β1,3-グルカン(β-glucan、べーた-)とは、グルコースがβ1-3型の結合で連なった多糖である。植物や菌類、細菌など自然界に広く分布するが、アガリクスやメシマコブ、霊芝などのβグルカンは強い免疫賦活作用、制癌作用を持つとして特に注目が集まっている。β1,4-グルカンが由来に関係なく全てセルロースという名前を持つのに対し、β1,3-グルカンは由来によって様々な名前が与えられている。また、単にβグルカンと言った時には通常β1,3-グルカンのことを指す。酵母中の細胞壁にあるβ-グルカンには1,3-グルカンに加え、1,6-グルカンも含まれる。1990年代からの人体への臨床試験によってがリスクの高い外科手術に起因する病気に感染した患者に与える影響が評価されている。これらの研究においては、PGG-グルカンが合併症を大きく減少させたことが明らかになっている。酵母βグルカンはIL-4やIL-5などのサイトカインを減少させアレルギー性鼻炎の症状の発現の原因となるが、IL-12を増加させることが口頭で発表された。酵母β1,3Dグルカンは西暦2008年6月現在世界で約9,000例の動物実験やヒトによる治験報告例が記録されている(その時点での米国医学図書館文献検索サイト[MedLine]による)。β1,3Dグルカンが生体内に入ると免疫細胞に働きかけて悪性新生物(ガン細胞)を攻撃させたり、抗酸化酵素(スーパーオキシドディスムターゼ、SODに代表される)に働きかけて遊離基(生体に悪影響を及ぼすいわゆる活性酸素、フリーラジカル)消去効果を高めたりするという前医療統計学的実験論文も公表されている(上記細胞レベルでの抗腫瘍実験・治験報告および、活性酸素除去様作用については2006年にA. Pietrzycka博士等の研究陣がActa Pol Pharm誌63号で発表した実験論文等が該当するであろう)。一方、2007年にJournal of Agricultural Food Chemistry誌 55(12):4710-6でS.C. Jaehrig博士、S. Rohn博士らによって発表された酵母細胞壁画分の実験では、抗酸化作用はベータグルカンそのものよりも酵母細胞壁蛋白によるものが大きいと結論付けている。酵母ベータ1,3Dグルカンの持つ抗酸化作用・機序については前述の通り2008年6月末現在では未解明な部分が多い。1980年代後半から2000年代にかけて一部研究者の手によって酵母サッカロマイセス・セレビシアエから抽出したベータ1,3Dグルカンの持つ抗酸化作用の有無に関する実験検証が行われていることは上述されている。実験検証の多くは酵母細胞壁から抽出したベータ1,3Dグルカン画片(高分子炭水化物連鎖体)が示顕する抗酸化作用(生体においては活性酸素消去様作用)の現象をとらえたものではなかろうか。もし酵母細胞壁から抽出したベータ1,3Dグルカン自体に抗酸化作用があるとすれば、この多糖物質にはそれまでに実証が試みられていた免疫調整機能とは別の(あるいは源を一にする)「抗酸化環境維持能」のような機能があるのではないかということも否定できない。例えば、1987年血液病理学誌「Journal of Leukocyte Biology 42」では酵母細胞壁から抽出したベータグルカンが放射線被爆したマウスで造血機能を回復するという実験論文「Glucan: Mechanisms Involved in Its "Radioprotective" Effect」が発表されているが、著者はこの中で副次的実験結果としてベータグルカンの持つ遊離基除去機能(Free Radical Scavenger)について記している。酵母細胞壁から抽出したベータ1,3Dグルカンを含む高分子多糖成分が抗酸化作用にかかわっているのかということについては、より精細かつ具体的な検証が期待される(2008年11月1日現在)。1980年代から2000年代にかけては酵母細胞壁抽出物である高分子多糖物質、特にベータ1,3Dグルカンの免疫調整作用が喧伝され始めた時期である。その時期と合わせるようにして米国を中心としてこの物質の製法や用法に関する特許が多く申請されるようになった。(用法についての特許が多いのは米国ならではであろう)。それにつれて米国内で特許係争も見かけるようになったと言われる。酵母ベータグルカンが免疫細胞を刺激する、という前提に基づいて1994年以来この物質が中枢神経組織の免疫細胞にも影響を及ぼすのか、という実験が進められているようである(1994年 Res. Immunol, 154(4): 267-75, 2008年 J. Immunol, 180(5): 2777-85)。