『フォーチューンの海砦〜深遠なる時海の狭間に〜』(フォーチューンのかいさい しんえんなるじかいのはざまに)はテーブルトークRPG(TRPG)『セブン=フォートレス』のリプレイ作品。ゲームマスター(GM)とリプレイ執筆は菊池たけし。『アルセイルの氷砦』に続く「砦シリーズ」リプレイの第二弾として『RPGマガジン』26号(1992年6月号)〜63号(1995年7月号)に連載され、後にゲーム・フィールドや富士見書房、エンターブレインから単行本・文庫としてまとめられた。サブタイトル「深遠なる時海の狭間に」は雑誌連載時にはなく、ゲーム・フィールド版単行本『アルセイルの氷砦 Advanced』での『フォーチューンの海砦』予告漫画で初めて付けられたものである。なおこのサブタイトルは最終話のタイトルでもある。イラスト担当は歴代の『セブン=フォートレス』リプレイで最も変遷が激しい。『RPGマガジン』連載時は第一部が鈴木猛、第二部が宮須弥。単行本版・文庫版はゲーム・フィールド版、富士見書房版(富士見ドラゴンブック)、エンターブレイン版(ファミ通文庫)とで異なるが、前二者の表紙は四季童子、エンターブレイン版の表紙は石田ヒロユキが担当している。本文挿絵は富士見書房版は佐々木あかね、エンターブレイン版は石田ヒロユキ。1992年、リプレイ『アルセイルの氷砦』のヒットにより、リプレイに使われたゲームシステム『セブン=フォートレス』の商品化の企画が動き出した。そして、商品化に向けたPRもかねて『RPGマガジン』で連載が開始されたのが本リプレイ『フォーチューンの海砦』である。しかし実際に製品化ルール第一版『セブン=フォートレスRPG』が発売されたのは連載終了から1年以上たった1996年のことである。リプレイ自体の単行本化はさらに遅れ、システムがルール第二版『セブン=フォートレス Advanced』に移行して約1年後の1999年に初版(ゲーム・フィールド版)が出版されている。ゲームシステムには『氷砦』終了後からさらにバランスを調整した『SEVEN=FORTRESS Ver3.10』を使用。『海砦』は商品化に向けて更なるバランス調整を行うためのテストプレイの意味合いもあった。システムは、『氷砦』に使われた『SEVEN=FORTRESS Ver1.xx』よりもはるかに完成されたルールではあるものの、ゲームシステムの運用面については前作よりもはるかにバランスが悪いものになっている。これは下手に様々なデータを数値化したために逆にプレイヤーたちにルールの穴を突かれて悪用されてしまった所以である。特に自作魔法のルールはプレイヤーにさんざん隙をつかれて、PCたちを強力にしすぎてしまっている。しかし、このリプレイがあったからこそ、製品版(初版のバージョンナンバーは『SEVEN=FORTRESS Ver3.30』、『Advanced』移行前の最終版はは『SEVEN=FORTRESS Ver3.31A』)でバランスを取ることができたともいえる。『氷砦』で行われた読者からのアイデアの採用は今回も積極的に行われ、特に『SEVEN=FORTRESS Ver3.10』がパソコン通信「HJ-NET」に公開されていたことから、ルールやデータ面にまで突っ込んだ様々な投稿が読者から寄せられ、リプレイに反映されている。連載は第一部と第二部に分かれている。これは諸事情で途中でプレイヤー交代があったためだが(「#連載中のトラブル」も参照)、ストーリー自体は第二部が中心である。『氷砦』と同じく初期はギャグ色に強いユーモアファンタジーのノリで始まったが次第にシリアス色が増していき、最後はPCたちが世界の危機に立ち向かう話となっている。当初の予定では全6回ほどの連載で、終了と同時期に製品版の『セブン=フォートレス』を発売する予定だったのだが、リプレイがプレイヤー交代など様々な事情から波乱続きの展開となりストーリーが長期化。さらにはGMの菊池たけし自身が他の雑誌の記事の連載により多忙となり、休載やごく少数ページしか載らない号などが続き連載の長期化に拍車をかけた。結果、セッション回数自体は10回にも満たない反面、完結まで三年(休載月もあるので連載回数は全21回)に渡る作品となってしまった。