シュミットトリガ (Schmitt trigger)とは、入力電位の変化に対して出力状態がヒステリシスを持って変化することを特徴とする、デジタル回路の入力回路方式である。入力信号に対するしきい値を2つ持ち、入力信号の電位が高いしきい値を超えたときに論理Hの電位を出力し、逆に入力信号の電位が低いしきい値を下回ったときに論理Lの電位を出力する。入力信号が低いしきい値と高いしきい値の間にあるときは直前の出力電位を保持する。入力信号が高低のしきい値を超えることをきっかけとして出力が切り替わることから「トリガ」と呼ばれる。この2つのしきい値による動作はヒステリシスと呼ばれるが、一般にヒステリシスは状態の記憶にあたるので、シュミットトリガはメモリの一種であると考えることができる。電子回路におけるシュミットトリガの最大の役割は、入力信号の揺らぎ(ノイズ)を除去することにある。しきい値が1つだけの回路では、入力信号がしきい値付近で揺らぐと出力が高速に変動する(ノイズが増幅される)。シュミットトリガでは1つのしきい値をまたいだ瞬間にもう1つのしきい値が適用されることになるため、入力が少々揺らいだ程度では出力が変化しない。電子回路図では左の記号が用いられる。三角の記号はバッファ(信号増幅器)を表し、中の記号がヒステリシスを持つことを示している。単独の回路素子として用いられるのではなく、他の回路の入力部分がシュミットトリガになっている場合には、その入力信号線の所に小さくヒステリシス記号を描いて示すこともある。シュミットトリガはアメリカ合衆国の科学者であるオットー・シュミットによって1934年に発明された。これは彼の博士号の研究テーマであるが、彼の研究テーマの全体は、生体の機能を工業応用することにあった。シュミットトリガは、イカの神経をつかった神経系の研究の成果の一つであった。当初は"Thermionic Trigger"と名付けられていたが、後に"Schmitt Trigger"として商標登録された。シュミットトリガ回路は、コンパレータ(オペアンプ)に正帰還をかけることで実現できる。コンパレータは+入力と-入力の電位差を大きく増幅して飽和させたものを出力する。すなわち、+入力が-入力よりも高い電位にあるとき高電位が出力され、+入力が-入力以下の電位であるときには低電位が出力される。この出力を抵抗Rで+入力に帰還する。出力が高電位(V)のときには、+入力にはVと入力電圧Vの差をRとRで分圧した電圧が入力されることとなる。この電位が-入力である接地電位(0V)を下回るまでの間は出力はVのままであるが、この境界となる電圧は、となる。Vが一度この電圧を下回れば出力が低電位(-V)になるため、今度は+入力には-Vと入力電圧Vの差をRとRで分圧した電圧が入力されることとなる。このとき+入力が-入力(0V)より大きくなる条件は、に切り替わる。すなわち、この回路では0Vを中心とする±V(R/R)の範囲内に入力信号がある間は出力を保持するヒステリシス回路となっている。入力電圧と出力電圧の関係を示す右図においては、M = Vが論理Hを、-M = -Vが論理Lを示し、±T = V(R/R)がしきい値となっている。実際には右図のように回路の動作を安定させるための素子が付加されることが多い。右図の回路では出力電圧をツェナーダイオードで制限し、電源電圧の変動に対して強くなるように工夫されている。Rはツェナーダイオードに流れ込むコンパレータ出力の電流を制限するためのものであり、Rはコンパレータの-入力から漏れ出る電流に対応するものである。論理Lに接地電位以下(負の電圧)を使わずに、接地電位を論理Lとするためには、-入力と出力にオフセット電圧を加えればよい。シュミットトリガは2個のトランジスタと数個の抵抗だけでも作ることができる。NPNトランジスタの基本的な動作として、ベース電圧がエミッタ電圧+0.6V(ベース-エミッタ間のスイッチに必要な電圧)よりも低い場合にはトランジスタはオフ状態となる。つまり、入力INがGNDに近い場合にはTrがオフになり、Trのベース電圧がVccに近くなるためオンになる。この時、出力OUTの電位はVccをRとRで分圧した値になるが、RをRよりも十分大きいものにしておけばこの電圧はGNDに近い値になる。Trは、ベース電圧(すなわちIN)が、Rに流れる電流による電圧+0.6Vよりも高くなるとオンになる。TrがオンになるとTrのベース電圧が下がるのでTrはオフになって、OUTがほぼVccと同じ電位になる。この時、RにTrから流れ込んでいた電流がなくなるため、Trのスイッチ電圧は0.6Vに下がる。つまり、出力がLの時はINのしきい値が0.6V+Vで、出力がHの時はINのしきい値が0.6Vになっている。これでヒステリシス動作をすることになる。なお、この回路では、論理Hの出力はほぼ電源電圧(Vcc)になるが、論理Lの出力は接地電圧(0V)にはならない。他の回路に接続するときにはその点に十分注意しなければいけない。実用的には、出力部にトランジスタをもう1つ付け、電源電圧と接地電圧を出力するようにした方がよい。シュミットトリガは、弛張型の発振回路として使うことができる。シュミットトリガの出力を論理反転し、抵抗とコンデンサによる信号遅延回路を通して自身の入力に接続すると、発振するのである。出力部にバッファ用のトランジスタがついている都合で反転出力になっているシュミットトリガを用いる場合、出力と入力を1本の抵抗で結び、入力と接地線の間にコンデンサを1個入れるだけでよい。標準ロジックICではパッケージングの都合などにより数個の反転シュミットトリガが1つのIC内に入っていることが多い(7414など)。このとき、本来のシュミットトリガとして使わない(余った)部分を流用し、たった2個の外付け部品だけで発振回路として使えるので、便利である。標準ロジックICの中にはシュミットトリガを使っているものがいくつかある。TTLの7400シリーズでは、以下の番号のICがシュミットトリガを利用している。CMOSの4000シリーズでは、以下の番号のICがシュミットトリガを利用している。次のシングルゲートCMOS ICは、シュミットトリガを利用している。
出典:wikipedia
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