火力発電(かりょくはつでん)は、石油・石炭・天然ガス・廃棄物などの燃料の反応熱エネルギーを電力へ変換する、発電方法の一つである。火力発電を行うための設備を有し、火力発電を専門に行う施設を火力発電所という。石炭や石油、天然ガス(LNG)を燃焼させて得た熱を水に伝え、水蒸気に変える。純度の高い水が必要であるため、水処理装置(イオン交換樹脂や逆浸透膜装置及び付帯設備)で硬度分、場合によっては、シリカやその他のイオン、溶存ガスなど除去している。水蒸気は蒸気タービンへ送られるほか、付近の工場などに蒸気を供給している発電所もある。発電用ボイラーは伝熱部が水管になっている水管ボイラーであり、循環方法により貫流ボイラー、強制循環ボイラー、自然循環ボイラーがある。熱効率向上のため再熱式がほとんどである。また、貫流ボイラーは定圧ボイラーと変圧ボイラーがあり、近年は発電出力に応じて給水圧力を調整できる変圧ボイラーが採用されているほか、定圧ボイラーの弁を取り替えて、過熱器での変圧運転を行い、低出力運転時の発電効率を向上させている発電所もある。発電効率向上のため、2015年現在の日本では超臨界圧(蒸気温度374.1℃以上、蒸気圧力22.1MPa以上)や、超々臨界圧(蒸気温度593℃以上、蒸気圧力24.1MPa以上)としている。この場合、必ず貫流ボイラーが採用される。なお、排熱回収型コンバインドサイクル発電方式では、ガスタービンからの高温排気を取り入れる、排熱回収ボイラーが使用される。こちらは自然循環ボイラーである。原動機の一種であり、燃料の燃焼等で生成された高温のガスでタービンを回して回転運動エネルギーを得る内燃機関である。ガスタービン発電方式や、コンバインドサイクル発電方式の発電所に設置されている。燃料は主に天然ガス(LNG)であるが、小型のものは重油や軽油が使用される。蒸気タービンに比べて起動時間が短いため、ピーク時用内燃力発電として1950年代から用いられていた。また、ディーゼルエンジンと比較して、小型軽量で冷却水が不要なため、非常用発電機に用いられる。ガスタービンは高温で動作するため、その排気もまた十分に高温であり、排熱回収ボイラー、蒸気タービンと組み合わせた高効率コンバインドサイクル発電方式の普及が進んでいる。また、電気および蒸気を付近の工場などに供給する熱電併給システム(コジェネレーション)を導入している発電所もある。コンバインドサイクル発電で使用されるガスタービンは、導入当初1,100℃級であったが、熱効率向上のため高温化が進み、改良型では1,300℃級が採用され、近年では1,500℃級、1,600℃級が採用されてきている。熱効率(低位発熱量基準)は、ガスタービン発電では38%前後、汽力発電(蒸気タービン)では44%前後が限度であったが、1,600℃級ガスタービンと蒸気タービンの組み合わせでは60%以上が可能となった。水蒸気のもつエネルギーを、タービン(羽根車)と軸を介して回転運動へと変換する。発電所で使用される蒸気タービンは、高圧、中圧、低圧の3つのタービンから構成されており、蒸気(主蒸気)は、高圧タービンを回した後、再熱器で再び熱せられ(再熱サイクル)、再熱蒸気として中圧タービンへ送られ、最後に低圧タービンを回し復水器へ送られる。このタービンの構成により、一軸型(タンデム・コンパウンド)、二軸型(クロス・コンパウンド)がある。70万kW以上の大出力機ではベースロード発電向けの運用が多く熱効率が重視されていたことや、高速回転に伴う低圧タービン最終段動翼の遠心力の制約などにより二軸型が使用されることが多いが、建設コストの低減や運用性向上が重視されるようになったため、軽量のチタン動翼による遠心力の緩和や材料強度の改善などにより一軸型を採用した発電所もある。日本では近年、熱効率向上のため、蒸気条件を主蒸気温度、再熱蒸気温度ともに600℃前後まで向上させている。