摂動(せつどう、 )とは、一般に力学系において、主要な力の寄与(主要項)による運動が、他の副次的な力の寄与(摂動項)によって乱される現象である。摂動という語は元来、古典力学において、ある天体の運動が他の天体から受ける引力によって乱れることを指していたが、その類推から量子力学において、粒子の運動が複数粒子の間に相互作用が働くことによって乱れることも指すようになった。なお、転じて摂動現象をもたらす副次的な力のことを摂動と呼ぶ場合がある。上記のような複数天体間、複数粒子間に相互作用が働くときの運動は数学的に厳密に解くことができないことが知られている(多体問題)。これらの数学的に厳密に解くことのできない問題の近似解を求める手法の1つに、摂動論(せつどうろん、 )がある。具体的には、次のような手順で近似解を求める。天体の運行において、月と地球、太陽と地球などを扱う二体問題は厳密に解くことができるが、三体以上の多体問題を厳密に解くことは不可能である。ただし、月と地球、太陽と地球の問題では、他の天体からの引力による相互作用の効果は近似的に非常に小さいとして、これら二体問題に他の天体からの効果を補正項として考慮することによって十分精度の高い近似解を得ることができる。量子力学における多体問題を解く上においても摂動論は重要な近似解法である。無摂動部分(無摂動項)のハミルトニアンをformula_1とし、摂動部分(摂動項)をformula_2とすると、全体のハミルトニアンformula_3は、となる。この時、ゼロ次(無摂動項)のハミルトニアンformula_1については、すべての固有値(固有エネルギー)formula_6と、対応する固有ベクトルformula_7が完全に分かっているとする。ここで「対応する」とは固有値方程式を満たす関係にあるという意味である。formula_1はエルミート演算子である(つまりエネルギーはオブザーバブルである)ので、その固有ベクトルformula_7は完全系を成している。またformula_7は規格直交化されているとする。ハミルトニアンformula_3の固有ベクトルformula_13と、対応する固有値formula_14を求めたい。ここでformula_13とformula_14はつまりを満たさなければならない。摂動論では、未知のformula_2、formula_20、formula_21を、既知のformula_22、formula_23、formula_24と、未知のformula_25、formula_26、微小係数formula_27を用いてと表す。べき級数の中で既知であるのは、第1項目だけであることに注意。これで、formula_20、formula_21を求める問題はformula_25、formula_26を求める問題に変換された。これらを(0)式に代入し、任意のformula_27で成立すると仮定すると、 formula_45が得られ、未知数を分離することができる。これらを(1)式、(2)式、・・・の順に解いていくと、formula_25、formula_26が求まる。これらの式は、未知のformula_25を、既知の完全系formula_7の線形結合(重ね合わせ)で展開して、その展開係数formula_50を求める問題に変換することで解ける。エネルギーの一次の摂動は、formula_52とすると、固有ベクトルの一次の摂動の展開係数は、formula_54とすると二次の摂動エネルギーは、ここで、formula_57である(他の項も同様)。固有値が縮退している場合は、i ≠ n、m ≠ nの場合でもε = ε、ε = εとなる場合が存在し、この場合上式二次摂動エネルギーや、一次の摂動波動関数の係数の分母部分が零となり発散してしまう。従って、縮退のある場合には、このような発散を回避する手段を施す必要がある(ほとんど自由な電子参照)。摂動は普通、一次の項まで考慮すれば十分であるが、より高次な項を考える必要がある場合も多い(例:近藤効果は摂動の二次の項まで考慮しないと説明できない)。(摂動のない)シュレディンガー方程式formula_58の固有値formula_59がk重縮退していて、その対応する固有状態をformula_60と表す。微小な摂動formula_61(formula_62は無次元の微小項)を加えた後、エネルギー固有値formula_59を持っていた状態に関するシュレディンガー方程式はformula_64となる。ここでformula_65formula_66(なおformula_67)と展開できるとして、前述のシュレディンガー方程式の0次項を取り出して、formula_68を得るが、摂動がない時のシュレディンガー方程式よりformula_69とおくことができる。次に、シュレディンガー方程式の1次項を取り出すと、formula_70formula_71これに左からformula_72をかけてformula_73よってformula_74が成り立つ。これをすべてのformula_75について出すと、formula_76個のformula_77元方程式が得られるが、規格化を考えていないため、このformula_77個の方程式を解くて、エネルギーの一時摂動及び縮退が解ける様子がわかる。ここまでに挙げたのは状態ベクトルに対する摂動論であるが、系が時間に依存する場合など、演算子に対する摂動論も便利である。演算子に対する摂動論として、グリーン関数を使う方法が知られている。
出典:wikipedia
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