疾風（はやて）は、日本海軍の駆逐艦。神風型駆逐艦（2代目）の7番艦であり、この名を持つ日本海軍の艦船としては神風型駆逐艦 (初代)「疾風」に続いて2隻目。最初の艦名は「第十三駆逐艦」。続いて「第十三号駆逐艦」、最終的に「疾風」と改名された。一等駆逐艦「疾風」（Ⅱ）は日本海軍の神風型駆逐艦で、1925年（大正14年）12月に竣工した。改名前の艦名は第十三号駆逐艦。1941年（昭和16年）12月の太平洋戦争開戦時は、第四艦隊（南洋部隊）・第六水雷戦隊（司令官梶岡定道少将）麾下の第29駆逐隊に所属していた。12月11日、南洋部隊（指揮官井上成美第四艦隊司令長官）は第一次ウェーク島攻略作戦を実施、第六水雷戦隊はウェーク島のアメリカ軍守備隊と交戦する。「疾風」は陸上砲台の砲撃により轟沈した。同攻略戦では睦月型2番艦「如月」も空襲により撃沈されている。1921年（大正10年）10月12日、神風型駆逐艦7隻（第一駆逐艦《神風》、第三駆逐艦《朝風》、第五駆逐艦《春風》、第七駆逐艦《松風》、第九駆逐艦《旗風》、第十一駆逐艦《追風》、第十三駆逐艦《疾風》）、若竹型駆逐艦10隻（第二駆逐艦《若竹》、第四駆逐艦《呉竹》、第六駆逐艦《早苗》、第八駆逐艦《早蕨》、第十駆逐艦《朝顔》、 第十二駆逐艦《夕顔》、第十四駆逐艦《建造中止》、第十六駆逐艦《芙蓉》、第十八駆逐艦《刈萱》、第二十駆逐艦《建造中止》）および掃海艇4隻に、それぞれ艦名が与えられる。1922年（大正11年）8月24日、本艦は、姉妹艦や軽巡洋艦「夕張」および給油艦2隻（鳴戸、早鞆）等と共に艦艇類別等級表に登録された。9月11日、「第十一駆逐艦（追風）」は浦賀船渠で、第十三駆逐艦（疾風）は石川島造船所で建造される事が決まる。同日附で神風型8番艦「第十五駆逐艦（朝凪）」も命名された。同年11月11日、第十三駆逐艦（疾風）は石川島造船所で起工。1924年（大正13年）1月11日、石川島造船所で睦月型駆逐艦4番艦「卯月」（第25号駆逐艦）が起工。4月24日、「第十三駆逐艦」の艦名は「第十三号駆逐艦」に改正。12月1日、旧「疾風」は駆逐艦籍より除籍。翌年7月、廃船処分となり「廃駆逐艦5号」と改称後、呉海軍工廠でしばらく保管されていた。1925年（大正14年）3月23日午後4時、第13号駆逐艦（疾風）は進水。4月16日、石川島造船所で睦月型8番艦「長月」（第30号駆逐艦）が起工。10月15日、石川島造船所で第25号駆逐艦（卯月）が進水。8月25日、日本海軍は駆逐艦「汐風」駆逐艦長の神山忠中佐を本艦艤装員長に任命した。12月1日、第13号駆逐艦（疾風）艤装員長は神山中佐から三木太市中佐に交代する。12月21日、第13号駆逐艦（疾風）は竣工した。三木中佐も制式に第13号駆逐艦（疾風）初代艦長となる。志柿謙吉中尉（後日、空母「飛鷹」沈没時副長）も、第13号駆逐艦乗組を命じられた。その後、1928年（昭和3年）8月1日附で「第十三号駆逐艦」は「疾風」と改名。これに伴い、第一号型駆逐艦は神風型駆逐艦と改名される。1925年（大正14年）12月25日、第13号駆逐艦（疾風）は佐世保鎮守府籍の第29駆逐隊に編入される。第29駆逐隊は定数4隻（第11号《追風》、第13号《疾風》、第15号《朝凪》、第17号《夕凪》）を揃え、第二艦隊に所属。第29駆逐隊司令も疾風編入直前に岩崎本彦大佐（補第4駆逐隊《羽風、秋風、太刀風、帆風》司令）から山本松四中佐(前職第7駆逐隊《松、杉、柏、榊》司令)に交代している。