ウミニナ(海蜷)、学名 " は、吸腔目ウミニナ科に分類される塔形の巻貝の一種。極東アジアに分布し、淡水の影響のある海岸や河口といった汽水環境の、主に砂泥や砂礫などの(干潟)に生息するが、時には岩礁性の環境に見られることもある。韓国名は「」、中国名は「」(多形灘棲螺)、台湾では「」とも言う。また同様の環境にはウミニナによく似た外見や生態を示す巻貝も多く、大規模な産地ではこれらの複数種が共存することも少なくない。日本ではそれらを総称して「ウミニナ」、「ウミニナ類」などと呼ぶことがあるため、これらについても「日本産”ウミニナ類”」の節で述べる。成貝の貝殻は殻高35mm・殻径13mmほど、塔形で堅い。螺層(巻き)は8階ほどになる。巻きの中ほどが膨らみ、円錐というより水滴形を長くした形に近い。貝殻の色は灰色や灰褐色が多いが、縫合(巻きの繋ぎ目)の下側に白い帯模様が入るものも多い。螺肋(巻きに沿った線)は5本で、それが不規則に区切られた煉瓦積みのような細かい彫刻が貝殻表面を覆う。縫合のやや下には低いイボ状突起が並んで肩を形成することがあるが、この突起列は個体や個体群によって強弱の変化が激しく全く見られない場合も多い。殻口は比較的大きな半円形で、外側は黒地に白い縞模様がある。内側は白い滑層(陶器のような質感の層)が発達し、特に殻口内唇の上部には三角形に張り出した滑層瘤(かっそうりゅう)ができる。蓋は角質円形の多旋型で濃褐色をしており、周縁には半透明褐色の薄い膜状部がある。ただし本種は貝殻の個体変異が多く、黒っぽい、白っぽい、殻の膨らみが弱い、イボ状突起が発達する、滑層瘤がない、殻口が小さいなど、先述の特徴に当てはまらない個体も見かけられる。学名の種小名"multiformis"も「多形」を意味する。類似種を含めた所謂ウミニナ類の中では、殻の中ほどが膨らむこと、体全体に比べて体層(殻の最下層)と殻口が比較的大きいことなどで他種と区別できるが、個体変異により同定が難しい場合があり、特に殻口が完成していない幼貝ではホソウミニナとの識別が困難である。日本では北海道南部から九州まで、日本以外では朝鮮半島と中国沿岸に分布する。南西諸島に分布するのは同属のリュウキュウウミニナ "B. flectosiphonata" である。河口や内湾などの汽水域に生息し、干潟の砂泥上に群れをなす。多産地では潮間帯上部の一定区域がウミニナで埋め尽くされる。砂泥上に多いが、付近の転石帯や岩の上などにも見られる。和名に「海」とあるが、ある程度は淡水の影響がある所でないと見られない。ホソウミニナと同所的に生息する場所では、ウミニナの方が高潮位に生息することが報告されている。干潮時に地上を這い、主にデトリタスを摂餌する。ただし這う時間は20-30分ほどで、じっとしている時間の方が長い。砂泥に半ば埋まったものもよく見られる。たまに殻上に背の高い小さなカサガイが付着したものがある。これはユキノカサガイ科のツボミガイで、他にも少数ながらフジツボやカキが付着したものもいる。雌雄異体で、交尾によって繁殖する。卵と幼生は東京湾産の個体が7月中旬に水槽内で産卵したもので観察されている。それによれば、卵は卵鞘に入った形で産まれ、1個の卵鞘は長さが約620µm(=0.62mm)、幅が約451µmほどの楕球型で、内部には5~9個の胚が入っており、それぞれの卵鞘は相互に長軸方向に複数つながって全体が紐状となっている。産卵後3日目には平均殻径204µm、およそ1巻きの丸い貝殻をもったベリジャー幼生が孵化し、自由に水槽内を泳ぎまわると同時に、しばしば動きを止めて水槽底にとどまるのが観察された。このまま餌の補給なしで1週間を経たのち、より深い水槽に移してクロレラを与えたところ、ベリジャー幼生の消化管内にクロレラが取り込まれたことから、自然界でもプランクトン生活をしながら植物プランクトンを食べていることが推察されている。しかしこの観察では、その3日後(孵化から10日後)には成長も変態もしないまま全個体が斃死してしまったため、それ以上の詳細は不明となっている。