


二千円紙幣(にせんえんしへい)は、現在流通している日本銀行券の1つ。二千円札(にせんえんさつ)、二千円券(にせんえんけん)ともいわれる、額面2,000円の紙幣。これまでに発行された二千円紙幣は2000年(平成12年)より発行が開始されたD券の一種類のみであり、これが2016年(平成28年)10月現在も有効であり、日本で流通している。第26回主要国首脳会議(沖縄サミット)と西暦2000年(ミレニアム)をきっかけとして、1999年(平成11年)に当時の小渕恵三内閣総理大臣の発案で、2000年(平成12年)7月19日に森内閣の元で発行された。日本銀行法第46条および第47条並びに日本銀行法施行令第13条の規定により発行された通常の日本銀行券であり、記念紙幣ではない。第二次世界大戦後初の「1」と「5」以外の単位の通貨(過去には2銭、20銭、2円、20円、200円の硬貨や紙幣が存在した)であること、公表された表面のデザインが人物でないこと(建築物はA十円券の国会議事堂以来)、さらにそれまでになかった最新の偽造防止技術が多数採用されていることなどにより、発行前から注目を浴びた。ちなみに、これら過去の2銭、20銭、2円、20円、200円の硬貨や紙幣は現在では全て通用停止になっているので、この二千円紙幣は「1」と「5」以外の単位の日本の硬貨や紙幣のうち現在有効な唯一のものである。発行後には、新券の珍しさもあって銀行の窓口に両替依頼が殺到したものの、一時的な流行を過ぎると、流通・使用は低調になった。2000年(平成12年)秋以降には、異例ながら日本銀行本支店の窓口で二千円紙幣への両替を受け付け(翌年12月まで)、大蔵省(現・財務省)や日本銀行の職員に現金で給与を支給する際には二千円紙幣を含めるなど、二千円紙幣の流通量を増やすための努力も始められた。2004年(平成16年)に他の紙幣が刷新(E券の発行)されるのを機に普及することも期待されたが、それでも浸透するに至らなかった。流通のピークであった2004年(平成16年)頃には、流通枚数で五千円紙幣を上回るほどであったが、2007年(平成19年)の二千円紙幣流通枚数は約1億5千万枚で、すでに発行されていない五百円紙幣(2億2千万枚)よりも少なかった。2013年(平成25年)の流通枚数は約1億枚で、五千円紙幣の1/6以下にとどまっている。日本銀行は二千円券の利便性を主張している。なお、二千円券にゆかりの深い沖縄県では、盛んに普及キャンペーンが行われたこと、本土復帰以前は20ドル札を含む米ドル紙幣が法定通貨であったこともあり、流通量は上昇傾向にあり、他都道府県に比べて高くなった。近年では沖縄県観光振興課がさらに流通促進に本腰を入れており、県民の一人あたりが複数枚を所持して日常的に使用する・県外にも持参して積極的に使用するよう呼び掛けている。企業や団体に対しても二千円紙幣の利用可能なATMの設置を推奨したり、二千円紙幣使用者への特典やサービスを行う試みを促している。自動販売機などにおいても、通常は千円紙幣のみ使用可能とする物が多い中、沖縄県では二千円紙幣の使用が可能となっている仕様の物が存在する。また、食券券売機においては低額紙幣専用機種であっても、千円紙幣とならび二千円紙幣にも対応している機種が存在する(フジタカFK-CX・芝浦KB-160NNなど)。2003年度(平成15年度)以降は製造されておらず、2010年(平成22年)には、大量の二千円紙幣が日銀の金庫に保管されたままの状態になっている。コンビニエンスストアに設置されている現金自動預け払い機 (ATM) 以外では、琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行およびみちのく銀行、横浜銀行のATMにおいて、二千円券の出金を選択することができる(ただし、横浜銀行のATMでは、有人支店に設置しているATMが対象で、対象支払機は1台のみ)。また、近畿大阪銀行および帯広信用金庫のATMでも同様の機能を設定していた時期がある。ATM以外では、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、静岡銀行、常陽銀行、京都信用金庫などに設置されている両替機において二千円券の出金を選択することができる(新両替機は非対応)。茨城県の指定金融機関でもある常陽銀行では、茨城空港における那覇空港への定期航路の運航開始を受けて、沖縄旅行での二千円紙幣の使用を勧めており、沖縄県以外の本土の銀行では珍しく二千円紙幣の普及促進活動を行っている。D券が発行されていた期間のうち、2000年(平成12年)から2004年(平成16年)の間に、製造元が「大蔵省印刷局」から「財務省印刷局」になりさらに「国立印刷局」に変わっているが、二千円紙幣は大蔵省時代にのみ製造されたため「大蔵省印刷局製造」のものしか存在しない。なお、二千円紙幣の発行を企画した当時の内閣総理大臣であった小渕恵三本人は、実物の発行を見届けることなく、2000年(平成12年)5月14日に脳梗塞で急死した。発行時には、記号番号「A000003A」が小渕の遺族(恵三元総理の妻である千鶴子)に贈呈された。二千円券には、それまでになかった偽造防止技術が多数採用されている。当時の大蔵省印刷局の発表によれば、源氏物語絵巻の「鈴虫の巻」の詞書である。ただし、すべての文章が描かれているわけでなく、デザイン上の関係で詞書の上半分だけが描かれている。変体仮名が多用されているが、現行の平仮名で表記した表示部分は以下の通りである。太字で表記した部分が二千円券裏面に描かれた部分である。原文には濁点がないが、以下の文には便宜上濁点を付けることとする。すゞむし