第二艦隊は、第四戦隊（霧島、比叡）、第五戦隊（由良、名取、川内）、第二水雷戦隊（旗艦《五十鈴》、第3駆逐隊《汐風、島風、灘風、夕風》、第5駆逐隊《第3号〔朝風〕、第5号〔春風〕、第7号〔松風〕、第9号〔旗風〕》、第29駆逐隊）、第二潜水戦隊（旗艦《長鯨》、第14潜水隊、第17潜水隊）で編制されていた。1926年（大正15年）4月2日、第二艦隊・第二水雷戦隊（旗艦「五十鈴」）は東シナ海（済州島西方）を航行中、本艦（29駆司令駆逐艦）は第5号駆逐艦（春風、艦長後藤英次少佐）に衝突、2隻とも軽度の被害を受けた。12月1日、第13号駆逐艦長は、三木中佐から中円尾義三中佐（羽風艦長）に交代する。同日附で艦隊の編成がかわり、第二艦隊（旗艦「金剛」）は第四戦隊（金剛、比叡）、第五戦隊（加古、古鷹、神通、那珂）、第二水雷戦隊（旗艦《夕張》、第5駆逐隊、第22駆逐隊《第27号〔皐月〕、第28号〔水無月〕、第29号〔文月〕、第30号〔長月〕》、第29駆逐隊《追風、疾風、朝凪、夕凪》、第30駆逐隊《第19号〔睦月〕、第21号〔如月〕、第23号〔弥生〕、第25号〔卯月〕》）、第二潜水戦隊となる。1927年（昭和2年）8月24日、第五戦隊（加古、古鷹、神通、那珂）と第27駆逐隊の衝突事故で川内型軽巡洋艦2隻（神通、那珂）が大破（美保関事件）。12月1日の編成替で、第二艦隊は第四戦隊（金剛、比叡）、第五戦隊（加古、古鷹、衣笠、青葉）、第二水雷戦隊（旗艦《名取》、第22駆逐隊、第23駆逐隊《第31号〔菊月〕、第32号〔三日月〕、第33号〔望月〕、第34号〔夕月〕》、第29駆逐隊、第30駆逐隊）、第二潜水戦隊となる。同日附で第29駆逐隊司令山本松四大佐は天龍型軽巡洋艦2番艦「龍田」艦長へ転任、第28駆逐隊（蓼、蓮、蓬）司令千谷定衛中佐が第29駆逐隊司令に任命された。1928年（昭和3年）8月1日附で「第十三号駆逐艦」は「疾風」と改名。12月10日、第28駆逐隊（蓼、蓮、蓬）、第29駆逐隊（追風、疾風、朝凪、夕凪）、第30駆逐隊（睦月、如月、弥生、卯月）は舞鶴要港部に配備される。同日附で中円尾（疾風艦長）は睦月型10番艦「三日月」駆逐艦長に補職。「羽風」艦長園二郎少佐は、神風型2隻（夕凪、疾風）艦長を兼務することになった。第29駆逐隊司令も千谷定衛大佐から染河啓三大佐（第15駆逐隊《萩、薄、藤、蔦》司令）に交代した。1929年（昭和4年）3月4日、第1駆逐隊（神風、野風、沼風、波風）と第29駆逐隊の司令を交代する人事が行われる（染河大佐《第29駆逐隊司令》は第1駆逐隊司令へ、高橋忠治中佐《1駆司令》は29駆司令へ）。11月1日、駆逐艦「秋風」艦長津田源助少佐が疾風駆逐艦長に任命される。夕凪駆逐艦長には高橋一松少佐が着任した。11月30日、第29駆逐隊と第30駆逐隊は鎮海要港部に配備。高橋忠治大佐（第29駆逐隊司令）は第30駆逐隊司令へ転任、駆逐艦睦月初代艦長等を歴任した白石邦夫中佐（第25駆逐隊《梨、竹、樅、榧》司令）が第29駆逐隊司令となる。1930年（昭和5年）12月1日、第29駆逐隊は第一艦隊所属となる。第一艦隊は第一戦隊（長門、伊勢、霧島、日向）、第三戦隊（神通、那珂）、第一水雷戦隊（旗艦《川内》、第4駆逐隊《羽風、秋風、太刀風、帆風》、第5駆逐隊《朝風、春風、松風、旗風》、第29駆逐隊《追風、疾風、朝凪、夕凪》、第30駆逐隊《睦月、如月、弥生、卯月》）、第一潜水戦隊（旗艦《迅鯨》等）となる。同日附で津田（疾風艦長）は敷設艦「八重山」艦長に補職。後任の疾風駆逐艦長は、睦月型9番艦「菊月」艦長江口松郎少佐。