『断章のグリム』(だんしょうのグリム)は、甲田学人によるライトノベル。イラストは三日月かける。電撃文庫より2006年4月から刊行されており、2012年5月に最終巻となる17巻が発刊された。2009年にドラマCD化されたほか、2015年には『コミック特盛新耳袋』で松坂ユタカ作画による漫画版の掲載が始まったが、同誌休刊のためウェブコミック配信サイト『画楽ノ杜』に移籍。ライトノベル作家である甲田学人による、『Missing』に続く2作目の長編シリーズ。多岐に渡る薀蓄を物語に織り交ぜる作風は今作にも現れており、都市伝説や民話が取り上げられた前作に対し、今作はグリム童話を始めとした世界の童話の雑学が豊富に盛り込まれている。〈泡禍〉と呼ばれる、しばしば童話になぞらえた形で起こる怪奇現象を取り扱った物語で、〈泡禍〉を生み出す原因となった個々人の過去のトラウマや、〈泡禍〉によって起こった惨状の描写は流血を伴うものが多く、グロテスクで悪夢的なテイストが特徴となっている。登場人物の死亡率が高く、ゲストキャラが全員死亡するなどのバッドエンドに近い巻もしばしばある。童話をモチーフにした物語がエログロに彩られる傾向は珍しくないが、今作はグロテスクな描写は濃いものの、性的な描写はない。キャッチコピーなどでは「幻想新綺譚」と書いて「メルヘン」と読ませており、「鬼才が贈る幻想新綺譚」「狂気の幻想新綺譚」「悪夢の幻想新綺譚」といった宣伝文句が使われている。「普通」を愛する平凡な高校生・白野蒼衣は、ある日突然、学校を休んだクラスメイトの元へ届け物をしに行く途中で謎の怪現象に遭遇した。状況が飲み込めないままに、蒼衣はそれを追っていた漆黒のゴシックロリータの衣装を身に纏う美少女・時槻雪乃に出会う。雪乃や、雪乃経由で引き合わされた古物商・鹿狩雅孝からその現象が〈神の悪夢〉から生まれた〈悪夢の泡〉・〈泡禍〉と呼ばれるものだ、という説明を受けた蒼衣。その日から自分が愛していた「普通の日常」とは対極の、〈神の悪夢〉が創り出した悪夢の童話が顕現する世界に巻き込まれていく事になる。〈断章保持者〉として目醒め、〈騎士〉となることを決心した蒼衣。雪乃とパートナーとして行動を共にするようになったその頃、雪乃に唯一普通に接するクラスメイト・媛沢遥火の身に異変が起こっていた。遥火が昔のトラウマから恐怖症のように苦手としていた駐車場。そこに停まっていた車の窓に、まるで赤ん坊が覗き込んでいたかのようにべったりと手形がついていた。同じ頃、蒼衣は〈グランギニョルの索引ひき〉によって、恐らく雪乃も一緒に、巨大な〈泡禍〉に巻き込まれる予言を受ける。六月初旬。〈泡禍〉解決の要請を受け、蒼衣と雪乃は神狩屋と共に海辺のある町を訪れた。神狩屋がかつて暮らしていたというその町に、雪乃の姉・風乃の亡霊はかつてないほどに溢れ出した〈泡禍〉の気配を感じ取る。その魔の手は奇しくも、神狩屋の亡くなった婚約者・志弦の一家にも及んだ。「泡に触れると身体が溶ける」ー 志弦の妹・海部野千恵も直面したその凄惨な現象はやがて町全体を飲み込んでゆく。一方蒼衣は『人魚姫』の予言を紐解くうちに、神狩屋と海部野家の過去に触れ、そして雪乃の何気無い発言の中に〈泡禍〉解決の手掛かりを見つける。神狩屋ロッジの元に、アプルトンロッジの「世話役」四野田笑美が〈泡禍〉事件の解決要請にやって来る。そこで蒼衣と雪乃が出逢ったのは、冷たい雰囲気を持つ颯姫の妹、瑞姫と、二人に敵意を向ける非公認の〈騎士〉馳尾勇路。彼は街で起きた女子中学生の失踪事件に幼馴染の斎藤愛が関わっている事から、〈泡禍〉を一人で解決しようと奔走していた。だがその「焦り」が仇となって〈泡禍〉は瞬く間に膨れ上がり、その果てに雪乃が意識不明の重体に陥る。手足を切られ石を詰められた死体。一赤いものを頭につけていると影に連れて行かれるー。蒼衣が街に伝わる都市伝説に隠された『赤ずきん』の手がかりに気付いた時、狂気は最悪の結末を迎える。形見の指輪。それは彼女にとって唯一遺された母親との繋がりであり思い出であった。継母との確執に苦しみ、友達の雪乃の家で泣いている古我翔花。彼女の元に現れたのは退廃的な美しさを持つ雪乃の姉、風乃だった──。さらに「占い」の果てに〈悪夢〉に取り憑かれた少女や、些細な「嘘」をきっかけに親友の〈影〉に悩まされる少女など、イソップ童話を元に生まれた、小さな〈泡禍〉の物語。「人魚姫」の事件から2か月。蒼衣と雪乃は唯一の生存者で、現在は群草ロッジに預けられている千恵の見舞いにやって来る。少しずつだが気力を取り戻していく彼女に蒼衣が安堵していた矢先、女子高生・金森琴里の自殺をきっかけに〈泡禍〉が巻き起こる。『これから死ぬ人の前に花瓶が見える』〈保持者〉木之崎一真。