中枢神経組織には【マイクログリア、Microglia】という貪食免疫細胞が在住して神経細胞を守っていると言われる。実験は酵母ベータグルカンがこの免疫細胞にも影響を及ぼすのかどうかという検証のようだ。2009年現在これらの実験は動物(マウス等)が対象である。非常に大くくりな言い方をすれば、これら実験報告はマイクログリアは酵母ベータグルカンによって刺激され活性されるが、周囲の神経細胞に害を及ぼすような過剰な免疫反応は起こさない、といった検証を試みているものであろう。1970年代以降2011年まで酵母saccharomyces cerevisiaeを精製して得られるβ1,3Dグルカンには免疫細胞を刺激し、骨髄の増殖作用を促す作用を示す研究が、主として米国のジャーナルで発表されてきたようである。その作用に関連して、放射線(コバルト60)を被曝させたマウスにβ1,3グルカンを処置し、被曝によって減少した白血球、血小板、ヘマトクリットなどの回復を計測した実験が米国研究陣によって1986年に免疫医療誌"J Biol Response Mod"に発表されている。同実験を発表した研究グループの一員は6年後の1992年にもβグルカンがマウスの免疫細胞の活性と抗酸化物質の生成に寄与したという別の実験論文を発表しているようである(1992年2月Int. J. Immunopharmacol誌)。共に論文は英語であるが後者の論文タイトルは日本語で「放射線被曝マウスに及ぼす水溶性グルカンと粒状グルカンの比較効果」となる。βグルカンという物質を、各方面の発表資料でたどってみると酵母など真菌類の構成物である糖質に行き当たる。酵母の歴史は古く、世界最古の医学書といわれる「エーベルス・パピルス」(エジプトのピラミッドから発掘され、紀元前15世紀頃の古代エジプト時代に書かれた文献という定説がある)に既に強壮剤として酵母の記述があるといわれる。一説ではそれ以前にシュメール人(古代メソポタミア文明を築いたと言われるがシュメール人については不明な部分が多い)が酵母をビールの発酵に使っていたという。いずれにしても酵母はパンや酒類の発酵剤として長い間我々人類の生活に密着してきたと言える。19世紀、ノーベル賞を受賞したドイツの発酵学者ブフナー(Eduard Buchner、1860-1902)がすり潰した酵母の発酵能力に注目したのは歴史に新しいところといえる。1940年代には酵母を加工した粗製物の免疫特性を研究していた免疫化学者も居た(Dr. Louis Pillemer, 1908-1957)。この粗製物質は1943年には「ZYMOSAN (ザイモサン)」という名称が付され、この年に百科事典にも登録されることになる(ウェブスター辞典、http://www.merriam-webster.com/dictionary/zymosan?show=0&t=1301320328)。βグルカン(ベータグルカン、Beta Glucan)という名称が登場するのはそれから20年ほど後の1960年代初頭と言われている。このころにザイモサン(ZYMOSAN)の持つ特異性に注目し、更に研究を進めた研究陣がいる。Tulane School of Medicine, Department of PhysiologyのChairmanでもあったNicolas DiLuzio(1926-1986)がその中心人物とされる。この研究陣はザイモサンの持つ特異性が酵母の構成物である高分子糖質であることを特定し、この物質をβ1,3グルカン(Beta-1,3-D Glucan)と名付けたと言われている。Nicholas DiLuzioは生前ベータグルカンに関する様々な実験を発表している(例:共著者によって彼の死後1987年Arch Dermatol誌で発表された”Glucan-induced Keratoderma in acquired immunodeficiency syndrome”など)。。様々な文献をみるとベータグルカンとはいかにも健康に資する薬理的物質と勘違いされがちである。酵母から抽出したベータグルカンについては確かに前医療段階とみられる様々な検証が主として欧米を中心に試みられているようだ。
出典:wikipedia
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