また白石邦夫大佐(第29駆逐隊司令）は出雲型装甲巡洋艦2番艦「磐手」艦長へ転任、後任の29駆司令は山本弘毅大佐。1931年（昭和6年）12月1日より、第29駆逐隊は鎮海要港部に配備される。第29駆逐隊司令山本弘毅大佐は川内型軽巡洋艦3番艦「那珂」艦長に補職され、吹雪型駆逐艦「綾波」初代艦長後藤鐡五郎中佐が第29駆逐隊司令となる。1932年（昭和7年）1月11日、江口（疾風艦長）は浦風型駆逐艦1番艦「浦風」駆逐艦長に補職。後任の疾風艦長は中津成基少佐。3月10日、中津少佐は、本艦及び姉妹艦「追風」艦長の兼務を命じられた。4月1日、中津（疾風、追風）艦長は若竹型駆逐艦5番艦「朝顔」艦長へ転任。上田光治少佐（樅型駆逐艦2番艦「榧」艦長）が、追風・疾風艦長を兼務する。7月11日附で上田少佐は2隻（追風、疾風）艦長の職務を解かれた。8月5日、重巡「衣笠」航海長の小田操少佐は2隻（追風、疾風）艦長を命じられる。11月15日、小田は樅型21番艦「蓼」艦長となり、後任の疾風艦長は、戦艦「霧島」水雷長佐藤寅治郎少佐となる。1933年（昭和8年）3月15日、神風型2隻（朝凪、夕凪）艦長を兼務していた小西要人少佐が免職となり、佐藤は駆逐艦4隻（追風、疾風、朝凪、夕凪）の艦長兼務を命じられた。4月1日、吉村真武少佐が駆逐艦2隻（朝凪、夕凪）艦長に補職され、佐藤の兼務は2隻（追風、疾風）に戻る。5月17日、佐藤（追風、疾風）艦長は疾風艦長の職務を解かれる。疾風艦長には天野重隆少佐が任命された。11月1日、後藤鐡五郎中佐（第29駆逐隊司令）は第4駆逐隊（羽風、秋風、太刀風、帆風）司令へ転任、後任は藤田類太郎中佐（第27駆逐隊《蓼、蓮、蓬》司令）。11月15日、第29駆逐隊は第一艦隊所属となる。第一艦隊は第一戦隊（金剛、扶桑、日向、霧島）、第七戦隊（五十鈴、長良、名取）、第一水雷戦隊（旗艦《川内》、第5駆逐隊《朝風、春風、松風、旗風》、第23駆逐隊《菊月、三日月、望月、夕月》、第29駆逐隊《追風、疾風、朝凪、夕凪》、第30駆逐隊《睦月、如月、弥生、卯月》）、第一潜水戦隊（旗艦《長鯨》等）、第一航空戦隊（空母《赤城、龍驤》、第2駆逐隊《峯風、澤風、沖風、矢風》）で再編された。1934年（昭和9年）6月下旬、連合艦隊（司令長官末次信正中将、旗艦金剛）は第一艦隊・第二艦隊の演習を実施。第一水雷戦隊も参加した。6月29日、演習中に第二艦隊・第二水雷戦隊（旗艦那珂）で衝突事故が発生（深雪、電）、「深雪」は沈没した。同年11月1日、天野（疾風艦長）は初春型駆逐艦5番艦「有明」艤装員長に任命される。疾風駆逐艦長は、樅型4番艦「栗」艦長中原義一郎少佐に交代した。11月15日、連合艦隊（旗艦「山城」）・第一艦隊は第一戦隊（榛名、扶桑、山城、伊勢）、第八戦隊（長良、五十鈴、名取）、第一水雷戦隊（旗艦《阿武隈》、第21駆逐隊《初春、子日、若葉、初霜》、第22駆逐隊《皐月、水無月、文月、長月》、第29駆逐隊《追風、疾風、朝凪、夕凪》）、第一潜水戦隊（旗艦《多摩》他）、第一航空戦隊（空母《鳳翔、龍驤》、第5駆逐隊《朝風、春風、松風、旗風》）で再編。藤田類太郎大佐（第29駆逐隊司令）は第20駆逐隊（東雲、磯波、吹雪）司令へ転任、後任の29駆司令は広瀬末人中佐（第2駆逐隊《峯風、沖風》司令）。1935年（昭和10年）11月15日の編成替で、第28駆逐隊（朝凪、夕凪）・駆逐隊司令大藤正直中佐が新たに編制される。第29駆逐隊は2隻（追風、疾風）編制となる。