なお、製品版『セブン=フォートレスRPG』もそれに引きずられるかのように発売が延期してしまっているため、皮肉な結果ではあるが、製品版のテストプレイとしての『海砦』の意義は最後まで失われなかった。少ないセッション回数で3年間の月刊誌の連載をこなすために、全体的に文章を無理やり引き伸ばしている感がありストーリー展開が遅い部分が目立つが、「砦シリーズ」史上もっとも大きなどんでん返しが存在するリプレイでもある。『海砦』は上述したように単行本化が『Advanced』移行後であり、文庫化も長らく行われず、一時期は幻のリプレイとされていたが、2007年に『ラ・アルメイアの幻砦』と同時に、当時のシステムであった第3版『セブン=フォートレス V3』に沿った改稿を加えて文庫化された。『幻砦』の文庫版が『フォーラの森砦』『フレイスの炎砦』同様ファミ通文庫から出されたのに対し、『海砦』の文庫判は『氷砦』と同じく富士見ドラゴンブックから出版されたため、続く『リーンの闇砦』(富士見ドラゴンブック)、『シェローティアの空砦』(ファミ通文庫)と合わせ、一時は「砦シリーズ」のリプレイが2社に跨って出される状況となったが、ファーイースト・アミューズメント・リサーチは2010年7月発売の『ゲーマーズ・フィールド別冊』Vol.20でのエンターブレイン版『氷砦』の広告にて、「砦シリーズ」全リプレイの版元をエンターブレインに一本化する方針を示している。プレイヤーによって操作するキャラクター。PC。名前の横にカッコで記述されているのはプレイヤー名である。キャラクタークラス矢印つきで複数かかれている場合は途中でクラスチェンジしたことを表す。リプレイ『フォーチューンの海砦』は連載中において大きなトラブルが目立ったリプレイでもある。『海砦』のセッションはプレイヤー4人でスタートしたが、途中でゴロー役のじゃが丸とミリア役の早川由が降板し、代わって新PCのベガオ役としてあずた某を加え、ナディノ役の成田豊が同じく新PCのアニーズとデニーズ役も務める「プレイヤー3人・PC5人」という異常なセッションとなっている。このプレイヤー交代は人間関係上のトラブルが原因であったことが『RPGマガジン』誌上で菊池たけし自身の筆で語られている。『海砦』は当初「初心者がTRPGに嵌っていく過程を赤裸々に描こう」というコンセプトで進められ、プレイヤーは全員TRPG業界とは関係を持たない「可能な限り素人に近い人物」を選んでいた。プレイヤーのうち二人(ライム役の如月と早川)はTRPG経験が数回しかないのは当然として、じゃが丸の知り合いではあったものの、当時じゃが丸の友人であった菊池とは面識がなかった。プレイヤーたち全てが「ただTRPGを遊びにきているだけ」のつもりであった中で、GMの菊池だけがライターの立場として「誌面映え」をする読者主体のストーリー展開を行ってしまったことがじゃが丸と早川に不快感を与える原因になってしまったらしい(ただし、これはあくまで菊池の見解であり、じゃが丸や早川の意見ではない。また早川はこのこととは全く別に私事が忙しくなりプレイに参加できなくなったこともある)。実際、第一部はミリアとゴローはかなりの部分で道化として描かれている。ゴローはプレイヤーの意思と無関係なところで必要以上に悲惨な目にあわせられ、ミリアは「知力が3」であることをことさらに強調されて普通の発言を行うたびに「知力3がまともなことを言っている!」と派手に驚くパフォーマンスが繰り返された。これはミリアの「ちょっとおバカなところがある女の子」という個性、そしてゴローの「不幸な目に合いやすいお人よし」という個性を強調して、キャラクターの魅力を引き出そうとした結果であるともいえるが、ライムがそういう「負の特徴」を持たず、ナティノも「浪費・借金癖」「女好き」という「ダメ男」の側面がさほどクローズアップされなかったために、第2話や第一部最終話である第5話終盤での活躍にもかかわらずミリアとゴローがないがしろにされ、ライムとナティノが贔屓されているという感覚は常について回っている。じゃが丸と早川のリプレイからの離脱の結果、ストーリーを大きく作り直すことが必須になり、ブラスを倒しギュージールを解放した第5話の時点までを「第一部」とし、それから先を第二部として仕切り直すことになってしまった。この仕切り直しによりストーリーが長期化した部分は多々ある。