琴里の死から枯れる事のないユリの花。相次ぐ自殺者の出現。〈泡禍〉が一真の親友、臣にまでおよびかかった時、蒼衣は究極の選択を迫られる。〈泡禍〉事件解決に赴いた雪乃が帰って来ない。神狩屋からそう連絡をもらい、駆け付けた蒼衣が見たものは、異常現象で外界と遮断された「邸(やしき)」だった。”生まれ変わりの子供” の噂、死んだ姉と同じ名前を付けられた少女・真喜多莉緒。何度死んでも異形となって生き返る母親、そして二人の前に現れた「少年」。事件解決の糸口を見つけた時、蒼衣が導き出した『答え』と『結末』は──。あての無い逃避行を続ける一組の男女・・・・多代亮介と浅井安奈。二人を追うのは『葬儀屋』から依頼を受けた蒼衣と雪乃。『葬儀屋』の〈断章〉により生き返った「人」は「人」ではなくなる。〈泡禍〉の拡散と被害を食い止めるため二人は奔走するが、『しあわせな王子』の〈泡禍〉はすぐそこまで迫り、さらには『葬儀屋』をも巻き込んで「最悪の悪夢」へと変貌する。『葬儀屋』の件から数日後、自責の念に駆られる蒼衣は自分の〈断章〉による悪夢に悩まされていた。また『葬儀屋』を失った代償はことの他大きく、神狩屋ロッジにはその事で蒼衣に責任を求める抗議が相次いでいた。それでも雪乃の為に〈騎士〉として現場に赴く蒼衣。その田舎町で発生した女性の自殺未遂をきっかけに巻き起こる〈泡禍〉。突如見えない「手」に髪を引っ張られる。消えたはずの「死者」が帰って来る。そして〈悪夢〉の『舞台』が病院に変わった時、『終焉』の幕が上がる。神狩屋がロッジから姿を消してから数日。蒼衣は彼が去り際に残した「言葉」がずっと引っかかっていた。そして自分の〈断章〉を理解し向き合うために、自身の〈悪夢〉の調査を開始する。外界の全てを拒絶した少女・溝口葉耶。食い違う〈悪夢〉。そして神狩屋の目的と蒼衣の〈断章〉に隠された「秘密」。〈悪夢〉が連鎖を呼び、全てが一つになった時、蒼衣たちを待つ結末は──。※キャストはドラマCD版のもの。主人公の白野蒼衣やヒロインの時槻雪乃を初めとした、物語の中心人物らが所属するロッジ。世話役は、神狩屋こと鹿狩雅孝。古物店の「神狩屋」を拠点としている。世話役は四野田笑美。喫茶&ナイトバー「アプルトン」を拠点とする。世話役は群草宗平、後に木之崎一真がその跡を継ぐ。工芸店「群草工芸」を拠点とする。世話役はリカ。店などの決まった拠点を持たず、インターネットを介しつながっている騎士たちのロッジ。ロッジとしては変わり種であり、集うメンバーも風変わりな人物が多いという。神が見た悪夢。作品中での「神」とは「すべての人間の無意識は共有されている」という集合無意識に眠っている絶対存在のこと。神は全知ゆえにこの世のすべての恐怖を見て、そして、全能なるゆえに神の手で切り捨てられ、それが人間の抱える恐怖に浮かび上がり溶け合い、現実となった悪夢。及び、その悪夢が引き起こす一連の異常現象。「物語には共通点が見られるものが多く存在する」という考えから、童話、また番外編では寓話に符合することが多く見られ、符号からこれから起こる泡禍を予測、あらかじめ対策をとることが可能と考えられている。〈泡禍〉から生還した人間の心に残された〈悪夢の泡〉の欠片。〈泡禍〉によって対象者に植えつけられたトラウマを引金として、現実世界に様々な異常現象を呼び出す事ができる。これを持つ者を〈断章保持者〉(フラグメント・ホルダー)と呼称する。〈泡禍〉に対する唯一無二の対抗手段ではあるが、いつ暴走するか分からない危険性を孕んだ諸刃の剣。また、人間の心が有限ゆえに、無限の普遍性を持つ神の悪夢は一つしか所有できない。この性質のために、〈断章保持者〉は他人の悪夢によって異形(後述を参照)化する事はない。〈断章保持者〉の中でも、〈泡禍〉に巻き込まれた人間を救うために無償で戦う者達が所属する相互扶助組織。〈騎士団〉に所属する〈断章保持者〉を〈騎士〉(オーダー)と呼称する。ただし、所属する全員が戦闘要員ではなく、約8割はサポートや補助に徹している。それでも〈騎士〉と、そうでない〈断章保持者〉の死亡率は2倍も変わらない。〈断章〉の暴発の危険性と頻度を如実に表している数字と言える。また、〈騎士団〉の活動拠点となる場所は〈ロッジ〉と呼称される。彼らの任務には、〈保持者〉の〈断章〉が暴走しないようにすることも含まれる。例えば、断章詩の使用や特定の服装(雪乃のゴスロリ衣装など)への着替えなどは有事の際に〈断章〉を発動しやすくすると同時に〈断章〉の暴走を抑えるためのもの。
出典:wikipedia
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