『聖刻1092』(ワース1092)は、千葉暁作のロボット・ファンタジー小説。元々は『青の騎士ベルゼルガ物語』に続く伸童舎のオリジナル企画で、雑誌『獅子王』に連載されたイラストストーリー『狩猟機1092』(モビリア1092)を原型とする。この作品は幡池裕行とはままさのりの2人により全6話が連載された後、文庫化にあたって千葉暁に交代したという経緯を持つ。作者が属している伸童舎のメディアミックス企画「ワースプロジェクト」の中核を成す小説シリーズである。あとがきでしばしば述べられている通り、当初は上下2巻で完結する予定であったが、構想がふくらみ20年以上続く大河シリーズとなっている。物語は「ア・ハーン」と呼ばれる中世風ファンタジー世界を舞台にしている。ア・ハーンには巨大ロボット型魔導兵器「操兵」が超古代から存在しており、ストーリーはこの「操兵」にまつわる神話や伝説を扱ったヒロイックファンタジーとなっている。同じ作者の『聖刻群龍伝』が戦記ロマン色が強いため、ジャンルとしては差別化が図られている。この世界では聖刻暦を使うが、シリーズ名の聖刻1092は主役機の(仮面に記憶された)機体番号であり、年代を現すものではない。 フェンはさらわれたリムリアを救い出すため、ニキ・ヴァシュマールとともに村を出る。捜索の旅の中で占い師の少女ジュレや美青年の剣士クリシュナ、聖騎士ガルンなどといった仲間達と出逢い、やがて練法師(呪術使い)たちの組織≪聖華八門≫、そして≪八の聖刻≫に絡んだ神々の戦いという大きな運命に巻き込まれていく。 ア・ハーン大陸中原、ダマスタ国の北はずれにあるカロウナ村に暮らす修行僧フェンは、父の遺した古操兵「ニキ・ヴァシュマール」を駆って外の世界に飛び出す事ばかり夢想する悪たれ小僧だった。 そんな平穏な日々を送っていた収穫祭の夜、傭兵ガシュガルの操兵隊が村を襲い、〈獲物〉としてフェンの幼馴染でラマス教ソーブン寺官長の娘であるリムリアをさらい連れ去って行った。リムリアの父であり、フェンの師でもあるハラハ・ヴァルマーはリムリアの生い立ちについて語り、フェンにリムリアを守るよう依頼し「ニキ・ヴァシュマール」とともに旅立たせたのだった。 そのリムリアが連れていかれたのは、ダマスタの北にあるウルオゴナの首都デュラハーン。そこでリムリアは、自分をさらうようガシュガルに依頼した錬法師《風の門》ゾマから自身の正体、16年前にウルオゴナに滅ぼされたホータン王家の唯一の生き残りであるリムリア・ラフト・メネス王女その人であることを教えられる。 ガシュガルの情報を追いながらフェンは立ち寄ったドウシャの街で、養母マサリエと死別したばかりのジュレ・ミィと出会う。2人で行った宿屋兼酒場でのいざこざを通じ、武者修行中のダマスタ国騎士で〈銀の貴公子〉として知られる美青年クリシュナ・ラプトゥとも知り合い、そこから行動を共にする。 フェン、クリシュナ、ジュレの3人は旅を続けるうちウルオゴナがダマスタ侵攻を計画していることを知り、それぞれの故郷(ジュレには故郷と言える場所が無いが)へと向かうのだが、その進路にある難所《風の巣》で錬法師《陽の門》バルサの襲撃を受ける。その戦いの中、それまでは全く普通の操兵だと思われてい「ニキ・ヴァシュマール」が覚醒、クリシュナの愛機アビ・ルーパに命じてジュレとともに避難させた後、ヴァシュマールとフェンは巨大な竜巻に巻き上げられ、大陸北部アレビスにあるカッチャラナ山まで飛ばされるがそこで聖刻騎士団前団長ラドウ・クランドに助けられる。 そこに聖刻騎士団南部方面隊《赤龍騎士団》所属の聖騎士ガルン・ストラがラドウの騎士団復帰を願ってやって来る。『ガルンが勝てば素直に山を下りる』との約束で毎日ラドウとガルンは決闘を重ねるものの、フェンとともに稽古を受けるようなものであった。何回目かの稽古の際、ラドウは背中に何者かの放った氷の刃を受け死亡するが、それを放ったのは、その日ガルンが一緒に連れて行った法王庁所属の派遣師ラモン・テグドスこと《水の門》シーターであった。ラドウは死の間際、ガルンに聖剣「プレ・ヴァースキン(龍の背びれ)」を譲り渡す。フェンとガルンの2人はシーターと戦って勝利するのだが…。 