トラベラーズチェック( / )とは、旅行や出張など海外渡航の際に、多額の現金を持ち歩かなくても済むように発行される外国旅行者向けの小切手。日本では旅行小切手(りょこうこぎって)ともいう。略してTCまたはT/Cということもあるが、日本国外では"T/C"という表現はあまり使われず、"TC"または"Cheque"が一般的な表現である。20世紀末頃まではよく使われていたが、日本国内では2014年3月31日を持って全ての販売が終了した。海外渡航中の現金の盗難・亡失といったリスクを回避する手段として、T/C発行元の保証により紛失時に再発行可能な小切手として用いられるものである。基本的に渡航前に所要金額分のT/Cを購入し、行先国で銀行や両替商、ホテルのフロント・キャッシャーにおいて額面の現金へ換金する。所定の手続を踏んでおけば紛失や盗難などの亡失時にリファンド(refund, 再発行)が受けられるのが最大の特徴である。1772年にLondon Credit Exchange Companyがヨーロッパの90の主要都市で通用する最初のトラベラーズチェックを発行した。19世紀末にトーマス・クック社が現在と同様のものを発行し、ヨーロッパ域内であっても行先国によって治安環境が異なる旅行者の不安を払拭させることに成功した。その後、アメリカン・エキスプレスが参入。同社は当時既に旅行事業の拠点を世界中に有しており、その後開始されたクレジットカード(アメリカン・エキスプレス・カード)サービスによる金融部門の発展で、現在、T/C取扱高において首位となっている。T/C購入・売却の際の外国為替相場における為替レートは、外貨預金の預け出しや外貨建海外送金に使われる「対顧客電信相場」(TTS/TTB)が適用される。外貨現金への両替には、対顧客相場に"Cash handling charge"を加味した「現金売/買(Cash, selling/buying)レート」が適用されて1通貨当たりの交換比率が劣ることから、これがトラベラーズチェックのもうひとつのメリットとなる。また、日本円とオーストラリア・ドル間は対顧客相場と現金建てのレートが10%前後(三菱東京UFJ銀行の場合)乖離しているため、T/Cの発行手数料を加味しても現金両替と比べて5%程度は得となる。これをエピソードにしたアメリカン・エキスプレス日本支社の広告(テレビCMなど)が2003年に展開された。日本では20世紀後半以降海外旅行の一般化により、入会審査や年会費が必要なクレジットカードと比べて簡便に扱えるため、2010年代前半まで銀行・ゆうちょ銀行などの金融機関窓口や両替商(ワールドカレンシーショップ、トラベレックス)、旅行代理店やセシールなど非金融業も販売を行っていた。1996年以降は都市銀行と郵便貯金で国際キャッシュカードサービスが展開されるも、手数料や海外での出金制限がネックとなり普及せず、2000年前半時点でシティバンク銀行(現:SMBC信託銀行)と新生銀行以外では新規募集が終了した。その後、2006年にイーバンク銀行(現:楽天銀行)を皮切りに、クレジットカード加盟店でのショッピングとキャッシングを銀行口座から即時引落するブランドデビットカードが登場。さらに「キャッシュパスポート」やau WALLETプリペイドカードなどの「ブランドプリペイドカード」も登場し、後継サービスとして確立されたため(但し、各種補償の有無はカードによる)、T/Cは2014年に日本国内での販売はすべて終了した。昭和30〜40年代には地方銀行の共通商品として国内旅行用トラベラーズチェック(商品名:OKチェック)が販売されていた。2014年(平成26年)3月31日をもって、日本国内での販売はすべて終了したが、発行済みT/Cは、引き続き利用可能である。過去の運用は以下のとおり。日本では、外国為替業務を取り扱う銀行(ゆうちょ銀行直営店と同行の代理業を受託した郵便局の一部を含む)、外貨両替店で購入できる。地方銀行や信用金庫では取扱量の観点などから、自前では取り扱わず、香港上海銀行東京支店と提携した宅配両替サービス「マネーポート」(現在は取り扱い終了)へ取次ぎの形で受託している形態が多い。購入の際は、外国為替相場のうち、外国送金にも適用される、対顧客電信売り)レートになる。外貨現金を購入する際は、 というレートが適用されるが、 は よりも有利な交換レートになっている。詳細は為替レートを参照。一般的に、購入の際には1 - 3%ほどの発行手数料が掛かる。日本の租税においては、外国への支払手段にかかる手数料は消費税非課税なので、トラベラーズチェックの発行手数料に消費税は課せられない。日本円建てのトラベラーズチェックを購入する際は、日本円の額面金額プラス1 - 3%の発行手数料(販売する金融機関により異なる)を支払い、現地で使用する時に、日本円のトラベラーズチェックと現地通貨の交換レートが適用されて両替することになる。現地で利用する際の為替リスクを引き受けることにはなるが、渡航する国のトラベラーズチェックがない場合は、という、二重の両替の手間と為替の損を考えれば有効ともいえる。ただし、日本円のトラベラーズチェックは東南アジアの一部の国家などや、都市部以外では使用できない場合もある。逆にアメリカ合衆国ドルのトラベラーズチェックは、概ね世界中どこでも通用する。トラベラーズチェックには所有者の署名(オリジナルサイン、またはホルダーズサイン)欄と使用時の署名(カウンターサイン)欄の2か所の署名欄がある。