


ピアノ協奏曲第3番変イ長調は、大澤壽人が1938年2月から5月に作曲したピアノ協奏曲。「神風協奏曲」の副題を持つ。同年6月24日に作曲者指揮、宝塚交響楽団、独奏マキシム・シャピロにより、大阪朝日会館において初演されている。「神風」の名称は、東京からロンドンまでの100時間を切る記録飛行に成功した朝日新聞社の航空機「神風号」に由来する。作曲の年を見ればわかるように「神風特攻隊」とは関係がない。当時の聴衆が彼の作品に追いついていなかったのか(大澤が楽壇と距離を持っていたことも関係あり)、なかなか良い評価は得られなかったらしい。初演後間もなくラジオでも放送されたが、作品の難度の高さと先にも述べた時代環境との不一致のため、再演されることがなかった。遺族によりスコアが自費出版されている。伝統的な3楽章制をとっており、調性が変イ長調とはなっているが、かなり自由に使われている。変イ長調(自由に)。冒頭にトロンボーンと弦楽により、「全曲のモットー」と呼ばれる変イ、変ホ、ヘの3音が奏される。この3音を基に曲はソナタ形式で進む。雲を突き抜ける飛行機を想像させる諸動機の集合が第1主題、華やかだがいささか暴力的な旋律が第2主題となり、空の旅の雰囲気を維持したままごく自然に展開部へ運んでゆく。短いコーダではピッコロのロングトーンが飛行機の飛び去るような効果音を聴かせる。ト長調 3部形式。珍しくサクソフォーンのソロにより始まる。曲はクラシックというよりもジャズ風の音楽である。ブルース音階と五音音階の類似性を利用し、ジャズ風でありながら東洋的な懐かしさを感じさせる上品な旋律が聴き所である。この仕掛けは「全曲のモットー」から導かれている。信じられないほどムード感にあふれた楽章であり、夢の中に溶け込むように終わる。序奏とロンドとコーダによるアレグロ。主部はスケルツォ的に軽快。木管群のトッカータも聴こえる。後半、突如としてキャバレー風の楽想が乱入する。飛行機が到着地へ近づいたことを表現していることは明白である。ピアノのカデンツァが挿まれて主題が回帰する。コーダは風のうなりやエンジンの駆動を描写にする弦楽のせわしい動きが続き、予想できないような突然の終曲を迎える。この楽章において、ピアノのヴィルトゥオーゾとモダンな曲想は極まる。
出典:wikipedia
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