左利き(ひだりきき)とは、一般的に人間の手の利き手が左であること、またはそのような人のことを指す。ただし広義には手・腕だけでなく、脚、目、耳のいずれかが左優位の場合にも用いられる。左利きの人は一般的に右手に比べて左手がより器用で、多くの動作に左手を使うことを好む。例えば、文字を書く、料理をする、箸を使うなどである。左利きは全ての動作を左手で行うと思われがちだが、実際には完全な左利きは少ない。文字を書くのは右だがボールを投げたりするのは左を使うなど、動作によって使う手が異なる場合もある。また特にどちらの手と決まっていない動作も多い。そういった意味では、左利きの人は、両利きと呼ばれることもある。左利きの人を指す言葉として「(左)ぎっちょ」(語源は毬杖から)、「サウスポー」などがある。。1977年の統計では成人人口の8%から15%が左利きである。また、わずかながら女性よりも男性の方が左利きが多いという統計結果もある。この割合は古今東西を問わずほぼ一定である。古代の壁画や石像を見ても右利きの方が圧倒的に多かった。そのため左利きが生まれるのは文化・教育・食事など後天的要因によるものではないことが分かっている。しかし、なぜ左利きが少数なのか、なぜ10%前後で変動がないのかについてははっきりとした理由が分かっていない。また一卵性双生児が左利きである頻度は、単生児よりも若干ながら高い。以下に左利きが発生する要因とされている説を列挙する。心臓は左半身にあり、右利きの戦士は右手に武器を左手に盾を持って戦う、左利きの戦士は左手に剣を持ち右手に盾を持って戦う。この結果左利きの戦士の方が心臓を危険にさらし致命傷を負う確率が高くなる。従って右利きの人間が多く生き残るという自然選択説による説である。これは非常によく言われる説であるが、かなり疑わしいとされている。まず、心臓の位置が左半身という前提になっているが、心臓は身体のほぼ中央にある。よって、盾を持つ手で影響が出るとは考えにくい。また、利き腕が遺伝することを前提としているが、利き腕に関わる遺伝子の存在は確認されていない(後述)。さらには、盾を使ったとされる年代や地域は限定される。弓や両手剣を使い、盾を使わない文化圏でも左利きが出ることや、盾がまだない石器時代から左利きが少数であること、盾が廃れた近代になっても左利きが増えないことなどを説明できない。DNAや染色体異常などの突然変異により左利きが生まれるとする説。しかし、右利きと左利きでDNAや染色体に変化がないことは証明されている。学術的な説ではなく民間で生まれた都市伝説に近い。だが科学知識のない時代にはかなり信じる人も多く左手に対するマイナスイメージを生むことになった。生物は多様化することによって未知の伝染病や急激な環境変化に遭遇しても全滅することを防ごうとする。左利きが生まれるのもこの多様化の一種であるとする説。しかし、利き腕の差がその意味で効果があるかと言えばかなり疑わしいと言わざるを得ない。言語と手仕事の両面において、より良い運動神経を必要とする場合、脳の片側の半球で両方の判断をした方が、左右両方の脳を使うよりも効率的であるという理論である。脳の左側は言語を制御しているので、脳の左側が制御する右半身の方が発達する、左利きの人は逆になっている。他の霊長類は人間のような話し言葉を使うものは無い。他の霊長類には利き腕の偏りが見られない。このようにこの理論では予測する。この理論にも反論があり、90%前後の右利きの人は言語を制御するのに脳の左半球を使っているが、左利きの人は左半球の場合と右半球の場合があり可変であるという主張である(詳細については脳機能局在論参照)。右利きの脳と左利きの脳の基本的な違いを脳スキャンで確認するいくつかの研究が行われた。通常、脳の特定部位が各作業に使われている状態で、右利きの人の脳は非常に集中される。この集中化は左利きの脳では一般的に無い。左利きの人が脳卒中の発作に見舞われた場合、右利きの脳卒中患者よりも復帰が早い。これにより左利きの人の脳は、脳の各所に機能を分散する度合いが高く、集中させる度合いが低いとされる。利き腕と脳についてよく言われる説で右利きは理論に優れ、左利きは芸術など感性に優れると言うことがあるがこれは間違いである。確かに人間の左脳は言語野など理論的なものがあり、右脳には感性を司る部位がある。そして、利き腕と脳はクロスしたつながりが太いことも確かである。しかし、腕の動きが活発であるかどうかと脳の活動はほとんど関係がない。利き足と言語に関しては、オウムの90%が左足利きであるという関係がある。