『クトゥルフの呼び声』(クトゥルフのよびごえ、Call of Cthulhu)とは、アメリカのゲーム会社であるケイオシアム社が製作したクトゥルフ神話の世界観を体験するホラーテーブルトークRPG(TRPG)である。日本語版はホビージャパンとエンターブレインから発売されている。翻訳版のタイトルはホビージャパン版は『クトゥルフの呼び声』であったが、エンターブレイン版は『クトゥルフ神話TRPG』となっている。なお、d20システムをつかったスピンオフ作品である『コール・オブ・クトゥルフ d20』という製品も新紀元社より翻訳されており、それについてもこの項目で併せて扱う。クトゥルフ神話をテーマにしたゲームの1つ。1981年にアメリカ合衆国のケイオシアム社から発売されている。ゲームデザインは『ルーンクエスト』などにも関わっているサンディ・ピーターセン(Sandy Petersen)や『ストームブリンガー』などにも関わっているリン・ウィリス(Lynn Willis)が担当している。基幹システムは『ルーンクエスト』や『ストームブリンガー』などと同じベーシック・ロールプレイングを採用している。プレイヤーキャラクターの創造は、シナリオの舞台となる時代/地域ごとにリスト化された職業リストの中から1つを選び、その職業に適する技能を習得することで行われる。このゲームではゲームマスターではなく「キーパー」と呼ばれる役割の人物がゲームの進行をする。これは"The Keeper of Arcane Lore"の略であり、日本語にするなら「神秘の護り手」「いにしえの知識の守護者」のような意味となる。また、日本語版のルールブックおよび関連製品では本作のプレイヤーキャラクター(PC)を「探索者」と呼称しているが、これは日本語版の独自の呼称であり、原語版では単に"Character"としか呼称されていない。これ以後は日本語版に合わせた表記とする。他のベーシック・ロールプレイングを使用したゲームと比べると戦闘に関するルールはかなり簡略化されており、代わりに文献調査に関するルールが厳密に作られている。これは『クトゥルフの呼び声』で再現されるシチュエーションに、古代の魔導書や研究者の残した日記を読み返すというものが多いからである。日記を読むことが多いというのは一見すると不自然なように思えるが、ラヴクラフトの小説の多くが「宇宙的恐怖の被害にあったものが残した手記による回想」という形式で書かれており、被害者の日記を読み返すことは『クトゥルフの呼び声』ではもっとも重要な情報源になることが多い。特徴的なルールとして「正気度」という概念がある。これはPCがどれだけ理性を保っていられるかを示すものである。正気度の数値は、SANという能力値から算出される「正気度ポイント(Sanity Point)」であらわされ、ショッキングな出来事に遭遇したり、宇宙的恐怖に関する知識を「知ってしまった」ときに「正気度ロール」と呼ばれる行為判定を行い、これに失敗すると正気度ポイントが減っていく。正気度ポイントが多く減ってしまうとプレイヤーキャラクターは狂気に陥り奇異的な行動を行うようになる。これを「発狂」という。また、一部の強力な宇宙的恐怖相手だと正気度ロールに成功しても、減少値は失敗時より少ないとはいえ正気度ポイントが減ってしまう。なお、恐怖に慣れていくことにより自動的に正気度ロールに成功するようになるのだが、あくまでも判定に成功するだけであるので、成功でも正気度が減少する相手に対してはあまり効果が無い。これは、恐怖そのものが人間の本能であるため完全に取り除くことは不可能であるということを表している。また慣れも種族ごとに細分化されており、宇宙的恐怖全般に慣れる訳ではない。正気度ロールの目標値はロール時点の残り正気度ポイントであり、正気度が減れば減るほど正気度ロールに失敗しやすくなっていく。また、正気度ポイントの最大値は【クトゥルフ神話】スキルの上昇とともに減っていく。狂気は「一時的狂気」と「不定の狂気」に分かれていて、「一時的狂気」は数分から数時間でおさまるパニック状態に過ぎないが、「不定の狂気」に陥ったものは精神病院に入って適切な治療を受けないと正気には戻れない。