また第二艦隊は第五戦隊（妙高、那智、羽黒）、第七戦隊（衣笠、青葉）、第二水雷戦隊（旗艦《那珂》、第6駆逐隊《雷、電、響》、第8駆逐隊《天霧、朝霧》、第19駆逐隊《浦波、敷波、綾波》、第20駆逐隊《東雲、吹雪、磯波》）、第二潜水戦隊（旗艦《鬼怒》、第12潜水隊、第38潜水隊）、第二航空戦隊（空母《加賀》、第29駆逐隊《追風、疾風》）で再編された。11月21日、第29駆逐隊司令広瀬末人大佐は第6駆逐隊（雷、電、響）司令へ転任、吹雪型駆逐艦「響」艦長江戸兵太郎中佐が後任の第29駆逐隊司令に任命された。1936年（昭和11年）6月20日、疾風駆逐艦長は中原少佐から田口正一少佐に交代。12月1日、第29駆逐隊は佐世保警備戦隊に配属、当時の同隊は巡洋艦4隻（妙高、北上、長良、阿武隈）、水上機母艦「能登呂」、第23駆逐隊（菊月、三日月、望月、夕月）、第29駆逐隊（追風、疾風）、第21水雷隊で編制されていた。江戸中佐（第29駆逐隊司令）は第5駆逐隊（朝風、春風、松風、旗風）司令へ転任した。1937年（昭和12年）1月16日、田口（疾風艦長）は睦月型「三日月」艦長となり、北野亘少佐（追風艦長）が2隻（追風、疾風）艦長を兼務する。7月13日、山田盛重少佐が疾風駆逐艦長に補職される。佐世保警備戦隊では「阿武隈」等が転出、戦艦「金剛」（2月10日附）、白露型駆逐艦3隻（海風、江風、山風）の第24駆逐隊（5月31日附）等が編入された。7月28日附で、巡洋艦2隻（妙高、北上）、第24駆逐隊・第29駆逐隊は転出した。第二次上海事変（昭和12年）が勃発すると、第29駆逐隊（追風、疾風）も中国方面で行動する。9月6日、「疾風」は対地砲撃を実施。13日には中華民国空軍2機より爆撃を受けた。9月14日、第29駆逐隊（追風、疾風）は軽巡洋艦「夕張」と珠江を遡行、虎門要塞から出撃してきた中華民国海軍肇和級防護巡洋艦「肇和（Chao Ho）」と交戦する。「追風」が別の敵艦に対処する中、2隻（夕張、疾風）は砲撃戦により「肇和」を座礁に追い込んだ（もう1隻も擱座）。泊地に戻る途中、中華民国空軍少数機による波状攻撃を受け、「夕張」は6名の戦傷者を出した。9月27日、第29駆逐隊（追風、疾風）は陸上砲台に対する砲撃を実施。同時に行われた第一航空戦隊（龍驤、鳳翔）艦載機の攻撃で、中華民国海軍2隻（肇和、舞鳳）は完全に破壊された。11月15日、疾風駆逐艦長は山田少佐から睦月型11番艦「望月」艦長飛田健二郎少佐に交代。12月1日、第29駆逐隊司令に岡野慶三郎中佐（第14駆逐隊《菊、葵、萩》司令）が任命される。しばらく中国方面で行動した。1938年（昭和13年）12月15日、飛田（疾風艦長）は朝潮型駆逐艦2番艦「大潮」艦長に補職（太平洋戦争開戦時の駆逐艦「雪風」艦長）。後任の疾風艦長は中杉清治少佐。第29駆逐隊司令も岡野慶三郎大佐（馬公警備隊司令）から藤田俊造中佐（第3駆逐隊司令）に交代。1939年（昭和14年）11月15日、第29駆逐隊司令は藤田俊造大佐（補第20駆逐隊司令）から田原吉興大佐（前職第10駆逐隊司令）に交代。12月1日、中杉（疾風艦長）は吹雪型駆逐艦5番艦「叢雲」艦長へ転任（後日、中杉は陽炎型18番艦「舞風」初代艦長）。松枝司蔵少佐が新たな疾風駆逐艦長となる。1940年（昭和15年）中旬、第29駆逐隊（追風、疾風）は、鎮海要港部や釜山を拠点に、朝鮮半島沿岸の警備任務に従事した。8月22日、第29駆逐隊（追風、疾風）が停泊する鎮海に、練習航海中の香取型練習巡洋艦2隻（香取、鹿島）が立ち寄る。10月15日、疾風駆逐艦長は松枝少佐から中川実少佐に交代。