ウルオゴナとの戦いのため故国ダマスタに帰還したクリシュナであったが、宮廷内は権力争いばかりで民のことを考えない面々に失望、親族内では祖父の拝金主義的な行動にも辟易するものの、祖父の用意した軍備で出陣する。フェン、ガルン、クリシュナ、ジュレの4人はガルンの故郷に足を踏み入れ…。東方西部地区のヒゼキアを中心にした動乱の物語。クリシュナがフェンやジュレに対して抱いた劣等感から仲間を抜け、葛藤しながらアビ・アルタシャールに乗り、戦うことになる。最終章大師ダム・ダーラの手足となって暗躍するた八人の練法師。各門の門主ではなくダム・ダーラの完全な私兵である。いずれも実力はかなり上位の術者であり、練法師団の地位において第15階梯以上の練法師で構成される(ゾマは第18階梯)。呪操兵も強力な古操兵をも持ち出している。先史文明の叡智で作られ、古来より大陸において巨大な武具として扱われてきた鋼の巨人。伝承によれば、かつてはその息吹で天地を鳴動させ、巨大な力で幾千もの軍勢を退けたと言う。しかし、その力を恐れた神によって魂を奪われ、今では人が乗らなければ動かない武具の類になってしまったという。現在作られる操兵は過去遺物の劣化した複製品に過ぎず、古代からの叡智を残す東方の聖刻教会と西方の工呪会の二つの組織しか操兵を製作することが出来ない。全身を鎧で覆った身長約2リート(8m)の弱の機械巨人というのが一般的認識である。この世界では最強兵機として扱われており、各国ともその入手に血道を上げている。機種で大別すると一般的な人型をした狩猟機、簡易版というべき従兵機、呪術増幅機能に特化した呪操兵の三種に分類される。その他格付けとしては従兵機に分類されるが、隠密行動に使用される隠行機や、矢を連射できる弩弓兵など目的に特化した機体が登場している。また先史文明によって製造された操兵は「古操兵」と呼ばれ、現在の操兵の性能を上回る機体も多い。中には非常に強力で呪操兵と狩猟機の区別が無いものも存在する神代の太古から存在する八騎の操兵。神の写し身とも言える存在であり、厳密には(現在の)操兵とは似て非なるものである。より正確に言えば、≪八の聖刻≫こそが真の操兵であり、現在の操兵はその不完全なコピーに過ぎない。八騎は四騎ずつ“白”と“黒”の陣営に分かれており、それぞれ王、女王、騎士、僧正の四つの位がある。それぞれが、神代の太古の巨神族や龍族など超絶的な力を持った種族の勇士を≪真・聖刻≫に聖刻化し、機械仕掛けの身体を与えた存在である。筋肉筒や心肺機で構成され仮面で制御される機体は操兵とほぼ同じ構成であり、「選ばれし者」と呼ばれる操手を必要とするのも操兵と同じだが、操手は次元の狭間からエネルギーを取り出すための部品でしかなく、やがては機体に取り込まれ長持ちするように「保守」されながら、使役される運命が待っている。自意識を物質化した≪真・聖刻≫がその本体と言える存在であり、自ら思考し行動する。≪真・聖刻≫は力の根源であり、不滅の存在である。仮面を砕かれようが機体を焼き尽くされようが、やがては≪真・聖刻≫の力で再生してしまう。つまり、「滅ぼす」ことは出来ず、かろうじて「封じる」ことしかできない。あまりに強力なため、一度に白黒1機ずつしか覚醒しないよう制約がかけられているらしい。操兵としての≪八の聖刻≫の力は別格であり、操兵の王といえる力を持っている。一万人の意識を同時に操作し、数百リーの範囲の操兵から力を吸収して行動不能に陥れ、一般の操兵ならば一睨みするだけで仮面が外れ待機状態に戻ってしまう。結印も行わず強力な障壁を張り、素手で重装甲の狩猟機の装甲を紙のごとく切り裂く。≪八の聖刻≫はおよそ千年周期で目覚め、相手陣営と戦いを続けている。不滅の≪真・聖刻≫に宿る意思は、不滅の身体を得て、同じく不滅の敵と果てしない戦いを続けてきたのだ。しかし、器は不滅でも意思そのものは不滅ではなかった。あまりに長い年月の間に意思が変質(単純化)してしまったのである。結果、自己の生存と敵対する陣営を滅ぼすことを第一とするようになっており、過去いくつもの文明を巻き添えにして滅ぼしてきた。白が秩序、黒が混沌という存在ではなく、共に人類にとっては脅威であることに変わりは無い存在である。