また、恐怖症などの精神的疾患を残す場合もある。正気度が0になったものは完全な狂人となる。宇宙的恐怖の信奉者の多くは完全な狂人である。このような状態になった探索者はNPCとして扱われることとなる。プレイヤー本人は新しく探索者を作成し、それを使ってプレイすることとなる。事件を解決できるか、解決せずとも生還できたならば正気度が回復するが、回復量は減少量より少ない場合が多い。また、宇宙的恐怖に対して卑小な探索者が対抗するには、知識を深め対抗策を講じて行くしかないが、前述の通り【クトゥルフ神話】スキルが増えるほど正気度の最大値が減る。そのため探索者Cは宇宙的恐怖に(一時的に)勝利したとしても破滅に向かって行くこととなる。人間より圧倒的に能力が上回る宇宙的恐怖が一度顕現すれば、その存在と戦う前から結果が見えている。対して探索者は知恵で対抗するのだが、それでも眷属の人間を上回る肉体と恐怖を感じさせる外見に苦戦し、またその過程で知ってしまった知識に翻弄されていくことになる。正気と狂気が細かくルールで表現されているのは、ラヴクラフトの小説の多くにおいて宇宙的恐怖に出遭った被害者が狂人として描かれているからである。適切な知識を有するものならば魔法を使用することが可能である。しかし、この世界の魔法は一般的なファンタジーの魔法と異なり宇宙的恐怖にかかわるものであり、その行使には正気度の損失を伴う。また、魔法の習得に必要な魔術書は忌まわしき書として焚書・発売禁止となっているため非常に貴重であり、また断片的ながら宇宙的恐怖に関する記述がなされているため読むことで正気度を損失することになる。ほとんどの魔法は召喚魔法のため、怪物が魔法を使うことは少なく、人間が使用する場合が大半である。正気度ポイントが0である魔物の信奉者はこれ以上正気度を減少させようが無い為、魔法を会得できさえすれば、マジックポイントが許す限り魔法を使用できる。また、深きものどもの様な魔法を行使可能な知恵を持つ魔物も居るが、基本的に教団の一般信者と扱いは変わらず魔法を使うものは少ない。ゲームの舞台は、「狂乱の時代」といわれた1920年代アメリカを基本にしている。これはラヴクラフトの怪奇小説の多くがこの時代に出版されたためである。追加ルールを記したサプリメントの中には1920年代のアメリカ以外の時代/地域を舞台に遊ぶための情報が載っている物もある。それらのサプリメントにはその時代 / 地域出身のプレイヤーキャラクターを創造するためのルールやデータが掲載されており、加えて、その時代 / 地域の風俗や文化、物品の価格なども掲載されている。最新版の基本ルールブックでは、「1890年代」、「1920年代」、「現代」の3つの時代をフォローしており、探索者を作るときはシナリオの時代設定に併せて、どの時代の出身かを選んでから作るようになっている。『クトゥルフの呼び声』は日本において、ホラーゲームとしてだけでなく「近現代を舞台にしたテーブルトークRPG」としてもクトゥルフ神話ファン以外にも人気が出たタイトルである。『クトゥルフの呼び声』が初めて日本語で販売されたのは、テーブルトークRPG黎明期である1986年のことであった。当時は日本語版ダンジョンズ&ドラゴンズが初登場して間もない頃で、ファミコンで『ドラゴンクエスト』が出たばかりの年でもある。TRPGどころかRPGそのものの知名度も低い時代であり、その中で「剣と魔法のファンタジーではないRPG」というのはかなり挑戦的なタイトルであったといえる。クトゥルフ神話自体も日本では知名度があまり高くなかったこともあり(むしろ、このゲームの翻訳がきっかけで日本のSF/ファンタジーのファンに「クトゥルフ神話」が広まった部分もある)、このゲームは発売のかなり当初から「20世紀を舞台にしている」ことの方が注目された。日本市場において中世ファンタジー世界以外を舞台にしたTRPGが主流になるのは1990年代後半以降のことであり、1980年代において20世紀を舞台にしたTRPGというのはそれだけで強いインパクトを持っていたのである。特に、基幹システムであるベーシック・ロールプレイングは世界観を限定しない汎用システムであるため、ほとんど無改造で現代日本を舞台にすることも可能なことが注目された。