軽ボンネットバン(けいボンネットバン)は、1980年代に軽自動車の主流を占めたボディスタイルであり、ハッチバックスタイルのライトバン(貨物自動車の一種)である。「軽ボンバン」とも略される。法律上は前席2人掛け、後席2人掛けの4人乗りであるが、乗用車(いわゆるセダンタイプ)と違い、法定の荷室面積確保の必要から、リアシートは可倒式で狭くなっているうえヘッドレストを備えておらず、小学生以下の子ども以外は実用に耐えないほど狭い(特にトールワゴン型車体出現以前のベーシックモデル)。また、ナンバープレートの車種を表す分類番号は、架装などで頭が「8」となった車両を除けば、軽トラックや軽ワンボックスと同じく、頭が「4」となる番号が付けられている。1980年代までの軽貨物車は物品税が非課税(その後、軽ボンネットバンのみ5.5%に課税される)であったことから、節税目的のセカンドカーとして隆盛を極めた(当時の軽乗用車の物品税は15.5%)。また、軽自動車は貨物車であっても、当時の乗用車と同じ2年車検で、自動車保険も低廉であったため(小型貨物車、普通貨物車の貨物車は1年車検。ただし1983年に乗用車・軽乗用車の初回車検が3年に延長されたのに対して軽貨物車は2年のまま延長されなかった)、デメリットも小さかった。1989年の消費税導入に伴う税制優遇の相対的縮小や、1990年代以降の「トールワゴンブーム」などによるデラックス化への移行で、軽自動車市場の主流からは外れたものの、軽自動車カテゴリーの一ジャンルとして定着した。2016年9月現在でもスズキ、およびダイハツ工業での生産(販売は富士重工業を加えた3社)が続いている。元々このスタイルの軽自動車は、軽四輪自動車の黎明期から多数存在しており、1955年のスズキ・スズライトや1959年のコンスタック、1963年のスバル・360カスタムなど、古くから事例は多い。しかしこれらは市場からも「小型ライトバン」として「貨物自動車」の一種と捉えられており、乗用車として積極的に用いられる存在ではなかった。また軽トラックシャーシ派生のワンボックス型ライトバンに比して輸送力・積載量が劣るため、ワンボックス型軽ライトバンが普及した1960年代後期以降は、さほど存在の大きなカテゴリーでもなくなっていた。この傾向が一転したのは、日本におけるモータリゼーションが大幅に進行した1970年代に至ってからである。軽乗用車の売れ行きが低迷傾向にあった1970年代中期、特に自動車普及の進行が著しかった地方・郊外では、メインとなる1台目の乗用車に加えて、主婦等が軽便な交通機関として利用する2台目の自動車(セカンドカー)の需要が生じていた。軽自動車メーカーのスズキ(当時は鈴木自動車工業)は、調査の結果「日常で自動車を使用するシチュエーションにおける平均乗車人数は2人未満」と割り出した。そこで当時過剰なデラックス化傾向を辿っていた一般の軽乗用車とは正反対の商品コンセプトを打ち出し、その手段として軽商用車のカテゴリを利用することにした。当時は前輪駆動方式が軽自動車に本格普及した時期で、ボディスタイルも実用性の高いハッチバック形に収れんしつつあった。このレイアウトであれば、ボンネット形の3ドア乗用モデルと商用モデルは、自動車としての基本骨格をたやすく共通化できた。バンタイプの自動車は商用車としての制約から後席の居住性が悪いが、運転席部分は乗用車同様のスペースを確保でき、前席2人までの乗車ならユーザーにとっては乗用車と何ら変わりがない居住性を得られた。しかも主たるユーザーの女性たちは、規格上の乗用車と商用車の区別にはこだわらないことが、市場調査で判明していた。商用ボンネットバンの先代モデルに当たるフロンテハッチも堅調な売れ行きであり、このジャンルで新たな展開の可能性が見出されたのである。これらの検討を元に、スズキが1979年にフロンテの商用モデルとして発売した「アルト」が、ジャンルとしてのいわゆる「軽ボンバン」の最初とされている。アルトでは5ドアのフロンテと基本構造を共通化しながら3ドアボディを採用、助手席側キーホールやシガーライターなどの装備・装飾は省略して徹底簡素化し、エンジンも当初は簡易な2ストローク3気筒を使用した。実用のみに徹したシンプルなコストダウン設計に加え、物品税非課税も手伝って「定価47万円」という当時では驚異的な低価格を提示できた。「アルト47万円!」と謳った、わかりやすくユーザーの記憶に残る即物的なテレビコマーシャルは注目を集め、発売後1か月足らずで1万8000台以上のオーダーを得て、当時のベストセラーとなった。火付け役となったアルトの成功に追随するかたちで、ダイハツ工業がクオーレのバンモデルとしてミラクオーレを発売し、スバル(富士重工業)、三菱自動車工業も同様の車種を相次いで投入、市場は活況を呈した。