IPCC第4次評価報告書(あいぴーしーしーだいよじひょうかほうこくしょ、英語:IPCC Fourth Assessment Report)とは、国連下部組織の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって発行された、地球温暖化に関する報告書である。温暖化の原因・影響・対策について、現在までに得られた科学的知見を集約・評価している。地球温暖化に関して世界130カ国からの2千人以上の専門家の科学的・技術的・社会経済的な知見を集約し、かつ参加195カ国の政府代表で構成されるパネルにより認められた報告書である。人類の活動が地球温暖化を進行させ、それにより深刻な被害が生じる危険性を指摘する。人類が有効で経済的に実行可能な対策手段を有し、20〜30年以内に実効性のある対策を行えば被害を大きく減らせるため、現状より早急且つ大規模な取り組みが必須と指摘する。報告書の結論は常に複数の証拠と広範な科学技術的な文献に基づき、議論の残る事柄や信頼性に関する情報も併記される。2007年の公表以降、一部氷河の後退速度の予測やオランダの低地の比率など幾つかミスが発見されているが、いずれも報告書の結論に影響するものでは無いと指摘される(#AR4に見つかった誤りと訂正節を参照)。主要な結論は変わらず、より多くのデータを加えた第5次評価報告書の作成が進められている。報告書の表題は"IPCC Fourth Assessment Report: Climate Change 2007"である。AR4(4th Assessment Report)とも略される(以下、本記事でも用いる)。IPCCは"Intergovernmental Panel on Climate Change"の略である。AR4は2001年のIPCC第3次評価報告書(TAR)に続く評価報告書として2002年4月に作成が決定した。3年の歳月、130ヵ国以上からの450名超の代表執筆者・800名超の執筆協力者の寄稿、2500名以上の専門家の査読を経て、2007年2月より順次公開され、IPCCのサイトから誰でも入手可能である。過去のIPCCの3回の評価を下敷きにTAR以降に得られた新しい知見を組み込む。可能な限り査読を受けた国際的に利用可能な文献に基づき執筆されることを基礎とする。非公刊もしくは非査読の文献は、情報源の品質や有効性についての批判的な見地から検討が求められる。報告書の結論は、複数の証拠と広範な科学技術的な文献に基づき書かれる。作業は下記3つの作業部会(Working Group, WG)に分かれて進められた。上記3つの内容をまとめた統合報告書も公開されている。各報告書は Summary for Policymakers (SPM;政策決定者向け要約)、Technical Summary(TS)などの要約、および個別の章から構成され、電子情報や印刷物の形で入手可能である(#外部リンクの節も参照)。日本では環境省がAR4に関する情報を集約したサイトを提供し、概要をまとめたプレゼンテーションや一般向けの解説パンフレットを公開している。2009年3月にはWG2報告書本体の和訳も用語解説と共に公開された。統合報告書のSPM、WG1〜WG3のSPMおよびTSの和訳書籍が出版されている(#書籍の節を参照)。報告書では個々の予測内容や調査結果の不確実性に関わる情報を提供しており、「可能性」(likelihood)や「確信度」(confidence)の評価を行っている。2007年2月に第一作業部会(WG I)による報告書"The Physical Science Basis"(自然科学的根拠, AR4 WG I)が発行された。この報告書は気候システムおよび気候変化について評価を行っている。多くの観測事実とシミュレーション結果に基づき、人間による化石燃料の使用が地球温暖化の主因と考えられ、自然要因だけでは説明がつかないことを指摘している。報告書には下記のような内容が含まれる。2007年4月に第二作業部会(WG II)による報告書"Impacts, Adaptation and Vulnerability"(影響・適応・脆弱性)が発行された。報告書では気候変化による自然および人類の環境への影響およびそれらの適応性と脆弱性に関する現時点での科学的知見をまとめている。気温や水温の変化や水資源・生態系への影響、人間社会への被害の予測結果について、現在までに分かった事項をまとめている。報告書には下記のような項目が含まれる。第三作業部会(WG III)による報告書"Mitigation of Climate Change"(気候変動の緩和策)が2007年10月に発行された。この報告書は気候変化の緩和について科学的、技術的、環境的、経済的、社会的な面からの評価する。