E531系電車(E531けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の交直流一般形電車。常磐線と水戸線で運用されていた403・415系鋼製車の老朽化に伴う置き換えおよび競合する首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)への対策としての運転速度向上を目的に、E501系やE231系の使用実績を基に「人に優しい車両システム」をコンセプトとして開発した。2005年(平成17年)3月に最初の編成(K401編成〈基本・10両〉とK451編成〈付属・5両〉)が落成し、同月16日から公式試運転を開始し、同年7月9日のダイヤ改正から12編成90両(基本編成6本60両・付属編成6本30両)が営業運転を開始した。その後も増備が続けられ、2007年(平成19年)3月18日のダイヤ改正より上野駅発着の403系・415系・E501系の中距離電車運用をすべて置き換え、普通列車と特別快速の全列車が本系列による運行となり、同時にグリーン車の営業も開始した。以降、常磐線上野駅発着の中距離電車の主力として使用されている。製造は基本・付属編成ともに最初の6編成のみ東急車輛製造と川崎重工業が担当したが、2006年(平成18年)度以降は基本・付属編成ともに普通車のみJR東日本新津車両製作所で製造が行われた。ただし、編成中のグリーン車だけは東急車輛製造と川崎重工業で製作された。2014年(平成26年)9月に基本編成10両1編成、12月に付属編成5両1編成が製造し、2015年1月に付属編成5両2編成が総合車両製作所横浜事業所で製造された。さらに、既存の415系1500番台の置き換え用として、2016年までに付属編成(3000番台を含む)5両8編成が新たに製造されている。本系列で採用された新機軸の多くは、後のE233系にも改良を加えられながら受け継がれている。車体は台枠の一部を除いてE231系などと同様のステンレス製である。外板は汚損防止とコストダウンの観点から腰板、幕板および妻板に80#BG材を採用したが、吹寄せ部は従来同様ダル仕上げとしている。車体長は19,570/19,500mm(先頭車/中間車)、車体幅は2,950mm、屋根高は3,620mmとなっており、後述する衝撃吸収構造のために先頭車車体長が若干長くなっている。編成同士の連結で先頭車が中間に配置されることもあるため、連結面長は先頭車及び中間車共に20,000mmに統一されている。車体断面は拡幅車体を採用し、腰部から下を絞った裾絞り構造である。床面高さは E231 系の 1,165 mm から 1,130 mm に下げられ、ホームと乗降口の段差を小さくし、かつ低重心化を図る。車体腰部および幕板部には常磐線中距離電車のラインカラーである青の帯を巻く。先頭形状はE231系近郊タイプと同様に踏切事故対策および視認性向上の観点から高運転台構造を採用している。E231系近郊タイプ同様に衝撃吸収構造を採用しており、大型トラックとの衝突事故時にも乗務員と乗客の安全性を確保している。このために乗務員室奥行きを広めに確保している。配色は一新され、前面部の上半分が白色となり、帯のデザインも異なっている。前照灯・尾灯についても上部の行先表示器を挟んだ左右への設置となった。前面の LED 式行先表示器はE231系よりも横幅を拡大した一体形であり、列車番号・列車種別・路線名が3つの表示器内に表示される。側面行先表示は路線名・行先の日本語・英語ともオレンジであるほか、路線名表示中も種別表示はそのままである。また、路線名と行先の交互表示の間隔がE231系よりも長くなっている。トイレ設置車両ではトイレ近接の乗降ドア位置が前位側に600mm寄せられた。これは電動車椅子対応の大型トイレ設置によるもので、当該車両では乗降ドアの配置が左右対称ではない。新製時より車外側面には乗客への案内用に車外スピーカーを設置する。乗務員室は前述した高運転台構造で、運転士用の座席を設置する床面は客室床面よりも 520 mm 高くしている。運転台の機器配置はE231系近郊形(東海道線用)に準じた構成で、速度計・圧力計等の計器類や各種表示灯を廃し、これらを「グラスコックピット」と称する液晶モニターに表示する方式である。乗務員室内には通常用および非常用のパンタグラフ降下スイッチが設置されている。列車制御システムとしては TIMS および VIS (各種情報提供装置)が搭載されている。