や外食の増加、第二次世界大戦以降のアメリカによる小麦戦略の影響など、国民の食料消費品目の変化に、国内の農業が対応できなかったとの指摘がある。米の消費の減少に替わって畜産物や油脂の消費量が増大してきたが、肉類や卵など畜産業そのものの国内自給は必ずしも低くないものの、畜産物や油脂を生産するための大量の穀物や原料を輸入に頼る点が大きい。人口に対して国土が狭いという日本の条件のため畜産物と油脂の消費の増加についていけない。主要先進国でも日本ほど食事の変化した国はない。飼料自給率の低さ(1980年代以降、20%台で推移。2005年時点で25%)が、畜産製品の自給率に影響を与えている。畜産の飼料輸入は、自給率を低くする要因となっている。畜産物・油脂のほかに輸入に依存している割合が多い食料は、小麦や砂糖である。日本の農産物の関税率については、高関税品目の割合は1割であるが、9割の品目は極めて低関税であるため全体としては欧米諸国と比較して低い関税率となっている。その結果として、日本の食料市場におけるカロリーベースの海外依存度が6割を占めるという、高い対外開放度を実現している。農産物への補助金については、日本の国内補助金はEUやアメリカより小さく、輸出補助金も実質的な補助金も含め多用している欧米輸出国に対して、日本では輸出補助金ゼロとなっており、高品質をセールスポイントとして補助金に依存しない形での輸出の増加を目標としている。また、日本は低関税率、輸出補助金ゼロ、価格支持政策が廃止、という保護水準の低さにより低自給率となっているのに対し、高自給率の欧米諸国は、高関税、農家への直接支払い、輸出補助金、価格支持政策の組み合わせによる政府からの保護により高自給率となっている。ちなみに、農業所得に占める政府からの直接支払いの割合は、フランスでは8割、スイスの山岳部では100%、アメリカの穀物農家は5割前後というデータがあるのに対し、日本では16%前後(稲作は2割強)となっている。また大量に輸入して大量に捨てていることも問題である。現代人が好む揚げ物では調理に使われる油脂はカロリーベースでほぼ全量が廃棄されている。廃棄物学の専門家である高月紘によれば、生ゴミのうち食べることが可能な部分が捨てられたものは、2002年では38.8%を占めていた。買ったままの状態で捨てられていたのは11%で、その6割が賞味期限の前に捨てられていた。外食産業では、宴会や披露宴、宿泊施設での食べ残しが13~22.5%と多い。雑誌「農業経営者」によれば、カロリーベースで見た日本の食料自給率の低さが問題とされ、多くの国民の心配事となっているがこの自給率推計には以下の多くの問題点があるとしている。以上の点から、日本の食料自給率が国際的に本当に低いのか疑問が残るとしている(高い食品廃棄率の原因として、品質の過度の追求、具体的には外見に重きを置きすぎる品質基準や、製造年月日に過敏すぎる消費者の目があげられている)。経済学者の野口悠紀雄は、カロリーベースの食料自給率向上は、政策として無意味であると主張している。現代日本農業 では、生産物の移動、飼料、生育環境の構築等に原油 が絶対的に必要であり、エネルギー自給率が4%しかないのに、摂取する食物だけを評価の対象とするカロリーベースの自給率を向上させたとしても、日本国内でエネルギー自給が著しく低い以上、無意味であるというのがその論拠であるとしている。この論拠は、原油が国際紛争の手段として禁輸される可能性があるのに対し「国際紛争の手段として食料禁輸措置がとられることはありえない」という認識に基づいているとしている。食料の安定供給と食料自給率との関係にも疑問が提示されている。たとえば2008年度中に食糧暴動のあった国と、穀物自給率はほぼ無関係である。また日本の歴史においては飢饉にもっとも弱いのは、天候不順に直撃された自給性の強い農村であり、都市部や、農村部でも商品作物に依存する村では、金を持っているのでそれほど食料には困らなかったという研究がある。現代にあっても飢饉にさらされるのは主として農民であって、より広い地域からの食糧調達が可能な都市民はそれほどでもない。三菱総合研究所政策・研究センターは「1億人を超える人口の食料を国内だけで確保することは容易ではない。輸入相手国の多様化、輸入相手国との良好な外交関係の構築も重要である」と指摘している。経済学者の竹中平蔵は「『食料安全保障』は、食料自給率を高めることだけとは限らない。食料自給率を保ちながら、食料調達先の分散化・多元化を図っておくことが重要である。また、エネルギーが無ければご飯も炊けなくなるため、エネルギーの多元的な確保が必要である」と指摘している。国外からの食料供給が途絶えたら国民が飢えるため食料自給率を向上させなければならないとする意見がある一方で、食料自給率を重視するあまり農業を保護し過ぎると国民のためにならないという意見がある。経済学者の根岸隆は「戦争などが起きた場合に備えて、食料自給率を維持しなくてはならないという議論がある」と指摘している。農学者の川島博之は、日本人が食料自給率を問題視するのは太平洋戦争時の飢餓とオイルショックのトラウマがあるからだと指摘している。経済学者の若田部昌澄は「『食料自給率の向上』は比較優位に逆行している」と指摘している。経済学者の田中秀臣は「海外から輸入で安く手に入るのに、わざわざ日本人を多く雇い割高な農産物をつくって自給率を高めるというのは経済的にナンセンスである」と指摘している。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。