購入後すぐに、全ての小切手にホルダーズサインをしなくてはならない(印章は不可)。使用時に相手の面前でカウンターサインをし、両者の一致によって小切手としての効力を発するほか、ホルダーズサインがないトラベラーズチェックについては亡失時の再発行も行われない。使用時に身元確認のためパスポートを必要とする場合もあるのでパスポートの署名と一致していることが望ましい。なお、誤って使用時の署名欄に予めサインをしても、使用時に所有者の署名欄にサインをするようにすれば、単に「使用時」と「所有者」の欄署名順が入れ替わるだけのことで、問題なく使える場合が多い。ただし所有者の署名欄にまでサインをすると、換金・使用にある「カウンターサインまで事前にしてしまった」状態となる。使用する際は、必ず相手の面前でカウンターサインをしなくてはならない。カウンターサインがない限り小切手として有効ではないが、逆に「面倒だから」と、カウンターサインまで事前にしてしまうと、盗難・亡失の場合同様、現金を亡くしたのと同じで、補償が受けられなくなる。また、正当な所有者かどうか疑われて、再度カウンターサインを面前でさせられることになる。パスポートなどの身分証明書の提示や、滞在ホテル名、自宅住所などを記載させることもある。アメリカ、オーストラリアなどにおいては、一般に外国人旅行者がよく利用する施設、例えばホテル、空港、土産物店、有名百貨店などでは、現金化できたり、できなかったりする。一般の店舗では通常は拒否される。ただし、年々、取り扱いが悪くなっており、現金化できない場合は銀行で換金する必要がある。釣り銭が発生する場合は現金で渡される。ヨーロッパにおいては、一般にアメリカ以上に取り扱いが悪く、銀行においてすら、現金化のサービスを行っていない場合がある。その他の国・地域では、事前に銀行や両替所で現地通貨に両替をしておかなくてはならない。現地通貨への交換レートはトラベラーズチェックを購入した時と同様に同じ通貨の現金の交換レートよりも有利であるが、トラベラーズチェックを現地通貨に両替する場合は、提携金融機関を除き、手数料がかかる場合がある。アメリカン・エキスプレス発行のトラベラーズチェック提携銀行に持参すれば、手数料無料もしくは比較的安い手数料で換金できる。開発途上国や中南米の銀行においては、トラベラーズチェックの換金が特定のブランドしか受け付けていない場合がしばしば見受けられる。なお、一部の銀行(例として経営破綻した国際商業信用銀行。略称:BCCI)発行のトラベラーズチェックは、換金を拒否される。全ての国の通貨でトラベラーズチェックが発行されているわけではなく、以下の通貨のみで販売されている。銀行小切手のように任意の金額ではなく、商品券や債券のように額面単位が決められており(USドルでいえば50ドル、100ドル、500ドルなど)、それを組み合わせて購入し、使用する。クレジットカードの国際ブランドとして外国為替決済を引き受けているアメリカン・エキスプレス・VISA・マスターカードブランドによるものである。アメリカン・エキスプレスは自社で発行を行い、VISA・MasterCardブランドについてはクレジットカードと同様に、各国の金融機関が提携のうえ、発行・販売している。世界最初のトラベラーズチェックを発行したトーマス・クック・グループは、1980年代に金融業務をミッドランド銀行(香港上海銀行の前身)へ売却し、その後トラベレックス社へ譲渡している。そのトラベレックスもThomasCook-MasterCardトラベラーズチェックの発行を終了しており、日本国内のトラベレックスジャパンでは、現在アメリカン・エキスプレスのトラベラーズチェックを販売している。自国通貨建てのT/Cが現地銀行から発行されており、その在外支店(海外支店)で購入できるものがあったが、当該国でも商業的な流通性は少なく、銀行でしか換金できない。次のものは既に発行を取りやめている。アメリカン・エキスプレスが2014年3月31日で販売を終了したのを最後に、日本でのトラベラーズチェックの購入はできなくなった。資金洗浄防止のため、ほとんどの金融機関で、1日の換金上限額を設けている。旅行後使い残している時は、外国為替取扱金融機関・両替商で売却して日本円の現金に戻すことができる。売却は購入したところでなくてもよいが、VISAやMasterCardブランドのT/Cは受け入れていない場合もある。売却の際の交換レートは原則としてTTBレートが適用される。購入時と同様に外貨現金の売却レート よりも有利である。ただし、トラベラーズチェック・現金とも売却レートは購入レートよりも低いので、よほど短期間に為替レートの大幅な変動がない限り、通常はいくらか損をすることになる。トラベラーズチェックには有効期限がないので、使い残してもそのまま次の旅行のために保管しておく、あるいはトラベラーズチェックによる外貨預金の預入を取扱っている銀行もあるので、それに充てる、という選択もある。なお、2016年(平成28年)5月2日以降、ゆうちょ銀行でのトラベラーズチェック買取が終了するなど、年々日本国内での流動性が極度に低下しており、未使用のトラベラーズチェックの売却が可能な場所は、トラベレックス支店および極一部の金融機関のみとなっているため、現在保有している場合は注意が必要である。
出典:wikipedia
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