E231系近郊タイプの基本設計を基に、高速運用に対応するため、特急用車両のE653系(「フレッシュひたち」用)に準じた制御・駆動系を用いる。営業最高速度はJR東日本の普通列車用車両で初の 130 km/h に上げられ、速度種別は A21 を指定する。主変換装置は日立製作所製 のCI13である。IGBT素子による2レベルコンバータ+2レベルインバータで構成された主変換装置を搭載しており、主変換装置1基で4基の主電動機を制御する1C4M方式である。直流区間では、主変換装置のインバータ部のみ駆動させ、三相交流を出力する。補機類の電源となる補助電源装置は、IGBT素子を使用した東洋電機製造製の静止形インバータ (SIV) SC81 を搭載する。集電装置からの直流1,500Vもしくは主変圧器三次巻線からの単相交流1,471Vを電源として、三相交流440V 50Hz(定格容量280kVA)を出力する。基本編成では2台、付属編成では1台を搭載する。1台のSIVには2台のインバータが搭載され、140 kVA 2群構成の並列同期運転を行っている。このシステムは SIV の負荷が分散できるとともに、三相電源の編成引き通しが可能となることから1台のインバータが故障した場合にも給電を継続できる冗長性に優れたものである。直流区間と交流区間を隔てるデッドセクションでの主回路切替は E501 系と同一の仕様で、ATS-P 地上子を用いた自動切替である。専用地上子を設置しない路線での走行を考慮し、切替ボタンによる手動切替を併設する仕様も同一である。車内照明は直流電源方式で、デッドセクション通過時には蓄電池からの供給に切り替わるため、基本的に消灯しない(交直流切り替えが手動で行われた場合は、この限りではない)。主電動機は三菱電機・日立製作所・東洋電機製造の3社で製作の かご形三相誘導電動機 MT75 形で、1時間定格出力は 140 kWである。240万km走行非分解を目指した軸受構造および電食を防止するために絶縁軸受を採用している。さらに低騒音化の配慮を行った結果、単体で約2dBの騒音低減を図っている。パンタグラフは、モハE531形の前位寄りにシングルアーム式のPS37A形を搭載する。これはE501系と同位置で、E231系とは逆位置である。電動空気圧縮機 (CP) は E231系などと同様のスクリュー式で、新開発の MH3124-C1600SN3 形を搭載する。ブレーキ装置は回生ブレーキ併用の電気指令式空気ブレーキで、全電気ブレーキ機能を有する。このほか、60 km/h 以上での定速制御・10 km/h 以下の低定速制御・抑速ブレーキも装備する。台車は、E653系などの特急車両用台車を基本とした軸梁式ボルスタレス台車である。形式は電動台車がDT71、付随台車のうち先頭車両前位寄りがTR255、後位寄りがTR255A、中間車両がTR255B、2階建て車両がTR255Cとしている。台車枠は溶接構造の側はりと鋼管による横はりで構成されており、床面高さを1,130mmに低下させるために側枠の形状を変更し、枕ばね取り付け位置を引き下げた。軸梁式軸箱支持装置の構造は、軸ばねを除いて各台車共通である。車体支持装置は各台車共通とし、新設計空気ばねを取り付けた。また、高速運転に対応するため、全車にヨーダンパが設置される。基礎ブレーキ装置は、電動台車には踏面片押しユニットブレーキを採用することで軽量化及び保守の容易化を図っている。付随台車には踏面ブレーキと1車軸あたり2枚のディスクブレーキを備える。また、付随台車のうちTR255は踏面ブレーキに駐車ブレーキ機構を備える。保安装置は、製造当初よりATS-S形およびATS-P形を搭載している。その後K407・K457 編成よりデジタル列車無線機器と ATS-Psが新製時より設置され、ATS-Ps 非搭載で製作された初期の車両にも順次 ATS-Ps が搭載された。従来の ATS-S による本線運転も可能である。2003年(平成15年)12月9日のプレスリリースにおいて常磐線(上野駅 - 四ツ倉駅間)・水戸線に導入すると発表された。この時点では、2005年7月までに90両を投入した後は、2006年度の秋までに140両を新造して403系および415系鋼製車を置き換え、さらに60両を新造して最終的には290両の陣容となる予定であった。