イギリス王室の王族の多くは左利きである。女王エリザベス2世をはじめ、チャールズ皇太子、ウィリアム王子も左利きである。そのため利き手が遺伝する説の説明によく用いられる。しかし、統計としては分母が少なすぎて参考にならない。本来は左利きでも、親などの周りの大人に右利きに矯正されることが多いためである、とする説。2004年、英ベルファストのクイーンズ大学博士・ピーター・ホッパーによって行われた研究によると、人間が右利きになるか左利きになるかは妊娠10週間目の頃に決定しているという新発見がなされたとのこと。今回の研究にあたって、妊娠中の女性1000人に超音波走査を実施した結果、例えば10週間目から12週間目の頃に胎児が左手の親指よりも右手の親指を頻繁に吸っていた場合、子供はほぼ確実に右利きとして生まれてくるという関係性が明らかになったと話している。また博士らはそれ以外にも10週間目の頃の胎内での手の動きと利き手の関連性についてのいくつかの発見があったとしているが、胎内において脳が手に対してそれらの命令を出しているという証拠はなく、また脳の命令よりは脊髄反射によるものである可能性が高いと話している。個人差は多く見られるが、大人になるほど利き手の変更は困難である。そのため、日本を始めとする世界の多くの国で、幼少時に周囲の人物が、箸や鉛筆の『利き手の変更』を行なわせようとすることが多い。しかしこの「矯正」は本人が望んだものではないため、うまく腕を動かせないストレスに加え、「矯正」の指導をする親が激しく叱ることが多く悪影響が少なくない。洋の東西を問わず、かつては左利きを身体障害者と考える人・地域は多く、さらには知的障害の一種のように扱う人もいた。そのため利き手の矯正はかなり高い比率で、時には厳しい体罰を伴ってでも矯正されていた。近年、左利きは障害ではないことが広く知れ渡ると同時に個性のひとつとして考えられるようになったため、矯正する親の割合は減ってきたが、後述の文字筆記上の不便さから学校受験などで不利になると考え、また生活上の不便(後述)を考えて矯正する親も多い。また一部には、我が子をクリエイティブな能力のある子供に育てようと、右利きの子供を左利きにしようとする親もいるが、同様の悪影響があるため全く薦められない。幼少時はまだ利き手が定まっていないと考えがちであるが、変更しようとする=既に左を多用しているわけで、この段階で利き手は明確に定まっている。利き手は箸や筆の持ち方とは全く異なることを理解しなければならない。幼少期の変更が多いのは適切な時期だからではなく、親の影響力が強い時期であるからと考えられる。しかしながら、「右」と「左」とにそれぞれ意味をもつ文化では、右手左手を使い分けが定められている場面もあり、それを無視すれば礼儀やマナーに反することにもなる。そのため時と場所によっては、利き手にかかわらず右手でなければならないことがあるのは言うまでもない。世の中の製品(道具や機械、楽器など)は、右利き用に設計されているものが多い。これは左利きにとって不便なだけでなく、危険性が高い場合がある。また一般に左利き用の製品は右利き用に比べ割高であり、経済的負担を強いられる。左利きの人は多くの場面で右手用製品を使わざるを得ず、結果としてかえって左利き用の物が使いにくくなる事も多い。また両利きやクロスドミナンスになる人が殆どである。またこうした不便からくるストレスや、操作ミスによる事故を起こしやすいなどの理由から、左利きは右利きに比べて平均寿命が9年短いという説(スタンレー・コレンの報告)がある。しかし、今のところ科学的な精密調査による検証は行なわれていない。また、集団生活において、横に並んで食事をすると左利きと右利きの利き腕がぶつかるといった問題がある。建物設計でも座席間の距離は、右利きの人だけが並んだことを想定している。これは古代の軍隊でも顕著であり、代表的な例として古代ギリシアの槍部隊であるファランクスも全員右手に槍を持つことが前提となっている。左手で槍を持つことは許されなかった。現代の軍隊でも、前述のように銃火器の構造上、左利きは不便である。日本の警察では、警官の装備は拳銃が右・警棒が左の配置になっている。これは、左利きであっても変える事が認められない(そもそも左利き用ホルスターが作られていない)。なかには、歴史的経緯から多数派である右利きにとって不便で少数派である左利きにとって便利になっているものもある。統計によれば、高年齢層程左利きの割合が減少する。