PCMプロセッサー(ピーシーエムプロセッサー)とは、アナログビデオテープレコーダと組み合わせて、一種のDATとして利用するための装置。名前はパルス符号変調(PCM)から。フロントエンドにA/D変換とD/A変換の装置を備え、バックエンドにデジタル符号とNTSC信号などとを相互に変換する装置を備える。統一規格がありかつては民生用機器も発売され、Hi-Fi目的等に用いられた。PCMプロセッサーは、録音時には入力されたアナログ音声をPCMによってデジタル化し、さらにそれを映像信号に変換する。再生するときはその逆の動作を行う。これにより、アナログVTRに接続することでデジタル録音機として使えるようになる。当時、民生用の範囲でデジタル記録可能な音響機器は存在していなかった。PCM音声に必要な通信路容量は「(サンプリング周波数)×(量子化ビット数)×(チャンネル数)」、具体的に計算してみると44.1kHz, 16ビット, 2chステレオで1411.2kbpsにも及び、これを記録するには最低でも1MHz程度の帯域幅が必要となる。聴覚#可聴域を扱えれば事足りた音響機器では記録できない。そこで、3MHz程度の帯域幅を持つ映像機器(家庭用VTR)に記録するアイデアが生まれた。これがPCMプロセッサーである。PCMプロセッサーの歴史は、PCM録音機の歴史に遡る。初期のシステムは、A/D・D/Aコンバーターと磁気記録装置を一体化したレコーダーの形態であり、日本が世界をリードしていた。PCMプロセッサーは、その後のCDの商品化に向けてレコーディングスタジオを中心にデジタル化が進められる中でデジタル磁気記録再生用の信号変換機器として独立し、業務用と家庭用の製品が発売された。この項では、固定ヘッド一体型方式の製品はPCMプロセッサーの範疇ではないために参考程度にとどめ、主にVTRを記録再生装置として使用する回転ヘッド型向けのものを掲げる。当時普及が始まっていたカセット式VTRをそのまま活用することを目的にしたため、VTRに記録できるようにデジタル音声を映像信号として出力するようになっている。VTRには、水平同期周波数がNTSCカラー映像信号の(約)15.734kHzのものと15.75kHzのものがあった。このため、PCMプロセッサーの標本化周波数も44.056kHz(NTSC)と44.1kHz(15.75kHzベース)に分けられることになった。(NTSCのHSYNCは正確には 15.75 × 1000 / 1001 = 15.73426573426...(kHz) で、15.73426573426... × 3 × 14 / 15 = 44.0559440559... ≒ 44.056、15.75 × 3 × 14 / 15 = 44.1。1 / 15 は垂直帰線区間でVTRが映像信号を保存しない区間)当時普及し始めていた「カセット方式VTR」にはU規格(Uマチック)、ベータマックス、VHSの3種類があったが、これらは内部の信号処理に微妙な違いがあり、たとえば PCM-1 ではベータマックスでは使えるがVHSでは使えないといった互換性の問題が生じた。このため、日本ではEIAJが仲介に入り、ベータマックスとVHSのいずれにも対応できる規格「EIAJ/PCM」が策定された。CDのマスタリング作業には、PCM-1600の後継機にあたるPCM-1610、PCM-1630が事実上の標準となり、これとUマチックVTRを組み合わせたシステムが数多くのマスタリングスタジオに導入された。記録デバイスの進歩にともない、デジタル音声を小型のテープやディスクに記録する新しい規格が次々に現れた。これらはいずれも当初からデジタル音声の記録を前提としており、PCMプロセッサーに相当するAD/DA変換機が内蔵されていた。主な規格は以下の通りである。上記の媒体はいずれも利便性で旧来のVTR(+PCMプロセッサー)を圧倒しており、家庭用PCMプロセッサーは早々と生産が中止された。2004年には(おそらく最後のPCMプロセッサーである)PCM-1630の生産が終了した。2010年現在、アナログVTRは市場からほぼ姿を消しており、PCMプロセッサーという言葉も死語になりつつある。また、1982年にCDが登場してからは音楽はデジタル信号として販売されるようになり、アマチュア音楽バンドの録音や野外での生録音など一部の需要を除き、家庭内でのAD変換の必要性が一時減少したが、動画共有サービスへの投稿需要などで音声AD変換機能を持つパーソナルコンピュータの周辺機器が販売されている。
出典:wikipedia
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