「節税車」軽ボンネットバンの大人気ぶりは税務当局の注意を引き、1981年10月からは4人乗り軽ライトバンにも5.5%の物品税が課税されるようになったが、それでも乗用軽の物品税課税率15.5%に比べればはるかに格安で、人気を大きく削ぐことはなかった。しかも、完全2人乗り仕様であれば5.5%課税の対象とならなかったため、メーカー側も廉価版として後部座席を省いた2座モデルの軽ボンネットバンを投入するしたたかさを見せた(後の三菱・ミニカH32V型には運転者のみの単座モデルまで加えられているが、この30系ミニカは1993年デビューなのでこの件に関しては無関係と思われる)。1985年には、1974年に軽乗用車カテゴリーから撤退して久しかった本田技研工業が市場の動きに刺激され、低車高のユニークな軽ボンネットバン、トゥデイを発売して、乗用タイプの軽自動車市場に復帰した。これらの軽ボンネットバンは、主婦層や若年層を中心とした大衆ユーザーから広く支持され、1980年代における軽自動車の主流となった。ボンネットバンは、1980年代の軽自動車マーケットの活性化に著しく寄与したと言える。その後、商用モデルでありながらデラックスな内装、豪華な設備を備えたものや、軽乗用車との規格、規制の差を逆手にとったターボチャージャーを装備したスポーツ仕様車が現れるなど、軽自動車市場は1970年前後の360cc時代を彷彿とさせる過剰装備・過剰性能へと逆行し、軽ボンネットバンの在り方は、実用車としての起源から乖離した、いささかいびつな状況を呈した。一般には、1989年の物品税廃止・消費税導入で、商用モデルの割安感が少なくなり、ボンバンブームは終焉を迎えたとされる。しかし実際には、物品税以外にも「5ナンバー」の軽乗用車に比べ任意保険はほぼ半額、軽自動車税や自動車重量税も安く、2010年代時点でも乗用モデルに対するメリットが存在している。この時期、自動車に要求される居住性の水準が上がった事が主因であり、物品税廃止はそのきっかけに過ぎなかったとも言える。以後、軽ボンネットバンのラインナップは、1979年の「アルト」登場時のような、本来の形態に沿った簡素な廉価版を中心に設定されるようになった。価格面でのリーダーはやはりアルトで、各社がそれにそろえるかたちで横並びとなった(これもまたその時々の税制対策によるところが強い)。ブームこそ個人ユーザーの軽トールワゴンへの移行もあり沈静化したが、それでもビジネス・パーソナルともに一定の需要があり、2016年現在軽ハッチバックのツートップであるアルト・ミラ(とそのOEMであるプレオ)に設定されている。ミニカ最終型のH40系に至っては、バンばかりが売れたこともあり末期モデルはバンのみの設定となっていた。現行車種は過剰装備こそ持たないが、安全性や居住性は軽自動車としての基準を満たしており、なおかつエアコンやパワーステアリング、ラジオなど、「乗用車」に求められる最低限の装備は標準で備えている。また、従来はコスト面から省かれがちであった安全装備に関しても2014年現在充実が図られている。このように、もはや装備面では軽乗用車に肉薄するレベルにまでなっている。また正式なバンとしても最大200kgの貨物を積載する能力があり、原動機付自転車などに比して(機動性を除いた)実用性に勝るミニマム・トランスポーターとして定着している。しかし軽乗用車における軽トールワゴンの人気など長引く不況下における軽乗用車販売競争の激化過程が軽ハッチバック(セダン/ボンバン)市場に与えた影響は大きく、販売不振等を理由に1998年にトゥデイ、2010年前後にミニカ(セダン2007年、バン2011年)が事実上のライフやeKへの移行を経てモデル廃止。プレオは2010年に自社生産続行を断念してミラのOEMに切り替わった。これに伴い、新車で購入できる軽ボンネットバンは、アルト、ミラ/プレオ(ミラのOEM)の実質2車種のみとなった。ミラのバンは登録車を含めてもハッチバック車としては数少ない3ドア仕様を続けている。なお、最低定価60万円クラスの格安を維持していたミニカの生産終了や2014年4月の消費増税に伴って、軽ボンバンの定価水準は2014年後期時点では70万円台前半(アルト:約70万円〜、ミラ/プレオ:約75万円〜)となっている。以下のうち、1970年代中期以前の360cc/初期550ccモデルには、軽乗用車ベースでなく、軽トラックベースで開発された車種も含まれる。初代アルト以前の車種は、アルトのようにマーケティング戦略的に節税を狙った「実質乗用車のボンネットバン」とは一線を画した前世代の車種であり、1950-70年代に市場からの需要が高かった、元来の軽商用車の中の一形態に留まる。いずれもボンネット型軽トラックベース。など
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。