なお、日本の火力発電用タービンの回転速度は、50Hzでは3000rpm、60Hzでは3600rpmである。蒸気タービンで使用された蒸気を冷却して水に戻す装置。これによりタービン出口側が低圧状態(慣習的に真空と呼んでいる)となり、熱機関として動作が完結する(ランキンサイクル)。戻された水は給水ポンプに送られ、再びボイラーへ送られる日本の火力発電所では、ほとんどが海水を冷却水として利用しているため、表面復水器が使用される。これは、冷却水が復水器冷却管内を通り、タービン蒸気とは直接接触しない方式である。海水の取水には深層取水方式が主に採用され、放水には表層放水方式が主に採用される。取放水の温度差は、日本では環境負荷低減のため7 - 9℃としている。電磁誘導の法則を利用して、機械的エネルギーから電気エネルギーを得る機械である。現在の発電用では三相交流同期発電機が使用され、日本では商用電源として50Hz用と60Hz用に分けて採用されている。発電機で発生した電力を送電するにあたり、送電ロスを少なくするために電圧を昇圧する変圧器。日本では主に275kVや500kVまで昇圧している。従来、特に石炭火力などは煙突より煤煙を噴出し公害をイメージするものとして描かれる事が多かったが、環境負荷を低減させるため、様々な処理設備を設けている。なお、LNG(液化天然ガス)はガスを液化する際にガス中の「ちり」、燃焼時に硫黄分などの不純物を取り除いているため、硫黄酸化物や煤塵の発生がない。また、近年では電子ビームを使用して脱硝、脱硫する装置もある。高熱による上昇気流の原理で排気を上方に導き上空に排出させる。煙突の高さが高いほど、排出ガス中に含まれる大気汚染物質濃度は、地表に到達するまでに拡散されることから、排出ガス濃度そのものの低減対策(脱硫、脱硝、集塵など)に加えて煙突の高さを高くする対策が広く推奨されてきた。ただし、煙突の高さを高くしても大気汚染物質の総量削減効果がないことに留意する必要がある。発電所では、60 m - 200 m級が主に採用される。航空法によって60 mを超える建造物は、航空機からの視認のため外観を目立たせるよう(赤白など)義務付けられている。発電所によっては展望台を設けた塔のような構造にしたり、ライトアップを可能にしたりするなど、発電所のシンボル的存在となっている。日本国内では、1970年代前半には石油による発電が大半を占めていたが、オイルショック以降、他の燃料への代替が進み、石炭や天然ガスによる発電量が増加した。さらに、1990年代後半の電力自由化によって価格の安い石炭にシフトする傾向がある。2004年度では、火力発電の内訳は石炭と天然ガスがそれぞれ40%強、石油は15%弱となっている。また発電コストは、2011年12月13日の政府の国家戦略室コスト検証委員会報告書案によると、2010年時点で天然ガスと石炭火力が約10円/kwhであるのに対して、石油火力は近年の原油高により37円/kwhとソーラー発電並みに高くなった。ちなみに原子力発電コストは天然ガスや石炭火力と同程度の約10円 / kwhである。発電コストに関しては原子力発電の「政府内閣府による試算」の項を参照のこと。近年の原油高によって温室効果ガスの排出量が最も多い石炭への依存度は高くなっており、地球温暖化対策の足かせになっているという懸念もある。その一方で、原子力発電や自然エネルギーに比べて出力調整が容易であるため、安価に大規模な蓄電を行えない現段階では昼夜間の電力需給調整に欠かせない存在である。現在、日本における発電電力量の約70 %を火力発電が担っている。石炭火力発電に関して、温室効果ガスの問題が一番大きいものの、大気汚染を引き起こす物質を排気ガスの中からある程度は除去する技術が普及している。また、石炭を燃焼させた後の灰はセメントの原料として外部に売却されている。
出典:wikipedia
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