しかし、常磐線中距離列車へのグリーン車導入決定により計画が変更され、付属編成5両を2本追加製造し、基本10両編成22本220両と付属5両編成16本80両の計300両の陣容とされた。同時にグリーン車を連結しないE501系も置き換えの対象となった。2005年7月9日の運行開始時点では、90両が上野駅 - 大津港駅間の普通列車および新設された特別快速(上野駅 - 土浦駅間)の運用に投入された。1日の運行本数は18往復で、このうち特別快速は下り6本・上り5本であった。2006年3月18日ダイヤ改正より、上り特別快速が1本増発され、普通列車12往復、特別快速6往復の運用となった。2006年8月26日から2007年3月17日までは付属編成が水戸線6往復の運用に投入され、また同年2月から3月17日までは415系で運用されていた上野 - いわき間の直通列車運用にも投入されていた。2007年3月18日のダイヤ改正から上野駅を発着する常磐線中距離電車の全列車でグリーン車の営業が開始された。JR発足後、首都圏での普通列車のグリーン車連結は東海道本線・横須賀線・総武快速線に限定されていたが、2004年10月16日に湘南新宿ライン・宇都宮線(東北本線)・高崎線に連結列車を拡大したところ、利用客が順調に増加したことを受けて、常磐線への導入決定に至った。グリーン車はE217系やE231系と同一のダブルデッカー構造で、連結位置もE231系と同じ基本編成の4・5号車である。グリーン車の導入は製造当初の計画にはなかったため、本系列の新製計画は変更となり、下記の要領によって組み込みが行われた。2006年11月をもって製造メーカーからの甲種車両輸送および新津車両製作所からの配給輸送を完了したが、組み替えに備えて落成した車両の一部は運用には投入されずに我孫子駅や尾久車両センター・高萩駅構内などに留置されていた。基本編成に各2両連結する44両のグリーン車は、同年11月16日から東急車輛製造および川崎重工業から順次勝田車両センターに甲種車両輸送された。同年11月17日に勝田車両センターにて K411・K422 編成にグリーン車を連結し、K411 編成が同年11月23日に、K422 編成が同年12月13日に試運転を実施した。その後郡山総合車両センターで順次基本編成へのグリーン車組み込みが実施された。2007年1月6日よりグリーン車を組み込んだ基本編成の運用が開始されるが、同年3月17日まではグリーン車車両は普通車扱いとされた。暫定使用中は、グリーン車車両の客用ドアの横と室内広告枠に普通車扱いを示すステッカーが貼り付けされた。K410 編成では、組成予定の サロE531-14・サロE530-14 に不具合が発生して組成が遅延し、2007年4月に営業運転に復帰した。本系列の全車を勝田車両センターに配置し、2015年4月1日時点での内訳は基本10両編成23本(230両)、付属5両編成25本(125両)、合計355両である。基本編成10両 + 付属編成5両の15両編成を基本とし、基本編成の編成番号は K401 - K423、付属編成の場合は K451 - K475 である。基本編成10両+付属編成5両の15両編成、付属編成5両+付属編成5両+付属編成5両の15両編成、付属編成5両+付属編成5両の10両編成、基本編成のみの10両編成、付属編成のみの5両編成の5パターンでの運行が可能である。2016年3月26日のダイヤ改正までは、付属編成を複数連結した列車の定期運用は存在せず、付属編成5両+付属編成5両の10両編成での運転がE501系基本編成の代替運用時にあるのみだった。編成中の電動車 (M) と付随車 (T) の構成(MT比)は、基本編成が 4M6T 、付属編成は 2M3T である。先頭車両は貫通路をもたないため、走行中の編成間の通り抜けはできない。付属編成は複数の運用方法を有するため、車体側面の号車番号ステッカーは貼り付けしない。2007年3月18日のダイヤ改正より、常磐線上野口中距離電車の運用はすべて本系列に置き換えられた。この時点での運用区間は原則として常磐線上野駅 - 高萩駅間であったが、常磐線は上野駅 - 土浦駅間が10両・15両編成、土浦駅 - 水戸駅・勝田駅・高萩駅間は大半が10両編成での運転であるが、土浦駅 - 勝田駅間を5両編成で運転する列車が2往復ある(このうち、上りの1本はいわき発、下りの1本は上野駅始発で土浦駅で基本編成を切り離す)。水戸線での暫定運用は全区間で5両編成を使用した。E501系基本10両編成の代替運用には基本編成または付属編成2編成を連結して代走する。