イソフラボン (isoflavone) はフラボノイドの一種。狭義では分子式 CHO、分子量 222.24 の有機化合物のひとつ、3-フェニルクロモン (3-phenylchromone) を指し、広義には後述のイソフラボン類に属する誘導体をイソフラボンと称する。狭義のイソフラボンは生物では検出されない。生物ではフラバノンの異性化反応によって 5,7,3'-トリヒドロキシフラボンが作られ、多くは配糖体として蓄えられる。イソフラボン類はポリフェノールの分類のひとつで、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。ダイズ、クズなどのマメ科 () の植物に多く含まれている。ゲニステイン、ダイゼインなどのイソフラボンはエストロゲン(女性ホルモン)様の作用を有する。これはエストロゲン受容体に結合してアゴニストとして働くためで、このような活性を持った植物由来の化合物は植物エストロゲン(または植物性エストロゲン)と呼ばれる。しかし最新の研究の総合すると、イソフラボンのエストロゲン様作用については否定的な研究結果が多い。栄養学的に興味を持たれているイソフラボン類は、母核イソフラボン分子の2個あるいは3個の水素原子がヒドロキシル基で置き換わった誘導体である。母核のイソフラボンは栄養学的には興味を持たれていない。イソフラボンはフラボン (2-phenyl-4"H"-1-benzopyr-4-one) とはフェニル基の位置が異なっている。イソフラボン類は、高等植物においてフラボノイド化合物を作り出す通常のフェニルプロパノイド経路から分岐して生合成される。ヒトの食物において、ダイズが最も一般的なイソフラボン類の摂取源である。ゲニステインとダイゼインがダイズにおける主要なイソフラボン類である。フェニルプロパノイド経路はアミノ酸であるフェニルアラニンから始まり、中間体のナリンゲニン () が2つのマメ科特異的酵素(イソフラボン合成酵素、デヒドラターゼ)によって連続してゲニステインに変換される。同様に、もう一つの生合成経路中間体であるカルコンは、3つのマメ科特異的酵素(カルコン還元酵素、II型カルコン異性化酵素、イソフラボン合成酵素)の連続した作用によってイソフラボン類ダイゼインに変換される。植物は、イソフラボン類とその類縁体を病原菌の感染やその他の微生物からの防御のためのファイトアレキシンとして利用している。加えて、ダイズはイソフラボン類を、土壌の根粒菌を刺激し窒素固定のための根粒を形成させるために使用している。マメ科 () のほとんどの種は、多量のイソフラボン類を含有している。様々な種で含有量を解析した結果、オランダビユ () が最も多量のゲニステインとダイゼインを含有していることが明らかになっている。ダイズ () やサヤマメ ()、ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)もやし ()、ヤエナリもやし ()、葛根 ()、ムラサキツメクサの花、ムラサキツメクサもやし () など様々なマメ科植物について、そのエストロゲン様活性が研究されている。豆腐などマメ科を原料とした加工度の高い食品は、ほとんどのイソフラボンのレベルを維持している。発酵食品である味噌では、イソフラボンのレベルが増加している。その他のイソフラボンを含む食品としては、ヒヨコマメ(ビオカニンA、)やアルファルファ(ホルモネチン 、クメストロール )、ピーナッツ(ゲニステイン)などがある。植物組織では、ほとんどのイソフラボン類は、配糖体やそれぞれの配糖体のマロン酸あるいはアセチル化抱合体として存在しており、水溶性が高まった状態となっている(を参照)。マロン酸抱合体は不安定なため脱炭酸によって変換される。マメ科植物がウイルスや菌による感染を受けようとすると、水溶性で移行可能なイソフラボン誘導体が加水分解を受け、感染を受けている部位でアグリコンが生成される。エストロゲン様の活性を持つがゆえ、乳癌や子宮体癌などのリスクを増すとも減らすとも考えられている。大豆イソフラボンは、更年期障害や2型糖尿病の改善に効果があるといわれ、また骨粗鬆症に対しては特定保健用食品として「骨の健康維持に役立つ」という表示が許可されたものがある。尿の中にでてくるイソフラボンの多い人ほど骨密度が高いことが指摘されている。豆あるいは大豆食品そのものの安全性は問題視されていない。また、大豆イソフラボンの長期摂取と骨密度の相関を調べた、米Miami Veterans Affairs Healthcare SystemのSilvina Levis氏らによる単一施設での二重盲検・無作為化試験データによれば、1日のイソフラボン摂取総量を体重1kg当たり2.05mgから4.50mgとし、2年間実施したがイソフラボン群(122人)と偽薬群(126人)の骨密度に有意な差はなかった。また、日本で2001年に20名の被験者を対象とした試験が行われたが、摂取量と骨密度の有意な関係を示唆するデータは得られなかった。健康を目的に豆乳を飲み続けた中国浙江省在住の男性が、次第に胸が肥大。2年経過時にはDカップ以上に肥大。病院で「イソフラボンの摂りすぎによる乳房の発育」と診断された。肥大した胸は、乳腺と脂肪組織の切除手術を行うことになった。サプリメントだけでなく、通常食品からのイソフラボン摂取も注意が必要である。一部のマスコミが乳がんの発症リスクを高めると報道したが、誤報だと指摘されている。2006年には、食品安全委員会は「現在までに入手可能なヒト試験に基づく知見では、大豆イソフラボンの摂取が女性における乳がん発症の増加に直接関連しているとの報告はない」と報告している。厚生労働省研究班の2008年の報告では、432人の保存血液から血中イソフラボン濃度を測定し乳がんのリスクとの関連を分析したところ、欧米人より高いイソフラボン濃度での検討だったが通常の食事の範囲では心配はいらないと考えられたとしている。米ヴァンダービルト大学による中国での乳がん手術患者を対象とした大豆食品摂取の摂食と生存率の調査では、摂食量が多いほど死亡率・再発率は低下し摂食量と死亡・再発率は有意の逆相関関係にある事が示唆されている、但し有意な逆相関を得た患者群の摂食量は平均的な日本人の3倍程度である。イソフラボンは甲状腺へのヨウ素の取り込みを阻害する作用があるため、ヨウ素欠乏の状態で大豆製品を多食したりイソフラボン大量摂取すると、甲状腺肥大をもたらす可能性がある。通常の日本食では海藻類にヨウ素が含まれている。内陸部ではヨウ素の摂取が難しいため、アメリカ、スイス、カナダ、中国などの国では、食塩にヨウ素の添加を義務付けている。厚生労働省は食品安全委員会に調査を依頼し、サプリメントや添加物としてのイソフラボンの過剰な摂取に注意を呼びかけることとなった。食品安全委員会による「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、大豆イソフラボンアグリコン換算した安全な一日の上乗せ摂取量の上限値を30mgとしている。厚生労働省研究班による大規模なコホート研究では、食品からのイソフラボンの摂取量が多いほど日本人女性の乳がんや脳梗塞と心筋梗塞、男性の一部の前立腺癌のリスクが低下するという相関関係が見られた。順天堂大学の研究によれば、納豆の摂食頻度と月経状態・月経随伴症状は有意の関係がみられ、摂食頻度の増加は症状を軽減させている可能性があるとしている。大豆の作付け時期によりイソフラボンの含有量は変動し、遅く蒔くほど含有量が多いことが宮崎県の試験で報告されている。
出典:wikipedia
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