1991年に発表された論文は、この統計は左利きの人は右利きの人に比べて9年も短命であることを示すものであると主張し、その原因は左利きの人は右利き中心の世界に適しておらず、この世界で遭遇する「苦難」のために事故で死亡することが多いためであろうと示唆している。しかしその後の多くの研究により、右利きの人に比べて左利きの人が短命であるという証拠は全くないことが明らかになっている。なお、この出典はマカク類(ニホンザル類)に属するサルの老熟個体の右利き率について、それらが進化学的なものに根ざし、また「我々」人類と一致していない件について述べたものである。右利き、左利きどちらが長命かを述べた論文ではない。ユニバーサルデザインの視点から、右利き左利きどちらでも快適に暮らせる社会にしようとの動きも出始めている。例えば、大手民鉄、JRが導入しているバーレススタイルの自動改札は、左手で使う場面も考え、券投入口が左に5度向いている。他にも左右両開きの冷蔵庫など家電製品にも対応品がある。また左利き専用の商品もある。左利き用のはさみは多くの文具店にみられる。左利き用品の専門店もある。京セラが発売していたカメラ「サムライ」は右利き用と左利き用の両方を用意していた。アーミーナイフの一部にも左利き用モデルがある。百ます計算でも、左にあった数字が、右に来ている場合がある。これにより、左手に隠れてしまう数字が見えるようになり、やりやすくなる。マウスにも左利き専用のものがある。サンワサプライは2011年から左利き専用マウス「MA-ERG2LH」を製造販売している。かつて2006年にロジテックが左利き専用マウス「MX-610L」を製造販売していた。なお、ロジテック社CEOのゲリーノ・デルーカは左利きである。マイクロソフトのビル・ゲイツも左利きであるが、マイクロソフトは左利き専用のマウスはない。ただし左右対称のマウスを基本形としているため、どちらの手でも同じように使える。スポーツにおいては、時として左利きであることが有利に働く場合がある。また、競技上の優位性確保のため、あえて利き手でない腕を用いる場合がある。特に野球、ボクシング、相撲、柔道など直接人と勝負するスポーツや一対一で必ず対戦するようなスポーツにおいては左利きであることが有利に作用する。右利きと左利きの人口比から左利きが右利きと対戦する機会が多いのに対して右利きは左利きと対戦する機会が少ないからである。右利きにとっては慣れないフォームの相手と戦う不利に加え、左利きが逆方向・逆回転の攻撃をしてくる。このため、多くのスポーツで左利きを利点として戦う選手がトップクラスにいる(ボクシングで世界王座13度防衛、うち6連続KO勝ちの記録を持つ具志堅用高も左利き)。一般的にサッカーやアイスホッケーなど、相手側と対称のコートで行う球技の場合、右側には右利きの選手、左側には左利きの選手を配置するのが有利であるとされる。野球においては右投げの投手に対して左打ちは有利とされている。左利き打者の場合は大半が左打ちだが、左手(利き手)をスイングの引き手にすることでバットが振り抜きやすくなるという理由などで、左利き打者が右打ちに矯正することも極稀にある。一方、左投げでは守備位置の制限が大きく、ほぼ投手・一塁手・外野手に限られる。これは捕球を右手、送球を左手で行うと一塁方向への送球の際右投げよりタイムラグが発生してしまうことが理由である(逆に進塁方向への送球は右投げより早く行うことが出来るが、こちらの守備機会は少ない)。ただ投手の場合左投げ投手の人口が少ないため対戦経験を積むことが難しく、アマチュアでは一般的には投手有利とされ、プロでも左で速球を投げる投手は右より速く感じられるという。さらにセットポジションでマウンドに立つとそのまま一塁を見ることができるので、一塁ランナーの牽制もしやすい。また、この優位性が広く認識されているので、リトルリーグや中学校の野球部などでは、左利きという理由だけで投手にされてしまうことも珍しくなく、場合によっては左利きであることを理由に生徒などに対して勧誘を行う指導者も見られる。逆に、右バッターが多いので、左利きの捕手は送球に不利であり特に少なく、左利き用のキャッチャーミットは都市部でも取り寄せでなければ入手困難である。どうしても左利き用のキャッチャーミットが見つからず、右利き用のミットを裏返しにして左利き用に改造したという事例も報告されている。逆に、左利きであっても左腕で投球をせず、右腕で投球する選手もいる。シアトル・マリナーズの岩隈久志(箸は左手で持つ)、阪神の鳥谷敬、ヤクルトの由規、巨人の坂本勇人などが左利きの右投げとして知られている。