超原子価化合物もしくは超原子価分子(ちょうげんしかぶんし、)とは、形式的に原子価殻に8つ以上の電子を持つ典型元素を含有する化合物、分子のことである。また、このような状態の典型元素は超原子価状態である、超原子価を取る、などと言われる。五塩化リン (PCl), 六フッ化硫黄 (SF),リン酸イオン (PO), 三ヨウ化物イオン (I)は超原子価化合物の例である。超原子価化合物はJeremy I. Musherによって、酸化数の最も低い状態でない15-18族の元素を持つ化合物として、1969年に初めて定義された。いくつかの特殊な超原子価化合物が存在する。超原子価化合物はオクテット則には従わないと考えられるため、その結合を表現するのにいくつかのモデルが提案されている。アーヴィング・ラングミュアは1920年代に、これらの化合物でもオクテット則は満たされており、結合はイオン性の相互作用(SFFのように)に基づいているという考えを示した。それに対し、同時代にギルバート・ルイスは、拡張オクテット則という考えを示していた。超原子価化合物の結合はs軌道、p軌道、d軌道の混成によるspdとspd 混成軌道を持つ化合物として表現することができると考えられている。しかし、ab initio計算の進歩によって、超原子価化合物の結合に対するd軌道の寄与は非常に小さく、結合を特徴づける要素ではないことが示され、現在では、この混成軌道の重要性は低いと考えられている。その他の超原子価化合物の表現として、その結合に対して、オクテット則にイオンとしての性質を含ませるという改良を加える試みがなされている。この様な改良の一例として、1951年、三中心四電子結合という考え方がによって提案された。これは、超原子価の結合を定量的な分子軌道として表現する。三中心四電子結合は中心となる原子のp軌道と二つの配位子の軌道を組み合わせることでできる三つの分子軌道として表される。すなわち、三中心四電子結合は、占有された結合性軌道、非結合性軌道と、占有されていない反結合性軌道から成る。このモデルではオクテット則を破らずに済む。超原子価という言葉は、化学的な結合様式に関して何ら情報を示していないと言う理由から、Paul von Rague Schleyerは、1984年に超配位 (hypercoordination) という言葉を提案している。超原子価という概念は電子の局在化の役割について分析を行っているRonald Gillespieによっても非難を受けている。Gillespieは、「超原子価とそうでないものの結合において、根本的な違いが無く、超原子価という言葉を使う理由が無い」と結論づけた。PFのような電気的に陰性な配位子をもった超配位化合物は、中心の原子から電子が引き抜かれて非局在化し、中心の原子の実質的な電子数は8電子以下になることが示されている。このような見方は、PFのようなフッ素を構成要素とする超配位化合物の水素類縁体、すなわちホスホラン PHは不安定な化合物であるという事とも合致する。熱力学計算の上では、イオン性のモデルでもある程度うまく説明できる。たとえば、PFFが三フッ化リン PFとフッ素 Fとの反応から生成する際には発熱反応となるのに対し、PHHを生成する際にはそうならない。
出典:wikipedia
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