また第29駆逐隊司令も田原大佐（補第2駆逐隊《村雨、五月雨、夕立、春雨》司令）から清水利夫中佐（前職占守型海防艦2番艦国後艦長）に交代している。その後、同年11月15日まで編制されていた第28駆逐隊（朝凪、夕凪）の解隊にともない、第29駆逐隊は神風型4隻（追風、疾風、朝凪、夕凪）となった。第28駆逐隊司令柴田力大佐は第5防備隊司令へ転任した。1940年（昭和15年）11月15日、第四艦隊司令長官は片桐英吉中将から高須四郎中将に交代した。同時に昭和十六年度艦隊改編（昭和15年11月15日附）によって第四艦隊は増強され、麾下に第十八戦隊（鹿島、天龍、龍田）、第十九戦隊（沖島、常磐）、第六水雷戦隊（旗艦《夕張》、第29駆逐隊《追風、疾風、朝凪、夕凪》、第30駆逐隊《睦月、如月、弥生、望月》）、第七潜水戦隊（潜水母艦《迅鯨》、第26潜水隊、第27潜水隊、第33潜水隊）、第三根拠地隊、第五根拠地隊が所属することになった。1941年（昭和16年）7月22日、第四艦隊各部隊指揮官は「鹿島」に集結し、高須長官の指示により3隻（鹿島、夕張、朝凪）を除く各艦は一旦内地に戻り、整備に従事した。7月25日、中川少佐（疾風艦長）は吹雪型駆逐艦「曙」艦長に補職。峯風型6番艦「矢風」艦長の高橋実少佐が、疾風駆逐艦長に任命された。8月11日、高須（四艦隊長官）は第一艦隊司令長官に補職される。後任の四艦隊司令長官は、海軍航空本部部長だった井上成美中将となる。9月1日、第29駆逐隊司令清水利夫大佐は初春型駆逐艦4隻（初春、子日、若葉、初霜）で編制された第21駆逐隊司令に補職。後任の第29駆逐隊司令は瀬戸山安秀大佐（第11掃海隊司令）。同日附で第30駆逐隊司令も宮坂義登大佐から安武史郎大佐に交代した。10月中旬から下旬にかけて、第四艦隊各艦は再びトラック泊地に集結した。12月1日、第四艦隊司令部は独立し、それに伴い第十八戦隊司令部を新設。第十八戦隊司令官は丸茂邦則少将（旗艦天龍）となる。同戦隊は軽巡2隻（天龍、龍田）となり、「鹿島」は単独旗艦となって十八戦隊から独立した。また第四艦隊の戦力も従来に比べ根拠地隊や水上機母艦等を増強しているが、日本海軍全体の兵力不足のため、第四艦隊の希望を満たす状態ではなかった。第29駆逐隊第1小隊（追風、疾風）は、南洋部隊指揮官井上成美第四艦隊司令長官（旗艦「鹿島」）の指揮下で、太平洋戦争開戦初頭のウェーク島攻略戦に参加した。1941年（昭和16年）12月11日午前4時頃、ウェーク島近海で上陸作戦を実行中の「疾風」は、ウェーク島海岸砲台による砲撃を受け沈没、太平洋戦争における日本軍最初の戦没艦（水上艦艇）となった。経過は以下の通り。ウェーク島攻略計画は、1940年（昭和15年）11月の連合艦隊図上演習で初めて実施され簡単に成功したため、日本海軍は本作戦について極めて楽観視していたという。真珠湾攻撃と共にウェーク島の米軍基地はマーシャル諸島から発進した日本海軍の九六式陸上攻撃機の反復攻撃を受け損害を受けたが、完全に戦力を喪失したわけではなかった。これに対し、日本軍（第四艦隊）はウェーク島の攻略は容易であると見ており、特にピーコック岬砲台（Ａ砲台）とウィルクス島砲台（Ｌ砲台）は壊滅したと判断している。第一次攻略部隊のおもな戦力は、攻略部隊司令官梶岡定道第六水雷戦隊司令官、攻略部隊本隊/第六水雷戦隊（旗艦：軽巡洋艦「夕張」、第29駆逐隊第1小隊《駆逐隊司令瀬戸山安秀大佐：追風、疾風》、第30駆逐隊《睦月、如月、弥生、望月》）、大発動艇を搭載した旧式駆逐艦改造哨戒艇2隻（32号、33号）、第十八戦隊（司令官丸茂邦則少将：天龍、龍田）、輸送船2隻（金剛丸、金龍丸）等である。