美しい国(うつくしいくに、英訳:Beautiful Country)とは、「日本国の安倍内閣が国民と共に目ざす」と宣言した国家像である。『活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた、「美しい国、日本」 』と定義されている。2006年7月、小泉内閣でポスト小泉と目され、内閣官房長官を務めていた安倍晋三は、同年9月20日に予定されていた自由民主党総裁選挙への準備運動として、『美しい国へ』を文藝春秋から上梓した。日本国内における売り上げは50万部を超えた。また、海外(米国・中国・韓国・台湾)でも発売が企画された。また、安倍は9月1日に総裁選挙への出馬を正式に立候補する際にも、「美しい国、日本。」と題した政権構想のパンフレットを発表し、同党所属の国会議員に配布すると共に、一般国民に対しても広く公開した。安倍は総裁に選出され、首相に就任後は自身の基本理念を指す用語として「美しい国」を使用したが、2007年7月の第21回参議院議員通常選挙敗北後は使用を控えるようになり、参議院選挙後初の国会でもほとんど使用しなかった。首相辞任後は、『美しい国へ』の書籍の売れ行きもほとんどストップしている。2013年、再度内閣総理大臣となった安倍は、“完全版”と称する『新しい国へ』を、やはり文藝春秋から上梓した。安倍内閣成立後、安倍は「『美しい国づくり』プロジェクト」を提唱し、内閣官房に「『美しい国づくり』推進室」を設置した。さらに、有識者を集めた「『美しい国づくり』企画会議」を設置し、座長には平山郁夫、座長代理には山内昌之が就任した。企画会議は2007年4月3日および5月30日の2回討議を行ったのみで、安倍内閣の総辞職が予想されたため、安倍の指示を待たず同年9月21日付で自主的に解散し、プロジェクトは終了した。会議開催や事務所設置などで費やされた経費は4900万円であった。後任の内閣総理大臣である福田康夫は、経費について質問され「会議をやっただけでそれだけというのはちょっと高すぎる。高すぎるということは無駄だということだ」と指摘した。2007年12月7日、安倍は自身の政権での「美しい国づくり」を振り返り「美しい国づくりは道半ばだが、礎をつくることはできたと思う。一議員として初心に戻り、新しい国づくりに向けて全力を尽くしてゆきたい」と発言した。内閣府がまとめた世論調査によると、今の日本を「美しい」とする人は過半数を超えている。一方、「美しくない」とする人は43%であった。また、「日本の美しさとは何か」に関するアンケート調査結果(複数回答可)は以下のとおりであった。安倍の著書『美しい国へ』によれば、「君が代」は「世界でも珍しい非戦闘的な国歌」であるという。安倍内閣の各政策では「美しい国づくり」を推進しており、その名称等にも反映されていた。内閣府経済財政諮問会議が取りまとめた『経済財政改革の基本方針2007――「美しい国」へのシナリオ』(いわゆる「骨太の方針2007」)もこれに由来している。この副題は安倍が自ら命名したものだったが、審議の席上では丹羽宇一郎・伊藤隆敏・八代尚宏ら経済財政諮問会議議員から異論が出されたと報道された。内閣府特命担当大臣(経済財政政策)大田弘子が安倍の案を提示したところ、丹羽は「『「美しい国」へのシナリオ』はどうもぴんとこない」、伊藤は「『シナリオ』と言うと、我々の主体的な働きかけの意味合いが弱い」、八代は「伊藤議員が言われたような『成長戦略』という言葉が大事だと思う」との異論が挙がった。同じく議員の尾身幸次、御手洗冨士夫らはこの案に賛意を示した。最終的には安倍の当初案どおり命名されたが、この議論について質問された安倍は「まあ、それは趣味の問題ですね。これは私の骨太の方針ですから私の考え方にしたがって書かせていただきました」と述べている。安倍内閣が掲げた環境政策「美しい星50」もこれに由来している。 「美しい国」は、晋友会合唱団によるCD、『美しい国、日本』にも使用されている。一方、「美しい国」それ自体が、河野洋平が自由民主党総裁を務めた当時、小沢一郎の「普通の国」構想への対抗として打ち出した「美しい国」論を換骨奪胎したものに過ぎず、「パクリ」であるという指摘がジャーナリストの松田賢弥によってなされている。第1次安倍内閣 (改造)にて内閣官房長官を務めた与謝野馨によれば、第43回衆議院議員総選挙にて与謝野が掲げたマニフェストのタイトルに「美しい国」の概念が含まれていることから、「『美しい国』というのを最初に使った」のは与謝野であると自ら指摘している。安倍と同じく清和政策研究会に所属する町村信孝は、2005年に『保守の論理――「凛として美しい日本」をつくる』を上梓している。作家の川端康成は1968年(昭和43年)のノーベル文学賞受賞に際し、「美しい日本の私」というスピーチを行ない、日本人の伝統的な心性や美意識を語った。安倍の提示する国家像や政治姿勢に反発する民主党の山口壯は弁護士・大山勇一作の回文「憎いし、苦痛! 『美しい国』」を引用し、2006年10月13日衆院本会議にて「美しい国」を逆さ読みして「ニクイシクツウ(憎いし、苦痛)」と揶揄した。格差が拡大し、自殺者が3万人を超す状態が1999年から10年も続き、しかも状況が何ら改善されないなどの社会の現実(交通死亡事故でさえ年間犠牲者が1万人を超えたら大問題になるのにその3倍)、閣僚の相次ぐ失態、年金問題への対応の失敗等々、安倍政権下の政治現実を批判する立場からは「美しい」という言葉と現実社会との隔たりとが逆に意識される結果となっている。また、自由民主党所属国会議員(当時)の中にも批判的な意見がある(田村公平は「美しい国」について「意味がよく分からない」と評している)。憲法学者の小林節は同書のなかで「法律による統治」など法学では誤用と見なされる初歩的なミスが多いとして、憲法改正を志す適性に欠けるとして安倍内閣が憲法改正に手を付けることは反対を表明するなど批判している。小林よしのり・宮台真司は、教育面では愛国心を強調する一方、経済面では支持団体である経団連をはじめとした財界のトップが、「法人税を上げたら企業が海外に逃げる」と言う主張の二重基準ぶりを指摘している。塩野七生は、「『美しい国』のような客観的な基準になり得ない指針を掲げても、それは自己満足に過ぎない」と批判し、「情緒的な言葉を使うより、具体的な指針を掲げるべき」と述べた。
出典:wikipedia
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