現在のヴァシュマールとハイダルの戦いの前には、約500年前に西方で≪白き女王≫と≪黒き女王≫が「女王戦争」と呼ばれる戦いを起こし、大惨禍を招いたらしい。人の手により造られた、最初の操兵とされる。いずれも狩猟機と呪操兵の能力を兼ね備え、限定的ながら自己修復能力を持つなど、現代の操兵を遥かに超越した性能を持っている。自己修復の停止したアルタシャールは工呪会が技術の粋を尽くして修復したが、仮面の自己チェックでは半分の力しか発揮できないと判定しており、隔絶した技術レベルで製作されたことが窺われる。八聖者の転生者である特定の操手にしか動かすことができない。また、仮面に宿る人格は一般の操兵とは比べ物にならないほど強力であり、自身が認めた操手でなければ受け入れない。(アヌダーラは起動させようとしたガルンに強烈な苦痛を浴びせ、アルタシャールは適格者でない者が乗り込むと死に至らしめるほどだった)また、教都攻囲戦に出現した際は操手を強制的に操手槽に転移させて起動し攻囲した軍勢を撃退したが、操手のうち生き残ったのは2名のみで残りの6名は死亡していたとされる。(なお、この時の生き残りが現在のクランド家とストラ家の祖であるという)覚醒すれば世界を滅ぼしかねない≪八の聖刻≫に人間が対抗するための存在であり、八騎そろえば聖刻力そのものを無効化でき≪八の聖刻≫であっても封ずることが可能であるという。東方語では「ダート」「リュード・イム・ダート」、西方語では「ゲラール」「マーガ・デ・ゲラール」と呼ばれる。名は討ち取った敵操兵の首を取る慣習から。武装した人間の姿を模し、近接戦闘を主体とするもっとも操兵らしい操兵。機体は強度、パワー、反応速度を重点に製作されている。仮面の格も高く、工呪会の統計によれば起動に成功するのが10人中3人、うち基本動作までこなせるのは1人のみであるという(訓練によりある程度は数値を上げられる)。操縦するには素質と強い意志と技術が必要であるが、高性能の機体を乗りこなせば、気闘法などの特殊な技も含め操主の剣技をそのまま再現できる。聖刻騎士団は虎、龍、鳳凰、狼の四聖獣の名を冠した四つの騎士団に大別され、それぞれ北南東西の地域を管轄としている。各騎士団は更に白赤青黒の色別に騎士団を編成しており、合計16の騎士団で構成されている。個人所有の操兵に乗る騎士もいるが、正式機として四聖獣の姿を模した、ラーフ、ラグ、ティン、ウォルンの操兵が配備されている。特別な能力を持つものではないが、一般に供給される操兵とは別格の作りとされている。東方西部域ヒゼキア国の守護神的な存在。配備されていた古操兵のシーカ原種操兵は数百年前にすべて寿命が尽きたため、、聖刻教会操兵鍛冶匠合が特徴を引き継いだ機体を新たに量産し、ヒゼキア国のみに譲渡されていた。シーカはヒゼキアでは「狼」の意である。左肩の三日月状の盾が特徴。ヒゼキア滅亡と共に生産は打ち切られたため現存の真性シーカ種は少なく、殆どは装甲を改修して似せただけのレプリカである。東方語では「ダーサ」、西方語では「ヴェルダ」と呼ばれる。練法師専用の操兵。西方工呪会では製造できず、聖刻教会製のみである。その教会でさえも、高位術者の要望に応えられるだけの性能の呪操兵(仮面)は製造できず、発掘された古操兵を修理したり古代の仮面に機体を与えることでまかなっている。汎用機は存在せず属する門の練法専用で、機体名の最初に門の名を冠している。機体は練法の発動に必要な結印を素早く正確行うために、特に指先が精密に作られているが、近接戦闘に耐えられる強度は持たないとされる。中には練法により機体強度を上げたり、印手(結印用の腕)の他に戦闘用の腕を持つなどして対応している機体もある。機体全体が門の象徴を模していたり、腕を何本も持つなど奇怪な姿の機体が多い。操手槽には計器類はまったくなく、操兵用と対になっている仮面で操る。本格的呪操兵には及ばないものの練法増幅能力を持つ機体のこと。東方語で「デ・ダーサ」、西方語では「ヴォーパル」と呼ばれる。ワースブレイドに登場する擬似呪操兵は、使い捨ての練法発動用仮面を取り付けた従兵機だったが、本作に登場するシャルバーン系列の操兵は、狩猟機に転移能力を付加した機体である。