なお、ストーリー上では、ゴローは相変わらずナティノの借金を返すためにラース=フェリア中を冒険する旅に出ており、ミリアは結婚して一旦盗賊稼業を引退したものの、第12話でサライやマドカ、ラスィ、八導師と共に「堕ちた精霊獣」に応戦している。このリプレイのキーキャラクターに、シェディとシェイラのイクスティム兄妹を率いる「覆面魔導師」がいる。GMの菊池はかなり初期から、彼女の正体に関する伏線をリプレイ中に多数ちりばめていた。しかしある時、ゲームの開始前にF.E.A.R.の会議室に集まっていたプレイヤーたちに対して、当時F.E.A.R.の社員だった山北篤が覆面魔導師の正体をばらしてしまったのである。山北は事前に菊池からこれからの話のプロットを教えられていたのだが、教えられていたという事実をすっかり忘れ、「これまでの流れを踏まえた自分なりの推理」と思い込んでプレイヤーたちに披露してしまったのである。この結果、菊池は覆面魔導師の正体を別の者に切り替え、それまで張っていた伏線全てを新しい真相でも矛盾がないように必死に構築しなおしたと言う。だがこの事件があったからこそ、「覆面魔導師の正体」が本リプレイの最大のサプライズとなったともいえる。なお、山北がプレイヤーたちにばらしてしまった覆面魔道師の元々の正体というのが誰だったのかは明らかにされていない。本記事で何度も言及しているように、『海砦』の重要なキーパーソンとして登場しているのが「謎の覆面魔導師」である。常にローブを纏い、女性であるらしいこと以外には素性が全く不明なこの人物は、最終話「深遠なる時海の狭間に」のラストで遂にその正体を表す。それは本リプレイを読み続けてきた読者に最大級の衝撃を与えた。覆面魔導師の正体は、主人公・ライム=ケーベルその人である。十六王紀963年、自身の「子供」の大群を率いてリ・アクアティースを襲った「堕ちた精霊獣」は、「闇の宗教」によって与えられた進化能力によって、自身が受けた攻撃を学習して対応策を会得する性質を持っていたため、人類が倒すことは不可能であった。そのため、ライムとナティノはリ・アクアティース神殿神官長ヴェスターの勧告を受けて、「堕ちた精霊獣」のオリジナル(「闇の宗教」によって進化能力が与えられる前の状態の精霊獣)が存在する918年のババウル島に飛び、これを倒した。しかし963年に戻れたのはナティノただ一人で、ライムは918年にとどまった。2人が963年から918年に飛べたのは、時間移動装置としての「フォーチューンの海砦」とその動力源たる〈海の宝珠〉、そして時間跳躍能力を持つライムの存在があったからこそで、〈海の宝珠〉もなく海砦からも遠く離れた918年のババウル島から963年に戻ることができるのはたった一人、ナティノしかいなかった。ライムが、ナティノを元の時代に戻すための「導く存在」となる必要があるためであった。「導く存在」がいなければ、戻れる確率は3割程度。失敗すれば永遠に時空の狭間を漂うことになってしまう。だからこそライムはナティノを「導く存在」として、918年のババウル島に残る道を選んだ(ラスィはこの事実を知っており、それをライムに告げた上で、判断を彼女に委ねた)。ナティノを963年に戻したのち、ライムは単身大陸に渡った。そして952年にサライと出会い、以後行動を共にする。やがて〈海の宝珠〉を含めた七宝珠が危険な存在であり、その一方で宝珠を適格者以外でも扱える技術の開発が進められていることを知り、サライと共に宝珠封印の行動に出ることになる。彼女たちが集めたのが、後に「八導師」と呼ばれる者たちであり、ライムはそのリーダーとなった。そして963年、ライムは「覆面魔導師」としてナティノと再会を果たす。第3話のバラスとの対決に出現した「覆面魔導師」は918年へ時間移動中のライム本人である。同一人物が同一空間に存在することによって発生する「時空のひずみ」と呼ばれる現象を回避するため、同じく時間移動中のナティノが自分のマントをライムに貸した結果だった。ライムとナティノが918年のババウル島で「堕ちた精霊獣」のオリジナルを倒した結果、後のラース=フェリアに関わる歴史改変が随所で生じている。主なものを挙げる。
出典:wikipedia
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