こだま(DRTS:Data Relay Test Satellite)は、宇宙開発事業団(現:宇宙航空研究開発機構)が開発した、日本のデータ中継衛星である。2002年9月10日にH-IIAロケットで打ち上げられ、2014年現在も運用中。静止衛星であり、東経90.75度のインド洋上空に占位している。低 - 中高度衛星と地上局の通信を中継することで、これら衛星の通信可能範囲を大幅に広げ、限られた地上局でも効率よくデータの送受信を行うのが目的。使用できる周波数として、従来の2-4GHz帯(Sバンド)に加え、大容量通信に向いている26-40GHz帯(Kaバンド)を持つ。これによる最大通信容量は240Mbps以上と高速で、大容量のデータを効率よく地上局に送信できる(2006年2月、世界最高速度278Mbpsの衛星間通信実験に成功)運用期間中に、みどりII、きらり、だいちなどと、さまざまなミッションにおいてデータ中継を行ったほか、欧州宇宙機関(ESA)の地球観測衛星Envisatと観測データの中継実験も行い相互運用・支援性の確認をした。このうち、だいちとの連携では特に成果を上げ、運用期間中に地上局(10ヶ所)が直接受信したデータの26倍を中継するなど、今後のだいちの運用にもこだまが不可欠であると報告されている。また、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」(JEM)の衛星間通信システム(ICS)とのデータ中継にも使われる。なお、情報収集衛星(IGS)とのデータ中継には「こだま」は使われていない。IGSとのデータ中継には新たに、「光データ中継衛星」を2019年を目標として打ち上げることが2014年に報道された。低 - 中高度の衛星は、低い軌道高度(300-1000km)を周回するため、地上局の上空(直接通信可能な範囲)を短時間で通過してしまう。中高度で大量の情報を送信する必要がある地球観測衛星などでは、周回中にデータを圧縮しておき、地上局上空でまとめて送信するなどの手法がとられるが、本来の観測能力に対するボトルネックとなっていた。地上局と低 - 中高度の衛星が互いの可視範囲にあるのは、軌道上の1割程度に限られている。しかし、そのはるか上空の静止軌道衛星からは、眼下の中高度衛星が飛行する軌道の6割を見渡すことが可能であり、足下の地上局に中継することによって、ほぼリアルタイムで通信可能範囲とすることができる。これは、観測衛星の実質能力を数倍に拡大できる可能性を示している。こだまは、ALOSミッション参加後、容量の嵩む画像データの99%を中継したことが報告されており、観測精度向上や期間短縮のほか、大規模災害の早期把握に大きく貢献した。なお、空白域をなくすには2機による運用が必要で、こだまの場合、南北アメリカ大陸をほぼすっぽりと含む円形の地域の上空が、通信が不可能な範囲となっている。技術試験衛星きく6号(ETS-VI)、通信放送技術衛星かけはし(COMETS)を継承する、衛星間通信、データ中継システムの実験・実証機として計画された。当初はDRTS-EとDRTS-Wの2機で地球周辺軌道の全領域をカバーし、携帯電話の基地局のように2機の衛星が通信を引き継いで連続中継する計画だった。DRTS-Eは現在こだまが位置する東経90度、DRTS-Wは西経170度を予定していた。DRTS-Wの打ち上げは2002年に予定されていたが、1年前の2001年8月の宇宙開発委員会で、予算不足から1機のみの計画に変更することが了承された。DRTS-Wとして製作された衛星は予定通り2002年に打ち上げられたが、軌道上の位置はDRTS-Eが予定していた東経90度に変更され、単にDRTS(こだま)と呼称することになった。2機目の衛星は地上予備機として完成させることも検討されたが、結局製作中止になった。こだまの設計寿命は2009年に尽きており、後継衛星は準備されていないため、以後当面は寿命を超えての運用となる。推進薬を節約するため、2009年11月以降は衛星の南北制御を中止し、東西制御のみにする。南北制御を中止したことにより次第に軌道傾斜角が増大するため、軌道傾斜角が南北1度に達する2012年1月以降の運用は、衛星の状態を判断しながら決定される予定である。こだまの故障時に備えて、バックアップとしてNASAのデータ中継衛星TDRSを2010年4月以降に使用できるよう、準備が進められている。JAXAでは、こだまの当初計画と同様に、2機の後継衛星をもって低軌道全体をカバーする体制を構築したい意向である。通信方法はこだまと同じKa帯電波の他、きらりで技術実証されたレーザー通信も検討されているが、いずれを搭載するか、あるいは両方を搭載するかは決定されていない。なお、当面計画されている低軌道衛星にはレーザー通信装置を搭載する予定はなく、衛星間通信を行う衛星はこだまとの通信を前提としているため、少なくともKa帯通信装置は搭載する可能性が高い。2012年7月31日に開催された宇宙政策委員会 第1回会合の情報によれば、こだまの後継機は2015年度に民間事業者から調達する衛星でサービスを引き継ぐ方針とされている。政府は情報収集衛星用に大量のデータを迅速に中継する光データ中継衛星を導入する方針を固めた。平成31年度(2019年)の打ち上げを目指して、平成27年度予算案に関連予算の一部を盛り込む予定。データを電波でなく光形式で送るため、他国による妨害や傍受を防ぐことも可能になる。
出典:wikipedia
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