テオフィリン(Theophylline)は茶葉に含まれる苦味成分である。アルカロイドの一種で、カフェインやテオブロミンと同じキサンチン誘導体に分類される。強力な気管支拡張作用があり、医薬品として、気管支喘息や慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器系疾患の治療に用いられる。しかしその際に、副作用で痙攣を起こすことがあり問題になっている。茶葉に含まれる量は、医薬品として用いられる量に比べて非常に少ない。カフェインが肝臓で代謝される際の産生物の一部である。テオフィリンの作用は主として、ホスホジエステラーゼの阻害によるセカンドメッセンジャーとしての細胞内cAMP濃度の増大によるものである。日本における商品名は「テオドール」(田辺三菱製薬)、「ユニフィル」(大塚製薬)などがあるが、この他に現在は後発医薬品が各社から販売されている。徐放錠剤、徐放顆粒剤、内用液、シロップ剤等が存在する。気管支喘息、喘息性(様)気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫非徐放性の経口液は早産・低出生体重児に於ける原発性無呼吸()に使用される。薬理学的なテオフィリンの作用を列挙すると、である。2008年に報告された臨床研究では、の改善に効果を示した。重大な副作用には、が挙げられている。テオフィリンは様々な薬剤と相互作用するので取り扱いが難しい。シメチジンやフェニトインはその筆頭である。テオフィリンの治療域が狭いので、屢々血中濃度のモニタリングが必要となる。テオフィリンは嘔気、下痢、心拍数増加、不整脈、中枢刺激症状(頭痛、不眠、易刺激性、眩暈、)を引き起こす。重篤な場合には痙攣が起こり、この場合には(神経学的に)非常事態だと考えるべきである。これらの毒性はエリスロマイシン、シメチジン、フルオロキノロン(シプロフロキサシン等)で増強される。脂肪食摂取後に服用すると血中濃度が増加して中毒域に達する。これは徐放性であるべき製剤が脂質に溶解してされるからである。テオフィリンの過量毒性はβ遮断薬で治療出来るが、喘息患者にはβ遮断薬は禁忌である。痙攣の他、心拍数の増加が問題となり易い。他のメチル化キサンチンと同様に、テオフィリンは、テオフィリンはホスホジエステラーゼを阻害してcAMPを増加させる事で、気管支拡張、利尿、中枢神経系刺激、心臓刺激、胃酸分泌の各作用を発現すると共に、カテコールアミンを刺激して、グリコーゲン分解、糖新生を促進し、副腎髄質細胞からのアドレナリンの放出を誘導する。(利尿は中枢の抗利尿ホルモン(アルギニンバソプレッシン)がcAMP増加で阻害される事に因る。)アデノシンは、心筋の酸素需要量を調節する内因性細胞外メッセンジャーである。アデノシンは細胞表面の受容体を介して細胞内シグナル伝達に影響を与え、冠状動脈血流量を増加、心拍数を低下、房室伝導を遮断、心臓の自動性を抑制、β-アドレナリン作用(心収縮力)を低下させる。アデノシンは又、循環血中のカテコールアミンに因る変時作用及び変力作用に拮抗する。それらの結果、アデノシンは心拍数を低下させ、心収縮力を減少させ、心筋への血液供給を増加させる。特定の条件下では、このメカニズム(心保護機能)はアトロピン抵抗性の難治性徐脈性無収縮を引き起こす。アデノシンの効果は濃度依存的である。細胞表面のアデノシン受容体はテオフィリンやアミノフィリン等のメチルキサンチンで競合的に阻害されて、心拍数が増加し心収縮が増大する。テオフィリンは又、COPDや喘息での誘導性の肺線維芽細胞-筋線維芽細胞転換をcAMP-PKA経路経由で阻害し、コラーゲンの蛋白質をコードするCOL1 mRNAを抑制する。テオフィリンはCOPD又は喘息の患者の内、ステロイド治療に抵抗性の喫煙者(酸化ストレスが上昇している)に対して、独立した別の作用機序に因って臨床的な効果を齎す。テオフィリンは"in vitro" で、喫煙の酸化ストレスで低下したヒストン脱アセチル酵素(HDAC)活性を元に戻し、ステロイドの効果を復活させることが出来る。