十五夜のゆふくれに佛のおまへ
に宮おはしてはしちかくながめ
たまひつゝ念殊したまふわかき
あまきみたち二三人はなたてま
つるとてならすあかつきのおとみづ
のけはひなときこゆるさまかはりたる
いとなみにいそきあへるいとあわれな
るにれいのわたりたまひてむしのね
いとしげくみだるゝゆうべかな
とて我もしのびてうち誦んじ給へる。
アメリカ合衆国の20ドル紙幣などは中額紙幣として流通量が多いことから、普及が期待された。しかし、二千円紙幣は流通量が非常に少ない紙幣となっている。日本国外では、盗難に遭う危険からあまり現金を持ち歩かず、日常的にクレジットカードやデビットカード、小切手での決済が多く、高額紙幣(100ドル紙幣など)は、偽札を警戒して相手に受け取ってもらえないことがあるため、それに次ぐ額面の紙幣として中額紙幣の流通量が多い。一方日本は比較的治安が良く、高額紙幣(一万円紙幣、五千円紙幣)が何不自由なく流通しているので、消費者にとってみれば、あえて使い慣れない二千円紙幣を積極的に使う理由はなかった。他国では20ドル紙幣(アメリカ合衆国)や20ポンド紙幣(イギリス)が普及しているのに対して、日本では二千円紙幣が普及しない理由について、数学者の西山豊は、「東西における奇数と偶数の文化の違いがあるのではないか」と考察しているが、これに対して、中華人民共和国の20元札、ベトナム社会主義共和国の2千ドン札・2万ドン札・20万ドン札、タイ王国の20バーツ札は、広く一般的に流通しているという反証もある。なお、沖縄では例外的に二千円紙幣が広く使用されている。2013年時点で、二千円紙幣の流通量は1億枚だが、その4割以上が沖縄で出回り、今も増加し続けている 。理由として、沖縄の行政と経済界が一丸となって二千円紙幣の流通促進を行った他、アメリカによる沖縄統治時代にアメリカの20ドル紙幣を使い慣れていた歴史があるとの説もある。近年では、クレジットカードのポイントを貯める消費者が増加傾向にあるが、カードの使用できない店舗や低額(概ね3,000円未満)の決済手段として、かさばらない二千円紙幣を使用する場面も散見される。また、Suicaなどの電子マネー決済の普及に伴い、千円紙幣と同様に入金(チャージ)用として、駅の自動券売機等で流通しつつある。ATM・自販機などの対応が遅れたこともあって、二千円紙幣が流通・常用される機運は高まらず、一般に浸透していない。必然的に流通量は少なく、入手機会も限られるため、二千円紙幣そのものに希少価値が付き、二千円紙幣を入手した人がその希少価値故に手放さず、よってますます二千円紙幣が流通しなくなる、という悪循環に陥っている。鉄道駅や飲食店の券売機など、支払い額が比較的高額になる自販機では使用できる場合が多いが、飲料等の自販機においては、機械自体は二千円紙幣に対応しているものの、ベンダー側で受け付けないように設定していることが多く、もっぱら使用できない。一方で、ローソンATMやイーネットでは、ATMの小型化によって、紙幣の収納スペースが少ないことと、二千円紙幣は千円紙幣の2倍の金額を格納でき、紙幣切れが起こりにくいなどの理由から二千円紙幣を格納し、優先的に出金していた(なお、千円紙幣も引き出される仕様となっているため、例えば8,000円を引き出した場合、二千円紙幣×4枚ではなく、二千円紙幣×3枚と千円紙幣×2枚という組み合わせで、引き出される)。しかし沖縄県以外では、2014年現在、二千円紙幣を出金しない最新型のATMにほぼ全て取り換えられており、二千円紙幣を出金する旧型のATMは、ほぼ絶滅している。日本国外では、日本以上に取扱量が少ないことから、二千円紙幣の両替を断る銀行、両替商も一部で見受けられる。東日本旅客鉄道・東武鉄道・都営地下鉄などの自動券売機は、二千円紙幣がお釣りとして出金できる設定になっている(2015年現在、出金非対応機種有)。しかし、一度に2枚以上入金すると回収され、お釣りとしては使われないので注意。また、オムロン製の自動券売機のほとんどの機種が、二千円紙幣をお釣りとして出金しない設定になっている。東武鉄道では光る仕切り板が設置されている券売機が出金に対応しておらず、都営地下鉄でも灰色の旧型券売機と切符の発券ができないPASMO入金機は出金が出来ない。この他にも、関東地方の多くの私鉄・地下鉄の券売機は、二千円紙幣がお釣りとして利用されるが、一部企業は出金しない上に、北海道の札幌市営地下鉄では、券売機全てが紙幣の普及状況を理由に二千円紙幣そのものを受け付けない(券売機は二千円紙幣に対応しているが札幌市交通局があえて使えないように設定を変えている)。紙幣表面の左上と右下に印字されている記番号は同一である。しかし、二千円紙幣には印刷ミスにより左上の記番号の最初のアルファベットが「J」、右下のそれが「L」となっているエラー紙幣、通称「JL券」が存在する。それは約9,000枚製造され、そのうち約5000枚が主に関西方面に出回ったとされる。通貨としては有効であるが、収集家の間では高値で取引されている。
出典:wikipedia
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