四酸化三鉄（しさんかさんてつ、四三酸化鉄、しさんさんかてつ））または酸化鉄(III)鉄(II)（さんかてつ さん てつ に、）は、組成式 FeO で表される鉄の酸化物の一種であり、自然界では鉱物の磁鉄鉱（マグネタイト）として見出される。いわゆる「黒錆」のこと。Fe イオンと Fe イオンを含む為、時として FeO.FeO と表される。錯体や混合物ではなく、一定の結晶構造を持つ純物質（混合原子価化合物）である。実験室では四酸化三鉄は黒色粉末の形状で提供されていて、常磁性やフェリ磁性を示す。時として誤ってフェロ磁性と表される場合がある。また、製法により粒子のサイズや形状が異なるため、鉱石由来より合成によって製造された黒色顔料が非常に広く利用される。良質の FeO 色素は、産業廃棄物やスクラップ鉄あるいは鉄塩を含む溶液（例えば、鋼鉄を Pickling した際の副産物）から製造される。赤熱した鉄に水蒸気を作用させると生ずる。四酸化三鉄のナノ粒子は化学的に生成される。例えば鉄(II)塩と鉄(III)塩との混合物を塩基性にするとコロイド状 FeO が沈殿する。実験条件は微妙であり、条件の差異で粒子サイズが決定づけられる。磁鉄鉱は溶鉱炉内で一酸化炭素により還元され、鉄となり鋼の生産の一部に利用される。FeO の酸化を調節することで、褐色顔料の "γ"-FeO（磁赤鉄鉱）を生成することができる。他の焼成法（空気中での加熱）では、良質の赤色顔料である"α"-FeO（赤鉄鉱）を与える。FeO は逆スピネル型構造の立方晶系で、立方格子の頂点に酸素が配置し、酸素を中心とする八面体頂点の半分に Fe イオンが、残りの八面体頂点の半分と四面体頂点に Fe イオンが配置している。FeO も "γ"-FeO も酸素の配置は同じく立方格子をとる。酸化反応あるいは還元反応により容易にこれらの3種の化合物は相互に変化するが、その際の最終的な構造の違いは小さい。試料によっては FeO は不定比化合物の場合もある。FeO のフェリ磁性は八面体中心にある Fe イオンと Fe イオンの電子スピンが強磁性的に結合すると共に、四面体中心の Fe イオンのスピンがそれらに対して反強磁性的に結合していることに起因している。この両者の磁気的な寄与がつりあっていないことから永久磁石の性質を示す。FeO はフェリ磁性でキュリー温度は858 Kである、そして120 Kにおいてフェルベイ転移 (Verwey transition) と呼ばれる相転移を生じ、構造、電気伝導性、磁性が不連続的に変化する。この現象は研究対象として注目を集め、様々な理論的説明が提唱された。しかし完全には解明されていない。FeO は FeO に比べて、非常に大きい電気伝導性 (X 10) を示す。これは Fe と Fe との間で原子価間電荷移動する為である。鉄釘や鉄鍋などの表面に形成された「黒錆」は非常に緻密な皮膜となって内部を保護する。マグネタイトは走磁性細菌中にナノ結晶 (42-45 µm) として見出される。また伝書鳩のくちばしの組織中にも見出されている。

出典:wikipedia