2010年度には、付属編成が新津車両製作所で再び新製され、K467編成が同年6月17日に、K468編成が同年7月23日に竣工した。E531系の新製は2006年11月以来の約3年半ぶりとなる。これはE501系が経年約15年を迎え、機器更新時期に達したためで機器更新期間は基本編成で2か月、付属編成で1か月程度の期間を要する。E501系とE531系は共通予備車であるため、この入場期間中に車両の運用が不足してしまうためにE501系の機器更新時の予備車確保用として製造された。2014年(平成26年)9月に上野東京ライン開業による車両不足を補うための基本編成のK423編成が、12月のK469編成から2015年(平成27年)3月のK475編成までの415系置き換え用付属編成7編成が総合車両製作所横浜事業所で製作された。E531系の基本編成新製はK422編成以来8年ぶり(グリーン車は7年ぶり、普通車の横浜事業所での製造は東急車輛製造時代のK406編成+K456編成以来9年ぶり)、E531系全体では付属編成のK468編成以来4年ぶりである。なお、K423編成の9号車はセミクロスシート車(サハE531形0番台)として製造された。2015年2月より水戸線の415系運用置き換えが始まり、水戸線での定期運用が開始された。また、常磐線の415系1500番台の用も同様に置き換えが進められており、2月下旬ごろからは高萩駅 - 竜田駅間での運用(すなわち、水戸駅 - いわき駅 - 竜田駅間の系統での使用)も開始され、3月26日のダイヤ改正で置き換えが完了した。尚、415系よりも本数が足りないため、水戸‐竜田間の運用本数も同時に減少した。2015年3月14日からは上野東京ラインの開業に伴い、常磐線の一部列車が東海道線品川駅まで直通運転を開始した。これにより、E531系の運用範囲は東海道線・上野東京ライン品川駅 - 常磐線竜田駅間および水戸線へと拡大された。2015年10月には、415系1500番台の置き換え用として6次車に相当する5両編成の付属編成が落成した。すべての車両が準耐寒耐雪仕様車となっていることから、新たな区分として3000が足されて3000番台となっている。車両は総合車両横浜でK551編成が、11月には同じく総合車両横浜で同じくK552編成が落成し、12月6日から他の付属編成と共通で営業運転を開始した。従来車との変更点は以下の通りとなっている。臨時列車の運用事例も存在する。2005 - 2006 年度の「笠間deおさんぽ号」(笠間行き、2012年5月まで運転)、2005年以降、8月の国営ひたち海浜公園『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』来場者の帰宅輸送用として、上り臨時快速列車(勝田発上野行き、2013年は取手行き)1本を本系列で運転している。2008年・2009年は、往路輸送用として下り臨時快速列車にも充当されている(2010年以降は下りの快速列車は運転せず)。また2008年7月6日には勝田駅 - 大宮駅間で当系列を使用した団体臨時列車「ひまわり号」が運転された。運転前には宇都宮線で試運転も実施された。2013年7月22日には、いわき市のいわきグリーンスタジアムで開催されたプロ野球オールスターゲームに合わせた臨時普通列車「復興いわきベースボール号」に充当された。この列車では、グリーン車の営業を伴う基本編成での運転を高萩駅 - いわき駅間では初めて行った(グリーン車は指定席)。2013年10月27日・11月3日には臨時快速列車「那須野満喫号」として、付属編成5両で南越谷駅 - 黒磯駅・新白河間で運転された。営業運転での武蔵野線や宇都宮線・東北本線への入線は初となった。2014年2月1日・2日には臨時快速列車「おさんぽ川越号」として、付属編成5両で土浦 - 川越間で運転された。営業運転での川越線への入線は初となった。2014年からGW期間中や秋の連休中、及び2015年のGWには、笠間市で開催される焼き物市などのために「笠間ひまつり号」(GW期間)・「笠間浪漫号」(秋の連休)が友部駅 - 笠間駅間で運転された。付属編成5両が使用され、「笠間ひまつり号」では両先頭車に笠間市のマスコット「いな吉」がデザインされた専用ヘッドマークが装着される。
出典:wikipedia
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