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クロノス・ジョウンターの伝説

『クロノス・ジョウンターの伝説』(クロノス・ジョウンターのでんせつ)は梶尾真治のSF小説。映画『この胸いっぱいの愛を』の原作小説ではあるが、内容は大きく異なる。1995年、秋。住島重工の開発部門だけを担当する会社、P・フレックにて時間軸圧縮理論を採用した巨大な「物質過去放出機」、またの名を『クロノス・ジョウンター』の開発に成功する。だが、実験を重ねて行く内にクロノス・ジョウンターには重大な欠点がある事が発覚する。それは物質を過去に飛ばす事が出来ても長時間留まらせる事が出来ず、しかも戻ってくるのが現在ではなく未来にはじき飛ばされてしまうのだ。P・フレック開発三課に所属する吹原和彦は、通勤時に通りがかる花屋で働く蕗来美子に片思いをしていた。ようやく彼女との食事の約束を取り付けたのもつかの間、彼女の働く花屋に化学薬品を積んだタンクローリーが追突、彼女は亡くなってしまう。吹原は来美子を助けるべくクロノス・ジョウンターに乗り込むが、時の神クロノスの洗礼を受けてしまう。1991年12月23日。イラストレーターの枢月圭は、マンション近くのゴミ捨て場で倒れている布川輝良と出会う。圭は介抱している内に布川に惹かれ、また布川も圭に惹かれ相思相愛になる。しかし、布川には時間が残されていなかった。布川輝良はP・フレックの開発一課に所属していた。ある日開発三課と四課を束ねる野方に、人体実験として新たに開発した小さいクロノス・ジョウンターである『パーソナル・ボグ』を装着して過去に飛ぶよう依頼される。パーソナル・ボグを使うと本来よりも長く滞在できるが、二度とクロノス・ジョウンターに乗れなくなる装置だという。天涯孤独の布川はその依頼を受ける代わりに1991年12月25日に解体されてしまう朝日楼旅館の全景を見てみたいと頼み、過去にやってきたのだ。しかし、パーソナル・ボグのエネルギーが野方の計算よりも大幅に早く切れそうにな上に、朝日楼旅館は既に工事の準備で高い塀で覆われてまったく建物が見られない状況になっていた。1980年、夏。11歳の鈴谷樹里は入院していた病院で不治の病に冒された青年、青木比呂志と出会う。樹里は比呂志をヒー兄ちゃんと呼び、彼が読んだ小説や彼の創った物語を聴くのが好きだった。樹里と同じ名の少女が登場するロバート・F・ヤングの小説『たんぽぽ娘』の話を聴いている最中にヒー兄ちゃんは倒れてしまい、まもなくして亡くなってしまう。樹里はそれをきっかけに、医師になることを志すようになる。それから19年後の1999年、夏。医師になった樹里の元に、取引をしている製薬会社の古谷からヒー兄ちゃんのかかっていた不治の病を治す特効薬が開発された事を聞かされ、サンプルを貰う。同じ病気の入院患者に投与した所、みるみる内に回復したのだ。もしあの時、この薬があれば…。そう思っていた矢先、強制的に見合いをさせられる。相手は野方耕市。彼の実家は開業医なのだが、野方は工業系の会社に就職したために医師の嫁を探しているのだと言う。その野方から開発中止が決まったのにも関わらずこっそり開発を続けているクロノス・ジョウンターの話を聞いた樹里は野方を説得し、パーソナル・ボグの改良版『パーソナル・ボグII』を使って19年前に飛んでヒー兄ちゃんを助けに行く事に。住島重工に勤める秋沢里志は友人の紹介で出会った梨田紘未と出逢い結婚するが、紘未は交通事故で亡くなってしまう。傷心の秋沢は上司からP・フレックに長期出張で欠員が出ているからと異動を提案され、流されるまま受ける事に。P・フレックでは開発四課に配属され、クロノス・ジョウンター、そして開発四課で独自に開発している時間螺旋理論を採用した『クロノス・スパイラル』の存在を知る。クロノス・ジョウンターは時間と場所を指定出来るが留まる事が出来ず、未来にはじき飛ばされる。その代わりクロノス・スパイラルはその時代に留まる事が出来るが、螺旋の周期は39年。クロノス・スパイラルでは39年毎にしか行く事が出来ないのだ。それを知った秋沢はクロノス・ジョウンターに乗って紘未を助けに行こうと決心し、積極的に開発の手助けをする。しかし、思わぬトラブルによってクロノス・ジョウンターの開発が中止、解体・撤去されてしまった。P・フレック開発三課に所属する栗塚哲矢は、クロノス・ジョウンターが放出した物質の到着地の誤差を無くす設定をする仕事をしていた。そんな最中、母親の亜貴子が病気で亡くなる。栗塚は母子家庭で、亜貴子の事を恨んでいた。幼少期から自分を放って小さな飲み屋を切り盛りし、自宅ではいつもしかめっ面で少々のことで栗塚の事を怒っていた。その上、小学校高学年の下校途中に、見知らぬ男と親密な様子であるいているのを目撃してしまったのだ。亜貴子にとって自分が必要ない人間だと思った栗塚は高校から寮で住むようになり、そのまま関係を持たずに暮らしてきた。仕事が一段落した時、会社に亜貴子の店の出資者である守山がやってくる。亜貴子から預かった栗塚名義の貯金通帳を届けに来たのだ。