更に、テオフィリンはを直接活性化させる。(ステロイド系抗炎症薬はHDAC2にヒストンを脱アセチル化させて、炎症性メディエーターが生成する過程を阻害する事で炎症反応を停止させる。一旦脱アセチル化されると、DNAは再パッケージされ、炎症遺伝子のプロモーター領域にNF-κB等の転写因子が結合出来なくなり、炎症反応が進行しなくなる。煙草の煙に因る酸化ストレスは、HDAC2の活性を阻害してステロイドの抗炎症作用を遮断することが示されている。)カカオ豆には微量のテオフィリンが含まれている。含有量はクリオロ種のカカオ豆では最大で3.7mg/gであると報告されている。淹れられた茶からも痕跡量のテオフィリンが検出されるがその量は約1mg/Lであり、治療に必要な量に較べると遥かに少ない。経口投与した際の生物学的利用能のデータは無い。テオフィリンは細胞外液、胎盤、乳汁、中枢神経系に分布する。血漿蛋白質結合率は4割である。分布容積は0.5L/kgで、新生児や肝硬変、栄養失調の有る患者で増加し、肥満患者で減少する。テオフィリンは主に肝臓で(7割程度迄)代謝される。シトクロムP450のCYP1A2で脱メチル化される。反応次数0の経路とミカエリス・メンテン式に従う経路が共存する。代謝は治療的の濃度で非線形に飽和するので、投与量を少し増量する事で血中濃度が大きく増加することが有り得る。テオフィリンの一部がメチル化されてカフェインになる事も、特に小児の治療では重要な要素となる。速放内用液を用いた場合のカフェインの半減期は約100時間である。喫煙者と肝障害を持つ患者では、代謝が通常と異なる。テトラヒドロカンナビノール(THC)とニコチンは双方共にテオフィリン代謝を促進する。テオフィリンは未変化で尿中に1割程度までが排泄される。その排泄は、小児、喫煙者(成人・高齢者)、嚢胞性線維症患者、甲状腺機能亢進症患者で増加する一方、(非喫煙)高齢者、急性鬱血性心不全患者、肝硬変患者、甲状腺機能低下症患者、発熱性ウイルス性疾患患者では減少する。推定血中濃度半減期は色々と変わり、未熟児では30時間、新生児で24時間、1〜9歳の小児で3.5時間、成人非喫煙者で8時間、成人喫煙者で5時間、患者で24時間、分類I〜II度の鬱血性心不全患者で12時間、NYHA分類III〜IV度の患者で24時間、高齢者で12時間である。成人には 1回200mgを、小児には1回100〜200mgを、1日2回、朝及び就寝前に経口投与する。小児では、日本小児アレルギー学会の『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012』で、1歳以上の幼児・小児には4〜5mg/kg、乳児(生後6ヶ月以上1年未満)には3mg/kg、6ヶ月未満の乳児・新生児には使用非推奨とされている。テオフィリンはキサンチンの誘導体の一つであり、上図の構造の中でRとRがメチル基で置換された構造をしている。RとRがメチル基で置換されたテオブロミン(3,7-ジメチルキサンチン)とは位置異性体の関係にある。参考までに、カフェインではR、R、Rが全てメチル基で置換されており、その代謝物であるパラキサンチンはR・Rジメチル体である。1859年に、Salterは濃いコーヒーが喘息治療に有効であることを報告した。1888年にはドイツ人生物学者アルブレヒト・コッセルが、カフェインよりも気管支平滑筋拡張作用がはるかに強力であるテオフィリンを茶葉から抽出単離した。1895年には構造が決定され、ドイツ人の化学者エミール・フィッシャーとローレンツ・オーによって化学合成がなされた。1900年にはのプリン合成法が紹介された。1902年にテオフィリンが利尿薬として臨床的に初めて使用された。その20年後に、喘息治療への応用例が初めて報告された。1937年にHerrmannらが気管支喘息の急性発作に対するテオフィリン(アミノフィリン)の臨床的有用性を報告した。1950年代に入ると、呼吸器系疾患の治療に用いられるようになった。
出典:wikipedia
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