博多駅テレビフィルム提出命令事件(はかたえきテレビフィルムていしゅつめいれいじけん)とは、報道の自由に関する日本の裁判である。1968年(昭和43年)1月16日早朝、原子力空母エンタープライズの佐世保寄港阻止闘争に参加する途中、博多駅に下車した全学連学生に対し、待機していた機動隊、鉄道公安職員は駅構内から排除するとともに、検問と持ち物検査を行った(この事件そのものが「博多駅事件」と呼ばれる)。護憲連合等は、この際、警察官に特別公務員暴行陵虐・職権濫用罪にあたる行為があったとして告発したが、地検は不起訴処分とした。これに対し護憲連合等は付審判請求を行った。福岡地裁は、地元福岡のテレビ局4社(NHK福岡放送局、RKB毎日放送、九州朝日放送、テレビ西日本)に対し、事件当日のフィルムの任意提出を求めたが拒否されたため、フィルムの提出を命じた。この命令に対して4社は、「報道の自由の侵害・提出の必要性が少ない」という理由に通常抗告を行ったが、福岡高裁が、「報道の自由といえども公共の福祉により制限されること、裁判でのフィルムの使用は『態様を異にした公開』とも考えられ報道機関の不利益は少ないこと、またフィルム提出は審理にとって必要であること」等の理由で、抗告棄却の決定を行ったため、最高裁に特別抗告を行ったが、抗告棄却となった。最高裁昭和44年11月26日大法廷 最高裁は、「報道の自由は、憲法21条の保障にある取材の自由といっても無制約ではない。報道機関の取材フィルムに対する提出命令が許容されるか否かは、対象犯罪の性質、軽重および取材内容の証拠としての価値、公正な刑事裁判を実現するための必要性の程度と、これによって取材の自由が妨げられる程度を比較衡量して決めるべきである。この件の場合、フィルムは裁判に重要な価値・必要性がある一方、報道機関がこうむる不利益は将来の取材の自由が妨げられる恐れがあるという程度にとどまるため、受忍されなければならない」とし、抗告を棄却した。報道の自由については、「思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあることはいうまでもない。」とした。取材の自由については、「報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。」としつつ、「取材の自由といつても、もとより何らの制約を受けないものではなく、たとえば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることのあることも否定することができない。」とし「本件フイルムの提出命令は、憲法21条に違反するものでないことはもちろん、その趣旨に牴触するものでもない」とした。フィルムの証拠としての重要性や取材に与える影響を検討して、比較衡量によって結論を導いたとされる。福岡地裁は最高裁判決を受けて、1970年3月4日に4社の「放映済のテレビフィルム」のみを差し押さえた。
出典:wikipedia
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