交響曲第88番ト長調 Hob.I:88は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1787年に作曲した交響曲で、「V字」の愛称で知られている。この通称は、ハイドンの交響曲の古い分類方式にちなんでいる。「パリ交響曲」や「ロンドン交響曲」の1曲でもなければ、曰くありげな愛称が付いているわけでもないものの、ハイドンの最も有名な作品の一つとなっている。第88番は、エステルハージ家の楽団のヴァイオリニストヨハン・ペーター・トストが、楽団を去ってパリで活動することになり、パリで演奏するということでトストから依頼されて1787年に作曲されたものである。その際、第89番と一緒に餞別し、出来るだけ高額な値段で売るように助言したという。楽団の編成上の制約がなかったためか、オーケストラの扱いに自由さをみせている。一連の「パリ交響曲」の中でも最もすぐれており、「ザロモン交響曲」と並ぶ傑作とされている。タイトルの「V字」は、ロンドンの出版社がハイドンの交響曲の選集を出版する際に付けた整理用の番号のことで、タイトルと交響曲自体の内容は全く関係していない。また、ブラームスはこの交響曲の第2楽章を聴いて、「私の第9交響曲はこのように聴かせたい」と言ったと伝えられている。フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニー、通奏低音楽器（チェンバロ）、弦楽五部。以下のように標準的な4楽章制を採る。第2楽章は主題と6つの変奏で構成され、第4楽章はロンドソナタ形式による。

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