また後述する隠行機もささやかであるが練法増幅能力を持つ疑似呪操兵的設計である。東方語では「ペナン」「リュード・イム・ペナン」、西方語では「ゾルダ」と呼ばれる。従兵機は西方工呪会が生み出した機種で、狩猟機に付き従うものとして作られたことが名の由来となっている。狩猟機に比べると機構が簡略化されており、全体的に作りが粗雑である。西方では均質な兵力を多数揃え、面で圧倒する戦法を重視していることから従兵機の開発に熱心であり、性能や運用法も東方に比べて進歩しているという。東方側に本来この様な機種を作ろうと言う発想がなく、200年ほど前の西方との戦いで大量に操兵が必要となり、工呪会製の従兵機を模倣して東方でも作られるようになった。現在はアハーン大陸全体に普及し、近年では従兵機独特の発展をとげた機種も誕生し、戦場で効果的な戦いもする様になった。最大の特徴は、その機体の殆どが頭を持たず低俗な仮面を胸部に装備している点で、騎士からは「首なし」と蔑称されることもある。武器も実用本位の長柄武器が主流である。戦闘力は狩猟機の1/3程度とされるが、価格は狩猟機の1/5〜1/10であり、コストパフォーマンスに優れている。また仮面の格が低く反応が鈍いことは、逆に操縦が簡単であることにつながり、工呪会の統計では10人中8人が起動に成功するとされている。このことは操手の数を揃えやすいことを意味する。機体、仮面共に生産性が高い事もあり機数でいえば狩猟機より遥かに出回っている。暗殺や特殊任務に特化し集団戦も視野に入れた間者専用の従兵機。練法師団配下の部隊が使用するため、低位ながら練法増幅能力を付与されている。遠距離攻撃を目的に作られた後方支援用従兵機。両の肩に連射弓を装備し遥か彼方の敵を攻撃して自軍の歩兵・騎馬・操兵の侵攻を援護する。高空から降り注ぐ矢の威力は凄まじく、狩猟機の装甲も紙のようにたやすく貫通させる攻撃力を持つが、矢を撃ち尽くした後は人の手で再装填しなければならず、接近戦も苦手とするため、運用にはそれなりのノウハウが必要な機体。第一部にあたる。ア・ハーン中原を舞台にしており、中央アジア風の世界観を持つロボット・ファンタジーというほかに類をみない特徴がある。イラストは幡池裕行。第二部にあたる。ア・ハーン東方が舞台。魔導が統べる宗教国家という設定で、聖都編に比べてオカルト色が強まり、またストーリーに陰謀策術の要素が高まった。イラストは幡池裕行と神宮寺一。第三部にあたる。戦記ロマンの要素が高まり、主人公のフェンだけでなくサブキャラクターにも焦点が当たっている。イラストは神宮寺一。最終章にあたる。物語は完全版から続いているため、ソノラマ文庫版とは設定の違いが多くある。イラストレイターは草彅琢仁。『聖刻1092』以外の「ワースプロジェクト」に関係する製品については#関連項目を参照。『聖刻1092』の世界観を原作としたコンピュータRPG。操兵の仮面に64個の聖刻石を自由に配置するシステムが特徴的。この配置の仕方により操兵の能力が変化する。限定版には操兵の仮面を模した模型が付属していた。『聖刻1092』の世界観を原作としたもので、いずれも前半はゲームブック、後半はテーブルトークRPGのリプレイならびにルールブックという構成になっている。『ワースブレイド』とは全く異なるシステム。いずれもソノラマ文庫で発売された。作者は松本富之と伸童舎ワース・プロジェクトの連名。オリジナルストーリーのカセットブック。後に同内容のものがドラマCDとしても発売された。「外伝1」と書かれているがこれ一本しか出ていない。また、小説版の外伝とは無関係。物語も小説の本筋とは直接的な関係のない、文字通りの外伝になっている。主人公フェン役は矢尾一樹、本作オリジナルのヒロイン役は松井菜桜子、ナレーター(フェンの冒険を子供に聞かせる語り部)は石丸博也が演じた。外装ケースにビデオテープの箱を使用しており、ケースのカバーイラストがセル画調で描かれている。
出典:wikipedia
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