イサーク・ティチング(イサーク・チチング、イサーク・ティツィングとも表記される。Isaac Titsingh。1745年1月10日-1812年2月2日)は、オランダの外科医、学者、在日オランダ商館長(カピタン)、駐清オランダ大使。アムステルダム出身。ティチングは、東アジアで長く経験を積み、オランダ東インド会社の最高位職を歴任した。江戸時代中期の1779年から1784年の間3度にわたりオランダ商館長として日本に滞在し、1785年には、ベンガルのチンスラでオランダ東インド会社総督に就任した。清との貿易に関心を寄せたティチングは、1795年、実質的なオランダ大使として乾隆帝の治世60年記念式典に列席した。ティチングは日本のオランダ商館長(カピタン)として1779年から1780年、1781年から1783年、そして1784年に派遣された。任期中、日本のオランダ東インド会社商館長の重要性は幕府が推し進める鎖国政策により高まった。以前は任期が終了するまではキリスト教の棄教・改宗を余儀なくされるか、日本に帰化するか、死刑によって日本から離れるかしかなかった。鎖国下の日本での唯一の例外が長崎にある出島のオランダ商館であった。オランダ商館はこの複雑な背景の中で巧みに交易を進めることによって、日本がヨーロッパと唯一交易や科学知識を交換するパイプ役を担った。一方、日本の機密を、11代将軍徳川家斉の岳父であった島津重豪を通して収集していたことが、フランスの博物学者で旅行家のシャンパンティユ・コシーニュ著「ベンガル航海記」に記載され、オランダ東インド会社が解散した1799年にパリで出版された。そこには、将軍の義父がティチング氏と始終文通を行い、ティチング氏の目的に必要なあらゆる知識と情報を好意的に与え、日本に関する彼のコレクションを増加させているとある。オランダ商館長は名目上、一年に一度の江戸参府を命じられ、江戸にいる間は日本の大名と同じ立場であった。ティチングは2度の江戸参府を行い、10代将軍徳川家治と謁見した。また江戸では蘭学者(中川淳庵、桂川甫周、朽木昌綱ら)とも積極的に交流した。ティチングは、日本の社会・文化・風俗に深い関心を寄せ、蘭学者らと頻繁に文通を行うとともに、後に日本に関する著作を残した。特にこの頃の田沼時代の政治・社会情勢や、大岡忠光などの人物像を書き記したことは特筆に価する。1785年、ティチングはベンガルのチンスラで東インド会社長官のポストを約束された。チンスラはカルカッタからフーグリー川を遡った場所に位置し、その周辺はジャングルに覆われている。彼はそこでヨーロッパ社会の理知的な生活を満喫したらしい。ティチングはベンガルの裁判官で言語学者のウィリアム・ジョーンズから「チンスラのマンダリン(官僚)」と評された。ティチングはバタヴィアに戻ると新たに会計職を請け負いその後は海事委員会に加わった。1794年とは、オランダ共和国がフランス革命軍によって占領された年である。翌1795年1月、オランダ共和国は滅亡して、フランスの衛星国バタヴィア共和国が建国を宣言した。オランダ人にとって危機的な時期、ティチングは乾隆帝の治世60年記念式典のため北京の宮殿に赴くオランダ大使に任命された。中国でのティチングの実質的な役割は外交大使であり、同時にオランダ東インド会社代表でもあった。ティチングはヨーロッパ人がそれまで許されなかった中国奥地への旅を許可されたが、広東から北京に至る真冬の旅は彼らを大きく疲弊させるものであった。ティチング一行は新年の式典に間に合うように北京に到着した。ジョージ・マカートニー伯爵以後のイギリス大使の失敗を好まなかったティチングは、事前に皇帝への三跪九叩頭の礼を含めた複雑な宮殿作法の要求を言い含める努力をした。稀に見る敬意を払われ紫禁城に入って儀礼を行い、その後円明園に入った。歓待は乾隆帝の宮殿で行われ、これは式典より前にマカートニーらイギリス使節団が拒絶されたこととは対照的であった。この時の宮殿内の模様は、オランダ系アメリカ人アンドレアス・エベラルドゥス・ファン・ブラーム・ホックヘースト、フランス大使クレティアン・ルイ・ジョセフ・デ・ギーニュ、ティチング代表団らの各大使館員達の記述を元に、ヨーロッパとアメリカで出版された。ティチング使節団の後、ヨーロッパ諸国からの使節団は、次世紀の阿片戦争終結まで中国の宮殿に姿を現さなかった。ティチングは西洋に和算、算額を初めて紹介し、多くの事柄に関する先駆者となってヨーロッパに戻った。1812年2月2日死去。ティチングの墓はパリ最大の墓地ペール・ラシェーズに建てられた。ティチングの墓碑には“"イサーク・ティチングここに眠る。オランダ東インド会社相談役。日本や中国への使節。1812年2月2日死去。68歳" ”とある。ティチングの著書の多くは死後に出版された。
出典:wikipedia
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