その際、守山は幾度も亜貴子に求婚したが、栗塚の母親であるために結婚を拒んでいた事を聞かされる。そして、亜貴子が自分に逢いたがっていた事も。そんな最中、野方がクロノス・ジョウンターの実験台の志願者を探している話を耳にする。2039年、秋。79歳の野方耕市の元に、機敷埜風天と名乗る老人が訪ねてくる。彼は科幻博物館という歴史に隠された機器を展示する博物館の館長をしており、クロノス・ジョウンターを手に入れたと言うのだ。そこで野方に展示パネルのための説明を聞きたいと、はるばるやってきたのだ。クロノス・ジョウンターを開発した意味はあったのだろうかと悩んでいた野方は機敷野の励ましに感銘を受け、クロノス・ジョウンターの調整をすると申し出る。クロノス・ジョウンターの調整をしている内に、ある事を思い出す。それは、学生時代に亡くなった親友の萩塚敏也の事だった。しかし、クロノス・ジョウンターでは20年前までが限界。だが機敷埜の提案により、パーソナル・ボグIIを使えば57年前に行く事が可能だと言う事を知る。2009年7月21日よりウェブコミック配信サイト『FlexComixネクスト』で漫画化作品が連載された。作画はアサミ・マート。演劇集団キャラメルボックスより、「吹原和彦の軌跡(クロノス)」「布川輝良の軌跡(あしたあなたあいたい)」「鈴谷樹里の軌跡(ミス・ダンデライオン)」・「きみがいた時間ぼくのいく時間」「野方耕市の軌跡(南十字星駅で)」が舞台化されている。原作とは違う形で他作品との関連性があり、舞台版のオリジナル登場人物がいる。それに合わせ、関係・設定も変更されている箇所がいくつかある。また2015年に演劇集団キャラメルボックスが結成30周年第一弾として「クロノス」、および成井豊によるクロノスシリーズを原作としたオリジナル新作「パスファインダー」を上演。翌年2016年2月~3月に「きみがいた時間ぼくのいく時間」、および再び成井豊によるクロノスシリーズを原作としたオリジナル新作「フォーゲット・ミー・ノット」が上演される事が決まっている。2015年に演劇集団キャラメルボックスが「クロノス」を再演するに当たり、クロノスシリーズを原作として成井豊脚本・演出で上演された。2016年に演劇集団キャラメルボックスが「きみがいた時間ぼくのいく時間」を再演するに当たり、クロノスシリーズを原作として成井豊脚本・演出で上演された。なお、出演者は全員同時上演される「きみがいた時間ぼくのいく時間」と同じメンバーである。1970年春。じきに中学に上がる小学生・吉野てるみとその母親・節子は、車で帰宅中に実家の映画館から出てきた男を轢きそうになる。男は間一髪でよけたが地面で頭を打って気を失い、すぐに目は覚ましたものの記憶喪失になってしまった。男は自分の名前すらも忘れており、何かを思い出そうとした瞬間に「クロノス・スパイラル」と謎の言葉を口にする。男の財布には社員証が入っており、そこには“P・フレック開発四課 春山恵太”と書かれており、辛うじて男の名前が「春山恵太」だと分かった。春山の持っていたリュックサックの中には着替えと、タイプライターのような機械、そして100万円が入っていた。担当医師は「旅行か誰かに会いに来たのではないか」というが、春山には分からなかった。てるみ・節子と共に見舞いに来たてるみの祖母・絹代に何か償いをさせて欲しいと提案されるが金銭には困っておらず、それよりも住む所に困っていると相談すると節子が実家の映画館で下宿をしないかと提案する。映画館には既に春山敏郎という偶然同じ苗字の青年技師が住み込みで居たが元々芝居小屋の楽屋で使われていた広い部屋で、敏郎が良いのであればと春山は退院をして映画館へと向かう。映画館館主であるてるみの祖父・伝次郎にも気に入られ、「人手不足だから」と再び節子の提案を受けて映画館で働く事になる。しかし節子には、思惑があった。節子は元々東京で女優をしており、デビュー当初は大きな役をしていたが翌年には妻子持ちの男との子・てるみを身籠ってしまった。一度はてるみを置いて東京には戻ったものの仕事がもらえず生活に困り実家の映画館を手伝ってはいたが、東京に戻って女優として再起したいから金を貸してほしいと伝次郎に幾度と頼んでいた。てるみの提案で、春山・敏郎は社員証に書かれていた住所へと向かう。しかしそこにあったのはかぼちゃ畑で、会社は見る影もない。敏郎の友人・栗崎健が務めるホテルが近くにあるので春山の事や会社を知らないかと話を聞きに行くが、栗崎も居合わせた同僚・柿沼純子も知らなかった。そこを偶然施設係・楢原弥九郎が通り春山の事を知らないかと聞くが、彼も知らないと答える。3人が立ち去った後、楢原はどういう経緯で3人が訪れたのかを聞く。栗崎が「P・フレックという会社を探している」と告げると、楢原は「P・フレック!?」驚愕する。すぐに「やはり知らなかった」と取り繕うが、楢原は3人が立ち去った後をじっと見つめた・・・・

出典:wikipedia

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