化学において、四面体形分子構造(しめんたいがたぶんしこうぞう、Tetrahedral molecular geometry)とは、中心原子に配位する4個の置換基が四面体の頂点に位置した分子構造のことである。メタン分子のように、4個の置換基がすべて同じときその結合角はcos(−1/3) ≈ 109.5°である。この分子構造は周期表の前半部では一般的である。点群は "T" に属するが、ほとんどの四面体分子はそれほど対称性は大きくない。四面体分子はキラルになることができる。実質的に飽和した有機化合物および、ケイ素、ゲルマニウム、スズの化合物は四面体形である。しばしば四面体形分子は、四酸化キセノンや過塩素酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンのように配位子と複数の結合をする。三フッ化チアジルではS-N間の結合が三重結合である。アンモニアは、その非共有電子対を配位子の一つと見なすと四面体形に分類することができるが、非共有電子対の影響のため、そのH-N-H角は109.4°より小さい107°である。四面体形分子構造はdまたはd配置を持つ金属錯体まで広範囲にわたる。四面体形構造を持つ金属化合物には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ニッケルカルボニル、塩化チタン(IV)などがある。鉄(II)、コバルト(II)そしてニッケル(II)などd軌道が満たされていない錯体もしばしば四面体形である。主族元素や有機化学では四面体の反転がよく起こる。いわゆるワルデン反転では、炭素の立体化学が反転する。また、アンモニアは平面形を経由して窒素反転を起こす。分子の幾何学的制約によって四面体が大きく歪められることがある。“反転する炭素”を特徴とする化合物の炭素は三角錐形である。四面体形は結合角が増加することによっても歪められ、極端なケースでは平坦化する。このような現象はフェネストランと呼ばれる化合物でみられる。
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