既に有効性が確認された緩和策や、今後普及が期待される緩和策を列挙する。緩和策を講じた場合のシナリオを大気中の二酸化炭素濃度に応じて6つの「カテゴリー」に分類し、それぞれ緩和コストや被害予測を示す。自助的努力や様々な政策の効果と役割についても言及する。3つの作業部会による報告内容を踏まえた統合報告書(Synthesis Report; SYR) が2007年11月のIPCC総会(スペイン)にて採択され、同年末に公開された。内容は、統合報告書のSPMに要約される。IPCC議長のPachauri博士は、AR4 SYRの発表の際、下記のようなメッセージを世界に発信した。そして、次ので締めくくっている:「この世界の内に望む変化に、あなた自身が成ってみせなさい。」。AR4では、下記の用語・表記を用いている。IPCCは評価の不確実性について一貫した用語使用を求めており、AR4では次の表記が使われる。成果や結果の可能性が確率として表現できれば確率ごとに下記用語を用いるが、確率は専門家の判断に基づき必ずしも客観的手続きによって得られない。ただし、2008年3月の訳語見直し以前の気象庁訳は、上記の「非常に」が「かなり」とされていた。基礎となる科学的知見(underlying science)への確信度を専門家の判断に基づき表現する場合に下記表記が用いられる(一部紹介)。2008年3月の訳語見直し以前の気象庁訳は、「確信度」でなく「信頼性」を使っていた。上記で「非常に」が「かなり」となっていた。第三作業部会の報告書では、不確実性を、専門家の意見の一致水準(level of agreement)と、証拠の量(個々の原典の質と量)(amount of evidence)の二種類の尺度についてそれぞれ3段階の用語で表現する。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)および気候変動枠組条約の名称の「気候変動」は英語ではclimate changeである。IPCCでは自然変動と人間活動の影響を区別せずに含むが、気候変動枠組条約は人間活動に起因する気候の変化に限定する違いがある。対応する日本語は、もし「変動」と「変化」を区別するならば「気候変化」が適切である。本記事では組織・条約・文書の固有名以外に「気候変化」を用いた。気象庁は「気候変化」を用いる事が多く、IPCC第4次評価報告書についても2007年発表の訳文で「気候変化」を用いていた。2008年3月に他の部会報告書の日本語訳と用語を統一するため「気候変動」に変更した。AR4には下記のような誤りが見つかり修正された。懐疑論者の攻撃対象になったがいずれもAR4の結論を揺るがすものではないとされる。こうした誤りを受けIPCCや国連は、インターアカデミーカウンシル(, IAC)に対し、IPCC全体に関する独立したレビューを要請し、より厳密さや信頼性を高めることを表明している。第二作業部会報告書のアジアの章(10章)のヒマラヤの氷河に関する節(10.6.2節)で、ヒマラヤの氷河消滅時期を「2035年まで」とした記述が科学的根拠不十分な情報に基づいていたことがわかり、IPCCはこれを訂正した。ヒマラヤを含む地球全体で氷河の後退傾向が見られ、海面上昇や飲料水確保へ悪影響が懸念されることに変わりなく、IPCCは前述の訂正とあわせ、統合報告書(49ページ)の氷河に関する結論は変更の必要がないという声明を出した。第二作業部会報告書のヨーロッパの章(12章)で、オランダ国土の55%が海抜以下と記したが、オランダ国立環境評価機関が作成した文献の誤りを引き継ぎいだ、洪水の被害を受けやすい地域を含む面積比であった。オランダ政府の指摘で、IPCCは2010年2月、正しい数値は26%だと訂正した。第二作業部会報告書のラテンアメリカの章(13章)で、アマゾンの熱帯雨林が乾燥の影響を受けやすいことにつき、査読を受けない論文が根拠とされていたことが問題になった。専門家により報告書の文献選択は最適でなかったが内容を裏づける査読済み論文が存在し論旨を変更する必要がないと判断された。AR4報告書は全て下記のIPCC公式サイトより自由に入手可能である。日本では環境省がAR4の情報集約サイトを提供し、概要をまとめたプレゼンテーションや一般向けの解説パンフレットを公開している。日本語訳は気象庁、環境省、地球産業文化研究所、経済産業省、文部科学省の協力によって提供されている。日本では2009年8月、統合報告書のSPM、WG1〜WG3のSPMおよびTSの和訳が書籍として出版された。
出典:wikipedia
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