マリーシア()とは、ポルトガル語で「ずる賢さ」を意味するブラジル発祥の言葉である。サッカーの試合時におけるさまざまな駆け引きを指す言葉でもあるが、国によってその解釈は異なっている。イタリア語では「マリッツィア(Malizia)」と呼ばれる。ブラジルにおいて「マリーシア」の思想は社会全体に行き渡っている。男女関係における駆け引きや、スピード違反の取り締まりにあった際に賄賂を贈って見逃してもらおうとする行為などが、それに該当する。サッカーにおいても用いられるが、これはブラジル南部のリオグランデ・ド・スル州に限定されているとも言われる。サッカーにおける「マリーシア」には「機転が気く」「知性」という意味がある。本来、「駆引きを行い試合を優位に運ぶ」行為を指し、「ルールの裏をかく」といった反スポーツ的な意味合いはない。相手の心理状態を読んで奇襲をかけたり、相手の油断や混乱に乗じて意外性のあるプレーを行う、日本語に直訳すると「したたかさ」に近い意味合いを持ち、「マリーシアが足りない」という言葉は選手の未熟さや経験不足を指す言葉として用いられている。ブラジルでは、こうした知性や知恵といった範疇を超えて相手を意図的に傷つけるような汚いプレーを「マランダラージ」()と呼んでいる。また、相手に対する露骨な時間稼ぎなどの行為については更に細分化し、「カチンバ」や「セラ」と呼んでいる。2010年に下田哲朗とアデマール・ペレイラ・マリーニョの共著により出版された『サッカー王国ブラジル流正しいマリーシア』では、マリーシアを「豊富な人生経験を経て身につけた知恵」と定義し、主な実例として以下の項目を挙げている。アルゼンチンにおける「マリーシア」には「汚い」プレーが含まれ、「試合で先制点を決めた後の露骨な時間稼ぎ」や、「接触プレーの際に必要以上に痛がりピッチに倒れこむ」「プレーエリアに直接関係しない選手が意図的に倒れ、試合を中断させる」「相手の髪やユニフォームを引っ張る」といった行為が常態的に行われている。相手の長所を消すための戦術を作り上げたのは、1960年代にアルゼンチン代表を率いたと言われている。元々、同国の選手たちは足元のボールテクニックを生かしてショートパスを繋ぐサッカーを持ち味としていたが、1958 FIFAワールドカップのグループリーグ最終戦でチェコスロバキア代表に1-6と大敗し敗退するなど結果を残せずにいた。この大会での敗戦を契機にロレンソの提唱もあり、結果のためなら反則も辞さない激しいサッカーが台頭するようになった。こうしたスタイルは1966年にイングランドで行われた1966 FIFAワールドカップ準々決勝のアルゼンチン代表対イングランド代表戦や、1968年に行われたインターコンチネンタルカップのエストゥディアンテス・デ・ラ・プラタ対マンチェスター・ユナイテッドFC戦などで実行され、物議を醸した。1990年代ではディエゴ・シメオネが相手選手を故意に挑発して苛立たせ相手の報復を誘発させる、したたかなプレーを得意としており、1998年にフランスで行われた1998 FIFAワールドカップ決勝トーナメント1回戦のアルゼンチン代表対イングランド代表戦ではデビッド・ベッカムを退場へと追い込んだ。ブラジルではアルゼンチンのマリーシアを「破壊的」なものと考えられており、アルゼンチンのチームと対戦する際には「相手のマリーシアに惑わされず、冷静さを維持するように」と言われている。日本国内では「マリーシア」という言葉は以下のような事例として認知されている。このうち、「時間稼ぎ」という概念は日本サッカーリーグ (JSL) の時代にも存在したが、その手法は「ピッチからスタンドなどの遠方へと蹴り出す」というもので、マルチボールシステムが導入される以前は有効な手法だった。 1993年のJリーグ開幕以降、「試合終盤に相手陣内のタッチライン際でボールをキープして時間を稼ぐ」という手法が一般的となり、同年10月26日にカタールのドーハで行われた日本代表対イラク代表戦における結末(ドーハの悲劇)を通じて、その重要性が認識されるようになった。こうした試合時の「駆け引き」を指す「マリーシア」という言葉は1995年8月9日に東京の国立競技場で行われた日本代表対ブラジル代表戦を契機に認知されるようになった。この試合は1994 FIFAワールドカップ優勝チームのブラジルが5-1と日本に大勝したが、試合後の記者会見において主将のドゥンガは記者の前で「マリーシア」という言葉を用いて、両国間のレベルの差異を明かした。一方、「ドーハの悲劇」やドゥンガによる提言の後も、一発勝負のトーナメント方式を尊ぶ国民性やJリーグにおいて採用されていた延長Vゴール方式の影響もあり、戦術的な駆け引きとしてのマリーシアの浸透は遅れた。2000年代の日本における「マリーシア」の認識は、日本語訳である「ずる賢さ」から「賢さ」を取り除いた「ずるさ」の部分だけが拡大解釈されたものであるとの指摘もあり、審判に気がつかれなければ反則を行っても構わないとの誤解が生じている。
出典:wikipedia
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