相撲では、古くは江戸時代に無敵を誇った大関雷電、大正後期の土俵を支配した横綱栃木山、昭和の大横綱として知られる双葉山、柏鵬時代を作った大鵬と柏戸、「黄金の左」の輪島、平成に入っても朝青龍などの横綱、現役力士の琴奨菊や舛ノ山、大岩戸など左利きの力士が知られる。ただし四つ身との関係では、利き腕を上手にする方が一般的(右利き:左四つ、左利き:右四つ)ではあるものの、利き腕をあえて下手にする場合もあり、右四つと左四つを使い分けるいわゆる「なまくら四つ」の力士も少なくないため、一概には言えない。アイスホッケーにおいてはリンクがフェンスで囲まれていて左ポジションはフェンス際でのプレイにおいて右利きではスティックが内向きとなりフェンスに沿わせたパックの処理が難しくシュートを打つ体勢にも不利だが左利きは外向きとなり前述の点で有利であるためゴールキーパー以外は半数近くを左利きの選手で占めるチームも存在する。アイスホッケーではスティックの根元を右手で持つ場合「左打ち」(右打ちはその逆)とする。強豪国代表レベルになると左打ちが半数を超えることも多い(真ん中の選手が左打ちの場合が多い)。右利き左打ちの有利点はショットの威力は落ちるものの小回りが効きパックを奪いやすい。またゴールキーパーは右利きが多く、ゴールキーパーとの相性も良いという説もある。NHLの通算ポイントの上位ランキング選手は中央のポジションにも関わらず、左打ち選手は多い(アイスホッケーの神様と言われるウェイン・グレツキー)、現役最高のセンターとも言われるも多いシドニー・クロスビーなど優秀な選手に左打ちが非常に多い。ハンドボールにおいて、右45度、右サイドに左利きを置くことによって、プレーの幅が広がる。稀にセンターに左利きを置くこともある。テニスや卓球のダブルスでは、ラケットを握る手が共に外側または中央に来るように2人が立つことによって、利き手が同じペアよりもカバーできる範囲が広がり有利である。競馬では、左にササる(ヨレる)癖がある馬などで、左手でムチが巧みに扱えその癖を抑えられるのではないかという期待から、左利きの騎手が起用されることがある。実例としては、1954年の第21回東京優駿(日本ダービー)で、左回りの東京競馬場では内(左側)にササる癖が出るゴールデンウエーブが、左利きの岩下密政を鞍上に迎えて、見事に優勝したことが知られている。またばんえい競馬においては、普段と異なるムチの入れ方で馬を発奮させることを期待して左利きの騎手に騎乗を依頼するケースがある。バレーボールでは、左利きの選手はセッター対角のポジションに置かれ、主にライトプレーヤーとして起用されることが多い。大林素子が得意としたコート右端から左端までのブロード(移動)攻撃は、右利きのプレイヤーが行う場合よりもさらに外側(体一つ分、若しくはアンテナぎりぎりの位置)からスパイクを打つことが出来、「モトコスペシャル」と呼ばれた。また、セッターが左利きの場合、右利きには難しいとされるツーアタックを比較的容易にこなせるため、攻撃の幅が広がるといった利点がある。中田久美、ジェフ・ストークなどが得意としていた。短距離走では、トラックが左に向かっているため、走る際に体重がかけづらい(右半身で体重をかけなければならない)ため一般には不利といえる。単に左利きと言えば利き腕を指すことが多いが足、眼球、耳なども左右片方を重点的に使っている。サッカーなどでは左のポジションで左利きが非常に有利である。なお利き腕と利き足は必ずしも一致するわけではなく、利き腕は右手で利き足は左足の人も多数いる(例ではサッカーの中村俊輔、野球の岩村明憲など)。利き目と利き腕が異なる者が銃を構える際、利き目でない目で照準を行うか、利き腕でない手で銃を持つこととなるため、そうでない者より難しくなる。拳銃ではこのような状態でも柔軟に対応可能だが、ブルース・ウィリスのように独特の構え方となる。腕以外の左利きの不便も多々ある。酒飲みの人を「左利き」「左が利く」という。これは、石細工を行う職人では左手にのみを持つため「のみを使う手」=「呑み手」という言葉遊びからである。「左党(さとう)」とも呼ばれるようになった。また、建築家の左甚五郎は左利きであったことから命名されたという説もある。スペインでは「左利きの人」と言うと、悪意から犯罪を犯した人や泥棒を示すことがある。単に両利きであるに留まらず、両手が同時に利く(同時に別々の働きが出来る)例も稀に存在する。
出典:wikipedia
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