このようなプランクトン生活をするベリジャー幼生期を経る発生様式は、イボウミニナやフトヘナタリなどと共通のものである。しかし形態・生態ともによく似たホソウミニナのみは、このような浮遊生活期を経ずに、卵から匍匐型稚貝が直接生まれる直達発生であることが知られている。この違いが、種個体群の維持にも影響を及ぼしている可能性が指摘されている。人や地域によってはこれらのウミニナ類を食用にする。日本ではこれらが豊富に得られる瀬戸内地方から九州にかけての地域でよく食べられ、例えば佐賀県では「ホウジャ」、長崎県では「ホウジョウミナ」などと総称し塩茹でなどで食べる。食べる際は五円硬貨の穴で殻頂を折り、殻口から身を吸う。また台湾などではこの類を「」と総称し、ピリ辛味に調理したものなどが街中でも売られる。食用以外には肥料としてそのまま畑に撒く人もいる。ウミニナは20世紀中頃までは、その分布域内では極めて普通に見られる貝のひとつであった。しかし20世紀後半に入ってからは各地で減少傾向が顕わになり、20世紀末頃には一部地域で消滅、もしくは非常に稀にしか見られない状況となった。最大の原因は生息環境の干潟が埋め立てや干拓などで激減したことによると推定されており、似た環境を好むフトヘナタリやカワアイなども同じように著しく減少した。しかし、他のウミニナ類と生息環境がよく似ているにもかかわらず、ホソウミニナだけは生息数に大きな変化がないことから、干潟の減少以外にも何らかの要因があるとして、発生様式の違いが注目された。すなわち、ホソウミニナは直達発生のため、卵から這い出した稚貝が親貝の生息環境に直接加入し、再生産が効率よく継続されて個体群が維持されると考えられるのに対し、その他のベリジャー幼生期をもつ種では、近隣に適した干潟が少なければ、浮遊幼生がそこにたどりつけないままに消耗する率が高くなり、個体群への新規加入が困難となるとの推論がなされた。その後、ウミニナもベリジャー発生であることが確かめられたことで、先の推論どおり、産卵期である夏季の東京湾内の貧酸素化や着底可能な干潟の減少で、浮遊幼生が生き延びて無事に着底できる率が低下するために、湾内のウミニナ個体群の維持が困難になっているのではないか、との説も出されている。一方、愛媛県では1980年代半ばには生貝がほとんど見つからずに絶滅状態に近かったものが、1998年前後からは増加傾向に転じ、その後一部の地域では多数見られるようになったという事例も報告されているが、その理由は明らかになっていない。日本におけるウミニナの保全状態は以下のように評価されている。汽水域の干潟に生息する塔形の巻貝は、ウミニナ以外にも複数の科にまたがって様々な種類が知られる。多産地では複数種が共存しており、日本ではこれらを「ウミニナ」、「ウミニナ類」などと一括りに扱うこともある。日本産には以下のようなものがいる。かつては Potamididae を「ウミニナ科」としていたが、メス生殖器、精子、歯舌の構造が異なることからウミニナ属が新しくウミニナ科 Batillariidae として分離され、Potamididae の和名は「キバウミニナ科」となった。旧ウミニナ科で、「フトヘナタリ科」「ヘナタリガイ科」と呼ばれることもある。成体は殻口が大なり小なり外反し、水管溝が深くえぐれる。種類によっては大きく反った殻口が水管溝を覆うように張り出す。オニノツノガイ科は熱帯の浅海に多くの種類がある。南日本の泥質干潟では、ウミニナ科やキバウミニナ科諸種と共にコゲツノブエという貝が見られる。ウミニナ類が生息する河口干潟は埋め立て、浚渫、干拓などが行われやすく、環境汚染もあって各地でウミニナ類生息地の消滅や減少が起こっているのは前述のと通りである。日本の環境省が作成した貝類レッドリストでは、2007年版でホソウミニナ以外の主要種が掲載された。
出典:wikipedia
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