第29駆逐隊第2小隊（夕凪、朝凪）はギルバート諸島マキン島攻略作戦のため第十九戦隊司令官志摩清英少将（旗艦「沖島」）指揮下にあり、第1小隊（追風、疾風）とは別行動であった。12月11日午前3時、アメリカ軍ウェーク島守備隊は南の水平線上に船影を発見、一部の者は米軍の救援艦隊と錯覚して海岸に降りた。しかし指揮官中佐、海兵隊少佐も船影を日本艦隊と判断する。2人はウェーク島砲台の射程外から巡洋艦にアウトレンジ砲撃されることをおそれ、日本艦隊が十分接近するまで砲撃を控えるよう命令した。攻略部隊は自分達が待ち伏せされている事に全く気が付いていなかった。日本艦隊は大発動艇の夜間発進に手間取り、天明を待って上陸作戦を実施することにした。戦闘は軽巡3隻（夕張、天龍、龍田）の艦砲射撃ではじまった。約1時間の砲撃ののち、日本軍輸送船団は上陸部隊の展開をはじめる。午前6時15分（日本時間と約2時間違う）、ウェーク島南東ピーコック岬のＡ砲台は距離5100ｍで「夕張」に発砲、同艦は南へ避退した。ウェーク島西側のウィルクス島に秘匿されていたＬ砲台（指揮官ジョン・A・マカリスター中尉）は軽巡2隻（天龍、龍田）の砲撃に耐え、距離6300で単縦陣の駆逐艦3隻に発砲する。日本側の戦闘詳報によれば、「疾風」は「睦月」の後方を航行していた。米軍によれば、「疾風」は砲台の斉射に対し左に舵を切り、片舷斉射を行った。この運動によって被弾面積が大きくなり、絶好の目標になる。砲撃は艦中央部に命中。艦尾から艦全体に黒煙が広がったかと思えば、200メートルぐらいの水柱を上げ、これらが姿を消した頃には「疾風」の姿はなかった。地上砲台からは真っ二つになった「疾風」が見え、すぐに沈んでゆく光景が見られた。日本時間午前4時過ぎであった。168名総員戦死。なお12月14日の第四艦隊報告によれば、「疾風」乗組員1名と「如月」乗組員3名が救助されている。また米軍はウェーク島近海で沈没した本艦より暗号書を入手したという。なお本件について土肥一夫（海兵54期、当時第四艦隊参謀）は特設哨戒艇（漁船改造）の暗号書が米軍に回収された可能性を指摘している。否定的な見解もある。米軍の予期せぬ反撃と「疾風」の轟沈により、攻略部隊の駆逐隊は混乱に陥った。「疾風」を撃沈して意気が上がるＬ砲台は、退避中の数隻に命中弾を与えたと記録している。のちにカニンガム中佐は『この日の朝、何者もＬ砲台を悩ますことは出来なかった』『Ｌ砲台は熱く燃えていた』と回想した。またビール島のＢ砲台は2隻（睦月、弥生）を撃退した。日本艦隊はクェゼリンへの退却を開始したが、爆弾を搭載したF4Fワイルドキャット戦闘機3機の追撃と反復攻撃を受けた。なお、この戦闘で「如月」が沈没している。他の数隻（天龍、龍田、追風、弥生、金剛丸）も損傷。ウェーク島第一次攻略作戦は、海岸砲台が上陸侵攻部隊を撃退した第二次世界大戦中唯一の事例となった。米軍の戦死者1名、負傷者4名。「疾風」を撃沈したＬ砲台は「まるで戦争に勝ったみたいな騒ぎ」であったという。アメリカ側は巡洋艦1隻・駆逐艦1隻を撃沈と認識していた。1942年（昭和17年）1月15日、「疾風」は神風型駆逐艦、第29駆逐隊、帝国駆逐艦籍のそれぞれから除籍された。第29駆逐隊は神風型3隻（追風、朝凪、夕凪）で活動を続けたが、同年5月25日に睦月型駆逐艦12番艦「夕月」が編入されて定数4隻を回復した。

出典:wikipedia