『人狼 JIN-ROH』(じんろう)は、2000年6月3日に公開された日本のアニメーション映画である。上映時間98分。原作は『犬狼伝説』(日本出版社)・『犬狼伝説・完結編』(角川書店)。古典童話『赤ずきん』の「赤ずきん」と「狼」を、左翼反体制の「アカ」及び、帝国主義的体制を指すスラング「狼」として対置させた寓話作品。残虐描写により、日本での映画公開時に映倫のPG-12指定となっている。押井守の代表作である『ケルベロス・サーガ』の1作。第二次世界大戦後のドイツ占領下(第二次ワイマール体制)日本を舞台としたアナザーストーリー。実写映画『紅い眼鏡/The Red Spectacles』、『ケルベロス-地獄の番犬』に続く、ケルベロス映像作品三部作の1つ。前2作とは異なり、監督は沖浦啓之が務めた。押井は原作・脚本のみを担当している。「ケルベロス・サーガ」は、一部のシリーズを除き、第二次世界大戦がドイツ・イタリア枢軸国と日本・イギリス同盟の戦い(アメリカは第一次世界大戦以前からモンロー主義を貫き不参戦)で、戦敗国となった日本はドイツ軍に占領された、という架空の設定に基づいている。本作品の舞台はその世界の昭和37年にあたる。主人公・伏一貴役は実写の前作『ケルベロス-地獄の番犬』に主演した藤木義勝。ヒロイン・雨宮圭役の武藤寿美はこの作品が縁で沖浦監督と結婚。のちの押井守作品『イノセンス』にも出演している。『紅い眼鏡』や『御先祖様万々歳』で玄田哲章が演じた室戸文明は本作品にも登場するが、ここでは玄田ではなく廣田行生が声を担当している。CGを極力排して手描きセル画でのアニメーション表現にこだわった。Production I.Gの長編作品では、最後のセルアニメーションとなった。また、本作はDVDのみでなくLDでの販売も行われたが、バンダイビジュアルが発売する最後のLDメディア作品となった。2008年にBlu-ray Disc(BDMV)版も発売。キャラクター・デザインの西尾鉄也が執筆したイラストコラム『週刊少年ひとおおかみ』はProduction I.GのHP内で公開された。本作キャラクターの阿川七生をパロディにした『ジバクちゃん』は単独でグッズが作られるほどであった。これはのちに作品の器をケルベロス・サーガから『機動警察パトレイバー』に移し、映画『ミニパト』の企画へと発展している。「あの決定的な敗戦から十数年」--第二次世界大戦の戦敗国・日本。戦勝国ドイツによる占領統治下の混迷からようやく抜け出し、国際社会への復帰のために強行された経済政策は、失業者と凶悪犯罪の増加、またセクトと呼ばれる過激派集団の形成を促していた。そして本来それらに対応するはずの自治体警察の能力を超えた武装闘争が、深刻な社会問題と化していた。政府は、国家警察への昇格を目論む自治警を牽制し、同時に自衛隊の治安出動を回避するため、高い戦闘力を持つ警察機関として「首都圏治安警察機構」通称「首都警」を組織した。そんな情勢下での東京。街頭では学生らのデモが行われており、警視庁の機動隊がこれと対峙している。共同警備という名目で出動した首都警の部隊は、後方配置に甘んじていた。また、首都警の戦闘部隊である「特機隊」の副長の半田はデモ隊にセクトの人間が紛れ込んでいることを察していながら、「この場の指揮権は自治警にある」と傍観を続けていた。一方セクトの面々は、このデモに乗じて機動隊を攻撃しようと、地下水路を活用し、火炎瓶などの物資を輸送。セクトが「赤ずきん」と呼ぶ物資運搬係を務める阿川七生は、鞄に偽装した投擲爆弾を人ごみに紛れ実行役に渡した。野次馬とデモ隊に紛れた実行役はデモの前線に走り出ると、投擲爆弾を機動隊に向けて投げつけた。大きな炎と爆音に包まれる街路。機動隊員は吹き飛ばされ、木の葉のように宙を舞う盾。出動服に火がつく者、目を負傷し視力が奪われるものなど、負傷者が続出。ついに機動隊の指揮官は全員検挙の号令を出し、機動隊はデモ隊に突入する。地上の混乱をよそに、地下水路ではセクトのメンバーが移動していた。しかし、その前に特機隊が立ちふさがる。無表情なマスクと鎧のような装甲服を身に纏い、汎用機関銃(MG42)を構えた異様な姿の特機隊員たち。特機隊は武器を捨て投降するよう指示するが、セクトのメンバーは半狂乱の様相で特機隊にサブマシンガンを乱射し始める。これに特機隊も直ちに応戦。セクト側は蜂の巣にされてしまう。この音を、阿川は地下水路の別の場所で聞いていた。特機隊によって仲間がやられたことを悟って逃走を試みるが、彼女も間もなく特機隊に包囲されてしまう。包囲した隊員の一人、伏一貴巡査は投降を呼びかけるが、少女は投擲爆弾での自爆を試みる。「なぜだ」伏は戸惑いのあまり、仲間からの射撃指示も耳に入らない。阿川は意を決し、信管を作動させる紐を引き抜いた。伏を庇って覆いかぶさる仲間の特機隊員。間髪入れず、地下水道は爆音に包まれた。この爆発の影響で地上は停電に見舞われ、機動隊と対立していたデモ隊はその闇に乗じて逃走してしまう。数日後、首都警幹部らが今後の対応策について話し合っていた。元々特機隊の攻撃的姿勢が世論に指弾されていた上に、爆発による停電で機動隊がデモ隊の検挙に失敗しており、警視庁からの批判がより強くなっていたのだ。警視庁と首都警の縄張り問題で思うように動けないことに不満を持っていた特機隊長・巽は、自治警との共同警備体制を破棄するよう主張する。だが警備部長の安仁屋や、警視庁と独自のパイプを持ちつつある思惑を内に隠している公安部長の室戸は慎重論を唱える。結局、適切な行動を取らなかった伏に何らかの処分を下すことのみ決定し、話し合いは終了した。後日、査問会にて責任を問われた伏は、首都警特機隊養成学校での再訓練を命じられる。伏は養成学校の同期で友人でもある公安部の辺見に頼み、自爆した少女のことを調べてもらった。辺見に教えられた、阿川の遺骨が納められている共同墓地を訪れる伏。阿川家の墓の所へつくと、その前に一人の少女が立っていた。彼女は圭と名乗り、死んだ阿川の姉だと言う。その出会いをきっかけに交流を始めた2人は、徐々にその関係を深めていく。だがそれは室戸と、彼の下で働く辺見が企てた罠だった。やがて事態は、特機隊が警視庁公安部と、その背後にある首都警公安部と銃火を交える警察の「内戦」へと発展していく。その他:古本新之輔、松尾銀三、松山鷹志、長克巳、村井克行、尾形雅宏、沖田蒼樹、樫井笙人、浜田賢二、村井かずさ、小暮英麻、青木誠、新垣正明ほか
出典:wikipedia
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