『クトゥルフの呼び声』は1920年代の人間を前提とした技能が揃っているが、これらの技能は実は20世紀末の人間に適応してもほとんど違和感がなかったのである(コンピュータプログラミングに関係する技能だけは他の技能で代用できないが、1980年代での『現代』ではコンピュータはまだまだ一般には浸透していなかったため、「現代もの」として遊ぶときにコンピュータに関する技能がなくてもあまり問題ではなかった)。ユーザーの間では伝奇アクションもの、探偵もの、学園ものなど、およそクトゥルフ神話とは直接関係ないようなテーマのシナリオも、このシステムで遊ばれることが多かったようだ。ベーシック・ロールプレイングを搭載しているため、恐怖要素に関するルールを排除しても十分「現代を舞台にしたゲーム」として遊ぶことができたのである。特に文献調査に関するルールが詳細な点は、ホラーと関係ない現代ものとも相性が良かった。このようなユーザー側の需要を加味して、日本では『クトゥルフの呼び声』を現代日本で遊べるサプリメントが作られた。また、『クトゥルフの呼び声』をベースにした学園ドラマRPG『放課後怪奇くらぶ』が発売された。ただしこのような需要はあくまで日本のテーブルトークRPGに「現代もの」のゲームがほとんどなかった1990年代前半までのものであった。ホビージャパンでの『クトゥルフの呼び声』の展開が停止した1990年代後半からは日本のテーブルトークRPGの世界に「現代もの」のゲームが一気に増え始めたのである。21世紀に入ってから『クトゥルフ』のTRPGが新紀元社やエンターブレインから再展開しているが、この時点では『クトゥルフ』でホラー要素のない汎用的な現代ものを遊びたいという需要はほとんどなくなっている。日本語で展開されている製品のみ記述する。発売年は特に注釈がない限りは日本語版が発売された年を示している。便宜上、1986年から1994年までホビージャパンを中心に展開されていた時期を「第一期」、2003年以降にエンターブレインと新紀元社により展開されている時期を「第二期」とする。第一期では「タクテクス」誌とその後継である「RPGマガジン」誌でゲームのサポートが行われており、雑誌掲載されたシナリオの中には製品化されていないものも数多くある。日本の『クトゥルフ』のTRPGの歴史は約10年の沈黙の後、雑誌『Role&Roll』の創刊と共に復活した。第二期における翻訳元はエンターブレインと新紀元社と二つに分かれているのだが、関わっているスタッフはほぼ共通しており、サポート雑誌も『Role&Roll』で統一されている。だが、『クトゥルフの呼び声』はホビージャパンにより商標登録されているため、第二期では製品名に『クトゥルフの呼び声』という名前が使われていない。製品としてはホビージャパン版と同じくケイオシアム社のテーブルトークRPG『Call of Cthulhu』の系譜に属する。クトゥルフ神話TRPG 20152015年9月にKADOKAWA/エンターブレインより発売。1920s Investigator Companionにある職業特記事項の追加、AF作成ルール、特徴表、狂信者探索者、深き者探索者、ミ=ゴの脳缶探索者などルールに富んでいるが、様々なサプリからの一部翻訳であり、脳缶探索者に至っては翻訳をユーザーに投げている。また、日本妖怪の記述も増えたが、データ掲載ではなく名前と簡単な伝承だけであり2010の様なものは無い。ISBN 978-4047306653クトゥルフ神話TRPG キングスポートのすべて2016年3月にKADOKAWA/エンターブレインより発売。キングスポートのデータに加え、信号拳銃や技能の一部が追加されている。特に信号拳銃が強く、信号拳銃のすべてと揶揄される。ISBN 978-4047340510『クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえとらべらーず』に付属。「るるいえ・うぃっち・ぷろじぇくと」「るるいえ堂改造計画」の2つのエピソードが収録されている。スタッフキャスト
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